まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 ('A`)百物語、のようです おまじないのはなし












1名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:13:40 ID:adaBwzoE0



最初に言い出したのは、誰だっただろうか?


――今となっては、もうはっきりと思い出せない。
でも、確かに誰かがそれを言い出して、俺たちはこうして集まっている。





2名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:27:16 ID:adaBwzoE0


百物語。


蝋燭を百個用意して灯し、怖い話を一つするごとにその蝋燭を一つずつ消していく。
江戸時代にはもう既にあったとかいう、超定番の怪談スタイル。
――俺たちは、まさに百物語の真っ最中だった。


(    )「おっおー、次はダレが話すお?」

(    )「僕はパスだからな」

(    )「えーと、僕は……もう少し考えてからで」


新月の夜。
ミルナの爺さんの家を借りさせてもらって用意した、三つ続きの和室。
その一番奥の部屋には、百本の蝋燭を並べた馬鹿でっかい火鉢が用意してある。
しかし、俺達のいる手前の部屋。……明かりを落としたここは、同じ部屋にいる相手の顔が見えないほどに暗い。


川   )「じゃあ、私が話でもしようか」


部屋の中に横たわった闇を切り裂くように、凛とした声が響いた。
顔が見えなくても、その声を聞けば誰かすぐわかる。
この声は、クーのものだ。





3名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:28:24 ID:adaBwzoE0

……ブーンの野郎。人を呼ぶって言ってあちこちに連絡してたのは知っていたが、まさかクーまで呼んでるとは思わなかった。
年頃の男と女がこんなに暗い一室に一緒って、すげぇ問題があるんじゃないか?
しかも、クーは美人。間違いを起こすなという方が難しいぞ、これ。


(;'A`)「クー、お前。ここは野郎どもの巣窟だぞ」

川  - )「大丈夫だ問題ない。
     なぜならば、ここにはツンもいるからな。女は私だけじゃないぞ」

ξ;  )ξ「……あたし達、けっこう前からいたつもりなんだけど気づいてなかったの?!」


知らなったというのも癪なので、俺は手近にあった菓子にかじりつく。
暗くてよく見えなかったが、この硬さはきっとせんべいだ。
バリバリとそのまま噛み砕く。暗い中で食う菓子は、その美味さを半減させているような気がした。


( ゚д゚ )「俺は出迎えたから知っているが、これだけ人の出入りが多いと仕方がないな」

('A`)「ブーンのせいだぞ。一体、何人呼んだんだよ」


暗い闇の向こうから、「おー」という声が上がる。
この個性丸出しの声は、ブーンだな。





4名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:30:05 ID:adaBwzoE0


(    )ノ「お、おー? えっと、覚えてないお!!」


ブーンはいつも通りの、のんびりとした口調で声を上げた。
普段ならば、誰かしらブーンの声に笑いを上げるのだが、さすがに今日はそうというわけにはいかなかった。


(;    )「え、嘘。本当にわからないの?」

(;   )「おー。だって、たくさん人がいないと、100話なんてムリだと思って」

ξ;  )ξ「本当にアンタらしいというか、何と言うか……」


周囲を見回してみるが、暗い部屋の中では誰がいるのかどころか、何人いるのかさえわからない。
点呼でもとればはっきりするだろうが、実行するのは気が引けた。
せっかくの百物語なのだ。わざわざ、水を差す必要はない。


(;'A`)「……」


――嘘、だ。
本当は、そうじゃない。





5名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:31:32 ID:adaBwzoE0

もし、この中に得体のしれないナニカが紛れ込んでいたら……と、思うと、怖かったのだ。
百物語で、百の話を終えると、暗闇の中に何か恐ろしいものが現れる。
それは、百物語をしようとする奴なら誰もが知っている、言い伝えだ。

俺はもちろん、そんな言い伝えなんて信じていない。
信じていないのだが、部屋の中に漂う闇と空気は、言い伝えをそのまま信じ込ませてしまうような凄みがある。


(    )「まあまあ、別にいいと思うんだからな!」

(;    )「でも、人の家を借りてるわけだからマズイと思うよ」

(    )「おー…」


今はまだ、蝋燭を立てた火鉢のある部屋から、かすかに明かりが届いている。
その光のお陰で、辛うじて目の前にいるミルナの姿や、人影が見えている。
しかし、その明かりがなくなったら、どうなるのか……。


(;'A`)「……」


背筋を汗が伝っていく。
わけもなく心臓が早く動き出し、口の中が乾く。
指先で近くに置いたペットボトルを探り、口をつける。

……冷やしておいたはずのジュースは生温く、ただ気持ち悪かった。




6名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:34:19 ID:adaBwzoE0


川   )「盛り上がっている所悪いが、話を始めてもいいかな?」


――俺の思考を、現実に引き戻したのはクーだった。

彼女の声に、ざわざわと騒いでいたブーンやショボンの言葉が止まる。
それから少し時間が経つ頃には、辺りは完全に静かになった。
痛いくらいの沈黙の中で、クーは再び口を開いた。


川  - )「この場所で話すのにふさわしいかどうかはわからないが、せっかくの機会だ」


そう告げるクーの声には、迷いが感じられた。
俺の知っているクーはいつも、はっきりとした口調で理路整然と話す。
だからだろう、彼女の様子を珍しいと思ってしまった。


川  - )「私にはあれが何だったのか、わかっていない。
     単なる偶然だったのか、それとも何かの力が働いたのか……」


でも、自分の中で整理をつけるためにも話させてくれと、クーは告げる。
その言葉に、答えるものは誰もいなかった。
いや、誰も彼女の声を邪魔をしようとしなかった、と言い換えた方がいいか。




7名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:35:55 ID:adaBwzoE0


これから語られるのは、恐怖や怪しさに満ちた、不思議な話だ。

この場にいる誰もが、クーの話す声に耳をそばだてている。
彼女のやや低いけれど、よく通る美しい声が、どのような怪を語るのか。
ごくり、と息を呑んだのは俺か、それとも他の誰かか。



川 ゚ -゚)「これからするのは、おまじないのはなしだ」



蝋燭の光の具合か、闇が動きクーの姿が一瞬だけ、はっきりと見えた。
長い黒髪を背に垂らした、白いブラウス姿の女。
素直 クール。
俺たちがクーと呼ぶ彼女は、得体の知れないこの闇の中でもキレイだった。




――そして、暗い部屋の中で、クーは話しはじめる。






8名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:36:51 ID:adaBwzoE0




              ('A`)百物語、のようです

                                           
                おまじないのはなし


                      .,、
                     (i,)
                      |_|






9名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:37:31 ID:adaBwzoE0

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私には、少し年の離れた従姉妹がいる。



o川*゚ー゚)o



名前は、素直 キュート。
薄茶色のまっすぐな髪をした、かわいらしい女の子だ。
いつでもフワフワとしていて、いつか王子様と出会うんだなんて夢みたいなことを本気で信じているような子だった。


川 ゚ -゚)  o(^ー^*川o


キュートは私のことを、「クーお姉ちゃん」と呼んで、懐いていてな。
私はクーお姉ちゃんと呼ばれるたびに、少し恥ずかしくて、それ以上に誇らしい気持ちになった。





10名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:38:59 ID:adaBwzoE0

そんな彼女が、中学校に進学した。

言い方は悪いが、キュートには人にすぐ甘えたり、頼るところがあってな。
彼女の両親は、あの子が中学校に上がっても大丈夫なのかと、とても心配していた。


o川*゚ワ゚)o ~♪


――結論から言えば、キュートは中学校でもうまくやっていた様だった。

どうやら中学にも世話焼きな子がいたようで、その子があれやこれやと彼女の世話を焼いてくれたらしい。
持つべきものは、心の友というやつだな。

キュートが、中学に入学して一ヶ月。
彼女の学生生活は充実しているようだった。
友人も出来たし、部活にも入った。勉強は苦手だけれども、英語だけはちょっと得意。
ごわごわとした制服や、履きなれない革靴、鞄の重さにも大分慣れてきたのだそうだ。


o川*゚-゚)o「あのね、どーしよう。
       キューちゃんはどうやら、恋というものをしちゃったらしいのです」


――そんな彼女が私にそう打ち明けたのは、ちょうど五月の頭。
私が連休を使って、キュートの家に泊まりに来ていた時のことだった。




11名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:40:58 ID:adaBwzoE0

――キュートは恋をした、らしい。
正確には「恋をしちゃったらしい」ではなくて、「恋をした」のだったがな。

           ∧_∧
川 ゚ -゚)つ/⌒ (・ω・  )


川;゚ -゚)「……なん、だと」


猫じゃらしを片手に彼女の家の猫と戯れていた私にとって、それは衝撃的な言葉だった。
驚きのあまり言葉を失った私に向けて、キュートは雑誌に視線を向けながら告げた。


o川*゚-゚)o「キューちゃんは、気になる男の子ができてしまったのです」


何気ない風を装った言葉。
しかし、彼女の顔は真っ赤だったし、開いている雑誌のページも明らかに読んでないとわかる広告だ。
……キュートが緊張しているというのは、私でもすぐにわかったよ。


川 ゚ -゚)「ふむ」


緊張するほど真剣に言われてしまえば、私としても相談に乗らないわけにはいかない。
……それに、私も女だ。
恋話というやつには、それなりに興味がある。





12名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:41:49 ID:adaBwzoE0


川 ゚ -゚)「……恋とは、あの甘酸っぱかったりする恋のことだろうか」

o川*゚-゚)o「……うん、そう。それ」


念の為に問いかけた言葉に、キュートはそう答えると、近くにいた猫の体を引き寄せた。
さっきまで私と遊んでいた猫は不機嫌そうに暴れるが、キュートは慣れた様子でその体を捕まえる。


o川*゚-゚)o「キューちゃん、おかしくなっちゃったんだ。こうね、ずっと胸がぐるぐるしてるもん。
       ……くんのことを思うだけでね、キューちゃんがキューちゃんじゃなくなっちゃうみたいなの」

川 ゚ -゚)「そう、か」

o川///)o「ねぇ、クーお姉ちゃん。こういうのがきっと、恋なんだよね?」


猫をギュッと抱きしめながら言うキュートの顔は真っ赤でな。
――ああ。いいなぁと思ったのを覚えている。
キュートがこんなにも赤くなって、真剣に話すなんて、相手の男はどんな幸せものなんだろうと思ったよ。





13名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:43:07 ID:adaBwzoE0


川 ゚ -゚)「胸がぐるぐるか」

o川//./)o「うん、ばくばくのぐるぐる」


私はキュートの言葉を聞きながら、彼女の部屋を見渡す。


川 ゚ ー゚)「……そうか」


部屋の床や本棚には、ピンクやキラキラやハートが乱れ飛ぶ雑誌。
彼女が小学生の頃には、勧めてみてもあまり興味を示さなかったものだ。
ファッションやら恋愛やらを取り上げたその雑誌は、もう何度も読み返したのか線やシールがいっぱい貼ってある。
机の上には小物や、キラキラのペンや、漫画。そして、私の伯父さん――父親が買ったらしい分厚い辞書。
棚には、ぬいぐるみや、大きなゴテゴテしたビーズのおもちゃに混じって、リップクリームや鏡が置かれている。


川 - -)「キュートも、恋をする年か」


――ああ、この子も大きくなったんだなぁと、妙に切ない気持ちになったのを覚えている。




14名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:44:58 ID:adaBwzoE0


o川*゚ー゚)o「ネーノくんがね、好きなの」


キュートは、しばらく迷ったそぶりをしてから、そう告げた。
私は「ネーノくん」のことを知らなかったから、そうかとだけ答えた。
名前の後ろに「くん」をつけて呼ぶのだから、きっと同級生か年下の誰かなのだろう。
……中学に入ったばかりの彼女がまだ先輩後輩の区分がついていなければ話は別だが、キュートもそこまで失礼ではないだろう。


o川*^ー^)o「ネーノくんはね、いつもニコニコしてるんだけどね。
       猫とか犬とか見ると笑い方がね、こうふにゃーってなるの」


キュートは恋する彼について、語った。
彼女の話は具体性に欠けていて、キュートとの関係や、フルネーム、年といった肝心な話はなかなか出て来なかった。
だけど、彼女の話を聞いているだけで、なんとなく彼の人となりはわかるような気がした。


o川*゚ワ゚)o「すっごくやさしい目でね。
       キューちゃん、ネーノくんのあの目がねすっごく好きなんだー」


ネーノくんが好きな教科、テレビ番組、水泳部に入っていること。
よく語尾に「ねーの」とつける、おかしな口癖があること。
とっても面倒見が良くて、誰かが困ってるとさりげなく助けてくれること。
給食では牛乳を真っ先に飲むだとか、カレーの福神漬は嫌いみたいだとか、キュートは彼のことをとても嬉しそうに話した。





15名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:46:43 ID:adaBwzoE0


川 ゚ ー゚)「ふむ。ところで、さっきから言っているネーノというのが、彼の名前ということでいいのかな?
     ちなみに苗字は、なんというのかな?」

o川;゚д゚)oて「言ってなかった?!
        ええ、ウソ、どーして、もっと前に教えてくれなかったの、クーお姉ちゃん!」


私が笑い声を上げると、キュートは「しんじらんなーい」と声を上げた。
それがまた、心の底からそう思っているような声と表情で、それがなかなか愉快だったのを覚えている。
キュートはひとしきり騒ぎ立てた後で、彼のことを教えてくれたよ。


o川*゚ o゚)o「根野くんって言うの。
       根野 ネーノくん。ちょっと変わった名前でしょ」

川 ゚ -゚)「ネーノ少年と、キュートは同じクラスなのか?」

o川 ゚ワ゚)o「クーお姉ちゃんすごい! 何で分かったの!?」


キラキラとしたキュートの笑顔に、苦笑いを返す。
私が彼がクラスメイトだとわかったのは、キュートがネーノ少年の給食の時の様子まで話していたからだ。
それだけで、英雄のような扱いを受けてしまうのだから、困ったものだ。





