まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 ('A`)はしあわせな村の一員になるようです


872名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:22:55 ID:rA6TgEHU0

  .,、
 (i,)
  |_|




873名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:24:34 ID:rA6TgEHU0

 行方不明になったはずの親戚から手紙が来た。

 内容はとても簡素なもので、家族に対する謝罪もなければ安否を確信できる言葉もない。
 あったのは記録――日記だけだった。

('A`)「このあたりのはずなんだが」

 手紙には村の場所と、その村での出来事が記されていた。それだけだ。
 まあ、親戚の行方を知る手掛かりになる何かがないかと、ダメもとで来てみたってわけだ。
 家族の中で一番暇だった俺が。うるさいニートで何が悪い。

('A`)「帰りたい」

 見渡す限り木。右も木。左も木。上も木。
 生き物の姿はどこにもなく、背の高い針葉樹林が静かに立ち並んでいる。
 足元はぬかるんでいて歩くたびにピシャピシャ音を立てる。
 道中で拾った緑の実をかじる。独特の甘さが口の中に広がった。首筋を掻く。

('A`)「何もなさそうだし……帰ろうかな」


874名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:25:35 ID:rA6TgEHU0

 森は静かに葉を揺らすばかりで、村のむの字はどこにも見当たらない。
 そもそも手紙の内容だっておかしかったのだ。きっとだれかのいたずらだったに違いない。
 んで、俺はありのままを伝えればいいんだ。責められはしないだろう。手掛かりは何もなかったと。

 さて、日が落ちる前に森を抜けなければ。木の実を口の中に詰め込む。
 針葉樹林は日中でも薄暗い。日が暮れてしまえば帰れなくなってしまうだろう。
 180度回転して来た道を戻る。

 足が止まる。

('A`)

 ……グス……ッウ……ッ……

(;'A`)

 人の声が聞こえた。子どもの泣き声、のようだ。
 放置して帰るのも良心がいたむので、とりあえず声の方を覗いてみる。

(;<;*)「いたい、あつい。あついよ」

 いたのは男の子だった。
 膝に顔をうずめて泣きじゃくっている。


875名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:26:44 ID:rA6TgEHU0

('A`)「お前、迷子なのか?」

(;<;*)「うぇ……ぅ……あ、れ?」

 男の子が立ち上がる。
 どうしてここにいるのか分からないようで、あたりをきょろきょろ見渡している。

('A`)「……俺はドクオ。お前は?」

 とりあえず自己紹介をする。幹の陰から。
 びくりと身体が揺れる。初めて俺のことを認識ようだった。
 男の子は涙でいっぱいの目をこする。ちらりと見えた目は森を映したような深緑をしていた。

(う<‐*)「おとじゃ。…………どっくん。どっくん」

('A`)「どっくん……まあいいけど。お前このままじゃこの森で凍死すっぞ。ほら、ついてこい」

 伸ばした手を弟者の手が握る。
 じめっとした感触に手を引きそうになる。さっき涙を拭っていたから当然だろう。深呼吸する。
 ブチ。弟者が一歩進むと同時に何かが抜ける音。

(・<・*)「どっくん、いっしょ。いく」


876名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:27:39 ID:rA6TgEHU0

 俺の手をぎゅっと握り、満面の笑みを浮かべる。
 それは年相応のもので、不思議と安心感がある。
 怖さなんてどこかに飛んで行ってしまった。

('A`)「まったく、お前のせいで道忘れるところだったじゃねえか」

 目印を幹に貼る。
 ここを左にまっすぐ進めば森の外に出られる。

(・<・*)「おなかすいた」

('A`)「とりあえず出てからな」

(;<;*)「おなか、すいた」

(;'A`)「あーもう。分かったから泣くな、頼むから泣くな」

 子どもに泣かれるとどうしたらいいか分からない。
 首筋を引っ掻く。

(・<・*)「ごはん、ごはん」

('A`)「今これしかねえぞ」

 リュックの中からおにぎりを出す。ここに来る前コンビニで買ってきたものだ。
 弟者は渡されたおにぎりを見て首をかしげている。


877名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:28:41 ID:rA6TgEHU0

(・<・*)?

