まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 ( ^ω^)ニートでいたかったようです


114( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:06:25.55 発信元:122.196.197.214
( ;ω;)「どうして……!」

土砂降りの雨の中、青年が駆ける。

( ;ω;)「どうして、こんなことに!」

息は荒れ、口にした言葉は掠れていた。
いっそのこと、無言で走った方が楽だろうに、彼はそうしない。
口を噤めばそのまま口のない者になってしまいそうな気がして、恐ろしかった。

( ゚(エ)゚) ギシャー

雷に光によって、魔物の姿が映し出される。
その巨体は、青年の倍を優に越す。

鋭い牙に噛み付かれれば、鋭利な爪に引っかかれれば、強大な手ではたかれれば、死ぬ。
どう足掻いたところで、魔物に接触すれば死から免れることはできない。
死人に口なし。

青年はそうならぬよう、泥がズボンに飛ぶのも気にせず、ひたすら前へ進んでいく。
地面に足をとられ、転びそうになりつつも彼は足を止めない。
大きめのリュックを背負い、腰には剣がある。
その姿は冒険者のようだが、肝心の彼は今もまだ弱々しく涙を流している。

( ;ω;)「うわあああああああ」

生きるためには足を動かすしかないのだ。

彼の名前はブーン=ホライゾン。
元ニートだ。




116( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:09:10.38 発信元:122.196.197.214
  
話は数日前に遡る。
ブーンは、とある村で穏やかな日々を過ごしていた。

( ^ω^)「この漫画面白いおwwww」

片田舎でもそれなりに流行っている漫画を購入しては、彼は楽しさを隠すことなく笑う。
作者が知れば、喜ぶに違いないほどの楽しみっぷりだ。

( ^ω^)「ご飯美味しいおwwww」

毎日、母が作ってくれる食事にも、彼は素直な感想を述べる。
この世の誰よりも、己のことを愛してくれる人が作った料理だ。
不味いはずがない。

( ^ω^)「散歩気持ちいいおwww」

町の人々が見れば、ブーンの住む町は田舎だ。
しかし、彼は故郷を厭うことはなかった。
のどかな空気は、いつだって彼を受け止めてくれる。

( ^ω^)「走るの大好きだおwww」

ブーンは一般的な目から見れば、太っていると言われてもしかたのない体型をしている。
だが、彼は幼いころから走ることを好み、青年と呼ばれる年になっても、それは変わることはなかった。

( ^ω^)「生きるって最高だお!」

彼は実に幸せな日々を過ごしていた。
ただし、それが周囲からも受け入れられているのか、と問われれば、話は別だ。


117( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:12:08.72 発信元:122.196.197.214
  
森の中にひっそりと存在している小さな村。
それがブーンの住んでいる村だ。
彼は今年で二十四にもなる。

ブーンと同じ年頃の者達は、狩人なり店番なり、何らかの仕事をしているのがほとんどだ。
小さな村だからこそ、誰にでも仕事は存在している。
一言頼みさえすれば、仕事にありつくことはとても簡単なのだ。

そんな中、ブーンは働くことなく生きていた。
所謂、ニートというやつだ。

( ^ω^)「今日は森に行ってくるおー」

J( 'ー`)し「魔物には気をつけなさい」

朝食を腹に詰め込むと、ブーンは意気揚々と家をでる。
彼の母は毎日のように口にしている注意を今日も告げた。

( ^ω^)「わかってるお!」

ブーンは卑屈な性格をしていない。
むしろ、子供っぽい純粋さを前へ前へと押し出した性格だ。
母や他者からの小言めいた言葉にも、彼は素直な反応を見せる。

元気に返事をしたブーンはそのまま家を出て行った。
玄関扉が閉まると、残された母は一つため息をつく。


120( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:15:09.83 発信元:122.196.197.214
  
