まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 (´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`)


233(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:18:12.91 発信元:210.233.170.147
黒に染められた空に、ぽっかり月が浮かんでいる。

青白い光が路地を照らす。

('A`)「……くだらねえ」

アパートを背にして、彼は呟いた。
灯りのついた一室から嬌声が聞えてくる。

彼が捨てた女と、それを拾った男の声。

バックを持つ手に彼は力を込めた。
大きなボストンバックだ。
使い始めて一年になる。

彼は首を振った。
それでも耳障りな音は聞こえてくる。

醒めた顔で、彼は青白く照らされた道を歩み進めた。




235(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:20:14.56 発信元:210.233.170.147
堤防を越えて、河川敷に辿りついた。
目新しい橋が架かっている。
この一年の間に完成したものだ。

彼は忌々しげにそれを眺めていた。

ちょっと前まで工事中で
とても向こう岸まで辿りつけるなんて思えなかったのに。

自分が置いてけぼりにされている。
理不尽にもそんな憤りを感じた。

だから、彼は今晩のターゲットをその橋に決めた。
同時に歪んだ高揚を感じ、口角が捻じれた。


237(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:22:12.44 発信元:210.233.170.147
橋の袂。
無防備なコンクリート。

月明かりの当たるぎりぎりの場所の前に立つ。

ボストンバックを脇に置き、勢いよく開く。
取り出したのはいくつかのスプレー缶だった。

夜なので普通は人の目では識別しにくいが
使い慣れている彼には簡単にその色がイメージできた。

一つを選び、振りながら立ち上がる。
もうじき月が傾く。
陰になればもうそのキャンバスは見えない。

早々にやってしまおう。
彼はコンクリートを睨み据えて、スプレー缶を振りかざした。





               ¶


240(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:24:12.35 発信元:210.233.170.147
グラフィティ。


1970年代のニューヨークで生まれた前衛芸術の一種であり
街中の景観をキャンバスとして行われるものはストリートアートとも呼ばれる。


グラフィティのライターたちには一つの大きなルールがある。




『既にあるグラフィティの上に描く場合は、更に完成度の高い図案を作らなくてはならない』




この暗黙の了解がグラフィティの美術性を高め、
世界に認められる芸術へと昇華させたともいえる。


ただし、その手軽さと所有権との兼ね合い、さらには景観保護の観点から
アマチュアによる無法なそれが世界中で社会問題となっているのも事実である。



               ¶


243(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:26:12.60 発信元:210.233.170.147
作業が進んでいく。

身体の動きと合わせて、爽やかな噴出音とともに
無機質なコンクリートが染まっていった。

彼は今、一年を振り返っていた。
思いだすものに合わせて、色も、勢いも変わってくる。

緩やかなリズムが続くと思えば、唐突に色が溜まっていき
勢いよく飛び出したと思えば、もう片方の腕も振るわれる。
新しい色合い、崩れた勢い、生まれる躍動。

(;A;)「くだらねえよ、なあ」

先程呟いた言葉が再び口を突いて出てきた。
でも、その目にはいつの間にか涙が溜まっていた。
いつの日かに置いてきてしまった熱い涙。

肘で涙を拭う間、動きが止まる。
だけどその後も果敢に腕をふるった。
いつまでそれが続くのか、そんなこと彼にもわからなかった。


246(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:28:12.22 発信元:210.233.170.147
月光がずいぶんと闇に浸食された。
描画はもう半分しか見えない。

腕が止まる。
ややあってから、投げ捨てるようにスプレー缶をバッグに押し込めた。

それから、息を吐き捨ててその場に寝転んだ。
真っ黒な橋の下が見える。
構造は見えない。何もかもコンクリートの壁に覆われている。

彼は呼吸を整えた。
このまま寝てしまえば楽だが、そうもいかない。
彼はあの描画をそのまま晒しておく気はなかった。

それは追悼だった。

彼はあの壁に一年間の思い出を捨てたのだ。


248(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:30:12.41 発信元:210.233.170.147
立ち上がる。
ボストンバッグからもう一つのスプレー缶を取りだす。

文字は見なくとも、使い慣れているから問題はなかった。
それは黒いスプレーだった。

彼は既に泣いてもいない。
無表情だ。
ゆっくりと、黒のスプレーを持つ腕を前に突き出す。

('A`)「……じゃあな」

思わずそう呟いた。
相手はただの絵だというのに。

指先に力が籠る。

「あれ、塗り潰しちゃうんですか? もったいない」

突然、背後から声を掛けられた。


251(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:32:12.80 発信元:210.233.170.147
(;'A`)「!?」