('A`)「どうした」

(・<・*)「これ、なぁに?」

('A`)「おにぎり、だ」

(・<・*)「おにぎり?」

 弟者はおそるおそる、おにぎりのにおいを嗅ぐ。
 それでもよく分からなかったようで耳をぴくぴくさせていた。

('A`)「米で作ったボールって言ったらいいのかな……
    なんだお前おにぎりも食べたことないのか?」

(・<・*)「うー、だって、これ、はじめてみる、もん。
     これ、あにじゃに、わたしてくる!」

 そう言い残して弟者は森の奥に消える。変な子どもだ。
 急に現れたと思ったら消えた。第一あいつは迷子じゃなかったのか。
 まあ……道を知っているみたいだし大丈夫そうだ。


878名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:29:56 ID:rA6TgEHU0

 かといって、このまま放っておいてしまうのもなんだか気が引ける。
 追いかけようとしたら今度は背後から荒い呼吸が聞こえた。
 慌てて振り返ると眉の垂れたおっさんがこちらを見ていた。

ハァハァ(;´・ω・`)「おや、鬱田さんじゃないですか」

(;'A`)

 顔面汗だくの変なおっさんだった。やけに息が荒いのも気持ちが悪い。
 ここに住んでる人たちは急に現れるのがマナーなのだろうか。
 というか、なぜ俺の名前を知っているんだこいつは。
  
(;´・ω・`)「ああ、驚かせてしまってすまないね。僕はショボン。
      君のおじいさんの友人で、君のおじいさんも昔はここの村の人だったんだ。
      君も小学校に上がるまではここの村に住んでいたんだよ?」

('A`)「え……そうなのか?」

(;´・ω・`)「ハァハァ覚えていないのも無理はないよ。ここはすっかり寂れてしまったからね」

('A`)「それはそうだとしても……なんでそんなに汗だくなんだ」

(;´・ω・`)「さっきあそこで薪を割っていたんだ。
      どうせ宿もないんだろう、僕の宿にくるといいハァハァハァ」

 なぜだろう、身の危険を感じる。

(;'A`)「い、いや、それは悪いよ流石に」

(;´・ω・`)「遠慮しなくてもいいのに。君のおじいさんと僕はとっても仲がよかったんだよ。
      来てくれたら村の超極秘の秘密も見せてあげるよ? ハァハァハァ」


879名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:30:56 ID:rA6TgEHU0

 半ば強制的に連れられた建物は、それはそれは大きな宿だった。
 弟者とは宿の案内が終わってからまた合流することにした。

(´・ω・`)「まだ近い昔の話、この村に双子が生まれたんだ。
      しかし不幸なことにこの村では双子というのは忌み嫌われる存在だった。
      双子は村から追放され、なすすべもなく死んでしまった」
 
 案内された地下に降りると、長い廊下が出現する。その両脇には蔦が絡んだ扉が何枚も並んでいた。

(;'A`)

 不気味だ。薄暗いから、という理由だけでない。
 壁や扉、床、天井、ところどころに植物の根っこや蔦が張り巡らされている。
 今にも何かが襲い掛かってきそうなほどこの場の空気はどんよりしていた。少し、息苦しい。 

(´・ω・`)「この蔦は――ああ、いや、中で話そうか」

 ショボンさんが近くのドアノブをひねる。
 重い音を立てて、ゆっくりと部屋の中に廊下の光が差し込む。

(´・ω・`)「どうぞ」

 まるでお茶を出すような声色だった。


880名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:31:58 ID:rA6TgEHU0

(;'A`)

 部屋いっぱいに広がる植物の根。そして部屋の中心におかれた寝台には人――らしきもの。
 蔦と根っこでがんじがらめにされていて、人間らしい原型はほとんどなかった。
 ほとんど骨と皮であるせいだろうか。
 近づいて顔を見てみると、それとどことなく探している親戚に似ているような気がした。

