まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 奏でられる物語のようです



 ※作者注 元ネタは牙の旅商人より。 ダーク成分少ないけどちょっとだけ閲覧注意
2名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:24:07 ID:P4CAmrfw0





――――広大な砂漠がある。
雲ひとつない空の下に、地平線の彼方まで硫黄色が続いている。
どこまでも広がる無限の砂の大地は、草や枯れ木すら見当たらず、静寂に包まれている。

ドンッ――!

地を揺るがし、砂漠の一角が地中から衝撃を受けたように爆発する。
砂埃が舞い、辺り一面に拡散する。

(;*゚∀゚)「チィッ!!」

次の瞬間、砂の幕を切り裂くひとつの影。
頭と足は鳥の、羽毛の生えた三本足のラクダのような生物が砂の上を跳ねるように力強く駆ける。
その背中の上で一人の女が、忌々しげに空を煽いだ。

( ・∀・)「逃げられると、思ったのかね?」

空を悠然と羽撃く巨大な体躯が、女の頭の上に影をつくる。
竜と呼ばれる生物――黒く硬い鱗にびっしりと覆われた飛行生物の上で、ニタリと意地悪く男は笑う。
女の頬を、暑さとは別の汗が伝った。

.




3名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:25:09 ID:P4CAmrfw0


(;*゚д゚)「逃げ切ってみせるさ、悪魔め!テメェの企み、絶対阻止してみせる!」

頭を降ると、女は力の限り男に向かって吼える。
鋭い眼光に射抜かれ、男は腹の底から冷え切るような笑みを浮かべた。

( ・∀・)「ほう、威勢のいい女だ――果たしてその強がり、どこまで持つかな?」

バッチン、と男が指を鳴らす。

その瞬間、またも地が揺れ、女を取り囲むようにして盛り上がった砂から、何かが姿を現す。
ミミズのような細長い体に目はなく、円形状の口らしきものがパクパクと開閉するのみ。
全身は黒く、ゴムのような光沢を放っている。それらが円陣を組むようにして女を取り囲んだ。

(;*゚∀゚)「……!」

トリラクダの足が止まった。
荒ぶるトリラクダを静めながらも、女の顔が強ばる。

図られた――!誘導されていたのだ。

立ち往生を食らった女の背後で、砂が沈む音がする。
この雲ひとつない炎天下だというのに、黒一色で統一された服を着こなした男は、汗一つかいていない。
竜は既に、いずこへと姿を消していた。

.


4名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:26:32 ID:P4CAmrfw0



( ・∀・)「もう一度だけチャンスをやろう、女。私の《輝く多面体》をどこに隠した?」

ズルリ、ズルリ、グロテスクな生物達は、男の意思を受けているかのような動きを見せる。
乾ききった空気は喉に焼けつくような渇きを与えるのに、
腹の底は熱の一切を奪われたと錯覚させられるような焦燥感を、女は感じていた。

( ・∀・)「言え、女」

(;*゚∀゚)「寄るな!」

女は腰に提げていた銃を引き抜き、男に向けた。
男は少しだけ目を開き、目尻に皺を作る。
二つの真っ黒な瞳に見つめられ、銃を握る手が、指先から冷えていく感覚に陥る。

( ・∀・)「 言 え 」

(;*゚∀゚)

腕が震える。今にも引鉄を引けばこの男を撃つことができるというのに。
重圧が、脳にダイレクトに訴えかけてくる。
不可視の手が、女の手首を掴んで囁く。

「撃つな」、と。
脳髄にまで染み込ませるように、命令してくるのだ。

.


5名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:28:17 ID:P4CAmrfw0


( ・∀・)「 さ あ 。 答 え ろ 」

(;*-∀-)

大きく、深呼吸し女は俯いた。
そして、彼女の震える唇はこう答えた――――

(;*゚∀゚)「 断 る ! ! !」

銃声が響き、鉛弾が男の胸を貫く。
男の体は撃たれた衝撃で、ガクンと大きく跳ねた。
同時に、発砲音で驚いたトリトカゲが涎を垂らしながら、脇目も振らず駆け出す。

女は手綱の一部を胴体の防具と接続させ、振り落とされぬようしっかりと固定した。

(;*゚∀゚)「止まるな!止まるなよォ!!」

男が撃たれた直後、黒光りする異形たちがその身をうねらせ、絡み合いながら飛びかかる。
女は出来るだけ身を屈め、トリラクダを巧みに操る。
それでも襲い来る異形たちには、鉛弾を容赦なく撃ち込む。

(#*゚∀゚)「退けぇええーーーーーーーーッ!!!」

異形たちは地中を潜って移動しつつ、女と同じ速度で並走する。
女は異形達を睨みつけ、得物であるジャンビーヤを引き抜いた。

.


6名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:31:24 ID:P4CAmrfw0
(;*゚∀゚)「!」

前方の地面が盛り上がり、一際巨大な異形が姿を現す。
黒光りし、うねる柱が女の前に立ちはだかり、女は眩暈すら覚える。
しかし立ち止まるわけには行かない。

(;*゚∀゚)「掛かってこい、ミミズ共……!」

こみ上げる不快感を押し留め、奥歯を噛み締める。
ジャンビーヤを構え、鐙に乗せた足に力を入れ、突貫する。

(;*゚∀゚)「お前らなんか、細切れにして砂漠の肥やしだッ!」

真正面から大口を開け、襲い来る異形。
楕円形のブヨブヨとしただらしない口腔部は人間くらいなら丸呑みは出来そうだ。
ギザギザの歯の奥から、粘り気のある触手と涎が、鼻が曲がるような腐敗臭が噴出される。

(;*゚∀゚)「ッ…………だらああああーーーーーーーーーーッ!!」

女は吐き気を堪えて、雄叫びと共にジャンビーヤを振るう。
悪臭を振りまく触手を闇雲に切り落とし、異形に肉薄する。
楕円形の口が、左右に大きく裂けて腔内を曝け出し、餌をひと呑みにせんとする。

.


7名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:33:18 ID:P4CAmrfw0
だが女は怯まない。

(#*゚∀゚)「テメーなんぞ……これでも食ってろォ!!」

1、2、3発。続けざまに銃弾を叩き込んだ。
異形は空が割れんばかりの奇声をあげ、のたうち回る。
トリラクダは異形を跨ぎ、走る速度を上げた。

(;*゚∀゚)「生きてやる!生き延びてやる!アタシは、負けない!」

異形達は死んだ同胞に群がりその肉を喰らい始める。
追っ手の足が一秒でも長く停まることを願いながら、女は愛馬を走らせる。
砂塵と鉄錆の臭いが舞う世界で、空だけは変わらず青かった。


∵  ∴  ∵  ∴  ∵  ∴  ∵  ∴


―――――い、ありゃ何だ?――――


――――隊―!人が――れて――!


――――1人――い。は――盗――な


.


9名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:34:44 ID:P4CAmrfw0

(;*-∀-)


――――――長、どうし――ょう?


――――――!―――――!


――――――――?―――!




声が聞こえてくる。
遥か那由他の彼方か、或いは己の内から聞こえてくるのか。
恐ろしいような、優しいような、冷たいような、暖かいような。

意識が遠のきかけ、無我夢中で砂を掴んだ。
けれど太陽の熱や砂粒のざらつきすら感じず、ただ虚空を握り潰すようだった。


嗚呼、嫌だ。かえりたくない。


.


10名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:36:12 ID:P4CAmrfw0





―――― 一番大好きな人一番大切な人
―――― あなたはわたしの人生そのもの私自身より大切な人

(*-∀-)

―――― 一番大好きな人一番大切な人
―――― あなたはわたしの人生そのもの私自身より大切な人

穏やかなメロディに合わせて。ドッフのリズミカルな音に合わせて。
低い声が謡う。誰もが知っている、愛の唄。
幼い頃に母親の膝元で転た寝しながら耳にした、懐かしい記憶。

(*-∀-)"「…………………………んん?」

「おや、起きたみたいですね」

(*゛∀゛)「……?」

視界がぼやける。脳味噌が麻痺してしまったかのようだ。
焦点が合わず、何度も目を擦った。そこで初めて、自分の手に包帯が巻かれていることに気づく。

.


11名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:37:35 ID:P4CAmrfw0


空を仰ごうとしたが、忌々しい青色は見えなかった。ましてや黒でもない。
どちらかといえばクリーム色に近かった。そもそも空ではない、これはテントの天井だ。

(;*゛∀゛)「わ、私は………一体………………?」

体を起こすと、掛け布がはらりと落ちる。
目がまだまともに機能せず、周りで何者かが数人ほどいるくらいしか把握できない。

「辛いなら寝ていなきゃダメですよ?クルウ、隊長に伝えてきて」

「ええ、嫌だよぉ。こいつ怪しいよ、『さばいちゃおう』よお」

「だめっ!ほら、行ってきなさい!」

そ、っと肩に優しく何者かの手が乗せられた。
辺りには壷や木箱、絨毯くらいのものしかない。
女はどうにか頭を働かそうとして、肩に乗せられた手の持ち主へと目をやる。

( ´_ゝ`)「お加減はどうですか?」

二十も中頃の、中性的な顔立ちの青年だ。
手に黒い棒状の何かを持ち、微笑みかけてくる。

.


12名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:39:00 ID:P4CAmrfw0


(;*゛∀゚)「加減もどうも、何がどうなってんだ?私は――ハッ!」

その時ようやく、女の視界が回復した。
次の瞬間――女は己の体を見て、絶句した。
なにせ今の女は、包帯以外は何一つとして身につけていなかったからだ。

(#*゚∀゚)「このッ!!」

(;´_ゝ`)「わきゃあっ!?」

女は青年に掴みかかるや、棒状の物を奪い取り青年を組み敷いた。
その先端を突きつけて、女は青年を射殺さんばかりに睨む。

(#*゚∀゚)「お前何者だ!私の荷物をどこへやった!?あと服も!」

(;´_ゝ`)「おちおちっ、落ち着いて!私たちはあなたの味方です!」

(#*゚∀゚)「ほざけ!良いから私の荷物を返すんだ、さもなきゃくびり殺すぞ――!」

女はすっかり興奮しきっていた。
追っ手から逃げていた記憶を最後に意識が途絶え、目が覚めれば知らない場所。
研ぎ澄まされた警戒心が彼女を駆り立てたのも仕方のないことだった。
青年は身じろぎひとつ出来ないながらも、首につきつけられた物を見て、苦笑いした。


13名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:40:27 ID:P4CAmrfw0


(;´_ゝ`)「えっと…………少なくとも黒バナナじゃ、首は斬れないと思うんだ、……けど…………」

(#*゚∀゚)

(*゚∀゚)ノτ

( ´_ゝ`)

(#*゚∀゚)ノシ 三三τ))´_ゝ`)ベシイッ!

