まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 夜の校舎のようです


935名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:17:36 ID:6SsLGCtkO

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936名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:19:10 ID:6SsLGCtkO


 放課後、野球部の掛け声を聞きながら屋上で横になったところまでは覚えている。


( ^ω^)(やらかした……)

 頭を掻きながら携帯電話を開き、内藤ホライゾンは溜め息をついた。
 午後10時。
 とっくに日は落ち、辺りは暗い。こんな時間の中学校の屋上なんかに、当然ほかの人間はいない。

 実に5時間ほど眠っていたことになる。
 有り得ない。とも言い切れない、自分の寝汚さに嫌気が差す。

 ここ最近は両親のせいでよく眠れなかった。
 毎日のように深夜まで離婚の話し合いをしていて、大体喧嘩に発展するからだ。
 それが息子──自分の押し付け合いだというのも分かっているので、知らないふりも出来ない。

 中学2年生など、まだまだ子供である。
 両親の不仲、秒読み段階の離婚、厄介者として扱われる自分。
 これで不安になるなと言う方が無茶だ。

 おかげで寝不足が続き、家に帰るのも億劫になり──こんなところでぐっすり寝入ってしまった。


937名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:20:14 ID:6SsLGCtkO

( ^ω^)(……あ)

 時間を確認するためだけに開いた携帯電話。
 画面を見ている内、両親から電話もメールも来ていないことに気付いた。気付いてしまった。
 この時間になっても帰宅していない自分に、両親は何も訊いてこなかった。

( ;ω;)「……おー」

 勝手に涙が落ちた。

 両親のことは好きだ。
 まったくの優等生とは言えないが、親や目上の者の言うことはそれなりに聞いて、
 これといった悪さもせずに──立入禁止の屋上に忍び込んでいるのはともかく──生きてきた。

 それでも親は自分を煙たがる。

 2人とも、仕事こそが我が人生だと言い張るような人間だ。
 離婚後に子供を引き取って、仕事に何らかの支障を来すのを嫌っているのだろう。
 彼らにとって、息子は既に人生の障害となっていた。

( ;ω;)「うー、……っ、ううう……」

 自分以外に誰もいないと分かっていても、内藤は声を殺して泣いた。
 家で泣くときと同じように。


938名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:21:10 ID:6SsLGCtkO


 ──帰らないと。

 一頻り泣いた後、内藤は顔を上げた。
 さすがに朝までここにいるわけにもいかない。
 携帯電話をポケットに突っ込み、枕にしたせいで少し潰れた鞄を拾う。

( ^ω^)(先生達、帰る前に屋上の見回りとかしなかったのかお……)

 右手でフェンスに掴まりながら立ち上がる。
 視界の端にちらつくものがあって、何気なくそちらを見た。

 ここからは校庭が見下ろせる。
 いくつか設置されている外灯が、淡く運動場を照らしていた。

 その中央に、人がいた。

 真っ赤な──コートかワンピースか、とにかく赤い服を着た女性が、
 こちらに背を向けるようにして立っている。

 ゆらゆらと左右に揺れているのが不気味だった。


939名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:22:19 ID:6SsLGCtkO

( ^ω^)(……変質者?)