J( 'ー`)し「あの子、あたしがいなくなったらどうするつもりなのかしら……」

ニートの息子を持つ母ならば、誰もが持つ悩みだろう。
悲しきかな、この村の中では彼女と同じ事態で悩んでいる母親はいないけれども。

J( 'ー`)し「あんたが生きていてくれたらねぇ」

母はリビングに飾ってある写真立てへそっと指を伸ばした。
時の止まった世界には、幼いブーンと幾分か若い母。
そして、今は亡きブーンの父親が写されている。

彼はブーンが幼い頃に魔物によって殺されてしまっていた。
それ以来、母は女手一つでブーンをここまで育ててきたのだ。

まさか、愛息子がニートになるなど、予想もしていなかったが。
ひきこもりでないだけマシ、とは言えぬのがニートの息子を持つ母の辛いところ。
いくら毎日外へ出かけてくれているとは言っても、職には一切繋がらないのだ。

J( 'ー`)し「甘やかしすぎたのかしら」

北の大地に魔王が生まれ、魔物が凶暴化しているような時代だから、
自由と平和を愛し、幸福を享受するような子に育って欲しいと願っていた。
しかし、些かいきすぎだ。

J( 'ー`)し「心を鬼にするのも、必要なのかもしれないねぇ」

母はそっと写真立てを倒した。


122( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:18:09.15 発信元:122.196.197.214
  
村は高い壁と、若い男達からなる自衛団によって守られている。
生まれてこのかた、ブーンは村の外に出たことどころか、本物の魔物を見たこともない。
魔物が村を襲ってきたことはあるが、そんなときは家や村の中にある森でじっと身を潜めていた。

そんなブーンは、今日も今日とて、壁の中にある森を散歩をし、大きな木の下でゆらりゆらりと昼寝をしていた。
何とも自由気侭な生活だ。

( うω-)「うーん」

ブーンは目をこすり、伸びを一つする。
一度あくびが出て、思考がはっきりとしだす。

( ^ω^)「……もう夕方かお」

どうりで寒いと思った。
ブーンは身を振るわせながら立ち上がる。

( ^ω^)「今日の晩ご飯は何かおー」

好きなことをして、家に帰れば食事の仕度ができている。
なんとも素敵で幸福なことだろう。

('A`)「よおブーン」

( ^ω^)「おお、ボクの旧友。
      チビで貧相な体つきのくせに、今は防具屋を営んでいるドクオじゃないかお」

('A`)「説明口調乙。
   ん、待て。誰がチビで貧相だこら」


125( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:21:05.08 発信元:122.196.197.214
  
( ^ω^)「事実は曲げられないお!」

('A`)「ならお前はクズニートじゃねーか」

笑いながら言うブーンに、ドクオは少し呆れた口調を作って返す。
そこにギスギスとした雰囲気はない。
互いに古くから知る仲であることと、相手を蔑むことや妬むことのない二人の性格が幸いしている。

( ^ω^)「失礼な。ブーンは健康的なニートだお」

(;'A`)「そりゃただ遊び呆けてるだけじゃねーか」

( ^ω^)「第一、こんな小さな村じゃろくな就職先もないお」

(;'A`)「おいおい。いくらでもあるだろ」

( ^ω^)「例えば?」

('A`)「武器屋の雑用とか、お前のお袋さんが働いてる雑貨屋とか、
   この村の自衛団はいつでも募集かけてるし、子供のいる家で子供の面倒をみるとか、
   自衛団と村の外に行って木の実集めるとか、いっそのこと狩人になるとか」

(;^ω^)「予想以上の職種を上げられてしまったお」

('A`)「お前がやる気になれば、オレのところでだって雇うぞ」

ドクオの言葉に嘘はない。
彼なりに友人を心配しての言葉だ。


127( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:24:05.59 発信元:122.196.197.214
  