( ;_ゝ;)「痛いっ!何するんですか!」

(#*/∀//)「うううううう煩いバカッ!これが本物ならお前を首なしにしてやれたんだぞっ!有り難く思え!」

( ;_ゝ;)「きゃあああ痛い痛いッ!暴力反対!」

女が顔を真っ赤にして青年を何度も殴る。黒バナナで。
青年はなす術もなく殴られるがままだ。黒バナナによって。
バナナがへし折れると同時に、女の攻撃も終わった。

(#*゚ぺ)-3

まだまだ不服そうな顔で女はどっかりと胡座をかき、青年と向かい合って座る。

.


15名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:42:27 ID:P4CAmrfw0

(*゚∀゚)「で?ここはどこ?私の服と荷物は?あとお前だれ?」

矢次早に質問をぶつける女。最早自分の格好については開き直ったらしい。
だが青年が質問に答えるより早く、外から人の気配がする。

「人様のテントの中で胡座とは、随分胆の座った女だな」

( ゚∀゚ )

ミ,,゚Д゚彡川 ゚ 々゚)

赤く肌の焼けた男が、幕を押しのけて入ってくる。
ピアスに腕輪などの、銀の装飾を付けた行商人のような格好だ。
その後ろには巨大な狼男や、いたいけな少女もいる。
行商人男は、触れれば切れてしまいそうなほどに鋭い三白眼で、女を見下ろす。

(*゚∀゚)「誰?」

( ゚∀゚ )「テメエから名乗るのが筋だろうが。俺達ゃ死に際のお前を救ってやったんだぜ?」

ニヤリ、と男は三日月のような口元を釣り上げる。
女は眉を顰めたが、すっくと立ち上がり胸を自分の拳で突いた。

(*゚∀゚)「私はツーヅゥルー・ハンニバル。流れの旅人だ。此度はこの命を助けて戴き誠に感謝する。あなたに神の祝福があるように」

(*゚∀゚)「して、貴方は何者か」

.


16名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:43:49 ID:P4CAmrfw0


( ゚∀゚ )「ハン、いきなり堅苦しい物言いになりやがって。可愛くない奴だな。助けなきゃ良かったぜ」

まあ座れ、とツーヅゥルーを再び座らせ、自身も青年の隣に胡座をかいて座り込んだ。

( ゚∀゚ )「ツーヅゥルーだったか。俺の名はアヒーラ=ヤードル。隊商の隊長をやっている」

(*゚∀゚)「隊商?」

青年とアヒーラ、入口で立ち尽くしている少女たちに目をやる。
なるほど、個々が強烈な格好をしているせいで盗賊だとばかり思っていたが、
腰に提げた武器や狼男のことを考えれば納得もいく。

( ゚∀゚ )「俺達がお前を拾ったのは一週間前のことだ。お前はその間ずっと眠っていたよ」

(*゚∀゚)「一週間…」

( ゚∀゚ )「そこの兄者がずっとお前を看病していたんだ、感謝するといい」

何たることだ。あの地獄のような追跡から一週間、ずっと眠り続けていたらしい。
ツーヅゥルーは兄者と呼ばれた、先ほどの青年に目をやった。

( ゚∀゚ )「お前があの砂漠で何をしていたか、それを聞くつもりは毛頭ない。だが俺達はお前から施しを貰う必要がある」

(*゚∀゚)!

( ゚∀゚ )「行き倒れた奴を見つけたら助ける、それが隊商の掟だ。この意味、分かるな?」

.


17名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:45:26 ID:P4CAmrfw0

ツーヅゥルーは頷いた。

この時勢、砂漠で人が行き倒れることはよくあること。
そして隊商に助けられた旅人は、隊商に「恩返し」をせねばならない。
つまり、この隊商の「道具」にされるということだ。

渋い顔で項垂れるツーヅゥルーに、アヒーラは笑った。

( ゚∀゚ )「なんだお前、生娘か」

(#*゚∀゚)そ「なっ…………!テメェ、馬鹿にしてるのか!」

( ゚∀゚ )「そういきり立つな。俺達の隊商は奴隷も娼婦も扱ってない、仕事の面は安心するといいさ」

ゲラゲラ笑うアヒーラを、ツーヅゥルーはよほど蹴飛ばしてやりたかった。
しかめっ面のツーヅゥルーを他所に、アヒーラは狼男に合図する。
身を屈めて入ってきた狼男の腕の中には、衣類や刀類が収められていた。

( ゚∀゚ )「今日からお前には隊商の一人としてここで働いてもらう。とことんこき使ってやるからな」

(*゚∀゚)チラッ

ミ,,゚Д゚彡ジッ

見上げた瞬間、狼男と目が合った。今にもとって食われたって可笑しくない。
何も考えないようにして、ツーヅゥルーはおそるおそる狼男から衣服を受け取った。

.


18名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:46:59 ID:P4CAmrfw0


( ゚∀゚ )「お前の荷物は馬車の中にしまっておいた。後で確認しな」

それから、とアヒーラは懐からあるものを出した。
砂よけの布がついた、使いこまれた帽子だ。

( ゚∀゚ )「仕事の時はこれを付けな。それが隊商のルールだ」

(*゚∀゚)「分かった」

( ゚∀゚ )「当分は兄者と一緒に仕事しろ。任せたぞ、兄者。2時間後に出発だ」

( ´_ゝ`)「了解しました、隊長」

アヒーラはそれだけ言うと、立ち上がってテントから出て行く。
隊長の背中を見送るや、狼男が唐突にツーヅゥルーの手を握った。

ミ,,゚Д゚彡ジィッ

(;*゚∀゚)「ひっ……!」

ツーヅゥルーは堪らず腰が引け、目を瞑った。
――が。痛みはやってこない。おっかなびっくり目を開けて、狼男を見上げた。

ミ*,,゚Д゚彡「いやー!元気になってよかったから!フサすっごく心配したから!」

(;*゚∀゚)「あ、ありがとう……………………?」

ミ*,,゚Д゚彡「俺はフサだから!力仕事ならお任せだから!仲良くするから!」

(*゚∀゚)「お、おう。よろしく」

――果たして、その屈強で強面な面構えとは引き換えに、とても人懐こい態度で接してきた。


19名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:48:34 ID:P4CAmrfw0

頭3、4つ分はある体から、砂の匂いに混じって、独特の香の薫りを漂わせる。
少なくともとって食われる心配は、この態度であっという間に崩れた。

川 ゚ 々゚)「………………………………」

一方で、入口に立つ少女はとても険悪な空気を醸し出していた。
ツーヅゥルーに挨拶すらしようとせず、目が会った瞬間、踵を返して居なくなった。

(*゚∀゚)「……?」

( ´_ゝ`)「さあフサ、一旦外に出よう。ツーヅゥルー、着替えたら教えてね」

ミ,,゚Д゚彡「え?何で居ちゃダメなの?フサはツーヅゥルーが心配だから!」

( ´_ゝ`)「はいはい良い子から出ましょうねーーーー」

聞き分けの悪いフサを押し出して、兄者も退出する。
ツーヅゥルーはそれを見送ると、深く息を吐き出して、服に袖を通し始めた――

∴ ∵ ∴ ∵ ∴ ∵ ∴ ∵

今から何百年後もの未来の話だ。
人類の傲りは、確実に地球という財産を摩耗させ、文明は朽ちて、緑は消え、水は毒され、衰退の一途を辿った。
それでも人は、僅かながらに生き延びた。

.


20名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:49:22 ID:P4CAmrfw0


今の地球に残されたのは、異形と砂漠と絶望と、ほんの僅かな希望のみ。
残った人類たちは、欠片だけの希望から、生き抜くための新たな力を手に入れた。

「着替え終わったぞ、兄者」

( ´_ゝ`)「はい、失礼するよ」

テントの外で待機していた兄者は、ツーヅゥルーに呼ばれ立ち入る。

瓜゚∀゚)「これでいいか?」

( ´_ゝ`)「様になってるよ、ツーヅゥルー」

旅の時よりも軽装だが、要所がきちんと防護された隊商の服。
ツーヅゥルーはもらった帽子をキチンと被り、胸を張る。

( ´_ゝ`)「それじゃあ着替えたことだし、まずはテントを片付けよっか」

瓜゚∀゚)>「了解っ!」

( ´_ゝ`)「ふふふ……手は右だよ、ツーヅゥルー」

瓜;*゚∀゚)「あ……」

( ´_ゝ`)クスクス

瓜;*゚ぺ)プクーッ

.


21名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:51:37 ID:P4CAmrfw0



隊商はこの広い砂漠の地方において、重大な役割を持つ組織だ。
砂漠と外敵だらけのこの環境で、物資の運搬は需要が高い。
しかしその分だけ、過酷な環境に耐えうる体力と忍耐力、
害獣や賊から敵から身を守る防衛能力などが要求される。

瓜゚∀゚)「しっかし、大きい隊商だな」

( ´_ゝ`)「4つの大型商人連合(ギルド)が集まってるからね。部下も運搬料も多いよ」

30ものの馬車が並んでいる場は見ていて壮観だ。
果物、陶器、絨毯、武器に至るまで、何でも揃っている。

瓜゚∀゚)「ふわー……………………これ全部運ぶのか」

ワイン樽の山を見て、ツーヅゥルーは目を丸くした。
金貨に換算すれば幾らになるのだろう。
色々な積荷を見る内、ある一つの馬車にたどり着く。

( ´_ゝ`)「ここが寝台用の馬車。ツーヅゥルーの荷物はそこにあるからね」

瓜゚∀゚)「おおー……」

馬車の中は改造されており、簡素な二段ベッドがぎゅうぎゅう詰めにされている。
まじまじと見つめていると、唐突に背中を小突かれた。


22名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:52:32 ID:P4CAmrfw0



川 ゚ 々゚)「ちょっと、邪魔」

瓜;゚∀゚)「あっ、ごめんなさい!」

いつの間にか、先ほどの少女が仏頂面で立っていた。
ツーヅゥルーが退くと、少女は鼻を鳴らして馬車に乗り込む。
冬眠明けの熊のような動きでベッドの一つに入り込むと、さっさと寝てしまった。

瓜゚∀゚)「あの子……」

( ´_ゝ`)「ああ、クルウかい?気難しくて人見知りだけど良い子さ、同年代だろうから仲良くしてやってね」

それから作業のノウハウを教わるため、一度寝台車を後にする。
去り際に、ツーヅゥルーはクルウのベッドへと視線をやった。
彼女は自分に対して悪感情を持っている。ふと、そんな気がした。

( ´_ゝ`)「それにしても、どうしてツーヅゥルーはあんな所に倒れていたんだい?」

瓜゚∀゚)「え……」

説明を受け終わった直後、出し抜けにそう尋ねられ、ツーヅゥルーはたじろいた。
隊長には何も聞かれなかったが、やはり気になるものらしい。
ツーヅゥルーは視線を彷徨わせ、ポツリと言った。

.