16名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:48:00 ID:adaBwzoE0


川 ゚ -゚)「……なんとなくだ。
     それよりも、どうしてネーノ少年を好きに?」

o川///)o「それは……」


キュートは言葉を切り――私の顔を見上げた。
目の少し潤んだ、真っ赤な顔。
こんな表情で見つめられて、動揺しない人間はそうはいない。
思春期真っ盛りの青少年などイチコロじゃないかと思うのだが、現実はそういう風にはいかないらしい。


川 ゚ -゚)「……どうした、キュート?」

o川*゚ー゚)o「聞いてくれる? クーお姉ちゃん」

川*゚ -゚)「ああ、もちろんさ」


私の返答に、キュートは嬉しそうに笑った。
中学に入りいろいろと変わった彼女だけれども、その笑顔だけは小さな頃から何一つ変わらない。





17名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:49:39 ID:adaBwzoE0


o川*゚ー゚)o「あのね、あのね!」

川;゚ -゚)「ちゃんと聞くから、焦るな」

o川 ゚ー゚)o「キューちゃんね、この前ね、びっくりすることにネーノくんと二人っきりになっちゃったの。
       その話すれば、クーお姉ちゃんにもわかると思うから。だから、聞いて」


彼女は真っ赤な顔のまま、興奮した様子で話しはじめた。
そういうのは普通、私のような従姉妹じゃなくて、友人にでも話すものじゃないか?
――とは思ったが、私はおとなしく聞いていたよ。
なんだか、信用されているみたいで、私にはそれが無性にくすぐったかった。


o川*゚ー゚)o「この前のことなんだけどね……」


キュートは一度、瞳を閉じて深呼吸をする。
猫を抱く腕にぎゅっと力を入れると、再び目を開いた。


o川*゚ー゚)o「キューちゃんは……」



キュートが話し始めるのを、私はずっと聞いていた――、




18名も無きAAのようです [AAS] :2013/08/17(土) 00:50:23 ID:adaBwzoE0
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19名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:51:36 ID:adaBwzoE0


ざあざあと雨が降っていた、そうだ。
どうして傘を持って来なかったんだろう?
その時のキュートの頭をよぎったのは、そんなことばかりだったと言う。

早く止まないか。ここから傘をささずに走ったら、どれだけ濡れるだろうか。


o川;゚ー゚)o「……どうしよ」


友達は帰ってしまった。
誰かに傘に入れてくださいと頼もうにも、昇降口の周りには誰も人がいない。
キュートはため息を付いて、雨宿りをしていた。


(; `ー´)「わ、すげー雨じゃねーの!」

o川;゚ o ゚)o「わ」

( `ー´)「ん、素直?」


偶然というものはあるもので、その時、昇降口に現れたのは彼女の想い人だった。
キュート本人に言わせれば、「ウンメーだと思ったの」とのこと。
彼は少し前のキュートと同じように、空を見上げると小さくため息を付いた。





20名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:52:23 ID:adaBwzoE0


( `ー´)「素直は帰らないの?」


ネーノという少年は、気さくな人物なようだ。
普通、中学生となると女の子に話しかけるのはなかなかためらわれるものだが、彼の場合はそうでもなかった。
彼は帰るに帰れなくなったキュートに向けて、話しかけはじめた。


o川;゚-゚)o「……う、う」

( `―´)「ひょっとして、傘持ってない?」


想い人と二人っきりという状況と、彼に話しかけられたという衝撃に、キュートの頭は真っ白になったそうだ。
キュートは、人懐っこくて甘えん坊だ。
だけど、それは親しい人や友人に対してだけで、それ以外の相手には意外なほど恥ずかしがり屋だ。
人見知りの軽いもの、とでもいえばいいのかな。

……とにかくそんな性格だから、ネーノ少年を前にしたキュートはろくに話せなくなってしまった。


o川 ゚-゚)o )) コクリ

( `ワ´)「じゃあ、オレといっしょだ」


しかし、一方のネーノ少年はといえば、キュートの態度に気を悪くした様子は無い様だった。





21名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:53:32 ID:adaBwzoE0

雨は止む気配を見せない。
キュートとネーノは帰ることも出来ずに、昇降口に立ち尽くしていた。


o川*゚ー゚)o「……」

( `ー´)「……」


キュートは、ネーノの姿を見る。
この天気じゃ帰れないのはわかっているのに、ネーノはキュートの近くから動こうとはしない。

教室とか、どこか別の場所に行かないのかな?
キューちゃんと一緒じゃ、つまらないんじゃないかな?
――キュートはいろいろと考えたそうだが、ネーノはいつもと変わらない表情で外を見上げていた。


( `ー´)「あー、どうしたん?」

o川;゚ー゚)o ビクッ

( `ー´)「こっち見てるからどうしたのかなぁって思ったんじゃねーの」


キュートがネーノの姿を見ていることに気づいたのか、ネーノが声を上げる。
しかし、せっかく話しかけられたというのにキュートは、何も話せないままだった。





22名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:54:29 ID:adaBwzoE0


( `ー´)「あ、そんなに緊張しなくてもいいんじゃねーの?
      オレ、別に怒らないから、ゆっくり話しなよ」

o川;*゚ -゚)o「ぅ……キューちゃん、は……」


キュートはなんとか声を出しては見たものの、その言葉は途切れ途切れで要領を得なかった。
それでも、キュートはどうにかネーノと話そうとし……結局は、口を開いては閉じるを繰り返すだけ。
彼女の口から言葉は出なかった。


o川*;-゚)o「……っ、ぅ」


何かを話そうと焦るあまりに、かえって話すことができない――その時のキュートは、そんな状態だった。
キュートの顔は真っ赤になり、瞳に涙が滲む。
それを隠そうとして、キュートは下を向いてしまったものだから、二人の間の空気はかなり気まずくなってしまった。


( `ー´)「言えないなら言えないでもいいから、な?」


そんな状況だというのに、ネーノ少年の口から出たのはそんな言葉だった。
ネーノは雨に濡れる空を、地面を、校庭を眺めながら、ただキュートの言葉を待つようにそこにいた――そうだ。





23名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:55:24 ID:adaBwzoE0

どれだけ、二人はそのまま立っていたのだろう。
早くこの場から逃げたいのと、もう少しこのままでいたいという感情に挟まれて、キュートの心はいっぱいだった。


(; `ー´)「ひょっとしてオレってコワイ?」


そして、そのような時間が続いた末、
ネーノはふと、ふざけた調子で声を上げた。


o川;゚ー゚)o「ちが……ちがうっ!!」

(*`ー´)「よかったー。
       素直はさ、なんか妹みたいな感じがするから、嫌われてたらどうしようって思った」


ネーノの言葉に、キュートは慌てて声を上げる。
これまで喋ろうとしても無理だったのが嘘のように、キュートの口からははっきりと言葉が出る。
そして、一方のネーノはキュートの言葉に「すっごく嬉しそう」に笑った――そうだ。


o川;゚ー゚)o「いもうと?」

( `ー´)「素直って末っ子じゃねーの? なんかそんな雰囲気がする」





24名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:56:14 ID:adaBwzoE0

o川*゚-゚)o「……キューちゃんは一人っ子、です」

(; `へ´)「むっ、外れたんじゃね―の」


気づけばキュートはいつの間にか、自然と話せるようになっていた。
といっても、ネーノの質問にぽつりぽつりと応えるだけ。
キュートからは、なかなか話しかけることも出来ないし、ましてや自分から質問をするなんてもっての他だった。


( `ワ´)   o川*゚-゚)o


二人が交わしたのは、大したことのないごくありふれた会話。
そのやりとりはぎこちなかったし、会話の途切れている時間のほうが多いくらいだった。


( `~´)   o川*゚ー゚)o


それでも、キュートにとってその時間は特別で。
キュートの言葉を借りるのならば、――嬉しくって、胸がとっても暖かくって、それでも泣きたいくらいにぐるぐるする。


(*`ー´)"   o川*^ー^)o



――そんな、幸せな時間だったそうだ。





25名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:56:55 ID:adaBwzoE0


o川*゚ー゚)o「……あのね、」

( `ー´)「ん?」


だからなのだろう、キュートの口は自然とネーノに話しかけていた。
何を話そうと考えるよりもごく自然に、声は出て。


o川*゚ー゚)o「キューちゃんは、根野くんのこと」

( `ー´) ?



o川*^ー^)o「す」



そう、言いかけて、






26名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:58:25 ID:adaBwzoE0



――そして、唐突にキュートは我に返った。



o川;゚д゚)o「――っ!!!」


(; `ー´) ビクッ


困ったことに、我に返ってしまったのだ。
キューちゃん気づいたら、好きって言おうとしてたの――とは、キュート本人の言葉だが。
よりもよって肝心な部分で、キュートは自分が何を言い出そうとしていたのか気づいてしまった。


(; `ー´)「ええ、と? ……素直、大丈夫?」

o川;゚ー゚)o「うん、平気平気。キューちゃんちょーげんき! すごい元気!」

(; `―´)「そ、そうは見えないんじゃねーの」

o川;゚д゚)o「もう平気、へいきだから」





27名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 00:59:26 ID:adaBwzoE0


(; `―´)「なら、いいけど……」

o川;゚ー゚)o「うん」


キュートは慌てて会話を止めようとして、……ふと、考えを変えた。
二人っきりのこの状況は、きっと神様がくれたチャンスだ。
――そう思ったキュートは、ネーノに向けてそっと口を開く。


o川*゚-゚)o「……あのね、根野くん」

(; `ー´)「ん?」


キュートは、息を吸い呼吸を整える。
あれほど慌てていた心は、不思議と落ち着いていたそうだ。
キュートは何度か息を吸うと、決意を固める。


o川*゚ー゚)o「入学してすぐの時のことって、おぼえてる?」


――そして、彼女はネーノに向けて問いかけた。





28名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:03:43 ID:adaBwzoE0


( ;`ー´)「入学してすぐ?」


ネーノは、キュートの言葉に細い目を見開いたのだという。
しばらく考えた後、彼は小さく首を捻った。


o川*゚ー゚)o「そう。4月の、入学して2日か3日目くらいのことー」

( `ー´)「覚えてはいるけど……」


o川*゚-゚)o「……転んでた女子がいたの」


キュートの言葉に、ネーノはひねっていた首を下へと向ける。
彼は眉をひそめ真剣な表情を浮かべたが、ネーノの口からはなかなか言葉が出なかった。


(; `ー´)「えー、っと」

o川*゚ー゚)o「キューちゃん、革靴になれてないから転んじゃったの。
       でもってね、すっごく恥ずかしくて、足が痛くて、キューちゃん立てなくて」


『それを助けてくれたのが、ネーノくんだったの。』


――と、キュートは言った。






29名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:04:53 ID:adaBwzoE0

-----------------------------------


キュートは、ネーノに助けてもらった時のことを、熱心に話してくれたよ。


o川*- -)o「あの日、ネーノくんは、キューちゃんを起こしてくれて。
       ぽんぽんって砂とかはらってくれて。それから、カバンを拾ってくれたの」

o川*゚ー゚)o「キューちゃん、足をケガしちゃったんだけど。
       ネーノくんが水道に連れてってくれて、ケガしたところをキレイにしてくれたの。
       キューちゃん泣いちゃったんだけど、ネーノくんはキューちゃんの手を引いてね、保健室に連れてってくれたんだー」

o川*゚д゚)o「それでね、最後にね。
       もう大丈夫だからって、キューちゃんの頭を撫でてくれたの。」


――私は頷きながらそれを聞き、最後に大きく頷いた。

どうやらこれが、私の「どうしてネーノ少年を好きに?」と、いう問いの答えなのだろう。
ありがちなのかもしれないが、甘えん坊のキュートらしい実に可愛らしいきっかけだ。


川 ゚ -゚)「いい話じゃないか」





30名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:06:27 ID:adaBwzoE0


o川*゚ー゚)o「でも、キューちゃんはね、なんなのこいつーって思ったの」


訂正。可愛らしいというのは、私の贔屓目だったらしい。
まぁ、キュートだって普通の女の子だ。そう思うことだってあるだろう。


川 ゚ -゚)「恩人にひどい言い草だな」

o川;゚ー゚)o「だって、キューちゃんの知ってる男の子はそんなことなんてしないんだもん」


キュートは弁解する様に、両手を振った。
私の視線を避けるように、斜め横を見やりながらキュートはぼそぼそと話をする。


o川;゚ぺ)o「だって、男子ってバカだし、うるさいしー。すぐふざけるし。
       宿題やってこなかったり、汗臭くて汚いんだよー」

川 ゚ -゚)「気持ちはわからなくもないが、ネーノ少年だってその条件に該当するのではないか」

o川*゚д゚)o「ちがうもーん。ネーノくんはかっこいいんですぅー」


なんとも、年頃の少女らしいことじゃないか。
恋は盲目とはいうが、ここまで言い切られてしまうとなんとも微笑ましい。
その時の私はつい笑ってしまって、キュートに怒られたのを覚えている。