( ^ω^)「いや、流石に友人の下で働くのは勘弁したいお」

善意からの申し出をきっぱりと断る。
クズニートのくせに、プライドだけは一人前だ。

('A`)「そうか。まあ、わからないでもないよ。
   なら、自衛団はどうだ?」

立場は違えども、同じ男だ。
友人の部下となる辛さがわからぬわけではない。
ならば、とドクオは代替案を提出する。

( ^ω^)「自衛団は厳しい訓練が毎日あるって聞いたお。
      ボクのこの柔らかいぷにぷにの体じゃとてもじゃないけど無理だお」

('A`)「やる前からそんなこと言うなよ……」

( ^ω^)「今を楽しむ! それが全てなんだお!」

ブーンの意思は変わらない。
どこの世界に、ぬるま湯から出て極寒の地に赴く馬鹿がいるというのだろうか。
現状に甘えられるのならば、それに越したことはないのだ。

ある意味では芯の強いブーンを前に、ドクオは一つため息をもらす。
悪い男ではないのだ。優しい心もある。
ただ、残念なほどに怠け者なだけだ。


128( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:27:09.30 発信元:122.196.197.214
  
('A`)「お前、村の人から自分がどんな目で見られてるのか知ってるだろ?」

吐き出すようにして言う。
この村で、子供や怪我人、病人を除けば、働いていないのはブーン一人だけだ。
どのような視線を向けられているかは、説明する必要もないだろう。

( ^ω^)「それがどうしたんだおー。
      ボクはボクだお。関係ないお」

ブーンはそっぽを向く。
今まで、意識して目をそらしてきた事実に、今もまた顔をそむける。

('A`)「お袋さんが可哀想だとは思わないのか」

( ^ω^)「ボクをこんな風に育てたのはカーチャンだお」

胸を張って言っているが、ブーンは何一つとして成していない。
子供を育て上げたのは母で、彼はその苦労を踏みにじっているだけなのだから。
ドクオは顔をうつむけ、息を吐き出す。

そこには紛うことのない呆れが含まれていた。
当然、ブーンもすぐさまそれに気づく。

( ^ω^)「むっ。ボクだって、やればできる子なんだお!」

('A`)「お前、いい歳して『やればできる』はねーよ」

( ;^ω^)「うっ……」


130( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:30:07.42 発信元:122.196.197.214
  
もっともな話だ。
そもそも、やればできる、などと言う言葉は、他人が誰かを励ますときに使う言葉であって、
自分を肯定するために使っていいものではない。

('A`)「なあ、もう十分遊んだとは思わないか?
   ただでさえ、この村は北の方に位置してて、魔王の脅威やら、作物の不作やらが多いんだ。
   そろそろ、お前がお袋さんを支えるべきだと思わないか」

南方にある王国は、こんな弱小田舎を守ってはくれない。
そのため、村は森の中に潜むようにして暮らし、今日も何とか生き延びている。

支えあわなければならないのだ。
家族だけではない。村全体が。

( ^ω^)「……わかってるお」

搾り出すように声を出す。
ブーンもわかってはいるのだ。
現状のままでいいわけではない、と。

('A`)「なら、な?」

ドクオは優しく言う。
そろそろ足を踏み出してもいい頃なのではないかと。

( ^ω^)「……明日のことは、明日考えるお!」

友人の優しさが痛くて、自分の弱さに潰されそうで。
全てから逃げるようにしてブーンはその場から走り去って行った。


135( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:36:25.36 発信元:122.196.197.214
  
( ^ω^)「ただいまだおー」

ドクオと言葉を交わし、胸を痛めたことなど何処へやら。
ブーンはいつも通りの能天気さを背負って帰宅した。
走れば大抵のことは忘れられる、というのは、彼の長所であり短所だ。

J( 'ー`)し「おかえり」

スープの匂いがブーンの鼻をくすぐる。
食事が出迎えてくれるというのは、いくつになっても嬉しいものだ。

( ^ω^)「お腹減ったおー」

椅子に座ると、母が目の前にスープとご飯、ほんの少しのおかずを出す。
質素ではあるが、この村では普通の食事だ。

( ^ω^)「いただきます!」

ハフハフと少々行儀の悪い音をたてながら、ブーンは出された食事を腹に収めていく。
ブーンの様子をじっと見つめている母の視線には気づきもしない。
彼女は決意を胸に秘め、ブーンの食事が終わるのを待つ。

( ^ω^)「ごちそうさまでしたお」

J( 'ー`)し「待ちなさい」

( ^ω^)「お?」


137( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:39:05.96 発信元:122.196.197.214
  