23名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:53:14 ID:P4CAmrfw0


瓜゚∀゚)「追われてたんだ。悪い奴に」

( ´_ゝ`)「悪い奴?」

瓜゚∀゚)「悪党さ。ソイツに殺されかけながら、ここまで逃げ落ちたんだ」

( ´_ゝ`)「そっか……………………苦労したね」

そっけない返事を最後に、兄者は何も言わなかった。
家族はどうしたのか。どうやってこの砂漠まで落ち延びたのか。何も尋ねようとはしなかった。
ツーヅゥルーとしても、その方が有難かった。
変に慰められるのも居心地が悪かっただろうし、それ以上のことを追及してこない兄者に、優しさを感じた。

( ゚∋゚)「出発するぞー!それぞれ持ち場につけー、乗り遅れるなー!」

( ´_ゝ`)「お、時間だね。私たちもそろそろ乗ろうか」

瓜゚∀゚)「はい!」

∵  ∴  ∵  ∴  ∵  ∴  ∵  ∴

こうして、ツーヅゥルーの隊商での生活が始まった。
隊商は国から国へ物資を運び、市場で現地の商人と取引する。


24名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:54:01 ID:P4CAmrfw0


( ´_ゝ`)「この隊商は4つのギルドで集まってるって言ったのは覚えてるね?」

瓜゚∀゚)「はい。果物類を扱うシベリア組合と、日用品を扱うソサク商会、銃器を扱うカオスペ商会と……」

瓜゚∀゚)「――自身の「腕力」を売るVIP組合の4つ」

隊商の列の先頭と最後尾では、他の馬車と違い、黒と黄色の馬車がそれぞれ構えている。
VIP組合は他のギルドと一味違い、戦闘に自信のある、いわゆる戦闘集団だ。
この赤い馬車がある限り、大抵の賊はVIP組合を恐れて襲ってくることはない。

( ´_ゝ`)「そっ。私たちが乗っているのは、その内のソサク商会の馬車だね」

そう言うと、兄者はあるものを懐から出して見せた。
蓋のついた長方形の箱に細やかな装飾がなされたアンティークの一品。

瓜*゚∀゚)「綺麗……………………」

( ´_ゝ`)「オルゴールっていうんだって。音を録音したり、録音した音を聞くことが出来るんだ」

そう言うと、兄者は箱の背中にあるつまみを回した。
すると、ゆっくりとつまみが回りだし、音楽を奏で始める。

.


25名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:55:32 ID:P4CAmrfw0



―――― 一番大好きな人一番大切な人
―――― あなたはわたしの人生そのもの私自身より大切な人

瓜゚∀゚)(あ……………………)

薄れゆく意識の中で聞いた、あの唄。
擦り切れそうな優しい歌は、男とも女ともつかない声で、愛の唄を謡う。
段々つまみの動きが鈍くなると、歌声もゆっくりとしたものとなり、そして穏やかに沈黙した。

( ´_ゝ`)「……とまあ、私たちはこういった類の品を作ったり、鑑定したりするんだ。近々ツーヅゥルーにも教えてあげるね」

瓜*゚∀゚)「はい!」

先頭の馬車では、隊長のアヒーラが呑気に帽子を顔にのせて天井で眠りこけている。
最後尾の馬車では、暇を持て余したフサが陽気な歌声を披露していた。

ミ*,,゚Д゚彡「ガザーラトゥンジャミーラ ラシーカトゥンナヒーラ♪
      アッサハルマラーブンラーハー ワバイトゥハルカミーラ♪

      ガザーラトゥンジャミーラ ラシーカトゥンナヒーラ♪
      アッサハルマラーブンラーハー ワバイトゥハルカミーラ♪」


.


26名も無きAAのようです :2013/02/11(月) 23:56:21 ID:P4CAmrfw0



( ´_ゝ`)「今日はやけにフサがご機嫌だねえ」

瓜゚∀゚)「あの歌は?」

( ´_ゝ`)「『ガザーラ』っていう童謡さ。フサは機嫌がいいといつもあの曲を歌うんだ」

瓜゚∀゚)「へぇ~」

フサの歌声は青空によく響く。
力強い声に合わせ、手の空いた商人たちがリズムに合わせて手を叩く。
中にはタンバリンを出して叩く者も現れる。

ミ*,,゚Д゚彡「ガザーラトゥンジャミーラ! ガザーラトゥンジャミーラ!
      ワティフルハサギール ミンハルフィハーヤスィール
      ワヒーラタスタリーフヤブカー ハウラーハーヤドゥール!」

( ´_ゝ`)「ガザーラトゥンジャミーラ!」

ミ*,,>Д<彡「ワティフルハサギール ミンハルフィハーヤスィール
       ワヒーラタスタリーフヤブカー ハウラーハーヤドゥール!」

(*゚∋゚)「ガザーラトゥンジャミーラ!ラシーカトゥンナヒーラ」

ミ*,,^Д^彡「ワティフルハサギール ミンハルフィハーヤスィール
       ワヒーラタスタリーフヤブカー ハウラーハーヤドゥール!」

瓜゚∀゚)「……ふふふ」

どんな意味の唄なのか、ツーヅゥルーには分からない。
だが楽しそうに歌い合う彼らは少なくとも、悪い人間でないことは確かだった。
彼らに拾われたのは、幸運だったに違いなかった。

(::::∀- )スピー

馬車は揺れて、平和な砂漠を渡る。次の街まで、彼らの大合奏は続いた。


32名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:12:19 ID:/aYHKsdE0
1.強弱

(;*-∀-)「あうー」

川 ゚ 々゚)「ねえ兄者、なにこの死に体」

( ´_ゝ`)「歌いすぎて疲れちゃっただけだよ。きっと興奮してたんだろうね」

川 ゚ 々゚)「バッカみたい」

クルウが起きてみると、ツーヅゥルーは軽い熱中症を起こしていた。
炎天下であれだけはしゃいだのだから当然のことである。
クルウは汗だくのツーヅゥルーを見下ろして、鼻を鳴らした。

川 ゚ 々゚)「情けないわね。こんなにすぐへばるようじゃ、隊商から消える日も近いかもね」

(;´_ゝ`)「そういう事言わないの。どうしてすぐ邪険にするかね」

(;*-∀-)「あうー」

( ´_ゝ`)「……にしても、せっかく街に着いたのに、これじゃちょっと可哀想だね」

川 ゚ 々゚)「自業自得。先に降りとくよ、兄者」

吐き捨てるようにつぶやくと、クルウは馬車を降り、大きく伸びをした。
ツーヅゥルーと同様にはしゃいでいた男たちは、あくせくと荷物を運び入れている。
クルウは腰に提げたククリナイフの柄を指の先で叩きながら、視線を彷徨わせる。

ミ,,´Д`彡「? クルウ何してるの?」

川 ゚ 々゚)「丁度良かったわ、フサ。隊長はどこ?」

.


33名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:14:24 ID:/aYHKsdE0
ミ,,´Д`彡「今、街長さんの所だから!お荷物の取引中だから!」

川 ゚ 々゚)「あっそ……にしても、シケた場所ね」

クルウは木製の傷んだ関所の門を見上げ、苦々しくぼやいた。
ウィークリィの街は、街と呼ぶにしては小さく、村と呼ぶほうがしっくりとくる場所だ。
街自体も陰気な雰囲気を放ち、観光客を迎え入れる雰囲気ではない。
(ここで明記する街とは、村よりも規模の大きい集落・地域を指す)

川 ゚ 々゚)「ここでの商売はあまり期待しないほうがいいかしらね。とっとと離れるのが正解よ」

ミ,,´Д`彡「フサも正直、あまり長居したくないから……なんだか嫌な感じがするから」

川 ゚ 々゚)「嫌な感じ?」

クルウが言葉を復唱すると、フサは力なく頷いた。
鼻をひくつかせ、眉を潜めて脱力した声でぼそりとつぶやく。

ミ,,´Д`彡「変な臭いするし、なんとなくこの街、見られているような気がして背中がざわざわするから……」

川 ゚ 々゚)「……………………ふうん」

クルウは鼻をひくつかせたが、何の臭いも感じない。
だがフサがそう言うには、何かあるのではないかとクルウは直感していた。

.


34名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:18:48 ID:/aYHKsdE0

川 ゚ 々゚)「一応、隊長に報告したほうがいいかもね。お前の勘は侮れないし」

その時、関所の受付がにわかに騒がしくなる。
ひ弱な受付人を、荷物を担いだ数十人の屈強な隊員たちが囲いこんで野次を飛ばしている。
中には服を脱ぎだし喧嘩腰になる者まで現れる始末。

川 ゚ 々゚)「騒がしいわね」

ミ,,゚Д゚彡「喧嘩だから?でもちょっと様子おかしいから」

二人が訝しんでいると、やがて人ごみがまばらになり始める。
隊員たちの表情は物々しく、険悪な空気がそこかしこに満ちていた。

( ゚∀゚ )「まずいことになったな……」

ボリボリと頭を掻きながら、隊長のアヒーラが戻ってきた。
三白眼の目尻に皺を寄せ、困り顔を作って二人に歩み寄る。

ミ,,゚Д゚彡「あ、隊ちょ川*゚ 々゚)「隊ちょおぉおーーん!お勤めご苦労さまぁん!」

途端、クルウはフサを押しのけアヒーラに飛びついた。
がっしりとした腰に抱きつき、先程までのしかめっ面はどこへやら。

川*´々`)「ああーん隊長いつ抱きついてもい・い・お・こ・し……」

( ゚∀゚ )「暑い離れろ。兄者は?」

川*´々`)「まだ馬車にいたと思いますよぉ~、あの新入りが体調崩したとかって……」

( ゚∀゚ )「そいつは困ったな。色々話したいことがあったんだが……」

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35名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:19:52 ID:/aYHKsdE0

川*´々`)「そんなのあとでいいじゃないですか~、ねえそれより隊長ぉ、今夜一緒の部屋に」

( ゚∀゚ )「ちょっと様子見に行くかな。伝えることもあるし」

川::::々゚)チッ




―――――貴方への愛を歌い出した 幼子の後ろで

―――――昨日も今日も歌っている 星の声を私は聞く


(*-∀-)(この歌…………また…………)


( ´_ゝ`)「まだ辛い?立てる?」

(*゚∀゚)「もう大丈夫。ごめんなさい、心配かけて」

( ゚∀゚ )「元気になったなら話は早いな」

振り返ると、アヒーラが顔を覗かせていた。
音もなく近づくとは、まるで狩りをする虎のような男である。
アヒーラは神妙な面持ちで無言の手招きをし、兄者がそれに応じる。

.


