まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 / ,' 3遺産相続のようです


1 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:04:27 ID:EjYAGugM0

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2 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:08:51 ID:EjYAGugM0
自分の命はもう終わるのだろう。
目を開けるのも辛い。開けたところで闇しか広がっていない。

今の自分はとてもみじめだ。
苦労を重ねたにもかかわらず、こんなに悲しい最後を迎えるなんて。
傍にいてくれる人すらいない。なんと酷い人生だったのだろう。

こうなったのはなぜだ。
いったい何が原因なのだ。

何度も同じことを考えた。
そして何度も同じ結論に至った。

あいつらが悪いんだ。
あいつらが一つにならないから、自分はこんな状況で最期を迎えようとしているのだ。

しわがれた身体の奥の方から、ふつふつと怒りが湧いてくる。

あわよくばあいつらに復讐を。


3 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:10:24 ID:EjYAGugM0
光が差し込んだことがわかった。
瞼をゆっくり開ける。

誰だ。こんなところに来るのは。
もしや家族が来てくれたのか。

しかし、聞えてきた声は、知らない人のものだった。

(’e’)「お迎えにあがりました」

何のことだかわからなかった。
ひょっとして天国からのお迎えだろうか。
あるいは死神が最期のときを告げにきたのか。

ゆっくりと上体を起こす。
動けないわけではない。動く意欲が無かっただけだ。
自分の身体はまだ、思いのほか自由だった。

(’e’)「さあ、行きましょう」






~~~~~~~~~~~~~~~~


4 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:12:07 ID:EjYAGugM0
荒巻スカルチノフが亡くなったのは、八月の暑い日だった。
お葬式の二日後からお盆が始まった。
霊魂はお盆に戻ってくるというが、この場合スカルチノフはUターンでもしてくるのだろうか。
残念ながら彼の家族はあまりそのことに関して思慮していなかった。

彼らの意識はすべて、荒巻家の財産分割に向けられていた。
そして今日、荒巻家には相続に関係する者たちが集められていた。

荒巻家は古い豪族から続く家系であった。
しかしその後の子孫は大した活躍を見せず、財産はしりすぼみとなるばかり。
子どもたちの仲が良かったならば、その財産を有効に活用して復興を図ることもできたであろう。

しかし、もちろんそうはいかなかった。
まずスカルチノフには三人の兄妹がいた。
兄者と弟者の双子、そしてその下の妹者である。

三人はスカルチノフが50代の頃に生んだ子どもであった。
彼らだけならば仲は頗る良かった。

( ´_ゝ`)「……やっぱり来たのか」

从 ゚∀从「当然」

( ^Д^)「来ないわきゃねえだろー」


5 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:13:32 ID:EjYAGugM0
スカルチノフには前妻がいた。
その前妻との間には子どもが二人。
そしてそのどちらもスカルチノフが引き取っていた。

そしてその二人の子どもがそれぞれに家庭をもち、子どもを産んでいた。スカルチノフの孫に当たる。
さらに運が悪いことに、先の二人の子どもは飛行機事故で亡くなっていた。
結果として、二人の家系で計四人の孫だけが残ったのである。
まずシラネーヨとプギャーの兄弟、そしてハインとワタナベの姉妹である。

そしてさらに、スカルチノフは遺言でもう一人相続の相手を定めた。
いわゆる妾の子である。

(´<_` )「あんたが、ヒッキーさんか」

(-_-)「……どうも」

(´<_` )「こんなときにはじめましてとは、なんだか不思議ですね」

(-_-)「…………」

ヒッキーは虚ろな目で空を見ていた。
弟者はうすら寒くなり、その場を後にした。

お盆の真っ最中なので、みんな直接スカルチノフ家に来ることができた。
役所の職員が、この場に必要な人を全て呼びよせていた。
休みだから滞りなく集まることができた。


6 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:14:23 ID:EjYAGugM0
(´<_`;)「兄者……」

(;´_ゝ`)「おう、弟者」

小部屋で二人は顔を合わし、溜息をついた。

(´<_`;)「どうしてこんなことになっちまったんだ」

(;´_ゝ`)「しかたねえだろ。おやじが遺言に書いちまったんだから。みんな平等にあげるって」

(´<_`;)「だからって、最期に一緒に暮らしてやったのは俺たちだろ」

(;´_ゝ`)「死に目には会えなかったけどな」

(´<_`;)「あれは……あんなに急死すると思ってなかったし。
 たまたま旅行中に容態が急変するなんて、予想つくわけがないだろ」

(;´_ゝ`)「でもあいつらはそこにつけこんだんだな」

「ああ……ハイエナめ」

l从・∀・ノ!リ人「どうしたのじゃー」

小部屋の襖があき、明るい声が聞えてくる。
妹者が入ってきたのだ。


7 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:15:24 ID:EjYAGugM0
妹者はまだ未成年であり、幼さが残っていた。
30代に差し掛かろうとしている兄者と弟者には、なんだか妹者が随分と遠い世界の人に思えた。
この場の複雑な事情もそこまで話しているわけではない。
妹者にはあくまでも純粋でいてほしかったからだ。

( ´_ゝ`)「なんでもないよ、妹者。ビコーズくんとは遊んできたのかい」

ビコーズとは去年ワタナベが産んだ子どもであった。
父親はあいにく来れなかったため、ワタナベは自分で子どもを連れてきたのである。

l从・∀・ノ!リ人「小さくてかわいかったのじゃー」

目を輝かせる妹者。
なんとしてもこの笑顔だけは守らなければ、双子はそんな思いを共有していた。

( ´_ゝ`)「本当は同い年くらいの人がいればよかったんだけどな」

(´<_` )「一番近いのはプギャーじゃないか?」

l从・∀・ノ!リ人「あいつは嫌いなのじゃ。
 そんなことより兄者、そろそろみんなを集めてくれと役場の人がいっておったぞ」

( ´_ゝ`)「おおう、それは早めに言ってくれ」

いったん全員が応接室に集められた。
広い邸宅の一角。ちなみに財産はすべて和室の金庫に保管されていた。


8 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:16:24 ID:EjYAGugM0
从'ー'从「あら、兄者さん」

( ´_ゝ`)「どうもです、ワタナベさん」

ワタナベは会釈して、穏やかな笑みを浮かべていた。
正直なところ、この人が親戚の間で一番接しやすいと兄者は思っていた。
この人の姉妹であるハインはどうも気が強くて、率直に言って怖かった。
シラネーヨとプギャーは論外だ。

( ´_ゝ`)「先程は妹者がお世話になりました」

从'ー'从「いえ、うちのビコーズとよく遊んでくれて良かったですよ」

( ´_ゝ`)「そのようで。ビコーズくんは?」

从'ー'从「疲れちゃったみたいなので、客間の方で寝かせておきましたよ。
 ところで、兄者さん、さっき妹者ちゃんが面白いことを言ってましたよ」

(;´_ゝ`)「え」

途端に、兄者は嫌な予感がした。


9 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:17:34 ID:EjYAGugM0
从'ー'从「妹者ちゃん、兄者は今大変なのじゃ、だから遺産もらわないといけないのじゃって。