立ち上がるのをやめ、再び席につく。
その時点で、ブーンは嫌な予感をひしひしと感じ取っていた。

今のブーンにとっては、魔王よりも恐ろしいものがある。
それも、遠い北にあるのではない。
すぐ身近にあるものだ。

生唾を飲み込み、母の言葉を待つ。
嫌な静けさがしばらく続いた。

J( 'ー`)し「カーチャン、実は給料が減っています」

真剣な顔をして、発せられたのはそんな言葉だった。

( ^ω^)「……お?」

J( 'ー`)し「正直、来月分の電気を魔術師さんに頼むこともできません」

村の電力や火力といったものは、それを扱うことのできる魔術師によって供給されている。
月に一度、魔力を水晶に込めてくれるのだ。
当然、その際には払うものが必要となる。

J( 'ー`)し「それどころか、村の自衛団さんへ払う分のお金も待ってもらってるような状況です」

( ^ω^)「えっ」

ブーンは潰れたカエルのような声を出した。
自衛団は慈善事業ではない。
命をかけて守ってくれているのだ。相応の対価は必要である。


140( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:42:07.72 発信元:122.196.197.214
   
J( 'ー`)し「このままじゃ、この村からも追い出されかねません」

けじめはつけなければならない。
一人を許せば、そこから組織というものは瓦解していく。
小さな村だからこそ、見逃せないことがある。。

(;^ω^)「そそそそそそれは困るお!」

J( 'ー`)し「だからね、ブーン」

母は悲しげに、しかし、はっきりと言う。

J( 'ー`)し「働くか、家を出るか……。
      選んでちょうだい」

重みのある言葉だ。
死刑宣告にも似た、されど生へ続く選択肢を持った言葉。

J( 'ー`)し「数日くらいの猶予はあげるから。
     じっくり考えていいのよ」

(;^ω^)「おー」

即決せずに済むのはありがたい。
だが、十分な猶予というには、短すぎる期間だ。

ブーンは気が抜けたような返事をするのが精一杯で、
その日はそれ以上、何も考えることができなかった。


141( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:45:06.31 発信元:122.196.197.214
  
次の日、ブーンはぶらぶらと村を歩いていた。
状況を打開できるような案は思い浮かばない。
かといって、働くという選択肢も億劫だ。

('A`)「ブーン」

声をかけられ、ブーンは顔を向ける。
そこには、昨日会ったばかりの冴えない顔があった。

( ^ω^)「ドクオ……」

見れば、ブーンはドクオが働いている店の前にいた。
自分がどこにいるのかすら、今のいままで曖昧だった。

('A`)「昨日、オレが言ったこと、ちゃーんと考えたのか?」

( ^ω^)「昨日……」

ブーンにとって、昨日の出来事とは、母に告げられた言葉が全てだ。
他の出来事など、空の彼方と言っていい。

('A`)「おいおい。忘れるのが早すぎるぞ」

沈黙するブーンに、ドクオは自身の頭を掻く。
人間、都合の悪いことは忘れがちであると、彼は知っていたのだ。

('A`)「お袋さんのためにも、働いてみたらどうだって話だよ」


144( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:48:07.83 発信元:122.196.197.214
  
途端、ブーンの思考が鮮明になり始める。
昨日に起こったのは、母から告げられた絶望的なものだけではなかった。
友人に差し出された選択肢もあったはずだ。

( ^ω^)「ドクオ!」

(;'A`)「うおっと」

ブーンはドクオの手を掴む。
そして、真っ直ぐに自分より背の低い友人の目を見た。

( ^ω^)「ここで働かせてください!」

('A`)「よろしい!」

勢いに流されたのではないかと疑ってしまうほどの即答っぷりだ。
頼んだはずのブーンが、思わず一歩退いてしまう。

(;^ω^)「いいのかお?」

('A`)「馬鹿野郎。昨日も言っただろ?
   オレんとこで雇ってやるって」

( ^ω^)「ドクオ……!」

持つべきものは友人だ。
ブーンは目の前にいる、チビで貧相な友人が、
歴史上のどの偉人よりも素晴らしく、偉大な人物に思えてきた。


147( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:51:10.18 発信元:122.196.197.214
('A`)「じゃあ、早速で悪いんだけどさ」

