まぜこぜブーン

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 出張版白澤図のようです












1名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:50:49 ID:NdsF8Rds0
白澤(はくたく)
森羅万象を知る神獣
その昔、とある人間に11520種の妖怪の弱点を教えたとされているが、それは少し違う
人間でも対抗できるように、妖怪に弱点を付加させて、それを人間に伝えたというのが正しい
また、妖怪というのは日進月歩の存在であり、 日夜新しい存在が生まれるものだ
新種の妖怪の情報を掴み、その存在を認めて弱点を考え、付加することが僕の仕事であり――(よくわかる!現代版白澤図より一部抜粋)


2名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:51:54 ID:NdsF8Rds0
(*・∀・)「きみの伯母さんの話をしようか」

酒のなくなったロックグラスを私に見せびらかしながら、白澤ことモララーは言った。
からん、と真ん丸の氷がそのなかで揺れて、音を立てた。
私はそれを手にとり、呟いた。

ノパ⊿゚)「モララーからその話をし出すなんて、珍しい」

(*・∀・)「たまには話したくなることもあるんだよ」

上気した頬を緩ませながら、彼は言った。
神獣とは思えない顔だ、畏れも威厳も感じない。

ノパ⊿゚)(もともとか)

思えばいつも、人も妖怪も関係なく女の子にデレデレと締まりのない笑みを浮かべながら口説いていたなぁ、などと思っていた。
もとから俗っぽい性格であった。
彼のもとで働き始めたのはつい半年ほど前であったが、出会った時もいきなり口説かれた記憶がある。
妖怪を取り締まる者というのに、こんなものでいいのかと思ったものだった。

(*・∀・)「ありがとう、ヒート」

口に放り込んだばかりの鮭とばを咀嚼しながら、彼はなみなみと梅酒が注がれたロックグラスを受け取った。
気付けば自分のグラスにも梅酒がなくなっていた。
酒を注ぎながら私は伯母について考えた。


3名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:53:11 ID:NdsF8Rds0
私の伯母は管狐だった。
伯母といっても遠縁で、ほとんど会ったことはなかった。
長い間モララーに仕えていたというが、もう何年も前に喧嘩別れをして以来、彼女は姿を消してしまったのだという。
もともと私はみなしごの猫で、伯母のことを教えてくれる者は誰もいなかったからほとんど知らない。
その伯母と長年付き合いのあったモララーも、あまりその話をしたがらない。
だから、私は内心ドキドキしていた。
彼女はいったいどんな人だったのだろう、と。

(*・∀・)「やっぱり猫又が作る梅酒はうんまいねえ」

ノパ⊿゚)「それより!早く話をしてくださいよ!」

(*・∀・)「せっかちだなぁ、きみももとは猫なのだからもう少しのんびりと」

ノパ⊿゚)「…………」

我慢できずににらむと、彼は笑いながら

(*・∀・)「悪かったよ」

と謝った。

(*・∀・)「しかし今日は夜中なのに暑いな、こういうときは古典的な方法で涼を得ようじゃないか」

ノパ⊿゚)「とか言いながらエアコン下げるくせに」

(*・∀・)「あくまでも冷やすのは気分だけだからね。さて、あれはいつの頃の話だったか……」

記憶を辿りながら、ぽつりぽつりと、次第に彼は饒舌に話をし出した。






 .,、
(i,)
 |_|


4名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:56:19 ID:NdsF8Rds0
大正の頃だったかな、まだ自宅分娩が主流だった頃の話だ。

僕と彼女は毎日毎日、新種の妖怪探しに明け暮れていてね。
今よりもっとずっと忙しかったよ。
今は星や月が霞むくらい道は明るいし、光のないところなんて滅多にないけど、昔は逆だったからさ。
暗がりが多ければ多いほど、新たな妖怪が増えるんだよ。
あの頃は文明も進みはじめて、人が暗闇を恐れなくなってきた。
無防備に触れる闇ほど恐ろしいものはないよ。
彼らはいつだって物陰や曲がり角で待ち構えている。
光を得たから人々は慢心し、妖怪に襲われることが多くなったんだよ。

とはいえ妖怪が増えすぎれば人間は滅ってしまう、人々の恐れから生まれる存在だからそうなると僕らも減ってしまう。
だから当時の僕は魑魅魍魎退治という職業を語っていたんだ。
とりあえず不思議なことが起こったらここに相談を、という宣伝をして、少しでも新種の妖怪を見つけようとしていたんだ。
え、人間に宣伝したのかって?
違う違う、人間と共存している妖怪にだよ。
獏や猫又や鬼や狸は案外うまくやっていたからね。
共存している数も多かったからこの方法はうまくいったよ。
山ほど相談が来て色々な妖怪を見ることが出来た。
それでもたまに新種でもなんでもない妖怪の相談もあったんだけどね。
今から話すのも、そうだ。