 なんなのかしらね~、大変なことって」

兄者は言い淀んだ。
この事実を悟られたらまずい、そう思うも、ワタナベの不審そうな目から逃れる術が無かった。

从'ー'从「まあ、後で聞きますわ」

微笑みながら振り返って、ワタナベはハインの方へと向かっていく。
兄者は今更ながら、この人物がハインの姉であることを思い知らされた。

(-@∀@)「はい、それじゃ8人全員お集まりのようで」

役場の職員であるアサピーがその場を仕切っていた。

(-@∀@)「これから私は金庫を取りにいきます。みなさんはこちらでお待ちください」

アサピーが障子を開けて、廊下に出ていった。
月明かりに照らされた中庭が良く見えた。今夜は満月だったので、明るいのだろう。


10 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:18:35 ID:EjYAGugM0
( ^Д^)「しかしあのじいさんに隠し子がいたとはなあ」

プギャーがそう言って、ヒッキーの方へと歩み寄った。
ヒッキーは応接室の隅で体育座りをしていた。

プギャーは手を伸ばした。握手だろうか。
少し遅れて、ヒッキーはゆっくりと、それに応えようと手を伸ばす。
すると、プギャーはさっと手を反らして、ヒッキーの頭を叩いた。

( ^Д^)「へへ、どんくさいやつ」

(´<_`#)「おい、何やってんだよ」

( ^Д^)「そんなにいきり立つなよ弟者叔父さん。つっても二つしか変わらないけど。
 あんただってこいつのこと初めて見たんだろ? そりゃあ同じこと思うよなあ」

(´<_`#)「……おやじが息子だと思ってんだ。ちゃんと認めてやれよ」

弟者はプギャーを睨みつけた。しかしその語調から、釈然としていないのは明らかだった。
プギャーにもそれがよくわかったのだろう、にやにやしながらその場から離れた。

弟者は兄者の方へと寄った。

(´<_` )「すまん、兄者。つい口出してしまった」

兄者は首を横に振る。
弟者の正義感については兄者も良く分かっていた。


11 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:19:17 ID:EjYAGugM0
l从・∀・ノ!リ人「弟者かっこよかったのじゃ」

(´<_` )「ありがとう、妹者」

从 ゚∀从「いやー、相変わらずこっちは空気が悪いねえ」

ハインが重苦しいものを振り払うように大きく伸びをした。

从'ー'从「ハイン、あんまり思ったことそのままいっちゃだめよ」

从 ゚∀从「だってよー、とっととお金貰っちゃえば終わりなのに、もったいぶっちゃってさ」

从'ー'从「またそんな率直に。でも確かに……アサピーさんまだかしら」

ワタナベの言葉で、その場の会話が途切れた。
和室までの距離は応接室から数メートルほど。金庫を運んでくるにしても、そんなに時間がかかるわけではない。
しかしアサピーはまだ来ていない。これはどういうことなのだろう。

(´<_` )「妙だな……俺が見にいこうか?」

( ´_ゝ`)「ああ、頼んだ弟者」

弟者は障子を開けた。
そのとたん、「アサピーさん!」と叫んで駆け出した。


12 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:20:06 ID:EjYAGugM0
その鋭い声を聞き、その場の全員に緊張が走った。

(;´_ゝ`)「おい、どうしたんだ弟者!」

兄者は慌てて、開け放してあった障子の隙間から外へ出た。
目の前に移ったのは、横たわるアサピーと、その脇に座りこむ弟者。

弟者は兄者に気付くと、そちらに向けて声を張り上げた。

(´<_`;)「だめだ、気を失ってる」

アサピーの姿は、和室の戸に足を向けて横たわる形となっていた。
まるで和室に入った瞬間に、仰け反って倒れたかのように。

( ^Д^)「おいおい、まだ手間をかけさせる気かよ」

プギャーが障子から顔を出して状況を確認し、そう言った。

( ^Д^)「もうめんどくせえ、とっとと俺らでわけちまおうぜ」

そういうと大きい足音を立ててプギャーは和室へ向かう。

(´<_`;)「おいやめとけ、まだどんな状況かもわかんないのに」

(#^Д^)「知るか」

制止する弟者を無視して、プギャーは和室の戸を開けてしまう。


13 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:21:05 ID:EjYAGugM0
(;^Д^)「な……」

兄者の目からは、ぽかんと口を開けるプギャーの姿が良く見えた。
そしてその身体が、ものすごい勢いで急に背中の方へと飛んでいく。

(; Д )「ぐへえ」

壁に叩きつけられたプギャーは、呻いたのち、地面へと倒れた。
ちょうどアサピーと同じ態勢で。

(´<_`;)「う、うわああああああ!!!」

脇にいた弟者が声を上ずらせて兄者の元へと走ってきた。

(;´_ゝ`)「弟者!!」

(´<_`;)「兄者!! あにじゃあああ」

弟者は子どものように喚いている。
兄者の前で止まり、両膝を掴んで身体を屈ませた。

(;´_ゝ`)「おい、何があったんだよ、おい!」

兄者の呼びかけに応えるため、弟者は必死の形相の顔を上にあげた。


14 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:22:05 ID:EjYAGugM0
(´<_`;)「おやじが、おやじがいた……」

(;´_ゝ`)「おやじ?」

(´<_`;)「そうだよ、おやじだよ……死んだばっかの俺らのおやじがあの部屋に」

(;´_ゝ`)「落ち着け弟者! まったく意味がわからんぞ」

(´<_`#)「だから、おやじが和室にいたんだよ! 金庫の前に立っててさ」

(;´_ゝ`)「と、とりあえず部屋に入れ、な!」

兄者は弟者を引っ張り、応接室へと連れ込んだ。
部屋に入るとすぐに、弟者はがくっと座り込んでしまう。

(;´_ゝ`)「弟者!」

(´<_`;)「構わないでくれ! 怖いんだ……」

从;'ー'从「い、いったい何があったんですか」

ワタナベが声をかけてくる。

(;´_ゝ`)「わからん、弟者がいうには、おやじが和室にいたとか」

从 ゚∀从「スカルチノフのじいさんが?」

(´<_`;)「そうだよ……化けて出たんだよ」

弟者が絞り出すようにして言った。


15 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:23:02 ID:EjYAGugM0
(;´_ゝ`)「弟者、じゃあ何か。
 おやじが化けて出て、金庫の前にいて、あの和室の扉を開けたアサピーやプギャーを吹っ飛ばしたっていうのか」

兄者の問いに対し、弟者は震えつつ頷いた。

(;´_ゝ`)「そんな……ありえねえだろ」

(´<_`#)「ありえないって……兄者も見ただろ!! さっきプギャーが吹っ飛ぶところ!!」

(;´_ゝ`)「わかったって、叫ぶなよ!」

何か言いたそうな弟者だったが、唇を噛んでまたその場にしゃがみこんだ。

( ´ー`)「……プギャーは、どうなったんだーよ」

そこで初めてシラネーヨは口を開いた。

(;´_ゝ`)「廊下で倒れてる。まったく動いてなかったし、気を失ってると思う。
 アサピーさんも同じことになってた。弟者の言うとおりなら、その、おやじに襲われたんだ」

( ´ー`)「そんなこと信じられると思うかーよ?」

(;´_ゝ`)「そんなこと、言ったって……」

言葉を繋げられなかった。
兄者自身も、弟者の話が信じられていたわけではなかったからだ。
足元で震える弟者を見下ろして、兄者は申し訳ない気持ちになった。


16 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:24:12 ID:EjYAGugM0
重たい沈黙が流れた。
誰もが口を開くことをためらっている様子だった。

ギシ……

音が聞えた。
廊下から。

兄者を含め、ほぼ全員が目を見開いた。

ギシ……

また音がする。
廊下のきしむ音のようだ。