36名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:22:48 ID:/aYHKsdE0
  _,
( ´_ゝ`)

しばらく何かを話しているかと思うと、兄者の表情に影が差す。
ツーヅゥルーの位置からは彼らが何を話しているか、その内容を盗み聞きすることはできない。
ただ勘として、何か良くないことが起きているらしいということだけは分かった。

(*゚∀゚)「何かあったの?」

( ´_ゝ`)「ん……実はちょっと問題があってね。街に入れなくなっちゃったんだって」
 _,
(*゚∀゚)「………………………………え?」


ウィークリィは現在、深刻な問題を抱えていた。
小さな規模の村であること、銃器の物資が中々来ないことから、ある一つの脅威に脅かされている。

つまり、盗賊の存在だ。

( ´_ゝ`)「盗賊だと勘違いされちゃって、関所に門前払い食らっちゃったって」

(;*゚∀゚)「そんな……せっかく宿に入れると思ったのに……」

ツーヅゥルーは悔しそうにがっくりと項垂れた。
馬車での寝泊りに不満があるわけではないが、今はベッドが恋しい。

.


37名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:26:21 ID:/aYHKsdE0

(*´゚∀゚)「ベッド……ご飯……スープ……お肉……」

(;´_ゝ`)「お腹空くからやめて……しばらくの辛抱だよ。今隊長たちが誤解解いてるから」

アヒーラは現在、フサと、シベリア組合の責任者クックルを連れて町長の元へ向かっている。
誤解が解ければ街に入ることも、商売もできる。それまでの我慢だ。
みなそう自分に言い聞かせ、隊長たちの帰りを待った。

――それから馬車内で待たされること数時間。

時間が経過する毎に、隊員たちの苛立ちも角っていく。
女子供衆も不安げに顔を見合わせ、ひそひそと言葉を交わし合う。
夕暮れの橙色が迫り、更に時間が経つと葡萄色に染まる。

:(*゚∀゚):ブルルッ

( ´_ゝ`)「ツーヅゥルー、こっちにおいで」

(*゚∀゚)「うん……」

川 ´ 々`)コックリコックリ

夜になっても、隊長たちは戻らない。
底冷えする夜の砂漠で、グループを作って焚き火を囲い、子供たちは引っ付き合って眠る。
男衆は盗賊を警戒して見張りに立ち、女たちも夜食作りに奔る。


.


38名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:36:38 ID:/aYHKsdE0


(*゚∀゚)「………………………………遅いね、隊長」

( ´_ゝ`)「うん……」

(*゚∀゚)「何かあったのかな……」

平静を保っているが、兄者の表情も険しい。
先程からずっと、しきりに関所のほうへ視線をやっていた。
どれだけ時間が経ったろう。ツーヅゥルーは眠い目を何度も擦る。

( ´_ゝ`)「寝ていいんだよ、ツーヅゥルー。隊長たちが戻ってきたら起こすから」

(*"∀")「んんー……」

このまま起きている、と意思表示するつもりだったが、あえなく睡魔に負けた。
ごろりと寝転がると、上から毛布を被せられ、兄者も隣で身を伏せる。
ツーヅゥルーの耳元には、あのオルゴールがまた置かれていた。

―――――貴方への愛を歌い出した 幼子の後ろで

―――――昨日も今日も歌っている 星の声を私は聞く

この声だ。オルゴールの蓋を開けると、不思議な歌声がツーヅゥルーの心をあやす。
まどろみの中、ツーヅゥルーは冷え切った砂に、熱を帯びた掌を置いた。

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39名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:38:44 ID:/aYHKsdE0



( ´_ゝ`)~♪

川  ´々`)スピュー

オルゴールに向かって、語らうように、兄者も音に合わせて謡う。
夜空には点々と、満天の星空が淡く輝き、眠れ、眠れとツーヅゥルーに言い聞かせる。
ツーヅゥルーは輝く声に従って、まぶたを閉じかける。


ちかっ。チカチカッ。


(*"∀")(…………赤い、光?)



夢の世界に落ちる寸前。真っ赤な光が鋭く、光ったような気がした。


――――そして、月が隠れ、太陽の零れ日が東の空から差し込む頃――


「このまま街に入れずに移動すんのか……?」

「冗談じゃねえ!せっかくここまで来たってのに!」

「落ち着け。隊長の帰りを待とう」

隊の中で、ついに鬱積した思いが爆発した隊員たちの口論が始まる。
それを止めようと他の隊員たちも集まり、蜂の巣をつついたような騒ぎとなる。


40名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:43:46 ID:/aYHKsdE0
(;*゚∀゚)「なあこれ、ヤバイんじゃないか?隊長たちは何やってんだ?」

(;´_ゝ`)「……他の商人長たちを集めてくる。今のうちに荷物を纏めてしまおう」

(*゚∀゚)「あっ、手伝うよ…」

兄者は街入りは無理だろうと判断し、馬車から飛び出す。
薪木を取りに行く兄者の後ろにツーヅゥルーもついていく。

(*゚∀゚)「! 兄者…」

( ´_ゝ`)「どうかし…… !」


,,,ミ,,゚Д゚彡( ゚∋゚)( ゚∀゚ )

ツーヅゥルーたちの視線は、関所に釘付けになっていた。

川;゚ 々゚)「隊長!」

巨漢二人を従えた、ワイン色の商人の姿が、こちらに近づいてくる。
ようやくの帰還に、皆が押し黙り、隊長の言葉を待つ。
血気盛んだった男たちも振り上げた拳を下ろし、黙りこくる。


( ゚∀゚ )「…………お前ら、荷物を運び入れろ!入街の許可が降りたぞ!」

数秒。或いは数分。どれくらいの沈黙が流れたろうか。
安堵と興奮が入り混じった野太い歓声が、空に響き渡った。

∵  ∴  ∵  ∴  ∵  ∴  ∵  ∴ ∵  ∴  ∵  ∴  ∵  ∴  ∵  ∴


41名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:49:08 ID:/aYHKsdE0
瓜*>∀<)「ベッドだー!!」

(*´_ゝ`)「一時はヒヤヒヤしたね。荷物仕舞っちゃう前でよかったよ」

宿屋のベッドの上で転がるツーヅゥルーと子供たち。
久々のまともなベッド独特の弾力を、全力でこれでもかと味わう。
兄者は全員分の着替えを確認し、眉間を緩ませた。

川*゚ 々゚)「いいやっほーーう!くるうたんダーイブ!」

瓜;*゚∀゚)「きゃああーー!」

(#´_ゝ`)「こら!ベッド壊れるからよしなさい!」

川;*´々`)瓜;*´∀`)「はーい……」

陰鬱な雰囲気漂う街に、子供たちの声はあまりに明るく。
朗らかな笑い声の分だけ、この街の陰湿な気配が浮き彫りになる。

瓜*゚∀゚)「兄者!何か売ってないか見に行こうよ!」

( ´_ゝ`)「分かった。準備するから待っていて」

ツーヅゥルーに一声かけ、兄者は窓の外を見た。
この街は何かおかしい。そう気づいたのは、子供たちを眺めていたからこそだった。

( ´_ゝ`)(……この街、何かおかしいと思ったら。子供が居ないんだ……若い女も)

兄者、早く。
ツーヅゥルーの急かす声に、兄者は我に返って、今行くと答えて部屋を出た。


43名も無きAAのようです :2013/02/12(火) 23:59:31 ID:/aYHKsdE0


ウィークリィの街は砂丘の上に出来ており、丘の形状を模すように家屋が建てられている。
丘の麓に宿や露店、上に行くにつれて役所や住宅が立ち並ぶ。
そして丘の天辺に、街の管理を勤める街長の屋敷がある。

階下に聞こえる少女たちの黄色い声とは反対に、屋敷の客間の空気は冷え切っていた。
向かい合って座る男たち。一人はアヒーラ、もうひとりは街長のシラヒーゲだ。

(;´W`)「品物の発注願いですと…………?」

( ゚∀゚ )「ああ。この街から100単位の果物類とワインの発注があった。これがその書類だぜ」

豪華絢爛なソファにのけぞり、アヒーラは書類の束をテーブルの上に叩きつけた。
街長と事務員たちはタダでさえ青い顔を更に青くさせ、書類を凝視する。
まともな食事も摂っていなさそうな細い指が震えているのは、別の意味があってのことか。

( ゚∀゚ )「何だそのツラは?覚えがないとは言わせねーぞ」

(i!i´W`)「…………」

( ゚∀゚ )「こちとら50人を超える隊員が寒空の下で一日も待たされたんだ。
     説明の一つはあったっていいと思うんだがなァ……?」

鋭い音の直後、書類の束はテーブルごとナイフに貫かれていた。
街長たちの視線を真正面から受けるように、ギシ、とソファを唸らせ、前屈みになる。
夜空に不気味に浮かぶ金星のような黄色い瞳が、疑念の色に染まっている。
その両隣で仁王立ちするクックルとフサも、無言の威圧を出していた。

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44名も無きAAのようです :2013/02/13(水) 00:05:04 ID:W/Zw0xmo0


(lil´W`)「……お言葉ですが、隊商の皆様。いまこの街に、商品を買えるだけの余裕はありませぬ」

( ゚∀゚ )「……………………ホォ。まさか、冷やかしの注文だった…………なんてことはないでしょうなァ?」

(lil´W`)「そんな、滅相もない!」

街長は3対の眼光に気圧され、否定するように両手を振る。
だが真に目の前の老人が恐れているのは、三人ではない別の何かのようだ。
街長の部下たちも、落ち着きのない、不安げな視線を交わし合っている。