5名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:57:59 ID:NdsF8Rds0
今頃みたいな、暑い夏の最中だった。
そろそろ昼食でもとろうか、という時間になった頃に電報が届いたんだ。

「先日、不貞ニ関スル身辺調査ノ依頼ヲ受ケタ。ガ、ドウニモ人ノ仕業トハ思エヌ。詳シイコトガ全ク掴メヌユエ、白澤様ヲ紹介シタ。近日中ニ依頼主ノ男ガ行クダロウ、ヨロシク頼ム  獏ノ渋澤」

渋澤さんは私立探偵をしていた獏だった。
人間のドロドロとした感情に一番立ち入りやすい仕事をしていたから、彼の目はとてもよく肥えていた。
だから彼からの情報提供はとても重宝していた。

( ・∀・)(不貞の調査)

依頼主はどうやら男のようである。
つまり浮気をしたのはその妻であろうか?
それはまた、珍しいことであった。
浮気をされて怒りと嫉妬に狂って生き霊と化して旦那も愛人も憑き殺しかけていた、という話なら今まで腐るほど聞いたことがあったのだけども……。

( ・∀・)(一筋縄ではいかない気がするぞ)

そして、その予感は的中してしまった。

電報が届いてから三日ほどたった頃、男が一人、事務所に来たんだ。
上等な和服に身を包んだ人間だった。

('(゚∀゚∩「すみません、まだ、やっていますか?」

( ・∀・)「ええ、大丈夫ですよ」


6名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:59:28 ID:NdsF8Rds0
客間に彼を通し、僕は彼女に冷やし紅茶を出すように頼んだ。

( ・∀・)「魑魅魍魎退治屋へようこそ。僕は主人のモララーです」

('(゚∀゚∩「わたくし、海運業をしている夜乃ナオと言います」

( ・∀・)「ああ、」

と、僕は声をあげた。
ヨルノ汽船は当時有名な会社のひとつであった。
その当時、外国では戦争が起きていたから、それにともなって鉄やら生糸やらが物入りになって、日本はどんどん物を輸出していた。
当然それを運ぶには船がいるものだから、たちまち成り上がって金持ちになったのだ。

出された冷やし紅茶を飲みながら、僕は夜乃氏を見た。
先々代の社長はたしかヨーロッパだかどこだか忘れたが外国人と結したな、と思い出して、だから少し日本人離れした顔つきをしているのかと一人で納得していた。

( ・∀・)「今日はどうしましたのでしょうか?」

('(゚∀゚∩「はい、渋沢さんから聞いているかとは思いますが、妻の不貞のことで相談が」

( ・∀・)「はい」

やはり、妻の不貞であった。
しかし詳しく聞けば聞くほど、奇妙な話であり、不謹慎ながら僕は自分の予感が的中してしまったことに少し興奮していた。


7名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:01:27 ID:NdsF8Rds0
去年の秋ごろ、彼は内縁の妻との間に子供を授かったのだという。
しかし、四月頃に流産してしまった。
悲しみに暮れる妻は塞ぎこんで屋敷に閉じ籠るようになり、夜乃氏もだいぶやつれたそうだ。
ところがだ。それから一月後に、妻からこう言われたのだという。

「ナオさん、わたし、あなたの子を授かりましたの」と。

('( ∀ ∩「だけど身に覚えはないのです。そういった行為を、ぼくはしていないのです」

( ・∀・)「だから奥様は浮気をしたと?」

('(゚∀゚∩「しかし屋敷から彼女は一歩たりとも出ていないのです、来客もおりません。それは使用人から聞きました」

( ・∀・)「なるほど」

('(゚∀゚∩「最近になってぶくぶくとまた腹が膨らんできて……。産婆に来させて妻の体を調べてもらったんです、そうしたら中になにも入っていないし、赤ん坊の鼓動も聞こえないと」

( ・∀・)「……偽妊娠なのでは?」

('(゚∀゚∩「けれどもその後も腹は膨らみ続けているのです」

ギラギラとした目付きで彼は答えた。
ともすれば、人間の仕業ではないことが明らかであった。
偽妊娠は本人が自覚することで症状が減退するはずなのだから。

('( ∀ ∩「彼女の中には、一体なにがいるのでしょう」

( ・∀・)「それはまだなんとも言えません……。後日、お宅に伺ってもよろしいですか?」

('( ∀ ∩「ええ、ええ。是非」

暗い表情のまま、彼は帰っていった。
手のつけられなかった冷やし紅茶を処分しながら僕は考えた。

( ・∀・)(やはり、新種の妖怪の仕業か?)