ドクオは一度、店の中へ戻って行った。
後を追うべきかブーンが迷っていると、ドクオは手に白い紙の束を持って戻ってきた。

('A`)つ□「これにちょっとサインしてくれ」

( ^ω^)「これは?」

('A`)「契約書ってやつだ」

手渡された紙にブーンは目をやる。
薄い紙のくせに、ずっしりとした質量が感じられた。
それ程に紙は数があり、一枚一枚に細かな文字が書かれている。

正直なところ、それぞれに目を通すのは面倒くさい。
そうでなくとも、こんなものを真面目に読んでいては日が暮れてしまう。

('A`)「まあ、オレが雇い主で、お前は雇われ。
   オレの仕事を手伝う代わりにお給料払いますよーってことだ」

渋い顔をしているブーンに、ドクオが要約を口にする。
契約書とは、無駄な文章が多いもので、どうしてもかさばるのだ、と彼は付け加えた。

( ^ω^)「そういうもんかお」

働くことが始めてなブーンは、右も左もわからぬ子供と同じだ。
社会に対する疑問を抱きはしたが、一足先に社会の歯車となった
古くからの友人が言っているのだから、間違いはないのだろうと判断した。


150( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:54:08.84 発信元:122.196.197.214
   
( ^ω^)「ちなみに給金はいかほど?」

ふと、お金のことを思い出し、聞いてみる。
安い賃金で馬鹿のように働くのは喜ばしくない。
ドクオは一度だけ、ブーンが持っている白い紙束に目を落とし、再び友人の目を見た。

('A`)「日給で七万G。ってところだな」

あっさりと発せられた金額は、働いたことがないブーンでも分かるほどわりの良い給金に思えた。
ドクオの店など、この村に住んでいる人間が使うだけで、血反吐を吐かなければならないほど過酷な労働環境ではない。
むしろ、のんびりと過ごしている時間の方が長いはずだ。

( ^ω^)「え、そんなに貰っちゃっていいのかお?
      いいのかお? マジかお?」

('A`)「おう。間違いないし、男に二言もない」

ブーンの疑問に、ドクオは頷いて肯定の言葉を返す。
そうとなれば、ブーンのテンションもうなぎ昇りだ。

( *^ω^)「ふへへへへ。サインしちゃいますお!
      サラサラしちゃいますお!」

('A`)「ほら、ペン貸してやるよ」

懐に差してあったペンを出し、ブーンに差し出す。
シンプルな作りだが、インクの出の良いペンだ。

( ^ω^)「ありがとうだお!」


154( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 21:57:11.98 発信元:122.196.197.214
  
ペンを受け取ったブーンは、さらさらと名前を書く。
数秒もすれば、しかと契約が交わされた証がそこにあった。

('A`)「ん。確かに」

( ^ω^)「これでボクも、脱! ニート! だお!」

ブーンは拳を振り挙げ、歓喜の言葉をあげている。
これでもう、何も恐れるものはないのだと言わんばかりだ。

('A`)「じゃあ、ちょっとこっちに来てくれよ」

( ^ω^)「お? 今日から仕事かお?」

('A`)「そんなもんだ」

先ほど契約を交わしたばかりで、もう働くのか、とブーンは一瞬落ち込む。
しかし、今日働けば、七万Gが手に入る。
そう考えれば悪くはなかった。

( ^ω^)「任せろお!」

('A`)「頼もしいよ」

スキップにも似た足取りで、ブーンはドクオの店に入って行く。
無邪気な友人の姿に、ドクオもわずかに笑っていた。


156( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:00:06.70 発信元:122.196.197.214
  