(´・ω・`)「これこそが呪いさ」

('A`)「のろ、い?」

(´・ω・`)「そう。呪われた村人はこうやってヤドリギのご飯にされてしまうんだ。
      でも、不思議なことに幸せな顔をしているだろう」

 蔦から垣間見える顔は確かに笑顔だった。
 同時に感じる強烈な違和感。首筋をひっかく。

('A`)「ああ……どうしてこの人は笑ってるんだ。
    普通は歪んでてもおかしくないのに」

 死因は知らないが、笑いながら死ねるなんてことはほとんどないはずだ。
 納棺前に穏やかだったりするのは、だいたいが手を加えて表情を整えているからだ。

(´・ω・`)「至極簡単なことさ。幸せだからだよ」

 ショボンさんは当たり前であるように断言した。


881名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:32:47 ID:rA6TgEHU0

(´・ω・`)「双子はね、みんな幸せになってほしいと願う優しい子たちだったよ。
      だから呪いと言っても恐ろしいものではないんだ。
      幸せになるおまじない。永遠に幸せになるための手段とも言える。
      ほらごらん、幸せな顔を見れると幸せな気持ちになれるだろう?」

 有無を言わさないような雰囲気に言葉を呑み込む。
 ショボンさんってこんな人だったか? 昔の記憶を手繰るが何も思い出せなかった。

 心の中で親戚に別れを告げ、部屋を出る。
 廊下に連なるたくさんのドアの向こう側にも、きっと同じしあわせな光景が広がっているのだろう。

('A`)(あれ……端っこのドアだけ蔦で埋め尽くされてる)

(´・ω・`)「ちなみに廊下の端に見えるあの蔦のドアのなかはね、ついさっき亡くなった人の部屋なんだ」

 痒い部分が痛む。ガリガリ。

('A`)「その部屋にも――あるのか」

(´・ω・`)「うん。見るかい?」

('A`)「……いや、いい」

(´・ω・`)「まあ、見せられないんだけどね」

('A`)「なら聞くなよ」

 ショボンさんはくすくす笑うと、次は一階に案内してくれた。


882名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:33:42 ID:rA6TgEHU0

 こちらは先ほどと雰囲気が変わり、テレビにソファ、生け花、と落ち着ける空間だった。
 ただし、人は俺たち以外にだれもいない。

(´・ω・`)「部屋の準備をするからちょっと待っててね」

 ショボンさんを見送ってからソファに座る。
 思っていたよりも疲れていたようで足が石のように重かった。

('A`)「……気味悪ぃ」

 一番驚きなのは、あんな光景を見たにもかかわらず平然としている自分である。
 仮にも、この宿の地下には死体があるのだ。それなのに、どうでもないことのように受け入れてしまっている。
 変なこと続きで心身ともにもう限界なのかもしれない。親戚も――あんな形で発見することができたしな。

('A`)「やっぱり圏外かよ……お決まりだな」

 気分転換に誰かの声が聴きたくてスマホを取り出すが、このザマだ。
 充電が勿体ないので電源を落とす。

 (  _ゝ )

 刹那、暗くなった画面に映る顔。
 反射的にふり返るとそこにはショボンさんがいた。
 スマホをポケットの中にしまう。しん、こきゅう。

(´・ω・`)「おまたせ、部屋の準備ができましたよ」

('A`)「ありがとう」


883名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:34:47 ID:rA6TgEHU0

 案内された部屋は、ごく普通の部屋だった。窓からは外の森がよく見える。
 部屋の中には鉢がいくつか置いてあって、どれも念入りに手入れされているのか青々と茂っていた。
 ショボンさんが入口付近の苗木に笑いかける。幹に巻きついた蔦を撫でる手つきが優しい。