(lil´W`)「……一度は貴方がたを街に入れましたが、悪いことは言いません。今すぐ立ち去るのです」

( ゚∀゚ )「ああ?盗賊の件か?」

盗賊、その言葉が出た途端、場の空気が凍りついた。
湖に薄く張られた氷が足元から割れて、落ちていくような、そんな絶望の表情を露わにした。
おもむろに、街長が立ち上がる。顔色は青を通り越して、髭と同じ色になっていた。

(lil´W`)「あやつ等は!盗賊などではありません!否、ただの盗賊であればどんなに良かったか……!」

( ゚∀゚ )「? 話が見えてこねえな。盗賊に「ただ」もあるかよ」

(lil´W`)「違うのです! あれは……あれは……!」

唇を噛み締め、街長は目をカッと見開いた。
皺とシミだらけの手が拳をつくり、嫌な汗を流す。
見開いた目は焦点など合っておらず、アヒーラ達など見えていない。
もっと別次元の、或いは、脳裏に焼きついた盗賊たちの蛮行を思い出したのだろう。

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45名も無きAAのようです :2013/02/13(水) 00:13:35 ID:W/Zw0xmo0

(lil゚W゚)「奴らは……人ですらない……ヒトを真似た化物……いや、化物と呼ぶこそがおこがましい……」

(lil゚W゚)「あの腐臭……忘れもしない……あれは人か?否ヒトか?」

(lilヽ゚W゚)「愚かな儂をお許しください……あれが何なのか追求する勇気が儂にはないのです……」

老人の震える声は、祈りとも懺悔ともとれる言葉を
――街長は何も語らず、沈黙したまま、再びソファに腰掛けた。
老人は瞬きする間に、まるで枯れる寸前の老木のように一気に老け込んだようだった。

フサとクックルは、老人の奇行に眉を潜めて顔を見合わせた。
とんだ茶番に付き合わされているのか、それとも意思疎通の叶わない幼児を相手にしている気分だ。
アヒーラは眉を僅かに浮かせるのみで、何事もなかったように口を開いた。

( ゚∀゚ )「……手前らが盗賊で手こずってるのはどうだっていい。俺達ゃどうなる?あの商品は?俺たちの時間と手間は?」

突きつけられた目の前の問題に、老人はようやく我を取り戻したようだった。
組んだ両手をせわしなく揉みしだいて、しきりにテーブルの上に視線を彷徨わせる。

(lil゚W゚)「…………とにかく。今日はもうお引き取りください。商品については役場の者たちと相談します故……」

( ゚∀゚ )「――そうかい。『いい返事』を期待しているよ」

これ以上の話し合いは無駄とアヒーラも悟ったのだろう。
ナイフを引き抜くとすっくと立ち上がり、クックルとフサに目配せした。

ミ;,,゚Д゚彡オ、オジャマシマシター

フサが扉を閉め、客室には不気味なほどの静寂が訪れる。
老人の萎びた目は、ただひたすらに、穴の空いた書類に釘付けになっていた。


52名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 20:34:47 ID:gdMjBMUA0


瓜゚∀゚)「えっと……市場って、こっちで合ってたよね?」

( ´_ゝ`)「地図が合ってれば、ここだとは思う……よ?」

時を同じくして、ツーヅゥルー達は見学のため市場に来ていた。
しかしもうじき昼時だというにも関わらず、まるで活気がないのだ。
卵や野菜を買いに来る陽気な町娘もいなければ、リンゴを盗みに来る悪ガキもいない。
腑抜けた男衆や老人が黙々と作業するだけの、奇妙で不気味な光景だった。

川 ゚ 々゚)「静かすぎるね。葬儀場と間違えたんじゃない?」

瓜゚∀゚)「誰も見にすらこないなんて……変なの」

市場は物を売買するだけでなく、コミュニケーションの場でもある。
「街」はただでさえ閉鎖的なコミュニティだ。人が集まらないはずがない。

( ´_ゝ`)「そうだ。酒場に行けば、誰かいるかも」

川 ゚ 々゚)「酒場ねえ…市がこんなだし、あんまり期待しない方が良いんじゃない?」

クルウが渋い顔をするが、兄者は気にせず酒場を目指す。

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53名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 20:40:33 ID:gdMjBMUA0

酒場は市場に次ぐコミュニケーションの場だ。何かしら情報が集う場所でもある。
いくら寂れていれど旅人の一人くらいはいるだろうと兄者は踏んだらしい。

瓜;゚∀゚)「…………」

ツーヅゥルーは落ち着かない気持ちで二人の後ろを付いていく。
こういっては自意識過剰かもしれないが――見られている。そんな気がするのだ。
道行く時、さりげなくすれ違う時、あらゆる場所から、街人達の視線を受けている。
陰気でじっとりとした、嫌悪とも畏怖ともつかぬ奇妙な目の色を肌で感じるのだ。

瓜;゚∀゚)(嫌だなあ。二人共、平気なのかな)

( ´_ゝ`)「どうかした?」

瓜゚∀゚)「…! ううん、何でも……」

ツーヅゥルーの心中を察したように振り返る兄者。
ように、でなく実際に彼女の異常を察したのかもしれない。
気を紛らわすようにツーヅゥルーは辺りを景色を見て、胸の内の違和感を解消しようとした。

瓜゚∀゚)(……ん?何だか……壊れた民家が多いような………………………………)

周辺を見回すと、この街のおかしな場所に目が付き始める。
綺麗な石の家を挟んで、無惨に壊された家がやけに目立つ。
それが、閑静なウィークリィの街の不気味な雰囲気に一役買っていた。

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54名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 20:44:30 ID:gdMjBMUA0

物言わぬ違和感に釘付けになっていたツーヅゥルーは、兄者が足を止めていたことにも気づかなかった。

瓜>∀<)そ「わぶっ!?」

川 ゚ 々゚)「どこ見てんのよ、おまぬけ」

( ´_ゝ`)「あ、ごめん……何か騒がしいね」

兄者が指差す先では、何やら揉め事が起きているようだ。
ツーヅゥルーは爪先立ちし、兄者の肩ごしに、指さされた先を注視した。

( ^Д^)「この野郎、まだ盾突こうってか?」

i!iiリ#゚ ヮ゚ノル「だから!行かないって言ってるでしょ、ばーか!」

<ヽ`∀´>「強情な女ニダ。逆らわずに大人しくするニダ」

複数の男たちが女、それも年端もいかない少女一人を囲っている。
屈強な男たちに比べて、少女のなんと細いことか。
だが少女は唇を真一文字に結び、強気な視線で男たちを睨み上げる。

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55名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 20:56:03 ID:gdMjBMUA0

瓜゚∀゚)(喧嘩?でも何で誰も止めないの?)

i!iiリ#゚ ヮ゚ノル「出て行ってよ!アンタ達のせいで父さんも、街も皆も!迷惑してるのよ!」

( ^Д^)「迷惑ゥ?」

少女が金切り声を上げ、男の手を払った。
それに対し、男たちは顔を見合わせニタニタと意地悪く笑いあう。
その間も、周りの住民たちはこけた頬に冷や汗を垂らし、見て見ぬ振り。

( ^Д^)「迷惑、迷惑ゥー?」

ニヤケ面の男が、一際下卑た笑みを滲ませた。
少女を完全に馬鹿にした声のトーンは、神経を逆撫でさせる。
嗜虐心丸出しの哄笑を隠そうともせず、周辺の住民たちに目を向けた。

(::::::^Д゚)「おいおい、この街が今も繁栄出来てるのは誰のお陰だと思ってんだァ?なあ皆ァ?」

「……! も、勿論、黒旗団の皆様がたのおかげです!!」

(::::::^Д゚)「こォんなやせ細った!クソみてえな土地に恩恵を与えてやったのは誰だ?なあ?」

「黒旗団の方々のお陰です!」

男が仰々しく煽ぐと、
その場にいた全員が、やせ細った顔に笑顔を貼り付けて一斉に同じ言葉をあげる。
黒旗団と呼ばれる男たちを囲むように、口々に彼らを賞賛する。

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56名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 21:08:59 ID:gdMjBMUA0
ツーヅゥルーの手からは、嫌な汗が溢れて止まらない。
静かすぎる街、生気を感じない人々、貼り付けた笑顔。全てが異常だ。
今までに感じたことのなかった、胸の中で渦巻いていた名も無い胸のモヤモヤが、形作られ始める。

i!iiリ#゚ ヮ゚ノル「止めてよ!皆もう、やめて!こんなの茶番よ!!」

少女が街人たちを振り返り、金切り声を上げた。
だがニヤケ面の男が少女の腕を乱暴に掴み、動きを制した。

(::::::^トェイ゚)「だったらよォーお?俺達がこの街で『何しようが』、俺達の勝手だ。そうだよなァ?」

i!iiリ;゚ ヮ゚ノル「痛ッ……!」

(::::::^トェイ゚)「気に入らない奴を『ぶっ殺す』のも!女子供を『売る』も『買う』も、『犯す』も!ここじゃ俺達は許される!!」

「勿論です!黒旗団の皆様は、何をしても許されます!」


(::::::゚トェイ゚)「何故なら!俺達『黒旗団』がこの街を立て直してやったんだ!文句ァねーだろォオ?」

男の笑いは止まらない。
愉快で愉快で仕方がないと、腹の底から耳障りな笑いを上げる。
折れそうな少女の腕を捻り上げ、鼻と鼻の先が着きそうなほど顔を近づけた。

( ^Д^)「――――な?テメェがどう足掻こうが、これが『現実』だよ」

( ^トェイ^)「ここじゃ、『俺達』がルールだ。諦めな」

男はトドメとばかりに、その一言を突きつけた。


57名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 21:38:53 ID:gdMjBMUA0

が、次の瞬間。
固いもの同士が勢いよくぶつかり合う音が、その場に響いた。
ニヤケ面の男が仰け反り、少女から手を離す。

i!iiリ#゚ ヮ゚ノル「へんっだ!女舐めてんなよ、うすのろ!」

額を真っ赤にして、尻餅をついても、少女は強気なままだった。
頭を押さえて痛みに耐える男に向かって、血の混じった唾を吐く。

i!iiリ#゚ ヮ゚ノル「この街はおかしい!お前らも、街の皆もおかしいよッ!そう言って何が悪い!?」

(; Д )「~~~~ッ!こ、この…!」

i!iiリ#゚ ヮ゚ノル「何と言おうと、お前らは薄汚い盗賊だ!いや、それ以下だねッ!!出て行きな!」

(#^Д^)「ッ……クソガキがァア!!」

男の腕が少女の襟首を掴み、地面に容赦なく叩きつけた。
少女が抵抗する間もなく、腰に提げたナイフをスラリと引き抜く。
鈍く光る刃の先を、少女のか細い喉笛に突きつけた。

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59名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 21:51:59 ID:gdMjBMUA0


(#^Д^)「殺してやるッ!薬漬けにしてマワした後に公開処刑だッ晒し首だ!!ぶち殺してやる!!」

i!iiリ; ヮ ノル「あ……がっ………………………………!!」

<ヽ`∀´>「あーあ、またプギャーが癇癪起こしたニダ、ご愁傷様ニダ」

ギリギリと太い手が少女の首を締め上げる。
少女の首の骨が容易にへし折られるのも時間の問題だった。
だがそれでも、誰も止めようとしない。止められないのだ。
街の人々は腹の底で脅えながら、笑顔を貼り続けているしかない。

(#^Д^)「ああそうとも、俺達は盗賊だ。だがこの街が貧困に喘いでいたとき救ってやったのも俺達だッ!!」

(#^Д^)「水も飯もロクにないこの街で!商人共をぶち転がし宝も食料も山分けにしてやった!」

(:::::::゚Д^)「それを受け取ったのはお前たちだ!お零れに預かる道を選んだのはお前ら街人だろうがよォ?