(;´_ゝ`)「誰か……くる」

兄者は思ったことをそのまま口に出した。

从;゚∀从「おいおい、それもおやじだってのか」

声をふるわせつつも、ハインは「そんなわけねえだろ」と否定した。


17 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:25:06 ID:EjYAGugM0
从;゚∀从「だってほら、化けて出たのなら足ないし」

( ´ー`)「は、つまんないことをいうんじゃねーよ」

从#゚∀从「んだとこの」

从;'ー'从「やめなさい、ハイン!」

(;´_ゝ`)「騒がないでください! とりあえず障子から離れましょう!」

兄者はそう言って、急いで弟者を含めて全員を障子の反対側へ向かわせた。
足音はなおも近づいてくる。

影が見えた。
月明かりに照らされて、障子に映し出されるその影は、異様に小さかった。
スカルチノフの姿とは当然違う。

確かに足音は聞えるが、影は妙にふわふわと上下している。
本当に歩いて音を出しているのだろうか。

从;'ー'从「あ、あれ」

ワタナベが何かを思いついた様子だった。


18 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:26:11 ID:EjYAGugM0
从;゚∀从「どうした姉ちゃん」

从;'ー'从「いや、でも、そんなはずは」

ワタナベは頭を抱える。
目は影にくぎ付けだった。

从;゚∀从「どうしたんだよ」

从;'ー'从「見覚えが、その……」

ワタナベが言葉を出せないでいるうちに、影は障子の取っ手の位置まで来ていた。
手を伸ばす動作も無く、障子が引かれる。

从;'ー'从「ビコーズ!!」

ワタナベが叫んだ。
隙間から覗かせたその姿は確かにワタナベの息子だった。

ワタナベは駆け寄ろうとする。

从;゚∀从「お、落ちつけよ姉ちゃん!」

ハインが慌ててその腕を掴んだ。


19 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:27:06 ID:EjYAGugM0
从;'ー'从「離してよハイン! あれはどう見ても」

从;゚∀从「ビコーズなわけねえだろ! まだ六カ月もねえし、歩けてもいなかっただろ」

ハインはそう言うが、ワタナベの目はビコーズからまったく離れない。

そのとき、ビコーズの身体が、ふわり、と浮いた。

从;'ー'从「きゃあああああああ!!!」

ワタナベが絶叫する。
頭を抱えて、膝立ちになった。
ハインが慌てて姉を庇うように覆った。

从;゚∀从「な、なんだよこいつ!」

ビコーズは部屋の中に入ってくる。
浮遊しながら。

( ∵)「聞きなさい」

場違いなくらい澄んだ声が聞えてくる。


20 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:28:06 ID:EjYAGugM0
(;´ー`)「は、はは、もうしゃべれるんか、優秀だーよ」

从;゚∀从「つ、つまんねーこと言ってんなよ!」

(´<_`;)「……女の子、だったんですか」

l从・∀・ノ!リ人「ちんちんついてたのじゃ」

(;´_ゝ`)「え、なに、どんな遊びしてたの」

( ∵)「静かに」

ビコーズはその場を諌める。

その場の全員が息をのんだ。

( ∵)「私はこの家の守り神です」

(;´ー`)「は、今度は神様が出てきたーよ」

シラネーヨの煽りにも、ビコーズはまったく動じる様子はなかった。


21 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:29:07 ID:EjYAGugM0
( ∵)「どうしても伝えたいことがあったので、この子どもの身体を借りてお伝えします」

ビコーズはふらふらと動きまわるのをやめ、焦点の合っていない目でみんなを見回した。

( ∵)「あなたがたの親、及び祖父である荒巻スカルチノフは、悪霊に取り憑かれました」

(;´_ゝ`)「あ、悪霊だと!?」

( ∵)「そうです。彼は生前、さぞかし自分の不幸を呪ったのでしょう。
 死してなおも心休まらず、恨みを晴らす思いだけを増幅させ、この世に化けて出てきています」

(´<_`;)「そんな荒唐無稽な話信じられるわけが」

( ∵)「全て真実です!!」

ビコーズは一段と大きな声を出した。
シラネーヨは弱弱しく、締めの言葉を窄めた。

( ∵)「スカルチノフの魂を解放するためには、あの悪霊と戦うしかありません。
 さもなければ財宝も手に入らず、悪霊の手に落ちるでしょう」


22 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:30:06 ID:EjYAGugM0
( ´_ゝ`)「悪霊って、お金なんていらないだろ」

( ∵)「さあ、国庫にでも納めるのではないでしょうか」

(´<_` )「そこは義務的なのかよ」

( ´_ゝ`)「お、弟者、もう大丈夫か?」

(´<_` )「ああ、なんか突っ込む隙があったから」

( ´ー`)「ていうか、そんな面倒くさいなら財産なんてもういらねーよ」

( ∵)「え」

( ´ー`)「どうせ財産取り返せなくても、誰も得もしないんだーよ。
 俺は格別自分だけ損になるのが嫌なだけだーよ。みんな平等なら文句ねーよ」

从 ゚∀从「あたしも同じく」

从'ー'从「私も荒っぽいことはちょっと」

( ∵)「……まじかよ」


23 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:31:06 ID:EjYAGugM0
( ∵)「……そうですか」

( ∵)「あなた方の希望はわかりました。
 確かにそれは安全な道でしょう。
 ですがスカルチノフがそれで納得するでしょうか」

( ´ー`)「どういうことだーよ」

( ∵)「スカルチノフは別に悪霊としてここにずっといるわけではありません。
 先ほども言った通り何か恨みがあるからこそこの世に化けて出てきたのです。
 その恨みを鎮めない限り、彼は悪霊としてあなたがたを呪い続けるでしょう」

从'ー'从「それじゃ……まさか……」

从 ゚∀从「……今この場で鎮めなきゃならないってことか」

( ∵)「そうです。鎮めるためにはこの三枚のお札を彼の身体に貼り付けなければなりません」

ビコーズはどこからかお札を取りだした。
まったく取りだす素振りも見えず、まるで空間から抜き出したようにも見えた。

お札ははらりと床に落ちた。


24 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:32:16 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「身体って、実体あるのかよ」

( ∵)「ええ、物理的接触は可能です」

( ´_ゝ`)「つまり、あいつにこっそりこれを三枚張り付ければ俺たちの勝ち。
 それまでに全滅すれば俺たちの負け、そういうことか」

( ∵)「私からアドバイスできることは以上です」

ビコーズはそう言うと、地面に降りてくる。
そのまますぐに横になってしまった。

从'ー'从「ビコーズ!」

ワタナベが急いでその小さな身体による。
ハインは「おい」と声をあげたが、今回は何も起きなかった。

ワタナベは泣きながらビコーズの名前を呼んだ。
反応は無い。ただし呼吸はある。
ビコーズはもう元の幼児に戻ってしまっていた。


25 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:33:06 ID:EjYAGugM0
七人は応接間で作戦会議を開くことにした。
すでに時刻は10時を回っている。
月はもう最も高い位置を過ぎて、落ちていこうとしていた。

( ´_ゝ`)「あの和室には二つの入口があるんだ」

兄者が説明する。

( ´_ゝ`)「まずアサピーとプギャーが倒れているのが、東の引き戸。
 もうひとつ、中庭沿いの道を歩けば縁側に障子がある。南の障子、そこが二つ目」

(´<_` )「それじゃあその二つから一気に突入すればいいんじゃないか。