店に入ると、ブーンは奥の部屋に案内された。
どうやら、従業員部屋のようだ。
いくつか置かれている椅子の一つに腰を降ろし、待つこと数分。

('A`)「これをちょっと着て欲しいんだ」

( ^ω^)「何だお?」

ドクオが差し出したものは、防具だった。
胸、肩、腕、腰周りの辺りを守るためのもののようで、材質は見たところ皮。
触った感じは滑らかで、上質さを感じられる。

( ^ω^)「これを、ボクが着るのかお?」

店の制服には見えない。
自衛団の人間が着るのならばともかく、ブーンが着る必要性は皆無のはずだ。
彼は首を傾げ、雇い主となったドクオを見る。

('A`)「新商品だから、使えるか確かめておきたいんだ」

( ^ω^)「なるほど、そういうこともしなきゃならないのかお。
      以外と、ドクオもしっかり働いてたんだおね」

村を守っている自衛団に売りつけて、後から不良品だとわかっては困るということだ。
ブーンは納得し、促されるまま防具を身につけた。


160( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:03:11.55 発信元:122.196.197.214
  
('A`)「どうだ?」

防具をしっかり装備したブーンに、ドクオは問いかける。
見た目だけで言えば、十分それらしい雰囲気がある。
元よりガタイのいい人間向きだったこともあってか、ふっくらしたブーンでも十分に装備できた。

ブーンは装備したまま、軽く動いてみる。
体を捻る。屈む。殴る。
どの動作を行っても、装備が邪魔をすることはなかった。

( ^ω^)「軽いし動きやすいお。
      でも、こんなので魔物の攻撃を受け止められるのかお?」

内側に鉄板が仕込まれているということもなく、表面が鱗のように硬いわけでもない。
機動性はともかくとして、防御面にはやや不安が残る。

('A`)「一応、強い魔物の皮で作られてるから、耐久力はそこそこある。
   まあ、それでも鉄には劣るが……」

( ^ω^)「戦うってのは大変だお」

しみじみと呟く。
このような装備で命を守らなければならない。
意識したことはなかったが、自衛団という職はありがたいものなのだと痛感する。

('A`)「そうだぞ。感謝しとけよ」

職業柄、自衛団の人間と関わることも多いのだろう。
ドクオはうんうんと何度も頷いていた。


161( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:06:08.32 発信元:122.196.197.214
  
( ^ω^)「で、これが仕事かお?」

装備して、性能を確かめる。
お手軽な仕事だ。
これならば、まだ接客の方が辛い仕事だと言えるかもしれない。

無論、体格の関係もあるので、痩せているドクオでは試すことのできない装備も多いだろう。
そのためにも、ブーンのような体型の者が必要なんだ、と言われれば納得もできる。

('A`)「……この装備はな、町で入荷してきたものじゃない」

( ^ω^)「お?」

神妙な口調になったドクオに、ブーンは首を傾げる。
この店がどのような手段を持って商品を仕入れているのかは知らないが、
今の口ぶりからすると、普段は町で購入してきているのだろう。

('A`)「数日前のことだ。
   国からこんな通達がきた」

そう言うと、ドクオはポケットから一枚の手紙を出してきた。
触れずとも、その紙が上質な物であることは判別がつく。
白く美しい紙には、国の象徴であるツボが捺されていた。

ブーンは差し出された紙を破らぬように、そっと受け取る。
指先から感じられる質感は、見た目に違わず上品だ。


165( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:09:09.04 発信元:122.196.197.214
  
書かれていることを要約するのならば、
来るべき日に備えて防具や武器の強化を図る。
そのため、各店舗は国から支給された装備を持ち、その性能を調べよ。

調べ方は、装備を身につけて旅をする。
北でも南でも、好きな場所へ行けばいい。
ただし、一日に一定距離を移動しなければならない。
これに関しては、装備品にかかった魔法により管理されている。

参加は任意である。
だが、参加した者には、旅費として一日に七万Gが支給される。

そのようなことがつらつらと書かれていた。

( ^ω^)「来るべき日……」

('A`)「魔王退治だろうな」

庶民であるブーン達には想像も付かない日だ。
今の生活が変わるところすら、思い浮かべることができない。
国という存在の大きさに圧倒される。

ふと、ブーンは引っかかりを覚えた。
些細な不安と疑問を持ち、彼は再び手紙に目を走らせる。


168( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:12:11.43 発信元:122.196.197.214
   