(::::::::゚Д^)「なあ、違うかァア?!どうなんだ、ええ!?」

男の怒声が空を突き抜ける。
住民たちは男の言葉を受けるや、笑顔がサッと消え、一様に俯く。
それを見回して反応をたっぷりと楽しんだ男は、少女へと視線を落とす。

.


60名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 22:02:59 ID:gdMjBMUA0


( ^Д^)「あ?」

ない。腕が、ない。

否、腕はあるのだ。確かにそこにある。
だが肘から先がないのだ。ズッパリと両断されて、夥しい血が溢れ出している。
ドバドバと泉から湧き出すように、際限なく血が溢れてくる。

( ^Д^)「おい、俺の腕、どこだ?」

痛みがまだ襲ってこない。男は幻覚を魅せられた気分だった。
まさか朝に吸ったクスリが切れていないのか、そう思い男は仲間へと振り返る。

<ヽ゚∀ > 。

( ^Д^)「あ?」

おかしい。なぜ仲間は倒れているのだろう。これも幻覚なのか。
樽から溢れるワインのように、腹からどす黒い血と腸をだらしなく垂れ流している。

「お前らの話、どこまで正しいか正直知ったこっちゃないけどさ」

女の声が、男の耳元でとても静かに、囁く。
直後、男の視界に入る、鈍く輝くジャンビーヤの刃。
鏡のように眩しい刃に映るのは、脂汗にまみれた男と、その背後に佇む少女の顔。

.


61名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 22:13:58 ID:gdMjBMUA0




瓜゚:::::::゚)「斬られたことにも気づかないたァ、ウスノロだってのは本当だったみたいだな」

(; Д )「ぎゃあああーーーーーーーーッ!!」

ザックリ。
それが男が生涯で最期に目にした、光景だった。
ツーヅゥルーのジャンビーヤは、慈悲なく男の両目を斬り潰した。

川 ゚ 々゚)「うわ、えげつな」

にやけ面の男の仲間を踏みにじりながら、クルウもナイフに付いた血を拭う。
取り巻きたちは蒼白になり、悲鳴を上げクルウたちから離れる。
先程まで居なかった筈の少女らが、音もなく近づき仲間を殺したのだから当然だ。

(; Д )「あ゛ああ゛あ゛あ゛目が、目がァアアアア!!」

瓜゚∀゚)「立てる?」

i!iiリ; - ノル「う、げほっ」

目を庇い蹲る男。ツーヅゥルーは見向きもせず、少女を起こす。
少女は血を被り、首には痛々しい痣が出来ていたものの、命に別状はないようだ。
同じく血に塗れたツーヅゥルーとクルウの元に、今まで呆然としていた兄者が駆け寄る。


62名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 22:25:17 ID:gdMjBMUA0
(;´_ゝ`)「こら二人共、無茶をして!それよりツーヅゥルー、今のは……」

瓜;゚∀゚)「ご、ごめんなさい、カッとなっちゃって……」

川 ゚ 々゚)「んなことより逃げるわよ、仲間を連れてこられたら厄介だわ」

クルウを先頭にし、ツーヅゥルー達は少女を連れて駆け出した。
街の人達はどうしてよいのか分からないようで、一様に立ち尽くしている。
誰かを呼ぶことも、男を助けることも、ツーヅゥルーらを引き留めることもしない。

瓜;゚∀゚)「に、逃げるってどこに!?」

川#゚ 々゚)「んなことこっちが聞きたいわよ!アンタが先走るからこっちまでつい殺っちゃったじゃないの、愚図!」

瓜;´д`)「あう……」

(;´_ゝ`)「……そうだ隊長!隊長を探そう、この街は危険だって教えなきゃ!」

街長の屋敷へ続く道を必死に思い出しながら、今度は兄者が手招きする。
すぐ近くで怒号が聞こえた。クルウの推測通り仲間が居たようだ。
焦燥感を必死に抑え、ツーヅゥルーは少女の手を握り締める。

i!iiリ;゚ -゚ノル「あ、あんた達旅人?何で私を助けたの?」

瓜;゚∀゚)「な、何でって、それは……」

ハッとして振り返る。あの男たちの仲間の気配がすぐそこにまで迫っていた。


63名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 22:36:50 ID:gdMjBMUA0

声の数は複数。
先程は不意打ちだからこそ傷を作れたものの、真正面からかち合えばこちらが無勢なのは明らか。
街人たちはツーヅゥルーらを見て目を丸くするが、関わってくる様子はない。
あの男らから守ってくれる可能性も、先の反応を見る限り絶望的だろう。

瓜;゚∀゚)「とにかく急ごう!追いつかれたらこっちがやられ…… !」

逃げる最中、ツーヅゥルーの鼻が刺激臭を捉えた。
それは酸いを含んでいるかと思えば、吐き気を催すような腐臭へとすり変わる。
クルウと兄者、少女も同じ臭いを嗅ぎ取ったらしく、顔を顰める。

瓜;゚∀゚)「何、この臭い……」

(;´_ゝ`)「あっちの方から臭ってきてないか?」

川 ゚ 々゚)「兄者、こっちからも臭って……」

そのとき。一軒の民家の窓が閉められた。
それを皮切りに、街人たちが一斉に、窓を閉め始める。
表に出ていた者たちは顔に恐怖を滲ませ、家に駆け込んでいく。

i!iiリ;゚ -゚ノル

少女の強気な表情も失せて、唇を紫色に変化させていた。

.


64名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 22:44:24 ID:gdMjBMUA0

i!iiリ゚ -゚ノル「………………………………くる!」

瓜;゚∀゚)「え?」

i!iiリ;゚ д゚ノル「くる!アイツ等が、来る……!!」

少女はいきなり喚き出し、その場にへたりこんでしまった。
クルウと兄者は顔を見合わせた。何が彼らを怯えさせるのか、全く理解が追いつかない。
だがツーヅゥルーは、眉間に皺を寄せながらも、少女の肩を優しく抱いた。

i!iiリ ;д;ノル「こ、殺される……!死にたくないぃ……!!」

瓜;゚∀゚)「大丈夫、私が守ってあげる。ほら立って」

(;´_ゝ`)「近づいてきてる、臭いが強くなって……ん?」

兄者は足元に違和感を覚えた。道が濡れている。
石畳の路に、透明な粘液状の何かがぶちまけられたかのようだ。
しかし先程までこんなものは無かった。少女はそれを目にするや、悲鳴を上げた。

i!iiリ ;д;ノル「きた!アイツ等が!ああああああああああ!!」

少女はツーヅゥルーにしがみつき、柔肌に爪を突き立てる。
だがツーヅゥルーは痛みを感じる間もなく、その粘液に釘付けになっていた。

.


65名も無きAAのようです [AAS ] :2013/02/16(土) 22:56:37 ID:gdMjBMUA0

                                       _
                                    |(・)|
i!iiリ; д;ノル                                 ̄ 

                        にちゃり。
                                     : _
                                     ∵∴∵
瓜;゚∀゚)                               |∴(・)∴/
                                   ∴∴∵
                                     :・ |

                                               ずるり。
                                   : ∴
                                  :∵ ∴∵
                                   :∴∵∵
          (;´_ゝ`)                    ∴∵∴:∵
                                  ∴◎:◎∴∵
                                ∵:∵∴●∴∴∴ 
                                  ∴:∵∴        
                                    ∵
        川;゚ 々゚)                                          ずる
                                                      ぅ
                           /∴∵ハ∴| |∵∴ヽ.ヽ                っ
                          /∴∵(●):(.)∴| |∵∴| l
                        /∴∵∴∵∴∵| |∵∴ヽ ヽ
                       (;;;;∵∴∵∵∵∴∵| |∵∴;;;;)|
                         |∵|ヽ∵∴∵∵∴|. ヽ∵|.  |


68名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 23:05:15 ID:gdMjBMUA0


粘液は、増え、満ち、命を持つかのようにうねる。
ドロドロとした不定形から、眼球が飛び出す。口が生える。
液体が躍動しながら、人ならざる何かに姿を変える。

動物か?虫か?爬虫類か?それとも――これは生物か?

全てが理解不能。ただ四人の中で本能が、たったひとつ告げていた。

―――――――――――――――――――――――――― 逃 げ ろ !!


瓜;゚∀゚)「ああああああああああああああああああ!!!」

ツーヅゥルーは恐怖を武者震いにすり替え、腰の銃を引き抜いた。
引鉄に人差し指をかけ、弾丸を撃ち込む。
目の前の存在に銃が通用するか、そんなことはどうでもよかった。

瓜#;゚∀゚)「あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛!!」

弾丸は動く粘液に絡め取られ、動きを止める。
だが何発かが、生み出された器官に直撃し、その度に粘液は身震いして動きを止める。
その隙を突いて、四人は震える足を動かし、逃げ出した。

.