 片方は狙われるけど、もう片方はその隙をついて襲いかかれる」

从 ゚∀从「でも障子の側だと月明かりで見えちゃうんじゃないか」

( ´ー`)「確かに、襲われない保証はねーよ」


26 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:34:06 ID:EjYAGugM0
(´<_` )「今夜の月は12時に落ちる。成功率を上げるためにはそのあとから突入する必要があるな。
 ただ、障子の方はあの衝撃波を食らったら簡単に壊れてしまう。
 囮なら引き戸の方から突入する側にしないと」

( ´ー`)「いや、むしろ障子の側を囮に使って、引き戸から三人一気に突入すれば方がつくんだーよ」

( ´_ゝ`)「それが上手くいくとは限らないだろう。やっぱり二つの場所から交互に突入するのが一番安全だ」

从 ゚∀从「まてよ、どうやって連絡取ればいいんだよ。
 位置は結構離れているんだ、タイミングを合わせるのは難しいぞ」

( ´_ゝ`)「携帯とか、でも音を聞かれるとばれてしまうかな」

从'ー'从「幽霊なんだしそのくらいご容赦してもらいたいものだけど」

(´<_` )「どちらとも見ることができる場所から、指示を出す人が必要ってことか。
 懐中電灯とかいろいろ、音を出せずに使えそうなものはある」

从'ー'从「えっと、とりあえず整理するね。
 お札は三枚、私たちは七人。
 囮を使いながら二人ずつ突入していって、三組ずつ。司令塔が一人。
 みんなが上手くいって、ようやく成功するってことね」


27 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:35:05 ID:EjYAGugM0
(´<_` )「……あとは臨機応変に対応していくしかないか」

( ´_ゝ`)「恨まれたからってこんなめんどくさいことになるなんて」

从 ゚∀从「なあ、そんなに恨まれるって、いったい何があったんだよ」

ハインの一言で、その場の視線が兄者と弟者に集中する。

(´<_`;)「な、なんだよ」

从 ゚∀从「最期に一緒に暮らしていたのはあんたたちだろ。
 だったら一番よく知っているのはあんたたちじゃねえのかよ」

(´<_`;)「恨みったって、そりゃあ最期は看取れなかったし、そのことで恨まれても仕方ないかなと」

从#゚∀从「そんなことでこんなことになるかよ!」

(´<_`;)「だって、他に何があるって」


28 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:36:07 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「お前はどう思うんだよ、兄者」

兄者は名前を呼ばれ、目を泳がせる。
その様子を見て、ハインは目を細めた。

从 ゚∀从「心当たりあるんだろ、その様子じゃ」

(´<_`;)「やめろよ、兄者は関係ないだろ」

从 ゚∀从「兄者に聞いてるんだよ」

从'ー'从「大変なこと……」

ワタナベがぼそっと呟いた。

从'ー'从「そう、さっき妹さんが言ってたよね、大変なことって。
 それって関係あるのかな? おじいさんの恨みと」

兄者は顔を引きつらせた。
言ってしまおうか、どうしようか、迷っている。


29 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:37:06 ID:EjYAGugM0
(´<_` )「兄者、言う必要ねえよ」

弟者が諭す。

(´<_` )「そんなの関係あるはずないだろ、だって、おやじが知っているわけないし」

从 ゚∀从「なんだよ、言ってみろよ」

(´<_`#)「だから」

( ´_ゝ`)「いや、もういいよ弟者」

兄者は弟者に向かって首を振る。
それからハインとワタナベに向かい合った。

( ´_ゝ`)「借金があるんだ。
 信じていた友達に裏切られてさ。
 それで今日もらう遺産をつかって少しでも足しにしないといけない」

兄者は一気に言ってのけた。


31 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:38:06 ID:EjYAGugM0
その場がしんと鎮まる。

( ´_ゝ`)「これはおやじにも言ってない。
 いったら絶対怒られると思った。おやじ、そういうのにすごいうるさかったから。
 お金を安易に人に貸すような奴は恨まれても、ありうる話さ」

(´<_` )「兄者、そんなこと別に言わなくてもいいだろ」

( ´_ゝ`)「いや、俺のせいでみんなが恨みを買ったというなら、言わざるをえないだろう。
 とはいえこんな事情、本当は隠しておきたかったことだけど」

( ´ー`)「いや、少なくとも今の状況じゃその事情は大切だーよ」

意外にもシラネーヨが口をはさむ。

( ´ー`)「兄者、ようするにお前にはどうしてもお金が欲しい事情があるってことだーよ。
 だったら囮になるのが適役だーよ。一番成功させたがっているのはこいつなんだからだーよ」

(´<_`#)「な、おい貴様」

( ´_ゝ`)「よせ、弟者。
 別にシラネーヨが言いださなくても、俺はそう言うつもりだった」


32 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:39:07 ID:EjYAGugM0
(´<_`#)「そんな、おかしいだろ!
 兄者が上手く囮をやったとして、こいつらがちゃんと取り分をわけてくれると思うか?
 こんな事情があることを知って財産手に入れたら、
 兄者が気を失ってるうちにとっととお金持ってとんずらするに決まってる!
 恨みの原因にだってなってるんだ、自業自得だろって、言われたら何も言えないわけだし」

( ´_ゝ`)「それは事実だろうよ」

(´<_`;)「どうしたんだよ、いつもの兄者らしくないぞ。
 いつもだったらもっとおちゃらけてて、もっとのらりくらりと生きてて」

( ´_ゝ`)「そうだよ、そしてそういうところもおやじは嫌っていた。
 一緒に暮らしていたからわかるんだよ、おやじは俺よりももっとずっと真面目なお前の方を好きだった。
 あのとき、最期のときに旅行にいったのも、俺はあまり家にいたくなくて、それにお前と妹者がついてきてくれて。
 そして帰ってきたらおやじは死んでいた。 どっちにしたって恨まれるのは俺」

(´<_`#)「だからどうしてそう後ろ向きで考えるんだ! もっと落ち着いて自分を大事に」

( ´_ゝ`)「さっきまでびーびー泣いてたやつが何言ってんだよ」

(´<_`#)「なんだと、この」

从;゚∀从「おいばかやめろ」

(;´ー`)「静かにするんだーよ」

ハインとシラネーヨが、掴みかかろうとする双子を慌てて、力ずくで止めた。
腕を抑えられて、双子は肩で呼吸をしてにらみ合う。

険悪な雰囲気がお互いを包み込んでいた。


33 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:40:06 ID:EjYAGugM0
(´<_` )「あんたがそんなに気弱だとは知らなかったよ」

わざとらしく抑え込んだ声で、弟者が兄者に向けて言った。
兄者は鼻で笑う。

( ´_ゝ`)「俺もお前がそんなに怒りっぽいとはしらなかった。
 双子なのにな。わからないもんだ」

(´<_` )「何がいいたい」

( ´_ゝ`)「……自分に諦めをつけるときくらい、好きにさせてくれよ。
 どうせ双子ったっていつまでも一緒になんていられないんだからさ」

(´<_` )「……」

( ´ー`)「腕動かすんじゃねーよ。こんなところで暴れちゃだめだーよ」

弟者の肩の震えが、だんだんと小さくなっていく。

兄者も弟者も、今まで心の中で抱いていた不満をぶつけていた。
お互いにもう、引っ込みのつかない状況。

そのまま暫くにらみ合いが続いていた。


34 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:41:07 ID:EjYAGugM0