 嫌だなあ。
 真っ先に思ったのは、そんな感想。

 学校から出るには、校庭の傍を通らなければならない。
 あの変質者(と決まったわけでもないが)に近付くのは、なるべく避けたいところ。

 内藤はその場に留まり、赤い服の女が立ち去るのを待った。



 しかし待てども待てども、女はそこで揺れ続けていた。

 仕方ない。昇降口で靴を履き替えてから、どこか適当な窓から外に出るか。

 そう結論を出し、内藤はフェンスから手を離した。
 不意に、鼻にむず痒さを覚える。

 夏といえど、夜中に屋上に居続ければ体も冷える。
 鼻と口を押さえ、内藤は控えめなくしゃみをした。


 その瞬間。
 校庭の女が、ぐるりと勢いよく振り返った。


940名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:23:22 ID:6SsLGCtkO

 子供の落書きのような顔をしていた。

 比喩でも何でもない。
 凹凸の無い、のっぺりとした白い顔に、
 ぐしゃぐしゃと乱雑に塗り潰されたような左右非対称の目と、大きく開いた赤い口だけがあった。

 内藤の思考が止まる。鞄を取り落とす。

 女は顔を内藤に向けたまま、よたよたと歩き出した。
 校舎へ向かってくる。

 内藤から見て斜め下の辺りで校舎にぶつかった女は、
 やはり内藤を見上げたまま壁に手をついた。

 そして──壁を、よじ上ってきた。
 素手と素足をぴったりと壁にくっつけて、女は慎重に登っていく。


 有り得ない。

 あの顔は何だ。お面をつけているようには見えない。
 人間が何も使わずに手のひらと足の裏だけで壁を登れるわけがない。
 そもそも──大して視力の良くない自分が、何故この距離とこの時間で、相手の姿をこうもはっきり把握出来るのだ。

 内藤の脳は、ようやく事の異常性を理解した。
 回り出した頭が警告する。


942名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:25:21 ID:6SsLGCtkO

(;^ω^)(──こっちに来てる!)

 内藤は落とした鞄を拾いもせずに、屋上の入口へ駆けた。
 ドアを開け、暗い階段を一段飛ばしで下りていく。

 とにかく、早く昇降口へ──それだけを考えていた内藤だったが、
 3階と2階の踊り場に着いた瞬間、足を止めた。

 窓の向こうに女がへばりついている。
 内藤を凝視し、


〈ぎゃはっははははははははははひひひははははぁああはははははぁはあひひあはあひひひひひひぃいぃいぃいいいぃい〉


 狂ったように笑って、右手で窓を叩き始めた。

 足から力が抜けかける。
 内藤は手すりに掴まり、2階へ下りた。
 それに合わせて声も下がってくる。

 階段から離れ、廊下を走った。

 このまま昇降口へ向かえば、間違いなくあの女も来る。
 玄関以外から逃げるとしても、まずは撒かなければならなかった。


943名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:26:20 ID:6SsLGCtkO

(;^ω^)(ど、どうしよう、どうしよう、どこに行けば──)


 からから、遠くで音が鳴った。

 聞き馴染みのある音だった。
 窓を開けるときの。

 また、笑い声。
 屋内にいるかのような反響の仕方。
 どんどん大きくなる。

 それの意味するところを察し、内藤の心臓が潰れそうなほど痛んだ。

(;^ω^)(入ってきた……!?)

 どこかの窓の鍵が開いていたのか。
 いや、そんなことはどうでもいい。

 内藤は左手を見た。男子トイレ。

 こんな場所は嫌だ。しかし、ここしかない。
 振り返って、まだ女が視界に入らないことを確認してから、男子トイレに飛び込んだ。


944名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:27:26 ID:6SsLGCtkO

 いざというときのため、一番入口に近い個室に入る。
 震える手で鍵を閉めかけて、思い直した。
 代わりに、いつでも飛び出せるように把っ手を握る。

 トイレに逃げ込むなんて、あまりにもお約束だ。
 けれど、他の隠れ場所を探す余裕などなかった。

 乱れる呼吸を必死に抑える。

 笑い声と、ぺたぺた響く足音が異様な速さで近付いてくる。
 それはすぐに男子トイレの前までやって来て、そして通り過ぎた。

 遠ざかる。
 内藤は長く息を吐き出し、ずるずると座り込んだ。





945名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:28:20 ID:6SsLGCtkO

 どれほど経ったか。

 内藤は恐る恐る、扉を開いた。
 いつまでも隠れているわけにもいかない。
 顔だけを出し、辺りを確かめる。

 声は聞こえてこない。
 今、どこにいるのだろうか。
 いなくなってくれれば、それが一番いいのだが。

(;^ω^)(……階段下りて……窓から出て、走る)