70名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 23:12:59 ID:gdMjBMUA0

「音がしたぞ!あっちだ!」

動けない少女をツーヅゥルーと兄者の両方が手を引く。
銃撃で相手側もこちらの居場所に気づき、追いかけてくる。
四人はただ逃げることを考えた。立ち向かうという発想は既にない。

瓜;゚∀゚)「アイツ等、さっきの奴らの手駒か!?」

川;゚ 々゚)「アセロラアセロラアセロラアセロラアセロラアセロラアセロラアセロラアセロラアセロラアセロラアセロラ」

(;´_ゝ`)「いけない、クルウがよくないハッスルを始めちゃってる!」

路地に飛び込み、四人はがむしゃらに先へ進む。
腐臭が未だ鼻にこびりついて離れない。まだ近くに「アレ」がいるのではと錯覚させられる。

「こっちだ!囲いこめ!」

「野郎、どうなるか思い知らせてやる!」

瓜;゚∀゚)「やばッ!!」

.


71名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 23:23:58 ID:gdMjBMUA0
挟みうちだ。地の利は相手にある。どうにも誘い込まれていたらしい。
目の前に迫り来る数人の男と、半液状の「アレ」が一体。
男たちの中から一発、銃弾が放たれ、民家の壁を砕いた。

( ´_ゝ`)「ッ伏せて!」

兄者の鋭い声に反応し、咄嗟にツーヅゥルーは四つん這いで身を屈める。
瞬間、こちらに突貫してくる先頭男の頭蓋が、モロに撃ち砕かれた。
ツーヅゥルーが恐る恐る見上げると、またも数人の頭が正確に撃ち抜かれる。

( ´_ゝ`)「あーあ、勿体無いな。弾」

瓜;゚∀゚)「へ、ヘッドショット!しかも全員……おわっ」

川;゚ 々゚)「よそ見禁止ぃいーー!!」

半液状の「アレ」がうねり、触手を生やしてツーヅゥルーに迫る。
クルウが一瞬早く腕を引き、ツーヅゥルーの体が仰け反った。
そして力任せに、ツーヅゥルーの首まであと一歩届かなかった触手を、ナイフで切り落とした。

川;゚ 々゚)「うわグロッ!つか弱ッ!」

( ´_ゝ`)「でもこっちが不利なのに代わりはないよ、ほらこっち!」

.


72名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 23:42:58 ID:gdMjBMUA0
逃げても逃げても、男たちと「アレ」は追いかけてくる。
壁をズルズルと這い回り追いかけてくるゲル状。
足は遅いようだが、得体の知れなさが不快感と恐怖を煽ってくる。

瓜;゚∀゚)「ッ行き止まり!?」

ツーヅゥルーたちの足が止まった。目の前には高すぎる壁。
住宅が並ぶこの路地、退路なし。地理に詳しそうな少女も、恐怖のあまり気絶寸前。
迎え撃つか?分が悪すぎる。

( ´_ゝ`)「――自衛のためなら多少の犠牲もやむなしだよね」

瓜;゚∀゚)「へ?」

おもむろに、兄者は民家の窓に向けて銃口を向けた。
一拍の緊張の後、発砲。銃弾は蝶番を破壊し、木製の窓が軋み、落下する。

瓜;゚∀゚)「な、何してんの兄者!?」

( ´_ゝ`)「まあ見てて。あらよっ」

懐から鉤爪のついた小型銃を引っ張り出し、全員に持たせる。
鉤爪の先を窓のあった部分に向け、銃の引鉄をひく。
すると鉤爪が発射され、窓のすぐ下の壁に食い込んだ。

( ´_ゝ`)「登って、早く!」

瓜;゚∀゚)「う、うん!」

.


74名も無きAAのようです :2013/02/16(土) 23:52:43 ID:gdMjBMUA0
銃と鉤爪は太いワイヤーで連結され、引っ張るととても丈夫であることが分かる。
クルウは猿よりも身軽によじ登り、ツーヅゥルーは少女を引っ張り上げながら続く。
兄者はその間、男たちに威嚇の何発かを撃ち込む。

川 ゚ 々゚)「兄者、早く!」

( ´_ゝ`)「セイッ」

クルウに引っ張られ、兄者もよじ登る。
最後に兄者はワイヤーにナイフを突き立て、追って来れないよう細工した。
あれほど頑丈だったワイヤーは小さなナイフの一突きでいとも容易く千切れた。

「な、なんだお前たちは!」

家主であろう男が目を皿のように丸くしてツーヅゥルーたちを凝視した。
血まみれの少女らに何が起きたのか知る由もないのだろう。
しかし今の彼女らは構っている暇などない。

( ´_ゝ`)「すいません、ちょっと通りますね」

i!iiリ; -瓜;゚∀゚)「ご、ごめんなさい!」

........川 ゚ 々゚)スタスタスタスタ

部屋を我が物顔で横断し、反対側の窓から出て行く四人。
家主はただ呆然としながら、それを黙って見送った。


75名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 00:09:45 ID:QIgbRAyg0
瓜;゚∀゚)「よっ!ほっ!」

路地を使えないなら屋根を使えばいいじゃない。
クルウの提案で、四人は住宅の屋根をよじ登りながら先に進む。
男たちはまさかツーヅゥルーたちが屋根伝いに移動しているとも露知らず、
階下で怒声を撒き散らしている。

(;´_ゝ`)「大事になっちゃったね」

川 ゚ 々゚)「隊長たち、無事だといいけど……」

i!iiリ; - ノル「………ごめんなさい。私を助けてしまったばかりに…………」

川 ゚ 々゚)「別に。そっちのせっかちが勝手やって被害被っただけだし」

瓜;゚∀゚)「う……………………」

痛いところを突かれ、項垂れるツーヅゥルー。
確かに先走った自分の責任だ。けれども、どうしても我慢が出来なかったのだ。
この街の全貌がまだ明らかになった訳ではない。
ただ、あの男の下賎な笑顔が、言葉が、許せなかったのだ。

川 ゚ 々゚)「……ま。さっきの目潰しはちょっとスカッとしたけどね」

瓜゚∀゚)!


76名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 00:27:35 ID:QIgbRAyg0


川 ゚ 々゚)「それより、…………アイツをどうするか、よね」

クルウが視線を投げる。
そこには、硫黄の臭いを撒き散らし、ズルリズルリと這いよる「アイツ」。
撃ち抜かれ、或いは切り捨てられてた部分は再生していないようだ。

瓜゚∀゚)(アイツに再生能力はないってことか……)

(;´_ゝ`)「思ったよりしつこいな。見てて吐きそうなんだけど」

川;゚ 々゚)「そうでなくても臭いで吐きそう……よッ!!」

不意打ち同然に伸びてきた触手を、クルウはナイフで応戦する。
這いよるゲル状は身(?)を震わせ、胴体をサボテン、触手を蔓に似た形状に変化させる。

川;゚ 々゚)「もーっ、臭い!汚い!気持ち悪い!」

瓜;゚∀゚)「か、数が多すぎる………………!」

(;´_ゝ`)「弾が持つかな……」

応戦するうち、ツーヅゥルーたちの気配を嗅ぎつけてか、他のゲル達も集合してくる。
再び多勢に無勢。化物を相手に、こちらはたった3名。

万事休すに思われた。


77名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 00:48:02 ID:QIgbRAyg0
川;゚ 々゚)「わ………!」

バシッ。クルウのナイフが弾かれ、地面を滑る。
丸腰になったクルウを援護すべく、兄者が触手に一撃放つ。
触手が怯んだ隙に、クルウはナイフを取りに屋上のへりまで走る。

川;゚ 々゚)「あっ!隊長!!」

クルウの優れた視力が、三人の男たちをしっかりと捉えていた。
巨漢の人狼、フサ。仏頂面のクックル。そして隊長のアヒーラ。
兄者はクルウの方へ一瞥すると、銃弾を一発放ち、クルウのもとへ駆け寄る。

( ´_ゝ`)「……確かに隊長たちだ」

川;゚ 々゚)「おーい隊長ー!!……聞こえてないみたい」

瓜;゚∀゚)「に゛ゃーーーー!!それよりこっち援護してくださいー!!」

i!iiリ;゚ д゚ノル アワアワ

半ば追われるようにツーヅゥルーたちも兄者とクルウの許へ駆けてくる。
ゲル状の生物たちは半円状にツーヅゥルーらを囲み、徐々に距離を縮めてくる。
それだけでなく、その半液状の体を融合させ、肥大し始めていた。

瓜;゚∀゚)「さっきから銃が効かない!どうしよう!」

i!iiリ ;д;ノル「駄目、やっぱり私たち死ぬんだ…!!」

.


82名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 18:12:17 ID:QIgbRAyg0
再び泣き崩れる少女。
ツーヅゥルーとクルウの横顔にも、疲れと焦りが顔に滲んでいる。
だが兄者は逡巡すると、

( ´_ゝ`)「いや、逃げ道はある」

そう言い放ち、おもむろに銃の照準を定めた。――アヒーラたちのいる方向へと。
1発、2発、3発。残弾全てを隊長たちに向け撃ち放つ。
弾丸は全て、アヒーラたちの目の前を横切り、壁にめりこんだ。

( ゚∋゚)そ ( ゚∀゚ )! ミ;,,゚Д゚彡そ

放たれた銃弾に3人が驚き、ツーヅゥルーたちのいる屋上に視線を向けてきた。
だが同時に、階下がにわかに騒がしくなる。
視線を落とすと、目をギラつかせた男たちが口々に何か騒いでいる。

瓜;゚∀゚)「気づいてくれたけど気づかれた!」

( ´_ゝ`)「それでいいのさ」

背後のゲルは肥大した分だけ、動きも鈍くなっているようだった。
のそりのそりと、確実に一歩ずつ、四人に迫る。
兄者は素早く弾薬を詰め替え、伸びてくる触手に撃ち放つ。

( ´_ゝ`)「多分向こうからもこっちの状況は見えている筈。さあ立って、合流するよ」

.


83名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 18:15:23 ID:QIgbRAyg0

兄者は顎で、向かって右側の隣の屋根を差した。
しかし隣の屋根に飛び移るにはゲルの脇スレスレを走り抜けなければならない。
クルウはチラチラとアヒーラ達の方にばかり目を向け、兄者の袖を引っ張った。

川 ゚ 々゚)「兄者、反対側に行こう!」

( ´_ゝ`)「何?」

川 ゚ 々゚)「隊長たち、あっちに行っちゃった」

そう言ってクルウが指差す方向、つまり兄者が指した進行方向とは真逆、
今までツーヅゥルーらが使った逃走経路側へと、確かに三人は走っていく。
みれば、左サイドのほうがゲルの数も少ない。

瓜;゚∀゚)「兄者、クルウ。そのコを連れて先にいって」

瓜;゚∀゚)「……私が囮になる」

( ´_ゝ`)!