31名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:07:16 ID:adaBwzoE0


o川#゚ぺ)o「もー、ネーノくんはかっこいいのにぃ」

川 ゚ -゚)「そうか、ネーノ少年はかっこいいのか」

o川*゚ー゚)o「うんっ!」


えへへと声を上げて、キュートは笑う。赤く染まった頬は、まるでりんごのようだ。


o川;゚ー゚)o「で、でも好きになっちゃだめだよ!
       ネーノくんはキューちゃんのなんだからぁっ!」

川 ゚ -゚)「はいはい。わかったわかった。
     ネーノ少年を取る気はないから安心しろ」


私がそう言うと、眉をひそめ泣きそうになっていたキュートはほっと息を吐いた。
キュートはよく表情が変わる。常々表情が変わらないといわれる私には、まるで正反対だ。


川 ゚ -゚)「それで、肝心の彼の反応はどうだったんだ?」

o川;゚ー゚)o「むーぅ、それなんだけどぉ……」


キュートはしばし、口ごもる。
私が話を促すとしばらく黙った末に、ようやく続きを話し始めた。





32名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:08:06 ID:adaBwzoE0

-----------------------------------


(; `ー´)「それ、オレ?」

o川 ゚ペ)o「むー、覚えてないの?」


キュートには衝撃的だった、ネーノとの出会い。
しかし、ネーノは驚くことにそれをまったく覚えていなかった。


(; `ー´)「転んで……転……うーん、保健室に誰かを連れてったような気は……する。
      でも、あれ素直だった?」

o川;゚ペ)o「そうだよ! もう大丈夫なんじゃねーの、って言った」

(; `~´)「うわっ、確かにそれオレ言いそうじゃねーの」


ネーノ少年はしばらく口をモゴモゴさせた後に、大きく息を吐いた。
参ったと困ったを半分ずつ混ぜあわせたような表情だったと、キュートは語る。
そして、ネーノ少年はその表情のまま、笑ってみせた。
くしゃっとくずれた、キュートの好きな表情。キュートはその瞬間、息が止まるかと思ったのだという。


(; `ー´)「えーと、怪我はもう平気?」





33名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:08:59 ID:adaBwzoE0

ネーノの言葉は、かなり今さらだった。
ずっと同じ教室ですごしてきたキュートを相手に、ネーノは真面目くさった様子で問いかける。
その間抜けだけれども真剣な表情に、ドキドキしていたキュートは思わず笑い出してしまう。


o川*^ー^)o「それなら、もう平気だよぉ~」

(; `ー´)「それなら、よかったんじゃねーの。
      あ、オレ。素直にすごく失礼なこととか言ってなかった?」

o川*^ー^)o「ううん、ダイジョーブ」


ネーノは、ホッとした様子で息をつく。
その口元には笑みが戻ってきていて、それを見たキュートは「ネーノくんのこと好きだなぁ」、って――改めて思ったのだそうだ。
だから、キュートは好きとは言えなかった代わりに告げた。


o川*゚ー゚)o「あの時ね、根野くんが助けてくれてすごくうれしかったの。
       根野くんがいなかったら、キューちゃんは多分ずっとあそこで泣いてたと思うから」

( `ー´)「……」

o川*^ワ^)o「ありがとう」

(*`ー´)「――どういたしまして、じゃねーの」





34名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:11:00 ID:adaBwzoE0

雨は止む気配を見せない。
雨は弱まるどころか、むしろ強くなるばかりだ。


( `ー´)「よしっ」

o川*゚ー゚)o「……?」


空を見上げていたネーノはやがて、小さく息を呟いた。
出口から背を向けると、教室へと続く廊下に向けて小走りに進みはじめる。


o川*゚-゚)o「……帰っちゃうの?」

(; `ー´)「いや、そうじゃなくて――あ、やば」


慌てたのか、動いた拍子にネーノの袖のボタンが、下駄箱の金具に引っかかった。
ネーノは顔を赤くして、焦りの声を上げながら腕を引っ張るが、なかなか上手くいかない。


(#`ー´)「ちっくしょー、外れないんじゃねーの」


何度も腕を引っ張り、それで何とか引っかかっていた袖は外れる。
しかし、その拍子に制服の袖を飾っていてたボタンが取れてしまった。





35名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:13:00 ID:adaBwzoE0

――カツンと、音をたててボタンが落ちる。
ネーノはそれに、一瞬だけ「ヤバイ」という顔をしたが拾おうとはせずに、そのまま廊下へ向かって走りだした。


(; `Д´)「素直ーっ、ちょっとそこで待っててー!!!」

o川;゚ー゚)o「え、……うん」


ネーノはそのまま、キュートをおいて走り去っていく。
彼の有無を言わさぬその行動に、キュートはしばらく呆然としていたが、やがて我に返る。
キュートは慌てて落ちたボタンを拾おうとしたが、その時にはもうボタンは見えなくなっていた。


o川;゚ー゚)o「あ、あった」


しばらく探した末、キュートは靴箱の下に入り込んでしまっているボタンを見つけた。
しかし、彼女の手では届きそうにない。試行錯誤してみたけれども、どうしても届かなくてキュートは途方にくれた。
どうやって取ろうと彼女が頭を悩ませていると、大きな足音が聞こえてきた。
……誰だろうと顔を上げると、それはさっき走り去っていったネーノの姿だった。


( `ー´)「これ職員室のやつ。明日、先生に返せばいいから」

o川;゚ー゚)o「え、え?」


戻って来たネーノは、開口一番そう言った。





36名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:14:51 ID:adaBwzoE0

ネーノの手には透明なビニールのそっけない傘が一本。
それをキュートに向けて差し出すと、ネーノはいたずらっ子のように笑った。


(*`ー´)「傘、これで帰ればいいから」

o川;゚ー゚)o「え、でも。これ一本しかない」

(*`ー´)「いいのいいの!」


いいことをしているというのに、彼に鼻にかけないような態度はない。
むしろ心底嬉しそうに、ネーノは笑っていたそうだ。
その姿は、キュートが転んで泣いていた時とまったく同じ姿だった。


( `ワ´)「じゃあな!」


キュートの返事も聞かないままに傘を押し付けると、ネーノは雨の中に踊り出た。
降りしきる雨が、少年のまだ真新しい制服を濡らしていく。
それを気にする様子もなく、少年は鞄を頭の上にかかげ雨の中を走り去っていく。

最後に一度ふりかえると、ネーノは大きく手を降った。





37名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:15:55 ID:adaBwzoE0


少年の姿が、遠くへと消えていく。
校門をくぐり、道路へ飛び出し、その先へ――。


o川;゚ー゚)o「……行っちゃった」


そして、ネーノ少年の姿は完全に雨の中に消えた。
どれだけ目を凝らしても、少年の姿はもう、見えない。


o川*゚-゚)o「……かさ、一本しかなかった」


雨は強い。ネーノはちゃんと家に帰れるのだろうか……
キュートはネーノの去った後を、眺め続けていた。
ずっと、見つめ続けていた。



――雨はまだ、ざぁざぁと降り続けている。





38名も無きAAのようです [AAS] :2013/08/17(土) 01:16:40 ID:adaBwzoE0

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39名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:18:06 ID:adaBwzoE0

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o川///)o「キューちゃんの話ここまで! はずかしいからもうオシマイ!」

川 ゚ -゚)「照れるな照れるな。いい話だったじゃないか」

o川/~/)o「ぅぅ、汗べたべただよぉぉ」


キュートはひと通り話し終えると、両手でパタパタと風をおこしながら、「うぅ」と声を上げた。
真っ赤な顔のまま辺りを気まずそうに見渡すと、彼女は視線を雑誌へと向ける。


o川*゚~゚)o「もー、カラマロスじゃまー!
       キューちゃん、これ読んでるんだからどいてー!!!」

川 ゚ -゚).。oO(どうみても、読んでなかっただろう)


嫌がる猫を無理やり捕まえて抱いていたのはキュートなのに、随分と身勝手な話ではある。
まぁ、気づいていたとしても相手は猫だ。キュートのやることは何も変わらなかっただろうがな。


(# ・ω・) フゥゥゥ

o川#゚ー゚)o ムキー





40名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 01:19:02 ID:adaBwzoE0


川 ゚ -゚)「まあ、いいじゃないか。
     大佐だって、私やキュートの相手で疲れたのだろう」

o川*゚ー゚)o「タイサって誰?」


川 ゚ -゚)σ(  ・ω・) ニャー


私はキュートがさっきからぞんざいに扱っていた、猫を指さしてやった。
ちょっと太めの猫は、怒っていたのが嘘のように毛づくろいを始めている。


o川*゚ぺ)o「キューちゃんのカラマロスに変な名前つけないでー」

川*゚ -゚)「では間をとって、佐々木カラマロス大佐というのはどうだろう?」

o川;>д<)o「佐々木さんってダレー!!!」

川*゚ -゚)「はっはっはー」


そこから先は、恋愛の話は特にしなかったな。
くだらない話をしあって、私の5月の連休は終わった。





45名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:08:32 ID:adaBwzoE0

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川  - )「――と、まぁ。ここまでがいわゆる前置きというやつだな」


べたりとした蒸し暑い空気が横たわる暗い空間。
その中で、クーの声だけが凛と響き渡る。


('A`)「随分と長い、前置きだったな」

ξ ⊿ )ξ「いいじゃない。甘酸っぱくって、こういうの好きだわ」

(    )「甘ったるくて、僕はあまり好きじゃないからな」


部屋の中の空気が少しだけ緩み、口々に誰かが話し始める。
途中で聞こえた女の声は――、きっとツンだな。





46名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:09:23 ID:adaBwzoE0


(    )「つらいお~、リアルが充実してるお~」

(    )「まあまあ、ブーンも落ち着いて」


微笑ましい恋愛にはろくに縁がなかったらしいブーンが嘆く。
わかる。わかるぞ、ブーン。その言葉には一言一句同意する。
畜生、カップルなんてすべて爆発すればいいんだ。


( ゚д゚ )「……おまじないの話が出てこないようだが」

川  - )「それについては、これから話す」

ξ ⊿ )ξ「なんか、あまり先が聞きたくないような気がするけど……仕方ないわよね。
      続きを聞かせてくれる、クー?」

川  - )「ああ」


少し間が空き、液体を傾ける音が響いた。
おそらく飲み物で口を湿らせているのだろう。
暗闇の中で聞く水の音とかすかな吐息はなんだか妙に淫らな気がして、俺はごくりと息を呑んだ。


川  - )「失礼した。では、続きを話そうか……」





47名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:11:15 ID:adaBwzoE0

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――そんなほほえましいやり取りもあったそうだが、二人の仲は一向に進まなかった。



私はちょくちょくキュートと連絡を取り合っていたつもりだが、ネーノ少年に関する話はそれから一切聞かなかった。
彼女の恋愛――おそらくは初恋に関する顛末に、私は興味があったから、はっきりと覚えている。
キュートはネーノとの話を、私にしようとはしなかった。
いや違うな。誰にも話そうとはしなかった。


私は何が起こっていたのか、一切知らなかった。



……だから、ここから話すのは全て、後になって聞いた話だ。






48名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:12:30 ID:adaBwzoE0


あの雨の日以来、キュートはろくにネーノに話しかけることが出来なかった……そうだ。
教室で目があうことが合っても、それっきり。


o川*゚ー゚)o「……」

( `ー´)「…?」

o川;゚ー゚)o「……」


彼女自身は何度か話そうとしたのだそうだが、彼の顔を見るのが精一杯で、どうしても上手く行かなかった。
ネーノは男子だったから教室の中では話しかけづらかったし、面倒見のいい彼の周りはいつでも誰かがいた。
それに、彼女は例の人見知りもどきがあったから、たとえネーノが一人だとしてもなかなか話すことが出来なかった。


( `―´)「……」

(#;;;゚∀゚)「よぉーぅ! ネーノちゃんどうした?
      オレ? オレは、ちょー元気ってやつ! すげーだろ!」

(; `ー´)「え、ああ。よかったんじゃねーの」

( ´_ゝ`)「お前はいつも大袈裟なんだよ」


(#;;;゚∀゚)「オオゲサ? ナニソレ、食えんの?」





49名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:14:27 ID:adaBwzoE0


――結局、ネーノと会話らしい会話を交わしたのは、あの雨の日が最後だった。


o川*゚-゚)o フゥ


ネーノ少年の姿をじっと眺めるだけの日々が、それからしばらく続いたそうだ。

なんだかんだ言いながら、友だちの宿題を手伝いをする姿。
ぼんやりとプールを眺めている姿。
たまたま近くを通りかかったら、ノートに味噌汁、ご飯、サンマの塩焼き、肉じゃがなんてメモがしてあったとか。


(*`ー´)


ネーノの姿を見て、新しい発見をしたり、好きだなぁって思ったり、溜息をついたり。
そんな日々がずっと続いていた。
だけど、眺めているだけなのは寂しくて、またあの雨の日のように話したくて。


――要はキュートは、焦ってしまったのだ。
ネーノ少年との距離が近づいたと思えば、また話せなくなってしまって。
このまま一緒に話したことも忘れ去られてしまったらと思うと、居ても立っても居られなくなってしまった。
しかし、キュートにはネーノと話す勇気がない。