しかし、やはり腑に落ちないというか、なんとなく違和感があって僕はずっともやもやとしていた。


8名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:04:44 ID:NdsF8Rds0
そうこうしているうちに、夜乃氏の屋敷に向かう日になってしまった。
僕は竹筒の中に彼女を入れていった。
彼女は人に姿を見られるのが嫌だったし、やっぱり竹筒の中のほうが居心地がよいとよく言っていたよ。

一時間ほど汽車に乗って、喫茶店で食事をし、それからはひたすら歩いた。
夜乃氏の屋敷はなかなか立派素晴らしかった。
どこまでも続く真っ白な漆喰の塀が屋敷をぐるりと囲んで、まるで籠のようであった。
歩けども歩けども入り口にたどり着かないものだから、干物になるんじゃないかと僕は本気で思っていた。
それでやっと、刑務所の見張りの詰所みたいながっちりした形の門扉にたどり着いて

( ・∀・)「ごめんくださーい」

声をはりあげると、それが開いた。
けれども開けた人は見当たらず、僕は戸惑いながら勝手に入って、庭を眺めていた。
松の隣に薔薇やらラナンキュラスやら、西洋の花を植えていたのはあまり頂けなかったかな。

背後からじゃりじゃりと砂を踏む音がして、振り返ると夜乃氏がいた。

('(゚∀゚∩「ああ、モララーさん。どうぞこちらへ」

( ・∀・)「はい」

夜乃氏は下駄を玄関で脱ぎ散らかし、さっさとあがっていってしまったから、僕も慌ててそれに倣った。
紳士としては心が痛んだのだけどね、なにせ屋敷が広いものだから見失ってはいけないと思っていたから……。
……ヒート、なんでそんな文句ありげな顔をするんだい?
どこからどう見ても僕は格好いい紳士じゃないか。
……うんって言ってくれよ、そこは。タラシとかそういうのはいいって、こら。


9名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:06:25 ID:NdsF8Rds0
……こほん、それでだね。
僕たちはその悪趣味な庭を一望できる座敷に通された。

('(゚∀゚∩「今、妻を呼びますので」

そう言って夜乃氏は出ていった。

( ・∀・)「……今のご時世海運業というのは、本当に儲かるものだね」

外を見ながらぽつりと呟くと

「そうでしょうとも、今は戦の真っ最中でありますから」

と竹筒から返答があった。

( ・∀・)「ところで、きみはこの件に関してどう思う?」

「まだ当人を見ていませんから、わかりません」

それもそうかと思い、僕は少し彼女と話した。
どれくらいの時間が経ったかな。
いまだ帰ってこない主人がやってこないかと襖のほうを見つめようとして。

( ・∀・)「?」

いつのまにか、座卓の上に置かれていた緑茶と綺麗に切り分けられたすいかの存在に、初めて気がついた。
どちらも三人分用意がされていた。

( ・∀・)「…………」

人の気配はしなかった。
お茶とすいかを置く音も。

( ・∀・)(薄気味悪いな)

思わずそう思ってしまった。
どうにもそのすいかを食べる気にならなかったから、僕はこっそり畳に置いて竹筒を開けておいた。
屋敷に向かう前にも喫茶店できちんと昼食をとったのに、彼女はそれをあっという間に食べてしまったよ。
管狐は大食らいでなんでもものを食べるからね。


10名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:07:24 ID:NdsF8Rds0
それから間もなく夜乃氏とその妻がやってきた。
栗色の髪をした彼女は夜乃氏の半歩後ろに下がり、おどおどとした態度だったのが印象的であった。
その、膨らみかけの腹のなかにいるものを気色悪がったりする様子はなく、むしろ僕を警戒しているようであった。

('(゚∀゚∩「彼女はアイシス、僕がイギリスのほうで旅をしていたときに見初めた人です」

リハ*゚ー゚リ「……はじめまして」

( ・∀・)「はじめまして、モララーという者です」

よろしく、というと彼女はふいと目を逸らし、腹を守るように抱き締めて。

リハ*゚ー゚リ「わたしの、赤ちゃんをとるのですか?」

ギロリと睨まれた。
流暢なその言葉が的確に僕を刺してきたんだ。
夜乃氏はなにをバカなことを言っているんだ、というような顔をして、しかし彼女はかわらずこちらを睨むから、僕は少し戸惑っていた。