(´・ω・`)「さっきはありがとうな。
      でも、もっとおいしいものがいいなァ」

('A`)「……木の実か何かのことか?」

(´・ω・`)「あ、ああ。こいつはとっても美味しい実をつけるんだ。
      君もここに来る途中で食べただろう?」

(;'A`)「えっ。どうしてそれを知ってるんだ」

(´・ω・`)「簡単な事さ。ここに来る人は必ず食べてるからね。
      お礼を言ってあげるとすごく喜んでくれるよ」

 ショボンさんは最後ににこりと笑う。

(´・ω・`)「鬱田さん、ずっとここにいてもいいんですよ?」

('A`)「いや……俺には家があるし、無理だよ」

(´・ω・`)「そう。とりあえず、今晩はどうぞごゆっくり」


884名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:35:45 ID:rA6TgEHU0

 *  *  *

 タダで泊まれるということで、結局ショボンさんの好意に甘えさせてもらった。
 気味悪いことには気味悪いが、このまま家に帰る元気がないのも事実だった。
 引き出しにあったライターをポケットに入れる。何かあったときのためだ。

('A`)「おっとと」

 つまずいて転ぶ。その拍子に机の上の荷物を床にばらまいてしまった。

(;'A`)「っち、ついてねえな」

 適当に拾い上げカバンに詰めなおす。
 入口付近にまで転がったティッシュを拾ったとき、少しだけ湿っていることに気が付いた。

('A`)「……なんか零したっけか?」

 手さぐりで湿っているところをたどるとどうやら部屋の外に続いているようだった。
 カツンカツン。音は窓の方からだ。カツンカツン。あーはいはい急かすなって。
 振り返ると窓の外で黄緑色の耳がぴょこぴょこ動いていた。

(・<・*)「どっくん!」

 カツカツと窓を叩いていたのは弟者だった。
 ぴょんぴょん跳んでいるからか顔が引っ込んだり出てきたりしている。

('A`)「そっち行くからちょっと待ってろ」

(・<・*)「うん、まつ! やくそく!」

 満面の笑みが見えて、消えた。


885名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:36:36 ID:rA6TgEHU0

 外に出て弟者の姿を探す。嵐のような子だからな、もしかしたら森の中に隠れているかもしれない。
 自室の窓の下に姿がないことを確認して森の中に一歩踏み込む。
 後ろから何かに抱き着かれた――黄緑色の耳がぴこぴこ動いている。

(*'A`)「おまたせ」

(・<・*)「えへへ、どっくんだぁ」

 ぎゅっと手を握られる。

(*'A`)「これからどうするんだ?」

 少しの間でも、あの場所から離れられることが嬉しかった。
 それに、この無邪気な笑顔を見ているとなぜか安心する。

(・<・*)「うーん……」

 弟者が首をかしげる。何も考えていないあたり本当に子どもなんだなとほっこりする。
 唇をへの字にまげて悩んでいる弟者の目を見ていると――ショボンさんが言っていた言葉が浮かんだ。

(*'A`)「木の実美味しかったぞ……ありがとな」

 近くの木を撫でるとなぜか弟者が笑顔になった。

(・<・*)「ありがとうー」

(*'A`)「なんでお前が礼言うんだよ」

(・<・*)?


886名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:37:16 ID:rA6TgEHU0

(・<・*)「そうだ! いっしょに、いこ!」

 ぐいっと森の中へ引っ張られる。
 思っていたより力が強く、抵抗も虚しく引きずられてしまう。

(;'A`)「ど、どこにっ!?」

(・<・*)「ごはん、おいしかった! あにじゃも、ありがとういってた!
      あいたいって! どっくんと、なかよしに、なりたいって!」

 弟者はぴょんぴょん跳ねながら兄者という人物について説明しだす。
 進んでいる森の先には人の住めそうな場所があるなんて想像ができない。

(;'A`)「あにじゃって?」

(・<・*)「さすがなきょうだい、だよ!」

 周りの景色に蔦が増える。それと地面はだんだんぬかるんできて進みにくい。
 きょうだい、という言葉に思考が止まる。可能性がないわけじゃない。
 弟者は、もしかするとショボンさんの言っていた――「ここだよ!」

(・<・*)「ここ。ぼくと、あにじゃの、おうち!!」


887名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:38:28 ID:rA6TgEHU0

 たどり着いたその空間は少し開けた場所だった。
 周りを背の低い木に囲まれ、蔦がそれぞれの木をつなぐように伸びている。
 中でも大きな木が一本。その木の根の半分は湖に浸っている。
 それは綺麗な湖だった。限りなく透明で、手にすくうと薄水色をしていることが分かる。
 底を覗く。思ったより深かった。

('A`)(吸い込まれそうだ)

 水面に手を入れる。ぴちゃぴちゃと掻き回せば波紋が暴れる。
 身体が前に傾く――落ちる、そう思った瞬間、手首を捕まれた。

( ´_ゝ`)「やだっ、そんなまじまじと見ないでどっくん」

Σ(;'A`)ビクゥ!!