50名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:16:19 ID:adaBwzoE0




だから、なのだろう――。



从 ゚ー゚V「ねぇ、すっごくよく効くおまじないがあるんだって」

人il.゚ ヮ゚ノ人「うそー」

从 ゚ー゚V「ほんとだって、効きすぎてヤバイんだって」

人il.゚ ヮ゚ノ人「みる、みるー」



o川*゚ー゚)o「……おまじない」



――彼女は、恋のおまじないなんてものに頼ることにしたのだ。





51名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:18:09 ID:adaBwzoE0


超自然的な不思議な力にあこがれるというのは、よくあることだろう。
子供はお化けのでる話が大好きだし、ホラーやオカルトなんてものは巷に溢れかえっている。
中学生といえば、もっとも多感な時期だ。怪しげな話に傾倒したって何の不思議もない。

こういうのを、厨二病とでもいうのか?
……違う? ああ、そうか。すまない。私の勘違いだった、忘れてくれ。
――とにかく、おまじないという言葉に惹かれた彼女は、噂をしていた二人組に話しかけた。


o川*゚ー゚)o「ねーねー、そのおまじない教えてー」


从 ゚ー゚V「おまじない? 知りたいの?」

人il.゚ ヮ゚ノ人「じゃあ、教えてあげるー」


彼女たちはおまじないについて、快く教えてくれたそうだ。





52名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:19:07 ID:adaBwzoE0


家に帰ると、キュートはさっそく父親のパソコンの電源を入れた。

起動するまでしばらく待ち、キーボードで学校で教えてもらった通りに文字を打ち込んでいく。
そして、表示されたホームページの群れの中から、キュートは目的のページを見つけ出した。


o川*゚ー゚)o「あった」


白い背景のこれ以上無いくらいそっけない、ホームページ。
隅にsadako.Yと小さく書かれている他は、サイトについての情報は何もない。
飾り付けも何もないページには、おまじないの種類とその方法だけが無数にあげられていた。





53名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:23:27 ID:adaBwzoE0


o川;゚ー゚)o「……すごい、いっぱい」


富を手にするためのおまじない、不運に見舞われた時のためのおまじない、幸運を呼び込むおまじない。
恋敵をなくすためのおまじない――なんてものもあった。


o川*゚ワ゚)o「あ、あった」


そして、キュートは並んだおまじないの中からそれを見つけ出した。


『彼を自分のものにするおまじない』


キュートはごくりと息を呑むと、マウスを動かしクリックする。
ほとんど待つこともなく、画面はおまじないの詳細を記述したページに切り替わる。
必要なもの。手順。注意しなければいけないこと。


o川*゚ー゚)o「……」


キュートは画面を真剣に見つめた。
必要な材料を集めるのは、とても大変そうだ。
しかし、それさえ用意できれば、あとは自分でも何とかできそうだとキュートは判断した。





54名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:25:13 ID:adaBwzoE0


┌───────────────────────────────────────────────────────┐
│                                                                                │
│   彼を貴女のものにするおまじない                                                          │
│    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                                                             │
│                                                                                │
│彼の髪。もしくは、彼が毎日身に着けているものを準備してください。                                        │
│髪のほうが効果が高いです。片方だけでも構いませんが、両方用意できればより効果は高まります。                    │
│                                                                                │
│白い紙に、想い人の名前を書いてください。                                                         │
│                                                                                │
│手縫いで人形(マスコットのようなものでかまいません)を作ります。                                          │
│人形の中には、事前に用意しておいた白い紙と、彼の髪。もしくは彼の身に着けているものを、忘れずに入れてください。..       │
│                                                                                │
│人形が完成したら、彼の名前を唱えましょう。これで人形が、彼と貴女をつないでくれます。                              │
│                                                                                │
│これらの手順は絶対に人に見られたり、話したりしてはいけません。                                           │
│          ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~                                             │
│肌身離さず人形を持ち歩きましょう。誰にも見つかったり話したりしないまま1ヶ月持ち続けていられれば、彼は貴女のものです。..    │
│                                                                                │
│                                                                                │
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55名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:28:04 ID:adaBwzoE0

彼女はおまじないを試してみることにした。


ネーノの髪を手に入れることは大変だったから、キュートは彼の身に着けているものを手に入れることにした。

最初に思いついたのは、あの雨の日ネーノが落とした制服のボタン。
拾いそびれたまま放置されていたそれは、まだ昇降口の片隅に落ちていた。


o川*゚ー゚)o「あったー!」


キュートは靴箱の下にボタンを見つけると、教室から長いものさしを持ち出した。
そして、床に這いつくばり体を汚しながらも、なんとかそれを手に入れた。


o川*゚д゚)o「やった」


他の道具の準備も順調に終え、家に帰ったらおまじないをしようと決心したその日。
キュートは思わぬ幸運に恵まれた。


o川;゚ー゚)o「あー、もー。どうしてやっちゃったかなぁ」


キュートはその日、忘れ物をして一人教室に戻った。
大学ではもう違うが、学校には必ず体育の授業があるだろう?
キュートの学校では男子は教室で、女子は空き教室で着替えるんだ。





56名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:31:27 ID:adaBwzoE0

それはちょうど体育の授業中だった。


だから、誰も居ない教室の中には男子が残した制服やらタオルやらが置き去りにされていた。
もちろん、そこにはネーノの制服だってある。


o川*゚-゚)o「……」


教室には誰もいない。
授業中だから、廊下を歩いている者だっていない。

キュートが何をしたかは、もう考えるまでもないだろう?


o川 - )o「……」


ネーノ少年の机に近づき、制服の上着を調べる。
制服を広げるまでもなく、目的のものはあっさりとみつかったよ。


髪の毛。
制服の上着に残されていた、彼の髪の毛だ。
手に入れるのは不可能だと思われたそれは、拍子抜けするほどにあっさりと彼女の手に入った。





57名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:34:13 ID:adaBwzoE0

そこから先は、簡単だった。

彼女はおまじないの手順通りに、すべての準備を完了させたよ。
人形を作るのだけは大変だったそうだが、それでもなんとかキュートは人形を完成させた。


o川;゚ワ゚)o「できたっ!」


ネーノに似せた、マスコット人形。
その体の中には白い綿と、おまじないのために必要な道具たちが詰め込まれている。
縫い目がところどころ荒い不恰好な作りだったが、それなりに上手く出来たらしい。
ややつり上がった細い目と、にこにこした口元は彼にとても似ていたそうだ。


o川*- -)o「根野 ネーノくんと、両思いになれますように」


そして、彼女は彼の名前を唱え、お祈りをした。
両思いになれますようにと、彼女は心の底から真剣にお願いした。


o川*^ー^)o「ネーノくん、だいすき」


そして、作った人形を誰にも見つからないように彼女は持ち歩きづつけた。


o川*゚ー゚)o「叶うといいなぁ、おまじない」





58名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:35:07 ID:adaBwzoE0

――おまじないの効果は、それからすぐに現れた。


o川#゚~゚)o「ぶーぶー、なんでキューちゃんが買い物しなきゃいけないのー」

o川#゚ぺ)o「キューちゃんガッコーでつかれてるんだから、ママが行けばいーのにー」


その日、キュートは伯母さん――母親に言われて、スーパーにお使いに出ていた。
買い物くらい文句を言わず行ってやればいいだろうとは思うのだが、まあ彼女はまだ中学生だ。
仕方がないといえば、仕方がないのだろう。

ともかく、文句を言いながらも出かけた先で、キュートは出会った。


誰にだって?
そんなこと言うまでもないだろう。
――彼にだよ。


( `ー´)「――牛乳と、卵と」


キュートの想い人。クラスの人気者。優しくて面倒見のいいネーノくん。
彼がどういうわけか、カートをひいて買い物に勤しんでいた。





59名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:36:25 ID:adaBwzoE0


( `ー´)「あれ、素直?」

o川;゚ー゚)o !

(*`ー´)「素直も、買い物?」


彼はキュートに気づくなり、笑いかけた。
まるであの雨の日の続きのように。しばらく話していないことなど嘘のように、彼は自然とキュートに話しかけてきた。


o川;゚ー゚)o「そ、そうだけど。なんで……」

(*`ー´)「ああ、オレ? 今日は、夕飯買いに。
      カーチャン遅いから、チビたちに飯食わせてやんなきゃいけないんじゃねーの」


彼のカートを見れば、卵や牛乳やひき肉、玉ねぎなどが入れられている。
それが出来合いの食事じゃなくて、料理の材料だというのは、普段手伝いをしないキュートでもわかった。


o川;゚ー゚)o「ご飯作るの?」

(; `ー´)「え、あ……簡単なやつだけ。
      惣菜ばっかだと、弟食べないし。オレも飽きるから」





60名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:37:37 ID:adaBwzoE0

頭を掻きながら、ネーノは肩をすくめる。
見慣れた制服ではなくて、薄緑のシャツという私服姿が新鮮で、キュートの胸はどきりとする。
制服じゃないネーノくんもかっこいいなぁ、とキュートはネーノの姿に見とれていた。


o川*゚ー゚)o「すごいなぁ、キューちゃんなんか自分のことだけでいっぱいなのに。
       ネーノくんは人のことまで、考えられるんだもん」


――はっきりと言おう。キュートは完全に浮かれていた。
だからと言うべきか、やはりというべきか……彼女の思考はしっかりと回らなくなっていた。

彼女は自分でははっきりと意識しないまま、普段は絶対に言わないようなことを口にしていた。


o川*^ワ^)o「ネーノくんのそういうとこ、……好きだなぁ」

(///~/)「――っ」


ネーノの顔が固まり、一瞬にして真っ赤に染まる。
キュートはその顔を見てはじめて、自分が何か妙なことを口走ったのだと気づいた。
しかし、浮かれきっていた彼女は自分が何を言っていたのかすら、わかってはいなかった。


(; `ー´)「……す、素直って、たまにすごいこと言うんじゃねーの。びっくりしたー」





61名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:39:23 ID:adaBwzoE0


o川;゚ー゚)o「えー、何? キューちゃん変なこと言った?!」


ようやく平静をとりもどしたネーノの顔色を見て、首をひねりながらしばらく考えて。
やがて、キュートは自分が何をやらかしたのか気づく。


o川///)o「……ぁ」


キュートの顔は恥ずかしさで真っ赤に染まる。
恥ずかしさと混乱で吹き出す汗を拭いながら、キュートは慌てながらも声を上げる。


o川;゚д゚)o「根野くんのこと、名前で呼んじゃってた、ごめんねっ。
       き、キューちゃんついうっかり」


その次の瞬間、それこそネーノは弾けるように笑い出した。
……何故かは言わなくてもわかるよな。
この場合、名前呼びかどうかは正直どうでも良かったということだ。


(つ゚`ー´)「いや、そっちはいいんだけど」


ネーノは笑いすぎて滲んだ涙を、手で拭いながら言った。
しばらく彼の口からは笑いが漏れていたが、ネーノはそれをなんとか抑える。





62名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:40:21 ID:adaBwzoE0


( `ー´)「オレも、素直のそういうところは好きだよ」


――そして、彼は真面目くさった様子で告げた。
場所はスーパー。手に持っているのは、カートに買い物カゴという、ロマンの欠片もない姿。
しかし、そんなネーノの姿もキュートにとっては、白馬に乗りバラを手にした王子様にも見えた。


o川///)o「ふぅぇ? わっ?」

(*`ー´)「へへへ。お返しじゃねーの」


真っ赤になって立ちすくむキュートの横を、ネーノは早足で進んでいく。
カラカラとカートは床を滑り、ネーノは客の間をすり抜けて、遠く離れていく。


(*`ー´)「じゃあな、キュート。また明日、学校でー」

o川;゚ワ゚)o「じゃ、じゃーね! ね、ね」

o川//o/)o「ね、……ネーノくん」


ネーノに向けて、キュートは精一杯の勇気を振りしきって声を上げる。
その声がちゃんと彼のもとに届いたのかはわからない。
でも、最後に振り返ったネーノの顔も赤くなっているような気がして、それだけでキュートの胸はいっぱいになった。





63名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:44:56 ID:adaBwzoE0


o川*゚ー゚)o「……すごい」


買い物を済ませて家に帰ったキュートは、興奮のまっただ中にいた。
おまじないを試してたったの一日、それだけでネーノとこんなに話せてしまった。
それに、ネーノは「キュート」と、名前まで呼んでくれた。


o川*>ワ<)o「おまじない効果あったよ、やったぁっ!」


それが嬉しくて、その夜は遅くまで眠れなかった。
ベットに飛び込み、スーパーでのやり取りを何度も思い返して、忘れないようにノートに書いて。
そのノートを見返すだけで、幸せになって、自然と笑いがこみ上げてきた――、そうだ。


o川*゚ー゚)o「ネーノくん、かっこよかったなぁ。きょーだいいるんだ」


私服姿、料理ができること、兄弟がいること――いろんなことが知れて、とっても幸せで。
このおまじないは本当に聞くんだと、キュートは嬉しくなった。


o川///)o「いっぱい、話しちゃった」


願いが叶うまでに必要な期間は、1ヶ月。
早く1ヶ月が過ぎて、ネーノくんと両思いなりますようにとキュートは願った。




64名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:46:47 ID:adaBwzoE0


――それからの1ヶ月は、キュートにとっては長い、長いものだった。


早く願いが叶う日がくればいいのに、というキュートの思いとは裏腹に毎日はとてもゆっくりと過ぎた。
しかし、それは悪いことばかりではかなった。
体育大会や、テストという行事も会ったし、新しい友だちも増えた。
しかし、それ以上に――、


( `ー´)「素直、ちょっとちょっとー」

o川*゚-゚)o「……どうしたの、根野くん?」

(; `ー´)「裁縫道具とか持ってない?」


ネーノ少年と話せる機会が、少しだけ増えた。
あの雨の日や、スーパーの時みたいにとはいかないけれど、ネーノはキュートにちょくちょくと話しかけてくれるようになったそうだ。


o川*゚ワ゚)o「今日も、ちょっとだけだけどお話できた」


おまじないの人形のおかげで、ネーノとの距離が近づいている。
キュートはそれを私や友人に言いふらしたい気持ちでいっぱいだった。
だけど、おまじないでは人に話すことは禁じられていたから、キュートはぐっと我慢した。

おなじないの人形を誰にも見つからないように、大切に持ち歩きキュートは毎日を過ごした。





65名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:47:55 ID:adaBwzoE0



――そして、1ヶ月がたった。



キュートがおまじないをはじめてから、ちょうど1ヶ月。
彼女はホームページにあった方法を守り続けた。

キュートの作ったおまじないの人形は誰にも見つからないまま、ついにおまじないの叶う日を迎えた。






66名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:52:01 ID:adaBwzoE0


……しかし、現実というやつはそううまく行かないものだな。
おまじないがようやく叶うという、1ヶ月目の、その日。
たまたま、外出していたキュートは見てしまった。


( *・-) `ー´)


それは、楽しそうに通りを歩く彼と――キュートの知らない女の子の姿だった。


( `ー´)「    ?」

( ・-・ )「……」

(; `ー´)て「     !」

( ・-・ ) ?