(;・∀・)「……いいえ、そんな」

リハ*゚ー゚リ「ではなにをしに来たのですか?」

('(゚∀゚∩「アイ」

嗜めるように夜乃氏が名前を呼ぶと、彼女は一瞬困ったような顔をして、僕から視線を外した。


11名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:08:39 ID:NdsF8Rds0
リハ*゚ー゚リ「ナオさん、ナオさんは、わたしとの子供は要らないのですか?」

('(゚∀゚∩「そんなことはないよ、ただぼくはきみのことが心配で……」

リハ*゚ー゚リ「わたしもこの子も大丈夫、こんなにもすくすくと育っているじゃあないですか」

慈愛の表情を浮かべながら腹を撫でる妻に、お手上げだという表情をしてナオさんは言った。

('(゚∀゚∩「わかった、少しぼくはモララーさんと話しているから。きみは部屋に戻りなさい、体に障るから」

( ・∀・)(これでは一体なんのために呼び出されたのかわからないな)

妻の顔色を伺って強くものを言うことができない夜乃氏を眺めながら、僕はお茶を口にした。
僕としては、彼女の腹をよく調べてみたかったんだけどね。
……ちょっとヒート?他意はないよ?たしかにアイシスさんは美人だったけど豊満な胸もあったけど、それより怪異のほうが気になってたからね!?
僕はいつだって仕事熱心じゃないかぁ、もう。


12名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:09:35 ID:NdsF8Rds0
結局、そのあと彼女は部屋に戻ってしまって、僕は夜乃氏と二人きりで他愛もない話をするはめになった。

('(゚∀゚∩「彼女とは下宿先の借家で出会ったのです」

( ・∀・)「はぁ」

('(゚∀゚∩「たどたどしい英語で挨拶をしているうちに、アイから英語を教わることになりました。その代わりにぼくがアイに日本語を教えていました」

( ・∀・)「それは楽しそうですね」

('(゚∀゚∩「ええ、とても。イギリスへ旅に行かせてくれた父には感謝していますよ」

( ・∀・)「入籍はしないのですか?」

('(゚∀゚∩「そんなものは要りません、家族になるのに書類なんて要らないです」

さして興味のない話を受け流し、頃合いを見て僕はこう切り出した。


( ・∀・)「ところで、この家には二人だけで住んでいるのですか?」

('(゚∀゚∩「いいえ、使用人が何人かいますよ」

( ・∀・)「気配がしないのですが」

('(゚∀゚∩「一流の執事は気配を消して歩くことができるのですよ?」

( ・∀・)「…………」


13名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:11:18 ID:NdsF8Rds0
どう返せばいいものか困っていると、少し気まずそうな顔をしながら夜乃氏はこう弁解してきた。

('(゚∀゚∩「……腕はいいのですが、あまり人に見せられるほどの容姿ではないので、来客には見せないように約束させているのです」

( ・∀・)(醜女でも雇っているのか?)

ううむ、と思わず考え込んでいた時だった。

「モララーさま、モララーさま」

( ・∀・)「ん?」

竹筒から、微かな声が聞こえた。

「モララーさま、やはりこの屋敷にはなにかがおります」

( ・∀・)「ほう」

「姿を消して、こっそりと探りに行ってもよろしいですか」

僕は返事をする代わりに、竹筒の口をそっと開けた。
するすると右手を撫ぜる感触とともに彼女は出ていった。

('(゚∀゚∩「どうかしましたか?」

( ・∀・)「いいえなにも」

僕は平時と変わらぬ態度で返事をした。
そうして、またつまらない話に相槌を打ちながら、考え事をした。


14名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:12:52 ID:NdsF8Rds0
夜乃氏との子供を授かった、というのが彼女の言い分である。
性行為をする夢を見たとしたならば、インキュバスが夜乃氏の妻に憑いて、子を孕ませたのかもしれない。
インキュバスの赤子は、腹にいるうちは人には知覚できない存在だ。
つまり触診をしても、トラウベで赤子の心音を聞こうとしても、人間にはなにもわからないのである。
そうして、空の腹が膨れ、破水し、産み落とされる時に形を成す。
しかしその腹の中身が空であることを知れば、インキュバスの子は流れてしまう、という弱点がある。
一時期ヨーロッパでインキュバスと人間の合の子が爆発的に増えたときに、僕が付加させたのである。

( ・∀・)(だとすると、インキュバスでは説明がつかないんだよなぁ)