振りかえると、恰幅の良い男がいた。

(`・ω・´)「せっかく良い絵だったのに」

若い男だ。
年齢は彼と大差ない。
一般的な大学生と同じ。

ただ、妙にちぐはぐな格好をしているのが気になった。

('A`)「……あんた、いつからそこにいたんだよ」

背後にいたことに、全く気付かなかった。
そのことが彼の背筋に嫌な感じを与えた。

(`・ω・´)「ちょっとね。わけありなのさ。
 僕はシャキン。君、名前なんて言うの?」

('A`)「……ドクオ」

彼が答えた後、シャキンは急に近づいてきた。
思わず身構える。


252(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:34:12.65 発信元:210.233.170.147
だけど、心配する彼をよそに、シャキンはするりとその脇を抜けた。
滑るように壁に近づいていく。
その片手が描画に添えられる。

(`・ω・´)「……これ、ほしいんだ。くれないかな?」

思いもかけない言葉に、彼の目が瞬かれる。

('A`)「ほしいったって……壁をぶっ壊すのか?」

(`・ω・´)「いや、違うよ。そんな野蛮なことはしない」

シャキンは再び彼の方を振り向いた。

(`・ω・´)「この空間を時間と切り離して保存するんだ。
 そうすれば誰からも邪魔されずに、この雰囲気を含めて僕のものにできる。
 干渉されずに鑑賞、なんつって」

鼻で笑う声がする。
彼は何も答えず、ただ不可解そうな顔をしていた。


255(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:36:22.62 発信元:210.233.170.147
(;`・ω・´)「あ、あれ? つまらなかった?
 なんかごめんね。ついそういうの言ってしまう性質なんだけど」

(;'A`)「いや、それはいいよ別に」

彼は慌てて手を振る。
眉根は寄せられたまま。

(;'A`)「それより根本的に、言ってる意味がわからないんだけど」

(`・ω・´)「ああ~、なるほど」

シャキンは口を窄めて、何事かを言おうとする。
でも思いのほか考えをまとめるのに難航しているようだった。

(;`・ω・´)「ちょっと待ってね。口頭で説明して信じられるものじゃなさそうなんだ。
 先に交渉を進めてもいいかな? そうすれば体験できるから」

(`・ω・´)「僕はこの絵が欲しい。だから君に何かしらのお返しをしたいんだ。
 君はさ、人生やり直したいって思ったことある?」


257(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:38:33.18 発信元:210.233.170.147
('A`)「はあ?」

(`・ω・´)「率直に答えてくれよ」

('A`)「そりゃまあ――」

視線が壁に向けられる。
捨ててきた過去は、もう半分以上が闇に埋まっていた。

('A`)「――やっちまったなってことはある」

(`・ω・´)「うんうん、そうだよね。人間生きてればそんなことくらい」

(;'A`)「でもそれは」

シャキンの言葉を遮る。

(;'A`)「……もう過ぎちまったことだし」

視線を反らす。
伏し目になって、蘇りそうになった記憶を抑え込んだ。


258(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:40:39.65 発信元:210.233.170.147
(`・ω・´)「……やり直せるチャンスを上げるよ。
 というか、そうしてもらわないとこの絵は残せないからね」

彼は顔をあげて、シャキンを見つめた。
チャンス?

(`・ω・´)「この世界にはいくつもの"ありえたかもしれない世界"がある。
 今本筋になっている世界を、そのパラレル・ワールドのひとつに変えてしまう。
 そして新しい本筋の世界とは切り離して保存する。僕がしたいのはそれなんだけど」

(`・ω・´)「この世界を生きる君にはなかなか理解しにくいよね。
 だから体験してもらおう。もうお願いは聞いたわけだし、交渉は成立だよ」

(`・ω・´)「さ、ほら。手を出して」

口早にわけのわからないことを捲し立てたと思ったら
今度は手のひらを上に向けて、彼に突き出してきた。
小さな楕円形の物体が置かれている。

(;'A`)「え?」

(`・ω・´)「手」


262(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:42:49.45 発信元:210.233.170.147
彼の顔が引きつる。
手を差し出したら何をされるのだろうか。
いきなり掴まれて危険な目に合うかもしれない。

そう考えると怖くもある。

だけど、それ以上にシャキンの言葉が気になっていた。

やっちまったことをやり直せるチャンス。

冷めきっていたはずの未練の塊が
今ごろになって沸々とし始める。

腕が伸びていく。
何が起こるのだろうと思い、恐る恐る。

中途半端に握られていた手が開き
シャキンの手のひらに重ねられる。

手のひらの腹に、例の物体の冷たい感触があった。


263(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:44:59.20 発信元:210.233.170.147
そして、目の前が白く染められた。










.