その女の子は、星の形の髪飾りをつけた、おとなしそうな子だった。
表情のあまりない彼女の口元にはかすかに笑みが浮かんでいて、それがとてもかわいらしかったそうだ。
ネーノのほうが一方的に話して、女の子はじっとネーノを姿を見つめる。
会話はほとんどなかったけれども、それでも二人は楽しそうだった――と、後にキュートは語った。





67名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:53:50 ID:adaBwzoE0


o川*゚-゚)o「……」


その時、キュートは頭が真っ白になったのだという。
自分の見たものが信じられなくて。
でも、見なかったことにしようとしても、頭のなかから二人の姿は消えてくれない。

「どうして」という気持ちと、
「やっぱり」という気持ちが混ざり合って、キュートは自分が立っているのかどうかもわからなくなった。


( *・-) `ー´)


二人は仲良く話しながら、去っていく。
キュートがそこにいることには、気づかない。
しかし、もし彼らが仮に気づいたとしても、キュートには何て話せばいいのかなんてわからない。

付き合っているの、と聞けばいいのだろうか?
おめでとう、とでもいえばいいのだろうか?
彼女がいるなら言え、と怒鳴ればいいのだろうか?

少し話せるようにはなったとはいえ、ネーノにろくに話しかけることすら出来ないキュートに、そんなことできるはずがない。


o川 - )o「……」





69名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:54:53 ID:adaBwzoE0


話しかけることが出来ないから、キュートはおまじないに頼った。
絶対に叶うと信じていたわけじゃない。

――だけど、こんなのはあんまりだ。
よりにもよって、効果が出るというこの日に、こんな光景を見せつけなくてもいいじゃないか。


o川 - )o「……どうして」


泣き出しそうになるのを、大声を上げそうにあげそうになるのを何とかこらえて、キュートは家まで帰り着いた。
部屋に入り、鞄からおなじないの人形を取り出す。
三ヶ月の間、大切にしてきた人形はいつもと何も変わらない様子でそこにあった。


o川#゚-゚)o「こんな、おまじないなんてっ!」


キュートは、ずっと大切にしてきたおまじないの人形の腕を掴みあげた。
ネーノに似せようと懸命に作った顔、それを見ているだけでどうしても憎らしくなって、

キュートは手にした人形を、


机に、


叩きつけ――





70名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:56:09 ID:adaBwzoE0


――ようとして、踏みとどまった。


この人形は一生懸命作り上げた、キュートとネーノをつなぐ絆だ。
だから、想いが叶わないとしても、それを自分の手で壊すなんてしたくないと思ったんだろうな。


:: o川 - )o ::「……みたい」


人形の腕を掴んだまま、振り下ろすことも出来ずに、キュートは震えた。
腕がぐにゃりと曲がり人形の体がぷらりと垂れるが、その時のキュートは気にもとめなかった。


o川*;-;)o「ばかみたい」


涙で瞳がいっぱいになり、限界を超えて溜まった涙が一粒、二粒とこぼれ落ちていく。
一度、決壊してしまえばもう、涙は止まらない。


o川 ;д;)o「キューちゃん、ばかみたいだよぉ……」


キュートが声を上げて泣き始めるのに、時間はかからなかった。





71名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:57:54 ID:adaBwzoE0





そして、






――異変が起こったのは、その翌日だった。









72名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 22:59:19 ID:adaBwzoE0


o川;゚ー゚)o「……」


次の日、登校したキュートは教室で信じられないものを見た。


( `ー´)「……」


その日、二時間ほど遅刻してきたネーノの腕は、ギプスで固められ白い包帯が巻かれていた。
ひと目で大事だとわかる怪我に、クラスは大騒ぎになった。
お調子者なんかは、鬼の首を取ったように大騒ぎをしたと言う。


(#;;;゚∀゚)「よお。ネーノちゃん、どうしたんだ?
      何、ケンカ? やられたんなら俺がほーふくに行ってやるゼ」

(; `ー´)「ちがうちがう。ちょっとドジふんだんじゃねーの」

(#;;n゚∀゚)n「かっこいいこと、いうじゃんかよー。ヒュー、かっこいいねぇネーノちゃん」


しかし、クラスのざわめきも、ネーノの言葉もキュートの耳には入らなかった。
キュートの視線は、ネーノの腕。その包帯とギプスにじっと注がれている。
大怪我をしたネーノ、その怪我をしたその患部は……。


o川;゚ー゚)o.。oO(左手)





73名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:01:08 ID:adaBwzoE0


(#;;;゚∀゚)「で、相手ダレ? どこ中?」

(; `ー´)「……滑り台。弟と遊んでて、落ちたの。
      弟ブジだったからいいけど、もうさんざんじゃねーの」

(#;;;゚∀゚)「すべり台、すげぇぇぇ。やべぇぇぇぇ!!!」


左腕、そして大怪我。
目の前で起こっている事態に、――キュートは、何か引っ掛かりを覚えたのだそうだ。


o川;゚ぺ)o.。oO(なんだろう、すごく)


はっきりとは、思い出せない。
だけど、キュートには確かに覚えがある。
なんだろう。何でこんなにも嫌な予感がするんだろう、とキュートはわけもわからないままに焦りを覚えた。


o川;゚ー゚)o「……」





74名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:03:29 ID:adaBwzoE0

キュートは考えた。
滑り台、怪我、左腕、ネーノ……昨日の彼女、ダメだったおまじない。
そして、――おまじないの人形。

ネーノの髪を手に入れ、制服のボタンを拾い、そして、彼の名前を書いた紙を中に入れた、それ。
彼に似せて作った、手作りの人形。
キュートの、一ヶ月以上に渡る思いの結晶。


o川; ー )o「あ」


昨日の晩、ショックを受けたキュートは、腹立ちまぎれにその人形を掴んだ。
強い力を込めて、机に叩きつけようとして、そしてできなかった。
握った力で、人形の腕はぐにゃりと曲がった。


o川; - )o.。oO(わかった、わかっちゃった)


その時。
キュートが掴んでいたのは、人形の――左腕だった。


o川;゚-゚)o.。oO(いっしょだ、キューちゃんがつかんだとこと)


そして、ネーノが怪我をした場所も左腕。
――二つの場所は、寸分違わず同じだった。





75名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:05:13 ID:adaBwzoE0


普通なら、偶然だと思って気にもとめないだろう?

気味が悪いと思うことはあっても、せいぜいそのくらいだ。
しかし、キュートはそうは思わなかった。
なんてったって、キュートの試したのは、とってもよくきくおまじないだ。
だから、何かの間違いで大変な事になってしまったのかもしれない――そう、考えたのだな。


o川; - )o「……どうしよう」


彼女の呟いた焦りの声は、教室に小さく響いた。
だけど、クラスの人気者の怪我で騒然とした教室では、誰も気づかない。


(#´_ゝ`)「ぎゃーぎゃー、うるせー」

⊂(#;;;゚∀゚)⊃「いやいや、オレ静かだよ。すっげぇ静かなの!! うっひょー!!!」

(; `ー´)「ああ、もう。ちょっとは落ち着いたほうがいいんじゃねーの?!」


ネーノ少年の怪我は純粋な事故だ。
キュートだって本当は、偶然が重なったのだと、わかっている。

だけど、どうしても――、

ネーノの怪我はおまじないのせいではないか、という思いはキュートの中から消えなかった。





76名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:07:16 ID:adaBwzoE0


学校が終わり家に帰っても、キュートの頭はネーノの怪我のことでいっぱいだった。

女の子と一緒だった、ネーノ。
ネーノは多分その後すぐ彼女と別れて、弟の面倒を見ている間に怪我をしたのだろう。
ギプスを巻かなきゃいけないくらいの大怪我。
それが、おまじないのせいだとしたら……、


o川*゚-゚)o「……どうしよう」


ネーノと両思いになるための、おまじない。
準備をして、願いを込めて――1ヶ月間ずっと、楽しみにしてきたおまじない。


o川 - )o「でも、何で……」


キュートは人形を手に取る。
キュートが試したのは、『彼を自分のものにする』ためのおまじないだ。
恋愛をかなえるための、おなじないが、どうしてこんなことになったのかわかならい。


でも、

キュートは手にしたおまじないの人形を、そっと見る。
ネーノに似せて、キュートが縫い上げた人形。
それが急に怖いものになってしまったような気がして、キュートはぎゅっと目を閉じた。





77名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:08:12 ID:adaBwzoE0


ネーノが怪我をしてから、数週間。
その間、キュートは彼の顔をまともに見ることが出来なかった。


o川 - )o「……」


彼の顔が見えるたびに、白い包帯とギプスが目に入り、おまじないのことを思い出してしまう。
それで、落ち込んで後悔する。
しかし、それでもネーノの姿が気になって、そのたびに彼の包帯を見て後悔するという日々を、キュートは続けていた。


( `―´)「……」

( ´_ゝ`)「どうした?」

(; `ー´)「いいや、別になんでもないんじゃねーの」


ネーノの怪我が起こったあの日以降、何もおかしなことは起こらなかった。
かわりに二人が両思いになるということもなかったが、キュートはそれでもよかった。
その時のキュートにとってはむしろ、おまじないが効いていないとわかる方が安心できた。





78名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:10:37 ID:adaBwzoE0


……おまじないの人形は、自分の部屋に置くことにした。

ネーノの怪我のことがあって以来、キュートは人形を持ち歩く気にもなれなかった。
かといって、捨てるのも怖かったし、自分の作ったものだから、少しだけ愛着もあった。
だから、人形の置き場として部屋はちょうどよかった。

ここなら、誰かに見つかるなんてこともないし、落とすこともない。


o川*゚-゚)o「……もう何も、起こらないといいなぁ」


おまじないが気のせいだとわかったら、私に相談しようと、彼女は思っていたそうだ。
逆におまじないのせいだった場合でも、相談するつもりだったそうだが、その時の彼女はまだ私に相談をしなかった。
家族や友達にも相談できないまま、キュートは一人悩み続けていたらしい。





79名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:11:18 ID:adaBwzoE0


――それでも日々は過ぎる。



テストが終わると、半日授業がはじまる。
半日授業の日程に慣れたかと思えば、すぐに終業式だ。


そして、終業式が始まり。彼女は中学校生活はじめての夏休みを迎えることになった。


その頃にはキュートも少し落ち着き、これまでのことは考えすぎだったのだと思える様になっていた。





80名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:12:55 ID:adaBwzoE0


( ´_ゝ`)「ようやく休みか。長かったな」

(#;;;゚∀゚)「なーなー、お前ら休みはどうすんの? セミ? セミとか取っちゃう?

( ´_ゝ`)「テメェはガキか」


休みの間の予定で賑わう教室の中で、キュートはぼんやりとしていた。
キュートにとっても夏休みは楽しみだ。しかし、ネーノと会えなくなるのだけが、気がかりだった。


||‘‐‘||レ「楽しみね、夏休み」

o川*゚-゚)o「……うん」

||‘‐‘||レ「もう、キュートは元気ないぞー」


キュートの友達も、キュートの異変には気づいていたんだろうな。
……彼女には後ほど会ったが、とてもいい子だったよ。


o川*゚ー゚)o「カウガールちゃんとも、あんまり会えなくなるなぁと思って」

||‘‐‘*||レ「ああもう、キュートはかわいいんだから。大丈夫、いっぱい遊ぼうね」





81名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:14:46 ID:adaBwzoE0

教室の中は、夏休みを前にして浮かれて切っていた。
それは、ネーノも同様のようだった。


( l v l)ネーノ ハ?