彼女は腹のなかにいるものが人間ではないと理解したはずだった。
それなのに、腹の中身は成長しているらしかった。

( ・∀・)「…………」

腹の中身。
空っぽ。
息のない子供。
子供。
水子が、腹のなかにまだいるのだろうか。


16名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:14:33 ID:NdsF8Rds0
( ・∀・)「……ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか」

('(゚∀゚∩「はい?」

( ・∀・)「奥さまがお子さんを亡くしてしまった時の亡骸の状態を聞きたいのですが」

('(゚∀゚∩「…………」

少しの沈黙の後、夜乃氏は口を開いた。

('( ∀ ∩「はい、あの子は、アイの腹のなかで息絶えておりました。もともと成長がうまくいっていなかったようで、四肢や頭がバラバラの状態で、ぼくの前に姿を現したのです」

( ・∀・)「…………」

('( ∀ ∩「流産といっても、きれいに中身を出しきったわけではありません。お医者様が手を尽くしてはくれましたが、中身をすべて掻き出すことはできませんでした」

( ・∀・)「……それはつまり、まだ奥さまの中には子供の一部が残ってしまっていると?」

戸惑いながら問い掛けると、夜乃氏は
苦虫を噛んだような顔をしながら頷いた。

('( ∀ ∩「投薬もしたのですが、あまり結果はよくなかったんです。以降は、妊娠も望めない可能性があるとも言われました」

( ・∀・)「…………」

('( ∀ ∩「わかっているんです。アイは子供を欲しがっていたから、得体の知れないものを孕んでも、受け入れてしまえたって。だけど、ぼくは、こわくて……」

目を伏せ、声を震わせながら夜乃氏は言った。
まるで懺悔でもしているかのようだった。

( ・∀・)(彼はなにも悪いことをしていないのに)


17名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:15:35 ID:NdsF8Rds0
もし愛する人がこんな状態になったら、僕は耐えられないだろう。
事実、僕は彼の妻への愛情と怪異対象に関する葛藤に心を痛めていたし、彼女の狂おしいまでの子供を求めるも理解してしまったから、いたたまれない気持ちになっていた。
どうにかしてこの二人が幸せになる方法を探したい、怪異の原因を探らなくては。
必死に頭を働かせ、子供との接触を好む妖怪を思い出していた。

片輪車、ラミア、隠れ神、トントン・マクート、雨女、ヴィルデ・フラウ、ブギーマン、ボガート……。

( ・∀・)(ボガート、)

一種の妖精だ。
妖精はエルフやブラウニー、フェアリーといった様々な種類の妖怪をいっしょくたにまとめる便利な言葉である。
実はほとんど同じ存在なのだが、彼らの容姿は目撃した人間によってまるっきり変わってしまう不思議な存在だ。
その影響で、後世には様々な容姿とたくさんの名前がつけられ、分類をややこしくしていた。
妖怪をすべて覚えなければいけない僕にとっては非常に厄介というか、面倒くさいというか、迷惑な存在であった。

彼らは基本的にいたずら好きだ。
本人たちに悪意はないが、人間にとっては洒落にならないいたずらをかましてくることもあった。
かつて森のなかで遭難した人間が、木に目印のハンカチを結びつけておいたら、ありとあらゆる色のハンカチがはためく森に変わってしまったことがあった。
妖精のするいたずらというのは、わりと生死に関わることも多いんだよ。
しかし悪いことばかりではない、人間に憑いて家事や仕事を手伝う者もいる。
靴屋の小人という童話があるだろう?
あれの中に出てくる小人も、妖精の一種なんだ。
こういう妖精は根っからの働き者で、言うことも素直に聞くことが多いんだ。


18名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:18:42 ID:NdsF8Rds0
( ・∀・)「ところでヒート」

と、モララーが私の名前を呼んだ。

ノパ⊿゚)「はい」

すっかり酔いのさめた様子で、にんまりと笑いながらこう言った。

( ・∀・)「きみと僕は仕事上のパートナーだ」

ノパ⊿゚)「そうですね」

( ・∀・)「そして僕が上司である」

うんうん、と頷いていると、さらに下衆な笑みを浮かべた。

( ・∀・)「もし僕がきみの胸を揉みたいと命れ」

ノハ#゚⊿゚)三つ)・∀・);、;'.