 頭の中でシミュレーションを行う。
 途中で女に会ったらどうしよう。逃げるしかない。

 深呼吸。
 隠れていたい気持ちと、いずれここで見付かったら危険だという気持ちが混じり合う。
 決心し、一歩、個室を出る。

 男子トイレを後にして、内藤は階段の方へ目を向けた。


946名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:28:59 ID:6SsLGCtkO

(;^ω^)「──……あ……」

 壁の向こうから顔が覗いていた。
 床に側頭部をつけるようにして、顔の上半分だけを出した女がこちらを見ていた。

 女が身じろぎする。
 内藤は後ろを向き、駆け出した。



 少し進んだところで、廊下は左手に折れていた。
 行くしかない。角を曲がる。

 理科室や家庭科室のプレートが下がっている。特別教室棟だ。

 一番近くにあった理科室の引き戸へ手をかけたが、鍵が掛かっていた。
 他の教室も同じだろう。

 後方から足音が聞こえる。心臓が跳ねる。

 泣きそうになりながら再び走ると、一つだけ、教室の入口が僅かに開いているのを発見した。
 被服室。

 迷いながら振り返る。
 女はまだ曲がり角まで来ていない。だが、足音の近さからして、もうそこまで迫っている。
 考える暇はなかった。


947名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:30:30 ID:6SsLGCtkO

 被服室に入って、内藤は教卓の下に潜り込んだ。
 縮こまり、早く通り過ぎろと祈る。

 ああ、こんなことなら、屋上など行かず、さっさと家に帰っておけば良かった。
 そうすれば、きっと今頃、両親の険悪な雰囲気から逃れるために友人と下らないメールなんかして──

(;^ω^)(メール……携帯!)

 そこでようやく、彼はポケットの中、携帯電話の存在を思い出した。

 両親に、いや、いっそ警察にでも電話すれば、きっと学校に来てくれる。
 多少怒られることなど、今の恐怖に比べれば何ともない。

 内藤は携帯電話を取り出し、開いた。

 足音が大きくなる。
 はっとして、携帯電話を胸元に押しつけた。

 大丈夫だ。トイレに隠れたときも、奴は廊下を過ぎ去っていくだけだった。
 いま数秒間だけやり過ごせば、あとは電話をして、助けを待てばいい。

 汗がこめかみを伝って落ちる。

 家庭科室の前で、足音が止まった。


948名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:31:49 ID:6SsLGCtkO

(;゚ω゚)(……何で止まるんだお……)

 足音が室内に入り込む。
 女は机や戸棚を叩いて回っているようだった。

〈……うー、ん、んー……んー……んー……〉

 先程の笑い声とは正反対の、低く静かな唸り声が漏れている。

 内藤は口を押さえ、体を一層縮めた。
 来るな。来るな。出ていけ。早く。

 一際大きな物音。
 続けて、かちかちと軽やかな音が鳴った。

 ──金属が擦れる音だ。

 鼓動が激しさを増す。
 戸棚に並べられた裁縫道具の数々を思い浮かべ、指先が震えた。


949名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:33:06 ID:6SsLGCtkO


 そのとき。

 内藤の携帯電話が鳴り響いた。


 唸り声が止まる。
 体が動かない。ああ。今さら腰が抜けるなんて。

 呆然としながら、携帯電話の画面を見る。

 父の名前と番号が表示されていた。


950名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:35:27 ID:6SsLGCtkO

( ;ω;)「……父さ、ん」

 こんなときなのに──嬉しかった。
 現実逃避としての感情だったのかもしれないが、それでも。

 父が電話をくれた。
 夜中になっても帰らない自分を心配して。
 電話を。

 内藤は泣いていた。身に迫る恐怖から。
 口元だけは笑っていた。正しい理由など分からないけれど。

 通話ボタンを押し、携帯電話を耳に当てた。

( ;ω;)「と、父さ、父さん、助け……」

『──……ホライゾンか?』

( ;ω;)「うん、うん……」

 最近、父と会話らしい会話をしていなかった。
 家に帰って、たくさん話をしたい。
 両親が自分を嫌っていても、自分は2人が大好きなんだと伝えたい──


『……番号を間違えたな。お前に掛けるつもりじゃなかったんだ』


 それだけ言って、電話は切れた。


951名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:37:14 ID:6SsLGCtkO

 教卓の上から、逆さまの顔と手が下りてくる。

 右手に大きな針。


 内藤は、それを眺めることしか出来なかった。





 夜の校舎の片隅で、笑い声とも泣き声ともつかぬ声があがって、消えた。


952名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 22:39:19 ID:6SsLGCtkO

  (
   )
  i  フッ
  |_|



( ^ω^)百物語のようです2013( ω  )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1372396645/

[ 2013/08/17 21:30 ] 百物語のようです2013 | CM(0)
[タグ] ( ^ω^)


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