( `ー´)「夏休みは、ずっと爺ちゃん家。
      この腕じゃプールにも入れないから部活にも参加できないし、しかたねーんじゃねーの」

( `~´)「あー、泳ぎたかったなぁ」


包帯のない方の腕を泳ぐように振り回して、少年は嘆いた。
といっても、彼の口調はふざけていたし、表情も明るかったから、クラスの中からは笑いが漏れた。
治ったらプール行こうぜという声が上がり、それにネーノも行く行くーと陽気に返す。


(*`ー´)「お土産買ってくるから、楽しみにしてるんじゃねーの!」


(#;;;゚∀゚)「よし、言ったな! 約束は守れよ―」

( l v l)ミヤゲ

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi 「お土産!?」


その後、通知表をもらい賑やかな空気のまま、夏休み前最後の一日は終わった。





82名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:17:47 ID:adaBwzoE0


||‘‐‘||レ「じゃあ、私。部室に顔出してから帰るから」

o川;゚~゚)o「えー、ほんと? いっしょに帰れると思ったのに」

||‐。-*||レ「今日のところはあきらめてくださーい」


教室では何組みかのグループができ、夏休みの計画を立てている。
キュートと友人の彼女もその例にもれず教室に残っていたが、それもすぐにお開きになった。


o川;゚ー゚)o「じゃあじゃあ、途中までいっしょに行こ?」

||‘‐‘*||レ「もー、キュートは本当にあまえんぼさんねぇ~」


廊下を歩き、キュートは友達と別れる。
一人になるのはさみしいけれども、そう我儘ばかりは言ってはいけないとキュートは我慢した。


o||‘ー‘||レ「じゃあ、電話するからー」

o川*゚ー゚)o「キューちゃんも電話するねー」


他に帰る相手もいないので、彼女と別れた後はキュート一人だ。
キュートは学校を出ると、家へと向かって歩き始める。





83名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:19:03 ID:adaBwzoE0


――その途中で、キュートは誰かに名前を呼ばれたそうだ。
だれだろう? と思って、キュートは振り返って、


(; `ー´)「素直ーっ!」


そこにネーノがいることにとても驚いた。
教室で夏休みの話題に花を咲かせていたはずの彼が、そこにいる。
キュートの名前を呼んで、走り寄ってくる。


o川;゚ー゚)o「ね、ネー……根野くん!?」

(*`ー´)「よかったー、追いついたんじゃねーの」


彼はほっとしたように息をつくと、そのままキュートの隣に並んだ。
ネーノの顔には教室で見せるような、笑顔が浮かんでいる。


( `ー´)「素直にちょっと聞きたいことがあってさ」

o川 ゚-゚)o「……うん」


おまじないのことじゃないかと思い、キュートは体を固くする。
――しかし、ネーノが口にしたのは、まったく関係のない言葉だった。





84名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:20:53 ID:adaBwzoE0


( `ー´)「素直は創作公園の夏祭りって行く?」

o川;゚-゚)o「うん。いちおー」

(*`ー´)「じゃあさ、一緒にいかない?」


ネーノの言葉の意味を、キュートはしばし考える。
しかし、その言葉を理解した瞬間。キュートは真っ赤になった。
これは、いわゆるデートのお誘いではないか……そう、思ったわけだな。


o川////)o「……お祭りって、2人で?」

(; `―´)て「えっ?」

ネーノは驚いたような声を上げ、しばらくした後に顔を真っ赤にした。
怪我をしたままの両手を体の前で振り、ネーノは慌てて声を上げる。


(;//д/)「い、いや。みんなで!! みんなで、なんじゃねーの!!
       ついさっき、教室でそんな話題になって!!!」

o川;///)o「そ、そ、そうだよねぇー!
       えへへー、キ、キューちゃん、かっかんちがいしちゃったー」

(;//―/)「そ、そ、そうなんじゃねーの!!」





85名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:22:47 ID:adaBwzoE0

2人は互いに声を上げ、ぎくしゃくと笑いあった――そうだ。
しばらく、そうやって言い訳ともつかない不自然な会話を続けた後に、ネーノはノートの切れっ端と鉛筆を取り出した。


(; `ー´)「連絡するから、電話番号教えてほしいんじゃねーの」

o川;゚ワ゚)o「う、……うん。わかったー」

( `ー´)「じゃあ、これがオレん家の番号」


電話番号をお互いに交換し終える頃には、二人の間の空気はすっかり元通りになっていた。
キュートはそれに寂しさを覚えると同時に、少しだけほっとしたそうだ。
ネーノとちゃんと話すのは、彼が怪我をした日以来のことだった。


( *― )「……まぁ、2人で行くってのも、悪くはなかったんじゃねーの」

o川*゚ー゚)o「え?」


ネーノがふともらした言葉に、キュートは息を呑んだ。
それはなんだかドキドキするような言葉のような気がして、キュートは小さく聞き返した。
……しかし、彼女が声を上げたときにはもう、彼はいつもの明るい調子に戻っていた。


(*`ー´)「なんでもない。じゃ、そのうち電話するからー!!」





86名も無きAAのようです :2013/08/17(土) 23:24:15 ID:adaBwzoE0

そう言ってネーノは、キュートに背を向ける。
突然の行動に驚くキュートに向けて、彼は軽く手を振ってみせると「学校」と小さく告げた。


( `ー´)「話し合いの途中で抜けてきちゃったから戻るんじゃねーの」

o川;゚ー゚)o「……わざわざ、来てくれたの?」

(*`ー´)「オレも素直と遊びに行きたし、気にしなくてもいいんじゃねーの!」


なんでもないことのように言ってのけて、ネーノは笑った。
学校の外まで追いかけて来て、わざわざ話しをしてくれる。
それが特別なことのような気がして、キュートの顔は熱くて息も詰まりそうになる。


( `ー´)「お祭り、一緒に行こうな」

o川////)o「……」


それでも、ネーノの最後の言葉にキュートは最高の笑顔でうなずいた。


o川*゚ワ゚)o「うん!」


ネーノが嬉しそうに笑うのを、キュートは見た。
キュートはそれが嬉しくて、ネーノの姿が見えなくなるまで手を振り続けた……。





89名も無きAAのようです [AAS] :2013/08/18(日) 22:01:47 ID:fHkiEV2U0
                     _..-'"                                 /
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_,ィニ―'''''"  ./         ,ム -‐''"              _.. ‐'″   _,,,.... -ー'''"´        /
.ヽ      ,./     / ̄           __ =ニ-一¬''''''^゙ ̄゛                 /
  ヽ   /      {        ,_ir‐'''"´                         /
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____,ド           \    | ,.. ‐'″ .\                   _.. -'''"                   _
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                                            |       !./
                                            \、   ,/゛
                                           `¨¨¨´






90名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:11:18 ID:fHkiEV2U0


夏休みは、順調に過ぎていった。


中学校では小学校のとき以上に、夏休みの宿題があった。
短い期間ではあるが、部活動のために学校にも出なければならない。
それに、伯母さん――キュートの母親は、夏期講習にキュートを行かせていた。


ヾ||‘‐‘*||レ


ε......o川*゚ー゚)o


o川*゚ワ゚)o ||‘ワ‘*||レ



もちろん勉強だけじゃなくて、遊びの予定もたくさんあった。
友人と出かけたり、プールへ行ったり、家族旅行に行ったりと、彼女の夏はそれなりに充実していた。



――だから、キュートの中学生活はじめての夏休みは、それなりに忙しかった。






91名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:13:03 ID:fHkiEV2U0

彼女は夏休みを、それなりに楽しく過ごしていた。

ただ一つ、気がかりがあるとしたらネーノのこと。
彼とは終業式の帰りに会ったっきりで、それからずっと姿を見かけていない。


o川*゚ー゚)o「ネーノくん……どうしてるかな」


毎日のように教室で見ていた彼の姿が見えないのは、とても寂しい。
キュートは何度かスーパーに出かけてみたけれども、ネーノに会うことは出来なかった。

……夏休み前に言った通り、祖父の家に出かけているのだろう。
キュートもそれは理解している。
しかし、それでもまだこっちにいるのではないかという思いが捨てきれなくて、ついスーパーへと足を向けてしまう。
その繰り返しだった。


o川*゚-゚)o「……元気かな」


腕の怪我はもう大丈夫だろうか?
あれからひどい怪我はしていないだろうか?





92名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:15:50 ID:fHkiEV2U0

……彼に会えない日々は、キュートの不安を募らせた。

電話番号は知っている。
でも、かける勇気なんてないし、かけたとしても何を話したらいいのかわからない。
だから結局、キュートは机の上を見上げて溜息を付くだけ。


(  ・ω・) ニャー

o川*゚ー゚)o「カラマロスー、今キューちゃん考えごとでいそがしいから後でー」


――その日もキュートは溜息をつくと、机の下をうろうろしていた猫を部屋から追い出した。
ひと仕事を終えたキュートが振り返ると、机の上に置いた人形が目に入った。

おまじないの人形。
キュートが、ネーノに似せて作ったそれ。
この人形のせいで、ネーノは腕を怪我した……様な気がする。


o川;゚ー゚)o「……」


――彼がまた、何か危ない目にあっていたとしたら?
忘れていた不安が、キュートの中に沸き起こった。
ネーノにはずっと会えていない。だから、もし彼がまた怪我をしていてもキュートにはわからない。





93名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:19:06 ID:fHkiEV2U0

……ネーノくんは、無事なのだろうか?

キュートは急に、いてもたってもいられなくなった。
部屋を飛び出すと、居間にある電話の受話器を取る。
どうしてもネーノの声を聞いて安心したくて、プッシュキーへと指を伸ばす。


o川;>ー<)o「……」


そして、キーを押そうとして、


川*` ゥ´)「――何、電話? どこ? あんまり長電話しちゃやーよ」

o川;゚ー゚)o ビクッ


――母親の声に、その動きを止めた。





94名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:22:28 ID:fHkiEV2U0

o川;゚ー゚)o「……その」

川*` ゥ´)「なになに? ひょっとして、男の子?
      男の子なのね! もー、キューもすっかりお年ごろになっちゃって」


ヒール伯母さん……キュートの母親は、キュートの様子を見るなり興味津々となった。
声をワントーン高くして、目をキラキラと輝かせて、キュートに詰め寄る。


o川;゚д゚)o「ちが」

川*` ゥ´)σ「もー、いっちょまえに照れちゃってぇ!」


ヒール伯母さんは、なんというかこういうノリの人だ。
気さくで良い人なのだけれれども、少しばかりデリカシーに欠けることがある。
そんな母親の前で、ネーノに電話をかける度胸はキュートにはなかった。
しかし、ここまできて電話をかけないのも不自然だ。彼女はそう考えて――、


o川;゚ー゚)o「……クーお姉ちゃん! どうしても相談したいことがあって!」

川*` ゥ´)「ああ、クーちゃん? だったら電話じゃなくて、家に来てもらいなさいよ。
      クーちゃんも夏休みなんでしょ? せっかくだし、ごちそうしちゃうわ」


クーお姉ちゃん――つまり私に、おまじないやネーノについて相談しようと思いついた。
「相談したいことがあるの」という言葉と夕飯のお誘いに、特に予定がなかった私は二つ返事で了解した。





95名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:25:31 ID:fHkiEV2U0

そして、電話を終え部屋に戻った彼女は、気づいた。
――部屋の扉が開いている。
確か部屋から出るときに閉めたはずなのにと、首をひねりながらキュートは部屋に入る。


o川*゚ー゚)o「……?」


しかし、そこには誰もいなかった。
正確にはいたのだけれども彼女の目には入らなかった。
彼女は首をひねりながら机をなんとなく眺め、そこにあるべきものがなくなっていることに息を呑んだ。


o川;゚ー゚)o「――っ!!」


――人形。
おまじないのための、人形。
確かに机の上におかれていたはずのそれが、なくなっている。
キュートの頭から血の気が引き、落ちているのではないかと机の下を覗きこんで。





96名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:27:11 ID:fHkiEV2U0

――


(  ・ω・)


床で動きまわる、白い猫の存在に気づいた。
カラマロス。私が大佐と呼ぶ、キュートの家の飼い猫。
彼が興奮した様子で、何かをひっかき咥え暴れまわっている。


o川;゚д゚)o「ああっ」


カラマロスはその爪で何かを熱心に攻撃をして、遊んでいた。
前足でひきよせたり、飛ばしたり、爪を出して引っ掻いてみたり。それはもう、やりたい放題だ。
そして、彼がやりたい放題している何かは――、




――キュートの作ったおまじないの人形だった。





97名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:29:12 ID:fHkiEV2U0


o川#゚ー゚)o「やめてぇっ!!」

(; ・ω・) !