 湖の中から男が出てきた。正しく言えば水が男の形になった。
 どことなく弟者にそっくりな容貌。にっこり笑みを浮かべるところは特にそっくりだ。

( ´_ゝ`)「こんにちはどっくん。俺はァ弟者のお兄ちゃんです。
       湖に住んでるよ! つかもう湖is俺って感じなんだけどね。
       綺麗って思ったでしょ、ね、綺麗でしょわたしっ」

 言っていることはただの変態のそれだが。
 おかげで、というかそのせいで、というべきか。目の前の事実にたいした驚きを感じない。


888名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:39:11 ID:rA6TgEHU0

('A`)(こんな幽霊嫌だな……)

( ´_ゝ`)「あふん」

('A`)(なにこいつきめぇ」

( ´_ゝ`)「どっくんとやら、本音が見え」

('A`)「ドクオです」

( ´_ゝ`)「ドクオくん、本音が見え」

(・<・*)「なになにー?
      あにじゃ、きもいの?」

('A`)「うん、弟者くんはあんなふうになっちゃダメだよってことだよ」

( ´_ゝ`)「登場してからわずか数秒でこの仕打ち!
       ドクオくんったら辛辣なんだからっビクンビクン」

(・<・*)「あにじゃ、うるさい」

( ´_ゝ`)「いやん、実の弟まで冷たい!ハァハァ」

('A`)

( ´_ゝ`)「ああ、ごめんなドクオくん。そしておかえりこの村へ。
       俺、お前に聞きたいことがあって、それで弟者に連れてきてもらったんだよ。
       俺は水がないと動けないからなァ、ほんとめんどくさい身体」


889名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:40:01 ID:rA6TgEHU0

( ´_ゝ`)「ドクオくん、幸福とはなんだと思う?」

('A`)(急に真面目な話になったな)

 ショボンさんと蔦に絡まれた人の表情が頭に浮かぶ。
 幸せ、とはなんだろう。

('A`)「……」

 答えることができなかった。

( ´_ゝ`)「幸福っつうのはなァ、実はとても単純なものなのだ」

(・<・*)「みんな、なかよし!」

( ´_ゝ`)「例外の俺たちにはそれが許されなかった。
       双子だからって理由だけで、村中から石を投げられたよ」

('A`)(双子……やっぱり弟者は……)

(・<・*)「んー!! いたいの、だめ! しない! かなしい」

( ´_ゝ`)「ははは、弟者は優しいな。酷いことたくさんされたのにな。
       そんで、森に追放された俺たちは、残念ながらただの子供だった。
       何もできるはずがなかったんだ」

(・<・*)「なか、みずのなか。あにじゃ、みずのなか」

( ´_ゝ`)「ふふふ、生憎俺は泳げなくてな。
       そして弟者は餓死して木の養分になったんだよな。
       ちなみに弟者が小さいままなのは弟者の“ヤドリギ”の成長に関連してるっぽい」