確かな拳の感触。
なかなかな威力のストレートパンチが入ったようである。

( #)∀・)「冗談だってば」

真っ赤に腫れた頬を撫でながらモララーは笑った。

( #)∀・)「まぁ、いくら主従関係がしっかりしていたとしてもいやなものはいやだよね」

ノパ⊿゚)「当たり前じゃないですか」

( #)・∀・)「だけども、それが案外わかってない人がいるんだよ」

真面目な顔で、モララーはそう言った。
いつのまにか頬の腫れがひいていた。
怪我をしても、すぐに治ってしまうのだ。

( ・∀・)「では話に戻ろうか」







 .,、
(i,)  ジジッ…
 |_|


19名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:22:13 ID:NdsF8Rds0
それで、その童話を思い出してだね。
僕はとある仮説をひらめいてしまった。


( ・∀・)「……夜乃さん」

('(゚∀゚∩「はい?」

( ・∀・)「ずいぶん仕事熱心な方なんですね、その使用人は」

('(゚∀゚∩「ええ、とても」

怪訝そうな顔をする彼に、僕は止めをさした。

( ・∀・)「その方たちにお礼の言葉を言ったことはありますか?」

('(゚∀゚∩「…………」

時が止まったようであった。
だけど、彼の肩が上下に大きく動いていた。
動揺を抑えようとしているようだった。

( ・∀・)「夜乃さん?」

('( ∀ ∩「……どうして」

どうして、そんなことを、聞くのか。
そんな言葉が、喉の奥でもつれているようだった。

( ・∀・)「伊達に妖怪を見ていませんから」

ふーっ、ふーっ、という彼の呼吸の音が座敷に響く。

不意に襖が、すっと開く気配がした。
するする、とたた、とすべらかになにかが動く音。

('(゚∀゚∩「な、」

なんだ、という言葉は、途切れた。

トル゚~゚)「モララーさま」

いつのまにか僕の背後に立っていた彼女の姿に驚いたのだ。

('( ∀ ∩「ひっ……!?」


20名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:24:24 ID:NdsF8Rds0
( ・∀・)「ああ、安心してください。彼女は僕の助手、管狐のトールです」

('( ∀ ;∩「くだぎつね、」

腰を抜かしていた夜乃氏は、そのうち彼女の手の中に収まっているそれを見て

('(゚∀゚∩「おいっ!」

と声を荒げた。

('(゚∀゚∩「どういうことだ、モララーさん」

( ・∀・)「どう、とは?」

('(゚∀゚∩「なぜ、これを!」

夜乃氏が指差した先には、男女の妖精。
夜乃氏に怯えているのか、お互いの体を抱きながら、彼女の手のなかでカタカタと震えていた。

( ∵)「つかまった」

( ∴)「つかまった」

('(゚∀゚#∩「そんなことはわかっている!この木偶の坊め!」

トル゚~゚)「ずいぶんと客人と使用人じゃあ態度が違うのですね」

化けの皮が剥がれたな、この男、と思っていたのは僕だけでなかったらしい。

( ・∀・)「まぁ、それはともかくね」

指でつんつんと妖精をつつく彼女を止めさせて、僕は夜乃氏にこう言った。


21名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:26:04 ID:NdsF8Rds0
( ・∀・)「彼らが犯人です」

('(゚∀゚∩「なんだと」

( ∵)「なんの?」

( ∴)「どれの?」

( ∵)「すいか?」

( ∴)「ああー?」

('(゚∀゚#∩「とぼけるな、アイになにをした!?」

取り乱す夜乃氏をじぃっと見つめながら、僕は話す。

( ・∀・)「奥さまから聞いたことがありませんか?妖精の取り替え子の話を」

('( ∀ ;∩「っ!」

取り替え子。
それは妖精が人間の赤ん坊を拐って、代わりに妖精の赤ん坊を置いていく怪異である。

('(゚∀゚;∩「し、しかしアイのなかには取り替えられるものなんてないじゃないですか!」

今にも飛びかかってきそうな勢いで、夜乃氏は叫ぶ。

( ・∀・)「しかし先程あなたが言ったじゃありませんか。奥さまのなかに胎児の一部が残っていると」

それを子供としてカウントすべきか否か、微妙なところだけれども。
しかし実際に起きてしまったことだし、妖精たちは黙って頷いていた。
もちろん、僕の言葉にだ。


22名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:27:19 ID:NdsF8Rds0
('(゚∀゚;∩「……そんな、」