l从・∀・ノ!リ人「はい!」

場を和ませる快活な声。

l从・∀・ノ!リ人「それじゃ妹者が囮やるのじゃ!」

その場の目線が妹者に集中した。

(´<_`;)「……何言ってんだよ妹者」

l从・∀・ノ!リ人「妹者は別に、お金には興味ないのじゃ。
 だけどみんなが呪われるのは嫌なのじゃ。ほら、適役じゃろう?」

l从・∀・ノ!リ人「危ない目にあうのはみんな同じなのじゃ。
 妹者ももう高校生なのじゃ、そのくらいわかるのじゃ」

妹者は目を爛々とさせている。
無邪気さを残したまま、力強さを纏わせている。
いつの間にこんな目をするようになったのかと、兄者はふと思った。


35 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:42:28 ID:EjYAGugM0
从'ー'从「私もやる」

ワタナベが手を挙げた。

从'ー'从「囮」

从;゚∀从「な、姉ちゃんなんで」

从'ー'从「私とあなただったら、きっとあなたの方が希望があるでしょう?
 どっちにしろ半分は囮にならなくちゃなんだから、早いうちにね」

从;゚∀从「だからって」

从'ー'从「それと、兄者さん」

(;´_ゝ`)「え、あ、はい」

从'ー'从「借金、どれくらいなの?」

質問の意図がわからないまま、兄者はその額を答えた。
ワタナベはそれをきいて、うんうんと頷いた。

从'ー'从「たぶん分割された遺産だとまだカバーできないね。
 そうしたら、私の遺産も使わせてあげる」


36 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:43:53 ID:EjYAGugM0
从;゚∀从「は!? 何言ってんだよ」

ハインが動揺して、声を荒げた。

从'ー'从「ハイン、どうせ分割された額なんて大したものじゃないわ。
 だったら何かに役立てた方がいい。これから先ずっと呪われるよりもずっと」

从;゚∀从「でもそんな、財産をあげちまうなんて」

从'ー'从「そのほうが、盛り上がるでしょ?
 せっかく協力するんだし、モチベーションも上がるよ」

そういうと、ワタナベは兄者の方を向き直る。

从'ー'从「正直なところ、その件でおじいさん、あなたたちのお父さんが恨んでいたのは本当だと思う。
 でも、それはその借金よりも、そのことを隠していたことこそ恨んでいるんじゃないかな。
 実際私もこの話を聞くまでは、兄者さんに対して不信感しか抱いていなかった」

从'ー'从「でも聞いてみて安心したの。
 この人は普通に、家族を守りたいだけなんだなって、思ったの」

そういって、ワタナベは妹者を一瞥する。


37 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:44:54 ID:EjYAGugM0
从'ー'从「この子、本当はおじいさんの子じゃないんでしょう?」

えっと、誰かが言った。
きっとその場の全員が心の中で思った。

(´<_`;)「な、なんで」

从'ー'从「だって若すぎるもの。
 おじいさんは80だったはずよ。さすがに60代で子育ては望まないんじゃないかな。
 それに母さんからは、おじいさんのところに双子がいるって話しか聞いてなかったもの」

l从・∀・ノ!リ人「……妹者は捨て子だったのじゃ」

妹者はほんの少しだけ顔を陰らせた。


38 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:45:54 ID:EjYAGugM0
l从・∀・ノ!リ人「父さんは女運というのがなかったのじゃ。
 寄ってくる人がみんな遺産目当てばっかりで、しかもそれに気付くのがいつも遅かったと、言っておったのじゃ。
 だから何度も離婚して、でも子どもは嫌いじゃないからいちいち育ててしまったのじゃ」

l从・∀・ノ!リ人「そして妹者はあるとき、この家にたくさんの子と一緒に預けられたのじゃ。
 きっと噂が広まっていたのじゃ。この家には子育てが大好きなお金持ちのおじいちゃんがいるって。
 それで望んでない子どもを産んでしまった人が、預けてしまったのじゃ」

l从・∀・ノ!リ人「父さんはそこでものすごく怒ったらしいのじゃ。それでなるべく子どもを元の親に返したのじゃ。
 だけどどうしても、妹者の親だけが見つからなかったのじゃ。だから妹者は育てられることになったのじゃ。
 でももう、父さんは前ほど子育てに情熱を注げなくなっていたのじゃ」

l从・∀・ノ!リ人「父さんはつまり、人間が嫌いだったのじゃ。純粋さが大好きだったのじゃ。
 子どもは純粋だけど、いずれは育って濁ってしまうのじゃ。大人と同じになってしまうのじゃ。
 だからもう、妹者を最後に子は持たないと決めたのじゃ」

l从・∀・ノ!リ人「兄者! 父さんは兄者を嫌いなわけではなかったのじゃ。きっと、なのじゃけど。
 兄者はいつも適当に取り繕う癖があったのじゃ。それがきっと気に食わなかったのじゃ。
 だからそれを直してほしくて、つい冷たくせっしてしまっていたのじゃ」

妹者がこんなにしゃべるのを、兄者も弟者も聞いたことがなかった。
いつの間にかこんなにも成長していた。そのことに、今更ながら驚かされてしまった。

妹者はにいっと笑って、双子を見比べた。


39 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:46:55 ID:EjYAGugM0
l从・∀・ノ!リ人「きっと喧嘩していたら、いつまでも父さんは恨むのじゃ。
 ちゃんと供養するのが筋なのじゃ」

兄者と弟者は呆然として、それからお互いを見た。
もう呼吸は荒くない。
不思議と、同じことを考えているのがわかった。

(´<_`;)「ごめん」

(;´_ゝ`)「こっちこそ」

その言葉を聞いて、ハインとシラネーヨは二人の腕を解放した。
そして、シラネーヨはそのまま手をあげる。

( ´ー`)「俺も協力してやるんだーよ」

从 ゚∀从「……いいのか?」

ハインが質問する。

( ´ー`)「いいんだーよ。この話聞いて何も感じなかったら、それこそ孫じゃねーよ。
 それに、プギャーの恨みもあるんだーよ」

(-_-)「はい」

今まで聞えなかった声がした。


40 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:47:54 ID:EjYAGugM0
(-_-)「俺、司令塔やったらいいと思う」

ヒッキーに視線が集中する。

(-_-)「じっとタイミングを計るのは、たぶん一番上手くやれる。
 それに、こっそりと戦力になる。俺、影薄いから、うまくいきそう」

(´<_` )「そんなこと自分で言うなよ」

そういって、弟者はふと笑いだした。

(´<_` )「お前意外と面白いな」

(-_-)「? そうか」

ヒッキーは怪訝そうに首をかしげた。

(´<_` )「最初からそう話してくれれば、警戒もしなかったのに」

(-_-)「だって、俺は親戚じゃないし」


41 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:48:54 ID:EjYAGugM0
l从・∀・ノ!リ人「でも、父さんは遺書にヒッキーの名前も書いたのじゃ」

妹者が割り込んできた。

l从・∀・ノ!リ人「それはつまり、息子も同然ということなのじゃろう?」

そう妹者が言うと、ヒッキーは急に顔を横に向ける。

l从・∀・ノ!リ人「ん? どうしたのじゃ?」

(;-_-)「いや……なんでも」

(´<_` )「おい、お前まさか照れてるのか?」

(;-_-)「いや、そんなわけじゃないほんと」

(´<_`#)「もしその気ならちゃんと兄である俺の許可をとらなきゃ」

(#´_ゝ`)「いや弟者、それこそ俺の役目」

( ´ー`)「お前らどんだけ妹好きなんだーよ」

从 ゚∀从「シスコンってめんどくさいな」

从'ー'从「そう?」

そこでみんなの目が合って、みんなで笑いあった。
きっと作戦は成功する。そんな予感を共有し合った。

いつの間にか、みんな打ち解けあっていた。