890名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:41:11 ID:rA6TgEHU0

(う<⊂*)「しくしく。さみしい。かなしい」

( ´_ゝ`)「悔しいことにな。なぜみんな仲良くなれないんだろうな。
       先入観ですべてを決めてしまうんだろうな」

(・<・*)「ね。なんでなんで?」

( ´_ゝ`)「知るすべなど俺たちになかったが、一つだけわかったことがある」

(・<・*)「きらきら! あにじゃとまた、いっしょ!」

( ´_ゝ`)「優秀だからな俺らは、やっと気付けたのだ。
       不幸者が率先して幸せな世界を作ることが、しあわせになる一歩なのだとな」

(・<・*)「らっき、はっぴ! みんな、なかよし、しあわせ!」

( ´_ゝ`)「うぬ。簡単に言うとそういうことだ」

(・<・*)「いいでしょ!」

( ´_ゝ`)「どうだドクオくん。俺たちの理想のために、お前の力を貸してくれないか」

(;'A`)「……具体的には何したらいいんだよ」

( ´_ゝ`)「んーそうだなァ。ずぅっとしあわせになってくれるだけでいいわ。
       村人みんなと仲良しこよししててくれ」


891名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:42:41 ID:rA6TgEHU0

(・<・*)「でも、このままだと、けんかするよね?
      だから、おてつだい、する!」

 見てるだけで幸せになれるしな、と兄者は付け足す。
 それは要するに、俺にあの寝台の人間のようになれと言っているのだろう。
 蔦の餌食になれと――おまじないをかけられろと。

(;'A`)「……断ると言ったら?」

( ´_ゝ`)「そいつァ聞けないな。ドクオくんもこの村の住人だったわけだし」

(・<・*)「だめだよ。どっくんは、いっしょ! やくそく、した!」

( ´_ゝ`)「というわけだドクオくん。悪い話ではないと思うぞ?」

(・<・*)「ね、どっくんもしあわせになろう?
      おいしいきのみ、たくさん。ずうと、あそべる。いっぱいいっぱいたのしいよ!」

 弟者が俺の首筋に手を添える。
 何かが巻き付くような感覚に近いそれに、ぞわりと全身に鳥肌が立つ。 

(;'A`)

 とっさにはねのける。
 しかし弟者はあの笑顔のまま、また俺に手を伸ばしてきた。


892名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:43:31 ID:rA6TgEHU0

 このままじゃやられる。
 何かないかとポケットを探る。あった。ライターだ。
 ライターで紙に火をつけて弟者に突き出す。

(;'A`)「いくらお前でも、これ以上近づいたら燃やすぞ」

(・<・;)「ど、どっくん! あぶない、やめて?」

 弟者が後ずさる。ばかめ、子供とはいえ油断しすぎだ。
 弟者だけではない。兄者は俺に情報を流しすぎた。
 弟者の正体が分かってしまうぐらいに。

(;'A`)「じゃあな!」 

 一番大きい木の幹に燃えた紙を投げる。
 火はすぐに木に移り、木を――弟者を燃やし始めた。

(;<;*)「あ゛………ああ、っ……あああああ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁあああ」

 兄者はあっけにとられているのかじっと俺と弟者を見ているだけだった。

(;<;*)「あつい! あついよ! あ、づぃいいい゛い゛い゛いいいい!!!!」

( ´_ゝ`)「……」

 金切り声をあげて弟者が地面に崩れ落ちる。
 やはりあれが“宿り木”だったようだ。木はものすごい勢いで燃え始める。
 ライターをしっかり握りしめ走る。


893名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:44:34 ID:rA6TgEHU0

(;'A`)ハァハァ

 方向感覚が分からないがとどまっているよりマシだろう。
 やはり兄者は湖から動けないようだった。しかし問題は弟者だ。
 ここは森の中。言わば弟者の中でもある。宿り木を燃やしたとはいえ、油断はできない。
 数十歩先の草むらが揺れる。弟者の上半身が見えた。

(;'A`)「くっそ、ついてくんなよ!!」

 半分ただれた身体。手で草をつかんで這いながら追いかけてくる。
 走る。蔦につまずき転ぶ。痛み。

(;<.:#_「どっく……あづ……ぃ、」

 苦しそうに弟者の手が伸ばされる。

(;'A`)「そ、りゃっ、燃えてるから、なぁ!」

 捕まったら終わりだ。反射的に立ち上がり駆ける。
 しかし、これ以上走り続けるのも限界だった。
 不幸か幸いか来るときに残した目印が目に入った。
 この目印を左にまっすぐ抜けるだけだ――行ける、逃げ切れる。