          参加した者には旅費として一日に七万Gを支給するものとする。
                           ~~~~~~~~~~~~~
          ('A`)「日給で七万G。ってところだな」
              ~~~~~~~~~~~~~~

二つの言葉が重なった。

( ゚ω゚)「ま、まさか……」

ブーンの目は驚愕に見開かれる。
普段のにこやかな表情はどこにもない。

('A`)「ブーン。これはオレからのプレゼントだ」

手渡されたのは大きめのリュックだ。
ずしりとした重さがある。
食糧も救急セットも入っているに違いない。

だが、そんなものはどうだっていい。
この村で平和に過ごすのに、そんなものは必要ないのだ。

( ゚ω゚)「ド、クオ……これはどういうことだお」

('A`)「もう、察しはついてるんだろ?」

( ゚ω゚)「嘘だと言ってくれお」

('A`)「すまんな。真実だ」


171( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:15:22.83 発信元:122.196.197.214
  
淡々と告げられたのは酷い裏切りだ。
友人だと思っていた男が、今、まさに、ブーンを死においやろうとしている。

( #゚ω゚)「お前は! 友達に、死ねというのかお?!」

('A`)「死んで欲しくないさ」

( ゚ω゚)「嘘だお! 村の外は凶暴な魔物で一杯だお!
     そこにブーンを放り捨てるなんて、悪魔の所業だお!」

ブーンは怒りのままに怒声をあげる。
今はもう、ドクオのことを友人だと思っていたことすら信じられない。

('A`)「そうかもしれん。だがな、ブーン」

( ゚ω゚)「黙れお! ボクは絶対に行かないお!」

('A`)「……これはな、お前のお袋さんが仕組んだことなんだよ」

( ^ω^)「え……?」

思わぬ言葉に、ブーンの顔から怒りが消える。
残ったのは、驚愕と不安の色だ。

('A`)「昨日、相談されたんだ」


173( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:18:12.43 発信元:122.196.197.214
('A`)「このままだと、お袋さんが死んじまったら、お前はどうなる?
   この村でお前のことを雇うような人がいると思うか?
   長年ニートで、怠け者で、村の食料を減らすことしかしないお前を」

ドクオの拳は震えていた。
何かを堪えるように。
しかし、すぐにそれも決壊する。

(;A;)「お袋さんだって悩んだだろうよ!
    でもな、お前が生きるためには、その性根を叩きなおさなきゃいけないんだ!」

彼は涙を流し、訴えた。
どれほど辛い判断だったのか。
けれども、それが最良だと信じるしかなかったことを。

(;^ω^)「そ、そんな……。
     でも、だからって死地に追いやるような真似!」

(;A;)「お前が死んだら、お袋さんも死ぬって言ってたよ……。
    あの人は、お前のことだけを考えているんだ」

( ^ω^)「……わかったお。ブーンはこれから真面目に働くお」

('A`)「そうか」

( ^ω^)「だから、この荷物は返すお」

('A`)「え」

( ^ω^)「え」


176( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:21:09.59 発信元:122.196.197.214
  
('A`)「早く旅立てよ」

( ^ω^)「何それ怖い」

涙の訴えとな何だったのか。
ブーンは切実に問いかけたかった。

('A`)「怖いのはお前の思考回路だよ」

( ^ω^)「いや、真面目に働くから、死ぬのは勘弁だお。
      ブーンは心を入れ替えたんだお」

('A`)つ□「……ブーン。
      これ、見てみろよ」

( ^ω^)「契約書?」

('A`)「その下から十行目あたりな」

分厚い紙の束の中から一枚引き抜かれ、ブーンの手元に渡る。
長々と書かれた文章の中から、ドクオが指し示していたのであろう場所に目を通す。

( ^ω^)「……な」

ブーンの手から、契約書がヒラリと落ちた。

('A`)「読んだか? 書いてあるだろ?
   契約をしたが最後。最低でも一週間は旅をすることが義務付けられること。 
   そして、死んだら家族に保険金が入ること」


182( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:24:29.53 発信元:122.196.197.214
  