~~~~~~~~~~~~~~~


42 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:49:54 ID:EjYAGugM0
作戦はこうだ。

ヒッキーが懐中電灯で指示をだす。
もし引き戸側の壁が照らされれば、引き戸側が突入する。
中庭の池が照らされれば、障子側が突入する。

指示を出すのは最初だけ。
あとは物音を頼りに部屋に随時突入する。
途中でヒッキーが突入する。どこで入るかは彼の裁量に任せる。

お札を持っているのは、引き戸側が二人、障子側が一人。

月は落ちても、まだ星の光がある。
そのため障子の前に直接立っていたらきっと見つかってしまう。

そこで思いついたのが、障子に斜めに飛び込む作戦だ。
一回目は中庭から見て左から、二回目は中庭から見て右から、そして三回目は直接走りこむ。
こうすれば障子はギリギリ、ばれずに突入することができる。


43 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:50:54 ID:EjYAGugM0
大きな音を立てるのも囮としてちょうどいいだろう。

たとえそれが相手にわかっていても、
物理的ダメージを与えてしまえば相手を止めることができるはずだ。
お札を持った人ならばなおさら自分から貼りにいけばいい。

今、兄者は障子の左側でその時を待っていた。
彼はやはり自分から、囮となることを志願したのである。
どうしても成功させたい、その思いは確かに正しかったからだ。

中庭が照らされた。
12時半も過ぎたころだ。

全員の呪いを解くための決死の作戦が、始められようとしていた。


44 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:51:58 ID:EjYAGugM0
兄者は自分の足が今更になって震えてるのを感じた。

でも、びびってなどいられない。

心の中で叫び、そして自分の鞄を振りかざした。

紙の裂ける嫌な音。障子に鞄が叩きつけられ、鞄が飛び込んでいく。

そのあとをおって、兄者は飛び込んだ。

戦いの始まり。

前転、そして前を見る。

もう止めることはできない。


45 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:52:54 ID:EjYAGugM0
スカルチノフはいた。
身体からは紫色の靄が出ており、見やすい。

金庫の上に立ち、木刀をかざしている。
和室のどこかにあったのか。

木刀が自分に向けて振り下ろされようとしているのがわかる。

ああ、やられる、兄者はそう思い、目を閉じた。
囮としての役割は果たした。
あとはみんな、うまくやってくれ。

心の中で、別れをつけた。

しかし、予想された衝撃はこなかった。

不思議に思って兄者は顔を上げた。

スカルチノフの顔が兄者を見ていた。
なぜか、驚いている。


46 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:53:55 ID:EjYAGugM0
なぜか。

(´<_`#)「おりゃあああああああ!!」

叫びながら走ってきた弟者は、スカルチノフにタックルをくらわせた。
彼は兄者の後に突入する予定だったのである。

スカルチノフは豪快に、畳の上に転がった。

(´<_` )「兄者、大丈夫か!?」

(;´_ゝ`)「お、おう!」

釈然としないまま、兄者は起き上がる。
なぜ自分が無事なのか。

(´<_` )「お札は一枚貼った! おさえつけるぞ」

しかし、弟者は次の瞬間、息をのんだ。

(´<_`;)「いない!?」

床に転がっていたスカルチノフの姿が、ない。

(;´_ゝ`)「まだ入るな!」


47 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:54:53 ID:EjYAGugM0
兄者は閃いて、障子に声をかける。
それが、異常事態が発生したときの合図だった。

(´<_`;)「あいつ、どこにいやがる。姿でも消せるのか!?」

(;´_ゝ`)「靄はないか? たしか身体から紫の靄がでていたはず」

(´<_`;)「靄ならまだここに……あ」

弟者はそこで気付いたようだ。
靄があるなら、そこにまだいるはず。

しかし動こうとしたときにはすでに遅かった。

( <_ ;)「ち、くしょう……」

弟者の身体は中空へと飛ばされていた。
衝撃波を食らったのか。

(#´_ゝ`)「くそやろお!!」


48 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:55:54 ID:EjYAGugM0
兄者は咄嗟に靄のある位置を掴む。
手ごたえがある。確かに身体がそこにあり、じたばたしている。

ふと、木刀が目に映った。
さっきまでは無かったのに。

(;´_ゝ`)「入れ!!」

兄者の指示。
障子の割れる音。

(;´ー`)「どこだーよ!!」

(;´_ゝ`)「こっちだ、このお」

兄者はその身体のはずのものをがっしり掴んで覆う。
シラネーヨにはすぐにわかるはず。

それなのに。

(;´ー`)「何もねーよ! どこだーよ、兄者!」

シラネーヨは部屋をくるくると見回している。
何をやっているんだ、早くしないともたないってのに。


49 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:56:55 ID:EjYAGugM0
兄者はいらだった。
しかし、そこで、ぴんとくる。

ひょっとして俺は今見えていないのか?
スカルチノフと同じように姿が消えているのか?

そして、先ほどの木刀。見えるようになった木刀。

こいつはひょっとして
自分が身につけているものだけ透明になるということなのか?

そうとあれば、することは一つ。

( ´_ゝ`)「おい、シラネーヨ!
 今から壁の方見てろ! 俺が姿を現す! その隙にお札を貼れ!」

そういって、兄者はスカルチノフの身体から手を離した。
途端に、シラネーヨが気付いた。

(;´ー`)「お前今どうやって」

( ´_ゝ`)「そこの靄のとこだ、行け!」


50 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:57:55 ID:EjYAGugM0
質問に応えている暇は無かった。
急いで紫の靄のある場所を指す。

しかし、脇のシラネーヨは動き出す前に悲鳴を上げた。

衝撃波がまた襲ったのである。

飛ばされるその姿を見て、兄者は気付いた。

また自分が残っていることに。

ふと、強い痛みが背中に走る。

(;´_ゝ`)「ぐああ……うぐっ」

呻いて、仰向けに倒れる。
首筋に何か棒状のものが突っかかっている。

見えないが、感触で木刀だとわかる。

このままでは、息ができない。


51 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:58:56 ID:EjYAGugM0
そのとき、綺麗な足が見えた。
見えないスカルチノフが壁に叩きつけられる音がする。

从 ゚∀从「よっし、入ったな!」

ハインは飛び蹴りの成果を見てガッツポーズをとる。
兄者は軽くせき込んでから、話す。

(;´_ゝ`)「よくわかったな」

从 ゚∀从「お前だけがもがいていたからな。
 てか、シラネーヨは?」

( ´_ゝ`)「あそこ」

兄者は部屋の隅で伸びているシラネーヨを指した。

从 ゚∀从「なーにやってんだよあいつ」

( ´_ゝ`)「待ってくれ、ハイン!
 お前の方がこいつを止められる!」

兄者は紫の靄、スカルチノフがいるはずのところを指した。


52 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 19:59:54 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「みえねえけど、そこにいるってことか」

( ´_ゝ`)「ああ、どうもこいつに掴まれたら姿が消えてしまうみたいだけど」

「問題ねえよ」

ハインは凄い速さで靄へと飛び込む。
感触があったのだろう、ハインはにやっと笑う。

从 ゚∀从「間接かけてりゃやり放題だ。
 兄者、早くお札を貼ってくれ」

兄者は急いでシラネーヨの身体に向かい、お札を掴んで戻る。

いまだハインはスカルチノフを組みふせているようだ。
足を中途半端に伸ばし、手を畳に引いている。
どのような姿になっているのか、相手が透明だからよくはわからない。
しかし簡単には抜け出せないのだろう。

兄者は落ち着いてお札を、透明な身体に貼り付けた。
今、その身体には二つのお札が貼りついている。
どうも透明になるのは掴んでいるものだけのようだ。
二つのお札がはっきりと見える。


53 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:00:54 ID:EjYAGugM0
从 ゚∀从「こりゃ意外と順調じゃねえか。
 おい、次を呼ぼうぜ」