894名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:45:22 ID:rA6TgEHU0

 木の根っこを蹴り、蔦を千切り、がむしゃらに走る。
 
(;<.:#_「いだぃ……ぁ、い……あづ………」

 聞こえてくる弟者の声はほとんど虫の息だった。
 ライタ-を点ける。ポケットに残っていた紙を燃やす。後ろに投げる。

(;'A`)「じゃあな、可哀相な双子さん!」

 薄暗い空間に強い光が差し込み、その光は辺りに広がり、俺自身を包む。
 森を抜けたのだ――逃げ切ったんだ。
 俺は、怪物から逃げ切った。生きている。

(;'A`)「ははは……案外あっけないものなんだな」

 静まりかえった森を眺める。怪物は、もういない。きっと焼け死んだのだろう。
 安心したせいか、首筋が猛烈に痒くなり爪を立てる。チクリと神経に染みるような痛み。
 変な虫にでも噛まれてしまったのだろうか、帰ってから病院に行くとする。ガリガリ。


895名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:46:02 ID:rA6TgEHU0

 家に帰ろうと歩きだした瞬間、足先に何かがぶつかった。
 それは俺が食べていた木の実だった。ガリ……ガリガリ。

(*'A`)「……」

 弟者とガリ同じ色をした、木の実。ガリガリ。
 蹴り飛ばす。ガリガリガリガリ。いきのびた、うれしい。

(*'A`)「かゆい」 

 首がカリカリ痒いガリガリミチミチ痒いガリガリなんだろうこれ。
 ぽちゃん。遠くでガリガリ何かがミズの中におちるおと。
 ガリガリガリガリガリガリせかいがガリガリガリガリぐるりとマワって、


896名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:46:50 ID:rA6TgEHU0

 じぶんのせなかがみえた。 









                 もっとおいしいもの、でーきたっ( < *┃


897名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:47:34 ID:rA6TgEHU0

 * * *


 蔦で埋め尽くされた扉が開かれ、暗い部屋に光が差し込む。
 男は寝台の上のヒト――ドクオの首に手を伸ばす。

(´・ω `)「弟者」

 男はドクオの首から生えた蔦を愛おしそうに撫でる。
 まるで小さな子供の頭を撫でるように、優しく、何度も。
 その蔦はドクオの身体に細かい根をゆっくりと張りつけていく。

(  _ )「よく頑張ったな」

 その声に答えるように“寄生木”は葉を揺らす。
 男はドクオの上に土をかぶせる。
 顔だけ出ているせいでドクオの表情はありありと見ることができる。
 何かに勝ったような――幸せそうな顔を。

( ´_ゝ`)「可哀相に。どっくんも最後まで気が付けなかったんだなァ」

 ドクオから生える蔦の果実を手に取ると、男は楽しそうに微笑んだ。
 まだ実ったばかりのその果実は、森と同じ深緑色をしている。


898名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:48:53 ID:rA6TgEHU0

 風も振動も、何もない部屋で葉が揺れる。男はそれを見て幸せそうにケタケタ笑う。

( ´_ゝ`)「まったく食いしん坊だな弟者は。
      そうだなァ、そろそろ次の人を呼ばなければな」

( ´_ゝ`)ガリガリ

 男は果実をかじる。
 緑色の果汁が床に滴る。  

( ´_ゝ`)「なァ弟者よ、お前の言うとおりしあわせの味はたまらなく美味しいな。
       しかし俺はこうやって、ずっと幸せでいる皆の顔を見るだけでも幸せだよ。
      どんな世界でどんなことやってるのかなぁってサ、考えるだけで」

( ´_ゝ`)ガリガリガリガリガリ

( ´_ゝ`)「むらのみんなでしあわせになるために。
      ふたりのしあわせなむらを、つくるために
      これからもがんばろう、さすがなきょうだい」

 しばらくの沈黙の後、まるで頷くようにしてドクオの首が転がり落ちていった。


899名も無きAAのようです :2013/08/16(金) 02:49:42 ID:rA6TgEHU0

  (
   )
  i  フッ
  |_|



( ^ω^)百物語のようです2013( ω  )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1372396645/



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