その瞬間、キュートの頭は真っ白になった。
代わりに浮かんだのは、ネーノの腕に巻かれた白い包帯とギプス。


o川# д )o「だめぇぇぇっ!!」


キュートは手を伸ばし、叫んだ。
床に広がった雑誌に足を取られながらも、カラマロス――猫を捕まえようと走り寄る。
キュートは飼い猫の狼藉を慌てて止めようとしたのだが、カラマロスはその剣幕に驚いたのだろう。
白い毛を、倍以上にふくらませた。


(# ・ω・)





98名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:29:52 ID:fHkiEV2U0

キュートのすぐ脇を、カラマロスの白い体がすり抜けるようにして通り抜けた。
白い毛を逆立てながら、カラマロスはスピードを上げて走る。


その口は――しっかりとおまじないの人形を咥えている。


カラマロスは人形を咥えたまま、開いた扉をくぐり外へと飛び出した。


(# ・ω・)

o川; д )o「待って! 返してぇぇぇぇ!!!」


階段を凄まじい速度で駆け抜ける軽い音の後を、キュートは追いかける。
しかし、白い体はすばしっこくて手が届くどころか、逆に距離を広げられていく。
足元を踏み外しそうになる体を、腕で支えながらキュートはなんとか階段を降りきった。


川#` ゥ´)「キュー! 家の中を走らない!!
      これからクーちゃん来るっていうのに、何してんのアンタは」

o川; д )o「あとで!!」





99名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:31:43 ID:fHkiEV2U0

開いた窓の向こうへ、カラマロスは体を滑り込ませる。
それを追って、キュートも玄関へと向かう。
靴を履く時間も惜しくて、サンダルを足に突っかけると、そのまま彼女は走りだした。


o川; д )o「どこっ!? どこなのっ!!」


白い猫の姿は、どこにも見えない。
それでも、家の周りを何度もまわって、そしてようやく――キュートはカラマロスの姿をとまった車の下で見つけた。


o川;゚ O゚)o「お願い、返して!!」


車の下に潜り込んで隠れたカラマロスは、キュートの声に体をぴくりと動かした。


その口は人形を咥えたままだ。


カラマロスは緊張した様子で、キュートが車の下を覗き込むキュートを睨み返す。
しかし、彼は先程のように走り出しはしなかった。





100名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:34:11 ID:fHkiEV2U0


カラマロスはキュートの姿を瞬きもせずにじっと見据え続けている。
彼の姿は、一見するとすぐにでも捕まえられそうだ。
しかし、実際は誰かが一定距離内に近づいたら、すぐ逃げ出せるように緊張しながら姿勢を整えている。
……猫というのは、そういうものだ。


o川;゚ー゚)o「お願い、返してっ!!」


キュートは大きな声を上げて、車の下へと手を伸ばす。
しかし、彼女の手は愛猫に届くには短すぎた。
キュートが慌てて地面にしゃがみ込む頃にはもう、カラマロスの白い体は走り出していた。


o川;゚д゚)o「カラマロスー!!!」






101名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:36:28 ID:fHkiEV2U0

私が、彼女の家に到着したのはちょうどその頃だ。

私とキュートの家はそう遠くない。同じ武雲市内だから、自転車でも行き来できるし。車ならばもっと早い。
何も知らない私は、カラマロスとの追いかけっこに興じるキュートに向けて、気楽に話しかけた。


川 ゚ -゚)「キュート、遊びに来てやったぞ」

o川; - )o「――っ」


しかし、彼女は私の声に返事を返さなかった。
私に目をくれることもないまま、カラマロスが逃げた方にむけて走りだした。

  _,
川 ゚ -゚)「……どうしたんだ、あの子は?」


血相を変えて走る彼女の姿に、私は「ああ、暑いのにキュートもよくやるな」と脳天気なことを考えていたような気がする。
私は馬鹿だった。
もっと彼女の顔を真剣に見ていれば、ただ事ではないとすぐに気付けたはずだったのに。


川 ゚ -゚)「まあ、いいか」


――だけど、その時の私は何も考えなかった。
キュートの家にお邪魔して、涼しい部屋で伯母さんと話しながらキュートのことを待った。
……馬鹿だと言ってくれて構わない。私はキュートの助けにはなれなかったのだ。





102名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:38:05 ID:fHkiEV2U0

キュートは、飼い猫の姿を追って走った。

白い体はすぐに捕まえられそうなのに、どれだけ走っても追いつけない。
それに距離を詰めたと思っても、気づいた瞬間にはすぐに視界からいなくなっている。
白い猫の姿を何とか見つけ出し、そして、捕まえられることのできないまま逃げられるという、追いかけっこが続いていた。


(  ・ω・)


カラマロスは、人形を放そうとしない。
だから、キュートもあきらめることができない。


o川; д )o


その日は、35度を超える猛暑日。
空気はベタベタと重いのに、日差しは焼けるように強かった。
蝉の声は耳がおかしくなるくらいに煩くて、木の緑は目に痛いほどに輝いていた。





103名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:40:39 ID:fHkiEV2U0

水も帽子も持たないままキュートは走った。
暑い日差しの中を、彼女は人形を取り返そうと、一人走り続けていた。


o川; - )o「ネーノくん」


キュートが本当に、おまじないのことを信じていたのか、それともそうでないのか。
――私には、わからない。


o川 ;д )o「ネーノくんっ!!」


それどころか私は、その時の彼女が何を思い考えていたのかすら、知らない。
彼女は語ろうとしなかったし、彼女の異変に気づかなかった私に問いかける資格もない。


o川 ;д )o「――っぁぁぁぁぁ!!」


ただ、彼女は本当にネーノのことが好きで。
彼のことだけを思って走り続けたということだけは――わかっている。





104名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:42:11 ID:fHkiEV2U0

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――私がキュートを見つけた時、彼女は川にいた。






105名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:44:13 ID:fHkiEV2U0


キュートの家から何本か道路を渡った先。
その川の水の流れの中に、彼女は座り込んでいた。
帰りの遅いキュートを探し回っていた私は、ずぶ濡れのキュートを見て血の気が引いたよ。


o川 ;ー;)o「ぅ……ぁ……」

川;゚ -゚)「キュート、どうした!?」


キュートが追いかけていたはずの、カラマロスは土手で毛づくろいをしている。
だけど、彼女はもう猫には目を留めない。
彼女は呆然と川の流れていく先を見つめていた。

そして、私の姿に気づくなり声を上げて泣きだした。


o川 ;д;)o「キューちゃんが悪いの、キューちゃんがぁぁぁぁぁ!!!」


キュートの顔は涙で、くしゃくしゃだったよ。
おしゃれに気を使うような女の子が、涙も拭わず、鼻水まで出して泣くんだ。

――私は、その時になってようやく、取り返しの付かないことが起きたのだと悟った。





106名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:46:55 ID:fHkiEV2U0


o川 ;д;)o「行っちゃった……どうしよ……ネーノくん」

川; - )「キュート!」


私はキュートを抱きしめた。
……抱きしめることしか、できなかった。
川の中で座り込むキュートは全身が濡れていて、周りの暑さが嘘のように冷えきっていた。


川 ゚ -゚)「ほら、キュート。しっかりしろ。
     このままじゃ、風邪をひく。この時期に風邪をひくと辛いぞ」

o川 ;д;)o「……ぅ」

川 ゚ -゚)「いくらでも話を聞いてやるから。な?」


立ち上がろうとしないキュートの手を引いて、川から引き上げて。
二人で、手をつないだまま帰った。



――それでも、キュートは泣いたままだった。





107名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:48:40 ID:fHkiEV2U0


その日の夜、キュートは全て私に話してくれたよ。
そして私はやっと、何が起こっていたのかを知った。


おまじないのこと、スーパーでのこと、ネーノと一緒にいた女の子のこと。
……それから、ネーノ少年の怪我のこと。
彼の怪我は、自分のおまじないのせいではないか。


それら一つ一つをキュートは、泣きながらも語ってくれた。
彼女の顔色は青くて、それでも瞳だけはギラギラと輝いていて、妙な凄みがあったことを覚えている。

それだけ彼女は思いつめていたのだろうな。
ようやく相談できる相手ができて、それで一気に感情が吹き出したようだった。

キュートは、途切れること無く語り続けたかと思えば、唐突に泣いたり、喚いたりを繰り返した。






108名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:50:48 ID:fHkiEV2U0

彼女は、人形の行方も話してくれた。


o川 ゚-゚)o「カラマロスはね、橋のところまで逃げたの。
       それでね橋の横にあるパイプみたいなところをカラマロスは走ってね、そこで落としちゃったの」


カラマロスの咥えた人形は川へと落ちた。

それを見たキュートは、慌てて川岸へと降りたそうだ。
落ちた人形は初めは川岸の草に引っかかていたが、キュートが川岸に着いた頃にはもう見えなくなっていた。
それでも、どこかにあるはずと、キュートは川の中を探しまわり。


o川 - )o「……」


――彼女が再び見つけた頃にはもう、人形は早い流れに乗っていた。
キュートは追いかけたが、もう手遅れで……人形は、とうとう彼女の手の届かないところまで行ってしまった。


o川 ;-;)o「ネーノくんに、何かあったらどうしよう」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ。大丈夫だから、な」


そう言って泣く彼女の体を、私は抱きしめるしか出来なかった。
彼女は私の体に体を預けて、ずっと泣いていた――。






109名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:53:04 ID:fHkiEV2U0

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そこまで話し終えると、クーは沈黙した。
しばらく待ってみたが、クーはなかなか続きを話そうとする気配がない。


('A`)「それで?」


とうとう俺はクーのいる暗がりに向けて話し始めた。
ほの暗い闇の中、クーの着ているブラウスだけが白く浮かび上がっている。
クーは俺の言葉に、かすかに身動きしたようだった。
微かに吐息を漏らした後に、再び話し始めた。


川 ゚ -゚)「――おまじないの人形が見つかることはなかった」

(    )「残念だおー」


それはそうだろうなと、俺は頷く。
しかし、俺が気になるのは人形の行方じゃなくて、話の続きだ。





110名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:55:40 ID:fHkiEV2U0


('A`)「……続きは? あるんだろう?」


俺の問いかけに、クーは再び沈黙した。
迷っているかのように黙りこみ、しばらくたってからようやく彼女は口を開いた。


川 ゚ -゚)「……何もなかったよ、その日は。
     私は伯母さんに頼まれて、キュートの家に泊まったのだが、何もなかった」


――その日、は。
という言葉に、背筋がぞわりとした。


本当に何もなかったのならば、あえて「その日は」なんて言わない。
何かが、あったのだ。
キュートという女の子が恐れていたことが、おそらく現実に起こったのだろう。


……はっきり言おう。
俺は話を促したことを、後悔しだしていた。




111名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:57:19 ID:fHkiEV2U0


('A`)「なあ、クー」


聞きたくない。
これから先、クーが話すことはきっと悪いことだ。
それは、きっとついこの前まで小学生だった女の子が目の当たりにするには、辛い話に違いない。


川 - )「本当に、何もなかったんだ。
     キュートは涙をこらえてネーノ少年の家にも電話をかけたが、彼は元気だということだった」


俺の呼びかけを、否定するかのようにクーは話し続ける。
誰も、相槌を打ったり、話しかけようとはしない。

部屋の空気が、息苦しくて。
額から、ぬるりと汗が伝うのを俺は感じていた。


川 - )「異変が起こったのは、……二日後の、夜」



そして、クーは再び話しはじめた。






112名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 22:59:51 ID:fHkiEV2U0

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o川 ;д;)o「ネーノくんが、ネーノくんが死んじゃったの」






――家へと戻った私のもとに、その電話がかかってきた。






113名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:01:17 ID:fHkiEV2U0

根野ネーノが死んだ。
その言葉を私は信じることが出来なかった。


          ( `ー´)「お祭り、一緒に行こうな」


だって、そうだろう。
ネーノ少年が死ぬ理由が、見当たらない。
彼には腕の怪我以外には持病も、自ら死を選ぶ動機もないはずだ。
何より彼は、祭りにいくことを楽しみにしていた。
そんな彼が、死ぬなんてことがあるだろうか?


川; - )「……なんで、」

o川 ;д;)o「    」

川 ゚ -゚)「え?」


そして、私はなぜ彼が死んだのかを知った。






114名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:03:10 ID:fHkiEV2U0




交通事故。





彼は滞在していた祖父母の家の近くで、車にはねられたのだ。






――そして、それっきり帰らなかった。




115名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:05:13 ID:fHkiEV2U0

彼の葬儀は、それからすぐに行われることになった。
私は仕事で身動きできないキュートの両親の代わりに、彼女を連れて彼の通夜に行ったよ。

会場にはキュートと同じ制服を着た少年や少女がたくさんいた。
彼らの顔は泣き顔だったり、怒り顔だったり、呆然とした顔だったりと様々だった。


 (#;;; ― )(#´_ゝ`)



            ヽiリ,,゚-゚ノi ( ; v ;)


――そんな彼らの姿を見て、私はようやく、「ああ、彼は死んだのか」と、理解した。



||‘‐‘;||レ「キュート!」

o川*゚-゚)o「カウガール……ちゃん……」






116名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:07:57 ID:fHkiEV2U0

キュートの友人の少女と別れると、私はキュートを連れて記帳を済ませる。
そして、そのままと会場へと入った。

白い祭壇と、黒い服を来た人々の群れが私とキュートを出迎えた。

席につき、ふと親族の集まる席を見た私は、そこに子供の姿をみつけた。
少年が1人と、少女が2人。

――そして、気づいた。
2人の少女は、揃いの星の形の髪飾りをつけている。
キュートよりも少し小さな彼女たちは、一人が活発そうな少女で、もう一人はおとなしそうな少女だ。


( ・-・ )「……」


黒い服を着たおとなしそうな少女の顔には、感情らしい感情が浮かんでいない。
それで、わかってしまった。
キュートが一度見かけた。ネーノと一緒に歩いていた少女。

――それは、きっと彼女だ。





117名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:09:13 ID:fHkiEV2U0

彼女は白い花で飾られた祭壇を、じっと無言で見つめていた。


川 ゚ -゚)「……」


私は少女の視線につられるようにして、祭壇をまじまじと眺め――そして、ふと気づいた。
祭壇の中央に添えられた黒い額縁。そこには、少年の写真が飾られている。


川  - ).。oO(ああ、彼が……)