ハインの言葉に兄者も同意する。

そして次の人を呼ぼうとした、そのときだった。

空気を裂く鋭い音が聞えた。

(;´_ゝ`)「え……」

言葉を失うとはまさにこのことだった。

兄者の目が見開かれる。


54 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:01:54 ID:EjYAGugM0
兄者ははっきりとその場を見た。
ハインの身体を、突然電撃が襲っていたのである。

もはやそれは、人知を超えた光景であった。

(;´_ゝ`)「あ、ああ……」

わけがわからない。

どうして自分がこんなものを相手にしなくちゃならないのか。

目に見えぬ恐怖が渦巻く。

ハインの身体はやがて動かなくなり、力なく倒れた。


55 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:02:54 ID:EjYAGugM0
紫の靄の中に、ぼんやりと人の姿が浮かぶ。
徐々に色濃くなっていく。
そうしてスカルチノフが姿を現した。

/ ,' 3「ひとつ、忠告しておこう」

初めてスカルチノフは口を開く。
その場にへたり込む兄者をしかと見据えて。

/ ,' 3「わしを10秒以上、悪意をもって拘束した場合、こうなる」

スカルチノフは気絶しているハインを顎で指した。

/ ,' 3「さてと」

スカルチノフは徐に、手のひらを障子に向けた。


56 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:03:56 ID:EjYAGugM0
/ ,' 3「これは便利でのう、こうして念じるだけでよいのじゃ」

そう言って、すぐに、轟音が響いた。
見えない衝撃が障子を襲ったのである。

甲高い悲鳴と、低い悲鳴が聞こえた。

(;´_ゝ`)「ワタナベさん! ヒッキー!!」

叫びながら、もう間に合わないことを兄者は悟っていた。

なぜこいつは、二人が障子の側にいることがわかったのだろう。
ワタナベさんはともかく、ヒッキーなど遠くに潜んでいたというのに。

/ ,' 3「無駄じゃ無駄。わしにはのう」

そういって、スカルチノフは兄者を一瞥する。

/ ,' 3「よく見えておるんじゃよ」


57 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:04:56 ID:EjYAGugM0
スカルチノフの言葉の意味はわからなかった。
もはやこいつに勝つことはかなわないのか。

妹者は、そういえば妹者はどうなった、兄者は思案する。
確か引き戸の向こう側にいたはず。

そう思いを巡らせた時。

/ ,' 3「あとは引き戸か」

そういって、スカルチノフが手のひらを引き戸にかざした。

兄者は直感した。
こいつは今、俺の心を読んだのではないか。

絶叫する。

妹者の名前、そしてスカルチノフに飛びかかる。


58 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:05:55 ID:EjYAGugM0
しかしその手が届く前に、衝撃波は発せられていた。

再びの轟音。
引き戸がはじけ飛んだ。

もしあの傍に妹者がいたならば、無事では済まないだろう。

/ ,' 3「私が干渉した結果、時空が歪んだ。ひどく曖昧な状態にな。
 今お前は歴史を作っているんじゃ。
 今のお前の一挙手一投足が、未来を作り出しているんじゃよ」

またもスカルチノフがわけのわからないことを言う。

引き戸の瓦礫が崩れきり、向こう側が見えた。

/ ,' 3「はて、誰もいない?」

兄者もそちらを見た。
何もいない。
これはつまり、妹者はまだ無事ということか。

/ ,' 3「どこに、ぬ!?」


59 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:06:55 ID:EjYAGugM0
兄者はすぐに、スカルチノフに飛びかかった。
その身体を押さえつける。

(;´_ゝ`)「10秒、だったな」

電撃が発せられる時間。
それまでに耐えればいい。

/ ,' 3「お主、まさか」

スカルチノフの言おうとしていることはわかる。

俺の思考が読まれているのならば、俺の意識があってはならない。
だから兄者は、気絶する道を選んだ。

/ ,' 3「ふん、惜しいことをするのう」

スカルチノフはもがきながら言う。

/ ,' 3「そんなことをすれば見えなくなってしまうじゃろう」

(;´_ゝ`)「なにいってんだよ、だからこうしてんだろ」


60 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:07:54 ID:EjYAGugM0
/ ,' 3「意識が無くなれば財産も無くなるかも知れぬぞ。
 妹者が成功するとも限らん。どうしてそんなものを信じられる」

(;´_ゝ`)「そんなもの、知るか。
 今協力している最中に、そんなもん考えられっかよ」

兄者はあらん限りの力を込めて、スカルチノフの両腕と両足を組みふせていた。
手触りは普通の老人と変わらない。
不思議な能力さえ使われなければ、拘束するのは容易かった。

(;´_ゝ`)「あんたがどんな思いで俺らを恨んでいたかは知らねえけどな。
 こちとら必死で生きとるんじゃい、勝手に呪われてたまるかくそ」

もうじきに、10秒たつ。

スカルチノフにはもう力が入っていない。
気がつけば紫の靄も消えていた。


61 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:08:55 ID:EjYAGugM0
/ ,' 3「時間切れじゃな」

ぽつりとスカルチノフが言う。
相変わらず意味がわからない。

その時ふと、兄者は違和感を覚えた。
でも、それが何かはわからなかった。

小さな、パチパチという音が聞える。
とうとう来たようだ。

兄者の体中が熱を帯びる。

電撃を食らうなんて経験は産まれて初めてだった。
痛みとか、そういうのも感じない。

ただ頭の中が真っ白になっていくだけ。


62 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:09:54 ID:EjYAGugM0
消えゆく意識の中で、一つだけ、言葉が聞えた。