264(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:46:39.57 発信元:210.233.170.147
目が覚めたのは、夜だった。
目の前には橋の袂。

どういうことだろう。
どこにも行かず、ここでいつの間にか寝ていたのだろうか。

そう思って、片目を開けて上半身を起こす。

「……あれ?」

まず目に映ったのは壁だった。
先程描画に使ったはずの壁。

月光は先程より進んでいるようだ。
それはいい。

でも、描いたはずの絵が消えている。

「……おい、どういうことだよこれ」

首を捻った。
シャキンに話しかけたつもりだった。

だけど傍には誰もいなかった。
いや、それよりも驚くべきものがあった。


272(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/13(金) 23:57:06.38 発信元:210.233.170.147
「……あれ?」

橋が、架かっていなかった。
ちょうど一年前に見たときのように
橋ともいえない物体がただ岸に立つだけになっていた。

(`・ω・´)<驚いた?>

不意に、頭の中でシャキンの声がした。

「おい、なんだよこれ。お前どこにいるんだよ」

(`・ω・´)<ちょっと手が離せないからね、テレパシーで失礼するよ>

軽く唸りながらも、彼は身体を起こした。
さっきまで見ていた景色と、微妙に違う町の灯り。

「俺に何をした?」

シャキンに対して質問する。

(`・ω・´)<おめでとう、君は一年前の世界に戻ってきたんだよ>

脳内にあっけらかんとした返答がきた。


274(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/14(土) 00:01:06.79 発信元:210.233.170.147
「戻ってきたって……じゃあ何か。あんたはタイムマシンでも持っていたっていうのか?」

(`・ω・´)<そう>

「なんでそんなことが?」

(`・ω・´)<僕はこの世界で唯一のタイムトラベラーだから>

急にSFめいた言葉が舞い込んでくる。
彼は顔を顰めるも、目の前で起きている現象から
このシャキンという男が起こしたことを信じざるを得なかった。

「……わかった。もう細かいことは気にしないことにする。
 つまりお前は俺を過去に持ってきたってことなんだろ?」

(`・ω・´)<そうだ、さあ、とっとと行動しよう。この世界を変えてしまわないと>

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

慌てて、手をばたばたと振った。


275(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/14(土) 00:04:13.34 発信元:210.233.170.147
「それじゃ、お前の言っていたやり直すっていうのは
 俺が過去に戻って自分の人生をやり直すってことなのか?」

(`・ω・´)<いや、ちょっと違うかな。
 この世界の君は元々存在しているよ。
 そのまま成長すれば君になったはずの存在>

「つまり、一年前の俺?」

(`・ω・´)<そう>

「……で、俺はどうしたらいいと?」

(`・ω・´)<そこからは君の自由さ。
 もちろん少しは元の世界と変えてもらわなきゃ困るけど>

「え?」

(`・ω・´)<もし君が望むならば、その昔の君に接触して過去を変え、望むような世界にすればいい。
 もしそれを望まないというならば、関わらずに生きればいいのさ。
 君にはその選択ができるチャンスを与えたんだ。あの絵との交換でね>


278(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/14(土) 00:07:22.37 発信元:210.233.170.147
「……接触ったって、俺は俺だろ?
 いきなり同じ顔した奴が現れたらまともに会話になんか」

<ああ。そう思ってもう一つサービスしておいたんだ。
 過去の自分に、自分のままで接触すると往々にして大変なことになるからね>

「サービスって?」

<どこか身体の見える場所を見てごらんよ>

そう言われて、彼は橋の袂を離れた。
月明かりに照らされた川面ならば
自分の姿を見ることができるだろうと思ったからだ。

首を突き出して、確認する。

「なっ――」

明らかに自分のものと違う輪郭。
目を見開き、それから細部を確認する。

そして今一度叫んだ。


280(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/14(土) 00:10:38.93 発信元:210.233.170.147
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(;´・ω・`)「なんじゃこりゃあああああああああああああああああ!!」




声は闇夜に吸い込まれていった。

(`・ω・´)<ふふん、男前だろう?
 僕を元に作った人体だ。でもどことなくしょぼくれているし、ショボンとでも名づけよう>

(`・ω・´)<僕の保存作業は一年で終わる。
 そうしたら、君の精神はその世界のドクオと融合する。
 それまでの必要最低限のサポートは僕が過去に干渉してやっておくよ。何かあれば好きに頼んでくれ>


282(´・ω・`)運命はグラフィティのようです('A`) ◆MgfCBKfMmo :2013/09/14(土) 00:13:40.02 発信元:210.233.170.147
(`・ω・´)9m<さあ、君はこれから一年間、ショボンとなって生きるんだ>









こうして、ショボンとしての彼の一年間が始まった。

ドクオという男の運命を上描きするために。




~序章 おわり~



( ^ω^)ブーン系小説シベリア図書館のようです★49
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/siberia/1377435720/



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