私が、ネーノの顔を見たのは、それが最初で最後だった。
遺影として飾られた少年の顔はまだあどけなくて、キュートの言う様にかっこいいというより、かわいいという言葉のほうが似合う気がした。
目を細めて、口元を上にあげた表情は、――とてもいいことがあったんだって、伝わるような笑顔でな。
あんなふうに笑えるのならば、彼はさぞかし人気があったんだろうなぁと思わされた。
それくらい、彼の笑顔は印象的だった。


川  - ).。oO(だけど、彼はもう……)


祭壇の前に安置された棺。
そこにあの少年がいるのだとは、とてもじゃないが思えなかった。





118名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:11:20 ID:fHkiEV2U0


――まるで、質の悪い冗談だ。


川  - ).。oO(なんで……)


交通事故なんて――、そう思った、その時。
私の耳はかすかに震える小さな声を捉えた。


( ・-・。)「……ネーノ、お兄ちゃん」


それは、親族席のあの少女から聞こえた。
おそらくは無意識のうちに出たその言葉は、周囲のざわめきに埋もれて他の誰にも届かなかった。


――だけど、私はそれで大体の事情を察してしまった。


親族席にいる少年と少女たちは、ネーノの弟や妹――「チビたち」だ。
そして、あの少女は彼の妹だ。
証拠なんて上等なものはない。
しかし、それが間違ってはいないだろうという確信に似た気持ちはあった。





119名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:13:16 ID:fHkiEV2U0


根野ネーノ。
――彼が年齢に似合わず、女の子に優しかったのは、彼に妹――女の兄弟がいたからだ。

妹や弟の面倒を見る、優しいお兄ちゃん。
それが、ネーノ少年の素顔だったのだろう。


   (*`ー´)「素直はさ、なんか妹みたいな感じがするから、嫌われてたらどうしようって思った」


いつか彼がキュートに言った言葉。
それは彼に妹がいるから出た言葉なのだろう。
彼には、物言わずに自分をじっと見上げてくるキュートの姿が自分の妹と重なって見えたのだろう。
それが、妹のような少女に向けた単なる優しさだったのか。それとも、そうではなかったのか、もう二度とわかならない。





120名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:15:37 ID:fHkiEV2U0


o川 ゚-゚)o「クー、お姉ちゃん?」

川 ゚ -゚)「いや、何でもない」


あの少女が妹かもしれないとは、言えなかったよ。

だって、そうだろう?
全てはもう終わってしまった、後なんだ。
それをいまさら告げて、どうなる。


川  - )「……」


――だって、彼はもういない。


ネーノと少女が一緒にいた時に話しかけておけば。
もしくは、おまじないに頼らないで、さっさと告白していれば。なんて、


     (*`ー´)"   o川*^ー^)o


そんな夢想に、もう意味は無いのだから――。





121名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:17:13 ID:fHkiEV2U0



そして、通夜が始まり、私は異変に気づいた。





――何かがおかしい。





そう疑問に思った理由は、すぐにわかった。





122名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:20:02 ID:fHkiEV2U0


私はそれほど経験がないのだが、通夜では普通、顔を見てやってくださいと言って故人の顔を見せるだろう。
でも、それがないんだ。

遺体の安置された棺は確かにある。
しかし、その棺の扉はしっかりと打ち付けられて、開かないようにされていた。
まるで、そこに遺体なんてないような扱い。
彼はまだ死んでいないのではないかという錯覚を起こさせてしまいそうな式だった。



でも、違った。



私はこれまで彼の死を、ごく普通の交通事故だと思っていた。
しかし、それは大きな間違いだった。


彼の遺体はそこに確かにあったのだ。
ただそれは、……人に見せられる状態ではなかった。




123名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:22:48 ID:fHkiEV2U0


(同し同 )「一体、どうなってるのかね? 故人の顔を見せてくれって言っても、全然見せてくれん。
      マサシさん。あんたは何も知らんのかね」

(;・`ー・´)「それは……」


手洗いに行こうとたまたま席を外した私は、口さがない親族の話を聞いてしまった。
酔っていたらしい彼らの話によると、……ネーノの死体はそれはもうひどい状態だったらしい。


(;・`Д・´)「あれはひどかった。母親なんかは倒れちまったよ、かわいそうに」


彼をはねた運転手はな。
通報や救急車を呼ぶこともせずに、逃げてしまったらしい。
それだけではない。運転手はネーノの体をよりにもよって道路からは見えない、斜面の下に突き落した。
……そして、そのまま逃げた。

ネーノの帰りが遅いことを心配した祖父が、近所の男たちと彼の姿を探し始めた頃にはもうとっくに手遅れになっていた。


(同し同;)「……ああ、夏だし腐」

(;-`Д・´)q「それだけじゃなくて……」


川 ゚ -゚)「……」





124名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:24:55 ID:fHkiEV2U0


(;-`Д-´)q「誰にも言うんじゃないぞ……」

(同し同;)「誰にもってそりゃあ、大袈裟な」

(#・`―・´)「大ゲサなくらいでいいんだよ」


親戚らしい中年の男は辺りを見回し、声をひそめた。
しかし、元の声が大きいせいで、多少声を押さえた程度では何も変わらなった。


( ・`Д・´)「ネーノはな……」


男の話す声は少し離れた場所にいた私の元まで届き――、そして、私はネーノ少年に何が起こったかを知った。


( -`Д-´)「    」


誰にも見つかること無く数日間その場に放置された、彼の遺体はな、
野犬によって食い荒らされていて、原型をとどめていなかった。
噛まれ、食いちぎられ、爪によってひきさかれて――ひどい状態だったそうだよ。

持っていかれてしまったのか、見つからないパーツもあるのだと、親族の男は語った。



そう。それはまるで、――






125名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:27:30 ID:fHkiEV2U0




猫の爪に、牙に







                   引き裂かれ





食い破られた





                               ――おまじないの、人形のように。






126名も無きAAのようです [AAS] :2013/08/18(日) 23:29:22 ID:fHkiEV2U0



   o
    ゝ;:ヽ-‐―r;;,               。
,,_____冫;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\      ,,,,,,,, o  /
"`ヽ;:;:;;;:::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:从    (;:;:;:;:ヾ-r
   〈;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:) 0  ソ;:;:;:;:;:;:;:}
  ,,__);:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ     ゞイ"ヾ,:;:,ソ
  (;:;:ノr-´^~;;r-ー⌒`    ,.、
  "  ,,,,      _;:;:⌒ゝソ;:/
    (;:;:丿    (;:;:;:;:;:;:;:;:;:)
            ヾ;;;;;;;;;;;;/; \
            ´  /;:ノ 。  。
                ()






127名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:31:23 ID:fHkiEV2U0

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川  - )「……私の話はここまでだ」


そして、クーは静かに話を締めくくった。
誰も、何も語らなかった。
その場に残るのは闇と、水の中にいるような息苦しさだけだ。


(    )「……」

ξ ⊿ )ξ「……っ」


あまりにも重い雰囲気に、俺は作り話なんだろうという言葉を慌てて飲み込んだ。
クーの言葉は真剣で、怖いくらいだった。
とてもじゃないが作り話をしているようには見えない。

だから、嘘だろうと問いかけるかわりに、俺は違うことを聞くことにした。





128名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:33:08 ID:fHkiEV2U0


('A`)「クーは本当のところは、おまじないのせいだと思っているのか?」


それは、俺がクーの話の中で一番気になっていたことだった。
もし、おまじないのせいでないのだとしたら、ネーノという中学生に起こった事態は、単なる事故だ。
しかし、キュートという女の子が試したおまじないのせいだとしたら、それはまるで……


川  - )「……私には、わからない。
     だけど、おまじないなんて関係なかったと、思いたい」


話をする間、ずっと理知的だったクーの声がはじめて震える。
思うことは素直に口に出せても、冷静な態度を常に保っている、クー。
彼女の声がはじめて、大きな感情の色をあらわにする。





129名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:35:41 ID:fHkiEV2U0


川# - )「……だって、そうじゃないか。
      私がそうだと言ってやらなければ、キュートは!」


それは、怒りだった。
冷静で理知的な彼女らしくない。
理解の及ばない出来事に対する、怒りの感情。

彼女は吼えるように声を上げ、


――そこから先の言葉を、口にしなかった。


川# - )「……」


でも、何が言いたかったのかは、この場にいる全員に伝わったと思う。
そうでなきゃ、嘘だ。


だって、いくらクーでも言えるはずがないだろう。





130名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:37:49 ID:fHkiEV2U0


中学生。

同級生に恋をした、それだけの女の子。




        o川*- -)o「根野 ネーノくんと、両思いになれますように」




彼女の好意が、小さなおまじないが、何の悪意もないままに、彼女の一番大好きな人を、






――呪い殺した、なんて。





131名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:39:31 ID:fHkiEV2U0


暗い部屋には沈黙が横たわっている。
今度こそ誰もが、口を開こうとはしなかった。


川  - )「……話し終えたら、蝋燭を消すんだったな」


それを遮ったのは、クー自身の声だった。
クーは先程までの怒りが嘘の様に静かな声で言った。
そこにはもう、激しい感情の名残は見えない。


(;'A`)「あ、ああ」

( ゚д゚ )「蝋燭は、二つ向こうの和室にある。
     ふすまは開いているから、明るい方に進んでくれ」

川  - )「わかった」


ミルナの声が途切れると同時に、人が立ち上がる気配がした。
クーの着ている白いブラウスが動くのがぼんやりと見える。
足元を確かめるように、クーはゆっくりと部屋の外へとむけて進んでいく。


川 ゚ -゚)「――また、な」


――そして彼女は、開け放たれた襖の向こうへと消えた。





132名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:42:06 ID:fHkiEV2U0


(    )「……まるで、呪いだね。丑の刻の藁人形みたいだ」

(    )「おまじないが、呪いにか……」


クーが去って気が緩んだのか、暗闇の中で誰かがそう言った。
それは俺が思っていても、口にしなかった言葉だった。



( ゚д゚ )「……おまじないを漢字で書くとどうなるか、知ってるか?」



そして、その声に触発されたのかミルナがポツリと声を上げた。
これまでの話とはまったく関係ない言葉に、周囲がざわめき声があがる。


ξ ⊿ )ξ「……おまじないに漢字なんてあるの?」

(    )「ひらがなじゃないのかお?」

(    )「うーん。漢字かぁ、僕にはわからないな。正解は?」


その言葉に、ミルナは目を閉じた。
それから、空中に字を書く素振りをしながら、答えを口にした。





133名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:44:32 ID:fHkiEV2U0







( -д- )「――御呪い、だ」









134名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:46:25 ID:fHkiEV2U0


( ゚д゚ )「おまじないと呪いは、本質的には同じ行為なんだ」


ミルナは淡々と話し続ける。
その顔に浮かぶのは、いつものミルナと同じ感情の読み取れない表情だ。


( ゚д゚ )「誰かを手に入れたいという願いは、裏を返せば相手を自分の思う通りに相手を支配したいということだ。
     そこに、対象となる相手の意志など関係ない。いや、むしろ邪魔なだけだ」

ξ ⊿ )ξ「いくらなんでも言い過ぎよ」

( ゚д゚ )「でも、そうだろう。
     おまじないとは、例え相手に好きな人がいようとお構いなしに、自分へ気持ちを向けさせるためのものなのだろう?」

ξ# ⊿ )ξ「でも、それは――」


興奮したような激しいツンの声が、止まる。
考えをまとめているのか、それともクーに声が声が伝わるのを恐れたのか、彼女はしばらく唸り声を上げて、

――結局、その言葉を口に押し込んだ。


ξ   )ξ 「……」





135名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:48:32 ID:fHkiEV2U0


誰も話さなくなった部屋に沈黙が落ちる。
俺も、周りのやつらと同じように黙りこみ――、

ふと、


          「ネーノくんのそういうとこ、……好きだなぁ」

          「……す、素直って、たまにすごいこと言うんじゃねーの。びっくりしたー」

          「えー、何? キューちゃん変なこと言った?!」


女の子と、男の声が聞いた様な気がした。
楽しそうな、声。

不思議と、いちゃつくやつは滅べという気持ちにはなれなかった。
……むしろ、このまま続けばいいと思ってしまった。


         「オレも、素直のそういうところは好きだよ」

         「ふぅぇ? わっ?」

         「へへへ。お返しじゃねーの」



女の子と、男の声は続く。
――俺はなんだか二度と取り返せないものを見たような気がして、ただ無性に悲しかった。





136名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:50:12 ID:fHkiEV2U0



部屋の空気が一瞬大きく揺らぎ、闇がまた一つ濃くなる。
クーが蝋燭を一つ消したのだろう。

……気づけば、あの声は声はもう聞こえなくなっていた。




(    )「さて、続きをはじめようか」




百物語の蝋燭は、まだ残っている。
全ての蝋燭が消えた時、どんな闇が待つのか。



俺は、まだ知らない――。





137名も無きAAのようです :2013/08/18(日) 23:51:40 ID:fHkiEV2U0




              ('A`)百物語、のようです


                御呪いの話  了


                     (
                      )
                     i  フッ
                     |_|






 蛇の話(リンク先:短い( ^ω^)様) - おまじないのはなし - 廃村ツアー - 奇妙な偶然 - 幻の馬。
('A`)百物語、のようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1376666020/



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