「ありがとうなのじゃ、兄者」

妹者、間に合ったのか。
兄者はもう、その返事をすることもできないまま、意識が落ちた。






~~~~~~~~~~~~~~~~


63 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:10:54 ID:EjYAGugM0
l从・∀・ノ!リ人「お札なのじゃ」

妹者はスカルチノフの身体に手を添える。
しっかりと三枚目のお札が貼られた。

スカルチノフはそれを見て、ふっと笑った。

/ ,' 3「見事」

そういうと、スカルチノフは妹者を見つめる。

/ ,' 3「引き戸のところにはいなかったんじゃな?」

l从・∀・ノ!リ人「そうなのじゃ、障子が吹き飛んでいたから何事かと思ってそっちへ言って
 そうしたらおじいさんと兄者が何か言っていたから、障子の方の壁で聞き耳をたてていたのじゃ」

/ ,' 3「なるほど、そのうちに引き戸が壊されたが、無事じゃったというわけか」


64 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:11:54 ID:EjYAGugM0
妹者は誇らしそうにうなずく。

/ ,' 3「おめでとう、妹者、君らの勝ちじゃ」

すると、妹者はその顔を見て首をかしげる。

l从・∀・ノ!リ人「おじいさんは、本当に父さんじゃろうか?」

/ ,' 3「どうしてそう思ったんじゃ?」

l从・∀・ノ!リ人「なんというか、確かによく似ておるのじゃが……」

妹者はちらっと兄者の身体を見る。
すでに意識を失って動かない身体。


65 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:12:40 ID:EjYAGugM0
/ ,' 3「はは、結局一番妹者が鋭いのう」

スカルチノフ、もとい、その老人は大きな声で笑った。

/ ,' 3「さて、わしは行くとしよう」

老人の身体は突然、白い光に包まれた。

l从・∀・ノ!リ人「え、結局誰なのじゃ!?」

/ ,' 3「それは、いずれわかるじゃろう」

老人が愉快そうに言う。

/ ,' 3「ずっと、ずっと、おばあちゃんになるころにな」


66 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:13:39 ID:EjYAGugM0
白い光が満ちる。

妹者は思わず目を閉じた。

次に開けた時、もうすでにそこには誰もいなくなっていた。

周りには横たわる親戚たちだけ。
妹者は兄者をまずつついた。
しかし反応は無い。

l从・∀・ノ!リ人「みんな、眠ってしまっているのじゃ」

妹者はそう言って、その場にしゃがみこんだ。

l从・∀・ノ!リ人「でも、みんな仲良くなってよかったのう」

妹者は満足げにそういうと、横になる。
夏の夜、中庭から入ってくる風が心地よい。


67 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:14:40 ID:EjYAGugM0
夜もすっかり更けこんでいた。

妹者はすぐに、眠りについた。
それはもう、ぐっすりと。

これで自分の大好きな家族が崩壊する危険はなくなったのだから。
安心感が、妹者を包んでいた。






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68 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:15:41 ID:EjYAGugM0
(’e’)「おかえりなさいませ、荒巻様」

その言葉で、荒巻は目覚めた。

(’e’)「いかがだったでしょうか」

荒巻は上体を上げる。
青白いモニターと、青白い顔の男が見える。
男の白衣は白衣を着ており、学者であることがわかる。

もちろん、ここがどこかは荒巻にはわかっていた。
すでに自分が元に戻ってきたことは理解できた。

男を見て、荒巻は笑いかける。

/ ,' 3「素晴らしい気分だったのう。
 つい楽しくて必要以上に遊んでしまったわい。
 君らの貸してくれたものが非常に役に立った」


69 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:16:39 ID:EjYAGugM0
(’e’)「それはもう、この実験のためでしたら惜しみなくお貸しします。
 わが社の威信をかけたプロジェクトなのですから」

(’e’)「しかしずっとお貸しするわけにもいきません。返してもらわないと」

(’e’)「まずはご老体でも俊敏に動き回れる細胞活性剤」

/ ,' 3「あれは消耗品じゃろう。もう飲んでしもうたわい」

荒巻は口を窄めた。

(’e’)「まあまあ、リストどおりにあげただけですので」

/ ,' 3「まったく、最後には切れてしまうし、
 それにあれは終始身体からもやもやした紫の何かが出て大変じゃった」


70 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:17:40 ID:EjYAGugM0
(’e’)「仕様ですので。さて、次は衝撃波発生グローブ。
 食らった相手は必ず眠る指向性超音波機能付き」

/ ,' 3「ほれ」

荒巻は手から真っ黒のグローブを外した。

/ ,' 3「衝撃波の威力が強すぎる気がしたのじゃが」

(’e’)「人に対してだけ威力が減退する機能も備わっております」

/ ,' 3「先に言え」

(’e’)「さてお次は、護身用電撃発生装置」

荒巻はそそくさと、腹巻を脱いだ。

/ ,' 3「一瞬親戚が死んだかと思うたわい」

(’e’)「親戚相手にこれをつかったんですか?」

/ ,' 3「いろいろあってのう」


71 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:18:54 ID:EjYAGugM0
(’e’)「そうですか……さて、お次は光回折機能付指輪」

荒巻は頷いて、右手の薬指から指輪を取り外して渡した。

/ ,' 3「よく仕組みをきいておらんかったんじゃが、
 要するにその指輪に触れているものが透明になるんじゃろう?」

(’e’)「ええ、あとはそのリングをはめた指のある身体を纏うものもです。
 後から付されたものには無効ですが」

/ ,' 3「便利なものじゃのう」

(’e’)「そういう製品ですので。さて、あとは変声器ですね」

荒巻は首の輪を外す。

/ ,' 3「女声じゃったぞ」

(’e’)「その方が変え甲斐があるでしょう」

/ ,' 3「恥ずかしくて一回しか使わんかったわい」

(’e’)「まあ、そういうこともありますって」

そういうと、男は手を大きく広げて、それを示す。

(’e’)「そして最後、あなたの今お乗りになっている、わが社の新製品、タイムマシンです」


72 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:19:53 ID:EjYAGugM0
荒巻はタイムマシンを降りた。

(’e’)「実験データを送りたいので、後でお話を伺いたいのですが」

/ ,' 3「いいじゃろう。わしは無事帰って来れておるようじゃし、成功には違いない」

(’e’)「それにしても、妙なんですよね」

/ ,' 3「ん、どうしたんじゃ?」

(’e’)「どうしてあなたが選ばれたのか、その事情がなぜか思い出せないんですよ。
 ひょっとして過去を変えた影響が選考理由に関わるほどにまで大きかったんですかね」

/ ,' 3「……その選考のコンセプトはなんじゃったかの」

(’e’)「はい、身寄りのない貧しい老人を選んで過去を変えさせて気分良くしてもらい、ついでに実験データも得ようというものでした」

/ ,' 3「やれやれ、人を見下しておるのう。
 人権団体にとやかく言われそうじゃ」

(’e’)「だからこそ非公式です」


73 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:20:53 ID:EjYAGugM0
/ ,' 3「そして、それはあってるんじゃ。わしも過去に行く前まで貧困層じゃったよ」

そういうと、スーツの男は「そんなバカな」と笑った。

しかし荒巻は首を横に振った。

/ ,' 3「わしも、過去を変えていく中で記憶に変化が生じた。
 どうも過去を変えていく中で、その過去と今の私とが上手く結び付くように運命が決まっていったらしい。
 ちゃんと未来の私がタイムマシンにのって過去にやってこれるようにな」

/ ,' 3「なので、そう君が驚く理由もわかっておるぞ。
 それに、過去が変わる前の世界の記憶もあるものだから、なおさら強く思うことがあるのじゃ。
 結局この世は、タイミングがすべてなのじゃとな」

そう、わしの思惑はすべて成功した。
荒巻は心の中で言う。

かつて、私が貧困層だったころ。
恨んで恨んでしかたなかった、昔自分を助けてくれなかった親戚たち。そして不甲斐ない自分。
多大な借金を抱え、全てに見捨てられ、老人となり、そしてこの会社の実験に利用された。

そして奇妙な縁により、自分の貧困へのシフトを食い止めた。
だから、今の自分がある。


74 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:21:54 ID:EjYAGugM0
(’e’)「詳しくは専門家を交えてお話を伺います。
 それでは、今日はこのあたりで」

駐車場。
すでに迎えの車が来ていた。

/ ,' 3「わしも、随分偉くなったんじゃのう」

そう呟くと、スーツの男がまた笑った。

/ ,' 3「世界中で、あなたの名前を知らない人はもういないくらいですよ。
 世界的大富豪である、荒巻兄者、あなた様のことは」


75 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:22:53 ID:EjYAGugM0
荒巻はその言葉を聞いて、満足した。

あのあと、兄者の親戚たちは財産を結集して自分の借金をちゃらにしてくれた。
そしてそこからさらに協力して荒巻家を再興したのだ。

すべてが上手くいく、その成功は確かに、今を生きる荒巻兄者の記憶に残っていた。




20XX年、こうしてタイムマシンの人体実験は成功したのであった。




~おわり~


76 ◆MgfCBKfMmo :2013/08/17(土) 20:26:02 ID:EjYAGugM0


  (
   )
  i  フッ
  |_|

今回の百物語のために、一番最初に書きためた作品でした。

勢いに身を任せ、一気に書き終えたとき
私は自分がホラーに向いていないことを悟ったのでした。



/ ,' 3遺産相続のようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1376733867/

[ 2013/08/18 01:53 ] 百物語のようです2013 | CM(0)
[タグ] / ,' 3 ( ´_ゝ`)


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