( #゚ω゚)「詐欺だおおおおおおお!」

ブーンは叫んだ。
思いの丈を声量に代え、店をわずかに揺らすほどに声を出した。

('A`)「何が詐欺なものか」

一方で、冷静なドクオが言葉を返す。

( #゚ω゚)「さっきと言ってることが全然違うお!
     死に関わることなんて聞いてなかったお!」

('A`)「ああ、言い忘れてたかもな。すまんすまん」

( #゚ω゚)「つか、保険金って、あのババア生きる気満々だお!」

('A`)「そう断定するのは早いだろ」

( #゚ω゚)「いーや、間違いないお!
     くっそう。どうしてボクがこんな目に!
     ていうか、こんな契約無効だお!」

今にも暴れだしそうなブーンに、ドクオはやはり静かに言葉を投げた。
あまりにも静かなそれは、断頭台が降りる瞬間にも似ている。

('A`)「ブーンよ。この国の法を、今一度思い出すんだ」

( #゚ω゚)「はあ?!」


185( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:27:14.32 発信元:122.196.197.214
  
( ^ω^)「……ま、さか」

頭に上っていた血が、さーっと降りる。
赤く染まっていたはずの顔は、真っ青に変わり、ブーンはがたがたと震えだした。

::(;^ω^)::「この身で、体感するとは思ってなかったお」

('A`)「だが、これが現実だ。
   この村が平和だからといって、忘れていい法律ではなかったのだよ。ブーン君」

この国には、とある法律があった。それは単純明快で。しかし、絶対的な効力を持っている。
昔、この国を作り上げた王はこう言ったらしい。

       『嘘を嘘と見抜けない人間に、人生を生き抜くことは難しい』

その教えに従い、この国では騙される方が悪い。という法律がある。
詐欺にあったと法廷へ駆けこめば、有罪判決を出されるのは被害者だ。

('A`)「お前がそれほどオレのことを信用してくれていたのは嬉しい。
    だが、契約は契約だ」

( ^ω^)「……ボクは」

('A`)「これ、やるよ」

( ^ω^)「剣、かお」

剣を持ったことなどない。
戦ったことどころか、喧嘩だってまともにしたことがない。


188( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:30:11.72 発信元:122.196.197.214
  
そんなブーンが、旅に出ることになったのだ。
人生とは、何が起こるかわからない。

( ^ω^)「ドクオ……」

('A`)「行けよ。
   詳しい説明に関しては、リュックに入れてある」

ここに至って、ブーンは何故こうもドクオが冷静であるのかを理解した。
感情を凍らせていなければ、告げることができないのだ。
友人を村の外に追いやるような言葉を。

( ^ω^)「……元気で」

('A`)「お前こそな」

ブーンはドクオに背を向けた。
友人は悪い人間ではないのだ。

悪いのは、ニートをしていた己で、母も、友も、誰も悪くない。
これ以上の苦痛を友人に与えぬためにも、ブーンは振りかえらなかった。

その日、ニートであったブーンは村を出た。
無職から、冒険者へとジョブチェンジを果たした瞬間とも言える。


190( ^ω^)ニートでいたかったようです :2013/09/13(金) 22:31:23.84 発信元:122.196.197.214
   
村を出てしばらくすると、雨が降ってきた。
部屋の中から眺めている雫と、村の外に落ちている雫は違うものなのではないかと思える。
外の雨は冷たく、恐ろしい。

しばらく歩いていると、生き物が草木をかきわける音がした。
雨音に紛れているはずの音は、空気抵抗を受けていないかのようにブーンに届く。

( ゚(エ)゚) ギシャー

( ゚ω゚)「ぎゃあああああ。出たああああああああ」

ブーンは腰にある物のことを忘れて走った。
走ることは嫌いでなかったことが幸いしたのか、なんとか魔物に追いつかれることはない。
しかし、引き離すこともできない。

必死に逃げて、這いずりまわって。
それでも魔物から逃れることは容易ではない。


( ;ω;)「どうして、こんなことに!」




そして、冒頭へと戻る。


一日目 終わり



( ^ω^)ブーン系小説シベリア図書館のようです★49
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/siberia/1377435720/



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