呟きながら、彼は怒気を孕んだ視線で妖精たちを射る。

('(゚∀゚#∩「もとに戻せ!お前らの子供なぞ俺はいらない!!」

( ∵)「わたしもいらない」

( ∴)「こんなのいらない」

女の妖精が、どこからともなくなにかを取り出した。

('( ∀ ∩「あ、あぁ、……!!」

蜥蜴のように見えたそれは、どうも潰えた手か足のようであった。

('( ∀ #∩「かえせ、かえせ!俺の子供だ!」

トル゚~゚)「おっと」

掴みかかろうとする夜乃氏を、さっと彼女はかわした。

('( ∀ #∩「邪魔をするな!」

トル゚~゚)「邪魔などしていません。ただわたしが巻き込まれたくないものですから。下手にあなたを怪我させるわけにもいかないですし」

('( ∀ ∩「っ……くそ!くそ!!」

畳に倒れ付し、夜乃氏は泣き叫ぶ。
なんだか、子供が駄々をこねているようで少し情けなかった。


23名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:29:34 ID:NdsF8Rds0
( ・∀・)「夜乃さん、どうか気をたしかに」

('( ∀ ∩「他人のくせに、分かるものか!」

そう突っぱねられて、僕はなにも言えなくなってしまった。
たしかに他人ではあるけれど、本当に心配はしている。
気の毒にも思っている。
そしてなんとしてでもこの問題を解決したいと、僕は本当に心のそこから思っていた。
だから、夜乃氏の言葉がとても悲しかったよ。
なんにも力になれていないな、って。

……人間の赤ん坊が妖精に拐われる理由は様々だ。
召し使いとして育てたい、人間の子供を可愛がりたい、そして、様々な理由を含んだ、悪意。

( ・∀・)「きみたちは、どうしてこんなことを?」


24名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:30:52 ID:NdsF8Rds0
震える彼の背中を見つめながら、僕は妖精たちに問いかけた。

( ∵)「かれにいぎりすでみつかった」

( ∴)「みつかったらおてつだいする」

( ∵)「だけどこきょうにかえりたい」

( ∴)「このひとはとてもこわいんだ」

( ∵)「だけど」

( ∴)「だけど」

( ∵)「おれいのことばがもらない」

( ∴)「しなものももらえないから」

( ・∀・)「帰れない?」

こくこく、と妖精たちが頷く。
靴屋の小人も同じだ。
靴屋から素敵な服をもらったから、妖精は靴作りから解放されて外を出ることができた。
ありがとう、という感謝を表す言葉でも妖精は労働から解放される
逆をいえば、それらをしなければいつまでもずっと妖精をこき使うことができる。
夜乃氏はずっとこの妖精たちに家事をやらせていたのだ。
こんな広い屋敷を、たった二人の妖精に。


25名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:32:33 ID:NdsF8Rds0
( ・∀・)「……もしかして、きみたちの子供を彼らから返されることで、この家から出ていこうとしたのかい?」

首が縦に振られる。

( ∵)「だってようせいのこどもなんていらないでしょう」

( ∴)「ぶきみでおそろしいようせいのこどもなんてねえ」

('( ∀ ∩「……でていっちまえ」

ギリギリと歯が軋む音。
絞り出すような苦しげな声。
気付けば彼は、上体を起こして真っ赤な瞳で妖精たちを睨み付けていた。

('(゚∀゚#∩「てめえらの子供なんか、俺は要らねえからな!どこへでも行きやがれ!!アイを、苗床がわりにしやがって!この……!」

(;・∀・)「夜乃さん、」

さすがに止めに入ろうか、と思ったときであった。

「待って!」

と、聞き慣れない声がした。

('(゚∀゚;∩「あ、あ……アイ……!どうして部屋から出てきて……」

リハ*゚ー゚リ「だってあなたの声が、聞こえましたから……」

( ・∀・)「奥さま、いつからここに?」

僕の問いに、彼女は答えなかった。
ただ目を伏せて、こう言った。


26名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:34:20 ID:NdsF8Rds0
リハ*゚ー゚リ「ナオさん、わたしはこの子を育てます」

('(゚∀゚∩「……アイ?」

リハ*゚ー゚リ「たしかにこの子は人とは違うのでしょう。だけどわたしはあなたと結ばれる夢を見たのです」

('(゚∀゚;∩「夢は、夢だよ、アイ」

リハ*゚ー゚リ「この子はきっと神様が授けてくださったんです。もう、子供を産むことが出来なくなったわたしへの贈り物なのです」

('(゚∀゚∩「ちがうよ、アイ。そこにいる醜い妖精たちの子供だよ。君のなかにいた僕の子供とそいつらの子供を、取り替えられてしまったんだ」

リハ*゚ー゚リ「ナオさん。だけど、あの子は死んでしまったでしょう」

('(゚∀゚∩「アイ。」

リハ*゚ー゚リ「他人の子かもしれないけど、だけど今はわたしのお腹のなかで育っているのですよ?」

愛おしそうに、腹のなかの子供に語りかけるような優しい声で、アイシスさんは言った。
しかしそれは、夜乃氏の神経を逆撫でするしかなかったようだった。

('( ∀ ∩「アイ……っ!」


27名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:36:51 ID:NdsF8Rds0
起き上がった瞬間、夜乃氏は妻の腕を掴み、引き倒そうとして、

('( ∀ ∩「あ、……」

しかし、それは叶わなかった。

トル゚~゚)「なんて旦那だろうね、まったく。自分の女房に手をあげようだなんて」

するりと素早く近付いたトールが、首に手刀を食らわせたからである。
力の抜けた夜乃氏の体を彼女が支え、掴まれたほうの腕で腹を庇うように抱えるアイシスさんに

(;・∀・)「お怪我は?」

と声を掛けた。
情けないけど、それ以上のことが僕にできると思わなかった。

リハ ー リ「大丈夫です」

冷たい平坦な声で、彼女は答えた。
それ以上に、突き刺さるような視線で旦那を睨んでいて、僕は少し怖かったよ。


28名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:38:19 ID:NdsF8Rds0
( ・∀・)「…………」

コトリ、とロックグラスがテーブルに置かれた。
それにお酒を注ごうとして、まだ中身が入っていることに気付いたから、少し恥ずかしくなりながら酒瓶をもとの場所に置いた。

ノパ⊿゚)「それで?」

( ・∀・)「それでって?」

ノパ⊿゚)「その、赤ちゃんはどうしたんですか?」

私の質問にモララーは、ああ、というような顔をした。

( ・∀・)「それがねえ、分からないんだ」

ノパ⊿゚)「へ?」

話を聞くと、アイシスさんはまもなく夜乃さんの家から出ていって、赤ちゃんを産んだらしい。
しかしその赤ちゃんをしっかり育てたのかどうかは分からない。
夜乃さんは例の妖精を追い出し、精神薄弱となって会社の経営を友人に渡して病院に入ったきりなのだという。
時代が時代だからアイシスさんも夜乃さんも、もうとっくに亡くなっているのだろうけど、でも。

ノパ⊿゚)「……赤ちゃん、幸せになれたのかな」

( ・∀・)「さてねえ。案外うまく育てたかもしれないし、捨てたかもしれない。でも生きてはいるだろうさ」

こくり、こくりと梅酒を飲んで、モララーは付け加える。

( ・∀・)「一応助言はしたんだ」

ノパ⊿゚)「なんて?」

( ・∀・)「釜戸に子供をくべれば、たちどころに妖精たちが現れて引き取りに来る。その代わりにあなたの本当の赤ちゃんを返してくれるでしょうって」

ノパ⊿゚)「…………」


29名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:41:28 ID:NdsF8Rds0
釜戸に火をくべる女。
そのなかに、灰色の肌とギラギラした眼を持つ幼子を入れようとして。
一陣の風が吹く。
気付けば、その手のなかに妖精の子供は消えていた。
ただそこにあるのは、糸のように細く短い黒髪と、未成熟な冷たい肉。
もし、そんなことになっていたら。
アイシスさんは、なんて思うんだろう。
そこまで考えて、私は気分が悪くなった

ノパ―゚)「…………」

それを拭いたくて、ぐいっと酒を流し込んだ。

( ・∀・)「おや、もうこんな時間だ」

壁に掛けられた時計を見て、モララーが呟いた。

( ・∀・)「そろそろ寝ないと、妖精が仕事をしに来てしまうよ」

ノパ⊿゚)「笑えない冗談ですね」

( ・∀・)「悪かったよ」

エアコンのスイッチを切り、モララーはふと私の背後を見た。


30名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 23:42:14 ID:NdsF8Rds0
ノパ⊿゚)「どうしました?」

( ・∀・)「いや、きみの後ろのチェストの燭台がね」

振り返ると、陶器の取っ手がついたアンティークのチェストの上にある、燭台の蝋燭がついていた。

( ・∀・)「ヒート、きみがつけたのかい?」

ノパ⊿゚)「まさか」

じゃあ、誰がつけたの?

ノハ;゚⊿゚)「…………」

( ・∀・)「はは、あながち冗談でもなかったかもね」

蒼くなった私の頭を撫でながら、モララーは笑う。

( ・∀・)「大丈夫だよ、ヒート」

燭台に近寄りながら、そう言って。

( ・∀・)「もうこの話はおしまいだからさ」

口をすぅっとつぼめて。



 (
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