川 ゚ 々゚)!

瓜;゚∀゚)「私が撒いた種だ、私がなんとかする」

.


84名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 18:17:46 ID:QIgbRAyg0

川 ゚ 々゚)「何とかするって…アイツがアンタに釣られなかったらどうするのさ」

クルウは低い声で疑問を口にする。
ツーヅゥルーはポケットの中に片手を滑り込ませた。
中にある硬い「それ」を確かめるように、ゆっくりと握り締めた。

瓜;゚∀゚)「……大丈夫。アイツは絶対、【私】を狙う」

(;´_ゝ`)「だとしても……私としては、誰かを犠牲にするなんて真似は……」

ツーヅゥルーの、半ば確信めいた一言に、兄者は苦虫を噛み潰したような顔になる。
クルウは肉薄する触手の一本を切り落とし、ツーヅゥルーへ振り返った。

川 ゚ 々゚)「じゃあ任せたわよ、せっかちさん」

(;´_ゝ`)「あ、ちょっと!」

クルウは兄者と少女を掴まえて左サイドへ駆け出す。
三人に迫る触手に向け、兄者は舌打ち一つ零しそれに発砲する。
肥大したゲルは蠢き、ボゴボゴと泡を立ててツーヅゥルーに迫る。

.


85名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 18:24:32 ID:QIgbRAyg0

;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;(・):;:;:;:;:;:;:「あ・ふがんぇろふぁ・ぶ・ぶるぐるん」

瓜;゚∀゚)「来いよ……お前だって『これ』、欲しいだろう?」

ツーヅゥルーはポケットからそれを出した。
小さな石。黒曜石よりも黒く、太陽の光を吸い込む多面体の石。
あまりに形の整ったそれは、宝石と呼んでも差し支えないほどの美しさ。

;:;:;:;:;:;。;:;:;(・):;゚:;<●>;:;:;:「ぶぎぅーぇら・りうあえぽご・ごろんぶぐ!ろーりろるろーーらぼごぐぶぐ」

瓜;゚∀゚)「ああ、欲しいだろうさ。私には分かる。お前、モラの手先だろう?」

;:;:;:;:;:;。;:;:;(・):;゚:;<●>;:;:;:「ぶぐるぐん!ばーるるらあばん!ふだぐん!」

瓜;゚∀゚)「大方、何も知らない盗賊に安値で売りつけたんだろうさ。アイツなら私がここに来るのもお見通しだったろうよ」

宝石をかざした途端、ゲルは荒ぶるように膨張と収縮を繰り返す。
赤、青、緑、毒々しい原色が半液状の塊の中で混じり合う。
グロテスクな色合いに吐き気がするが、ツーヅゥルーは宝石を拳の中に隠した。

瓜;゚∀゚)「でもやらないよ。欲しけりゃ奪ってみな」

言うや、ツーヅゥルーは石を口に含んだ。
石はツーヅゥルーの舌の上に乗ると、意思を持つかのようにその柔らかい肉に食い込んだ。
まさに禍々しく、痛々しい光景。実際、ツーヅゥルーの舌には耐え難い激痛が襲う。


86名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 18:34:51 ID:QIgbRAyg0


変化はそれだけに留まらない。
ツーヅゥルーの白目が黒に侵食され、瞳は血のように赤く染まっていく。
苦痛に歪めた顔には、文字ともとれるであろう不思議な紋様が顕れる。

瓜#゚∀゚)「にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな!」

ツーヅゥルーは理解不能な呪文と共に、ゲルへと突貫する。
手に握るジャンビーヤににも、不思議な紋様がみるみると広がっていく。
その切っ先がゲルを貫いた瞬間、傷口が、水が蒸発するような音を上げる。

;:;:;:;:;:;。;:;:;(・):;゚:;<●>;:;:;:「あがーら!あんがあらるるるぼらばあり!!」

瓜#゚∀゚)「つぇあああああああああああ!!」

ジャンビーヤは上へ、上へ、――その半液状の体を切り裂く。
唸り声を上げ、身をうねらせるゲル。
傷口からはドバっと大量のヘドロのようなものが滴り落ちる。

瓜#゚∀゚)「うおおおお!!」

ツーヅゥルーの顔はヘドロと血とでドロドロに汚れていた。
それでも臭いに怯まず、その細腕からは考えられない力でジャンビーヤを振るい続けた。


87名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 18:49:34 ID:QIgbRAyg0
筆舌に尽くしがたい奇声が、何度も聞こえてくる。
道中、兄者は心中穏やかでなく、何度もあの屋根へと振り返る。

(;´_ゝ`)「大丈夫かな、ツーヅゥルー」

川 ゚ 々゚)「他人の心配なんかしてる場合?」

先を急ぐクルウが、チッと舌打ちを零した。
見つからないよう屋根を這いつくばって進んでいるが、特定されるのも時間の問題。
男らの怒声はすぐそこにまで近づいてきている。

川 ゚ 々゚)「全く、こんな街来るんじゃなかったわ。盗賊に狙われてる所か、占拠されてんじゃないのさ」

i!iiリ;゚ -゚ノル「………………………………」

( ´_ゝ`)「ねえ、さっきの男が言ってた話……どこまでが本当なんだい?」

顔色の悪い少女に、兄者は静かな声で尋ねた。
男の主張を聞く限り、この街は荒んだ歴史を送ってきたようだ。
あの街人たちの態度を見る限り、その所業にこの街が一枚噛んでいたことは事実だったに違いない。

i!iiリ;゚ -゚ノル「……分からない。この街にはロクな情報が入ってこないもの」

i!iiリ;゚ -゚ノル「何故あんな奴らの言いなりになるかも、私たちは全然知らない」

i!iiリ;゚ -゚ノル「友達も母さんも、皆アイツ等に連れて行かれるけど。何処に行くかも教えてくれない」

i!iiリ; - ノル「アイツ等の言う事も嘘かどうか……正直なところ、私は何も……」

.


88名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 19:00:12 ID:QIgbRAyg0


川 ゚ 々゚)「何だ、只の世間知らずじゃない。あのクソ共も大概だけど、アンタも同罪よ」

i!iiリ#゚ -゚ノル「なッ……!」

心底下らない、と言いたげな表情で、ハン、と鼻を鳴らすクルウ。
青筋を立てる少女をひと睨みして、

川 ゚ 々゚)「無知は罪。何も知らない奴は、食われて当たり前」

と、さも当然のごとく吐き捨てた。
少女は爆竹でも食らったような顔をすると、唇を噛んで俯いた。
兄者は二人を仲裁する代わりに、顔を上げて一瞬だけ固まった。

( ´_ゝ`)「喧嘩してる暇はないみたいだよ」

川 ゚ 々゚)iリ;゚ -゚ノル !

;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;(・):;:;:;:;:;:;: ウジュルジュル

( ´_ゝ`)「まだ残りがいたとはね。厄介だな」

近くに盗賊たちがいる以上、この場で拳銃を使うのは躊躇われた。
睨み合う中、ゲルの方が先にアクションを起こした。
.


89名も無きAAのようです [AAS] :2013/02/17(日) 19:12:45 ID:QIgbRAyg0

ブチッ

    ;:;(・):;: ;:;:{・};:; :;:;;:;:;(・):;:;:;:;:;:;: ジュル
.                 
             ボトッ
               ;:;:;:;:;:;:;:;
               ;::;:;:;:;:;::;:;:(。);:;:;:;::
                 ;:;:;:;:;:;:;:



川;゚ 々゚)「分裂……?ってか増えてない?」

ぶつり、ぶつりと、その体は腐って落ち、一つの個体となる。
石の屋上に染みを作り、波紋状に拡がっていく。
兄者の背中を嫌な汗が伝った瞬間、「それ」は仕掛けてきた。

(;´_ゝ`)「ッ危ない!」

クルウの顔に分裂したゲルが、目にも留まらぬ速さで襲いかかる。
咄嗟に兄者が間に割って入り、一発放った。
弾丸はゲルを貫き、目の前でゲルは弾け飛ぶ。

(;´_ゝ`)「走れ!早く!」

.


90名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 19:36:51 ID:QIgbRAyg0

ビチャビチャと辺りにぶち撒かれるゲルだったもの。
それらが服や床に毒々しい紫の斑点模様を作り、嫌な臭いを発する。
直観的に、触れてはいけないものであると判断するには充分だ。

川;゚ 々゚)「こなくそっ!!」

次々と、その小柄な体躯で飛びかかってくるゲルを、クルウも斬り捨てる。
だがゲルだったものの液体を被った瞬間、ナイフの刃が変色し、一瞬にして錆びてしまった。

反し、弾丸を受けて散ったゲルは、蒸発し煙を上げるのみ。
それを目にした兄者は、細い目を険しくさせ、クルウを見やる。

川;゚ 々゚)「うっそお!?隊長から貰ったナイフが!」

( ´_ゝ`)「クルウ、こいつ等にナイフで反撃しても意味がない!ここは私に任せて!」

川 ; 々;)「隊長から貰ったのに……隊長から貰った大事なお下がりなのにぃい~……」

よほどショックだったようで、ナイフを握りしめて肩を震わせるクルウ。
少女は必死になって避けながら兄者に尋ねた。

i!iiリ;゚ д゚ノル「ナイフが効かない?どういうこと?」

(;´_ゝ`)「つまり……まあまずは逃げるが勝ちだ!!」

 ジュルル ;:;(・):;: ;:;:{・};:; :;:;;:;:;(・):;:;:;:;:;:;:                三iリ;゚ -゚ノル三リ ; 々;)三;´_ゝ`)

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91名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 19:47:50 ID:QIgbRAyg0

視点は変わる。
路地や広い通りは、得物―拳銃だったり槍だったり―
を構えて、怒鳴り合いながらうろつく男たちで溢れ返っている。

アヒーラたちは壊れた家屋の影で男たちをやり過ごしつつ、様子を伺っていた。

( ゚∋゚)「何やら物々しい雰囲気ですね」

ミ;,,゚Д゚彡「さっき兄者が撃ってきたのと関係あるから?」

体が大きすぎる為、犬よろしくしゃがみこんだ姿勢のままのフサが二人を見上げる。
アヒーラは屋根を見上げ、三人分の影を目視した。
鼻が捻じ曲がるような臭いが周辺を満たし、フサは顔を顰める。

ミ;,,゚益゚彡「すっごく変な臭いするから!吐きそうだから!」

( ゚∀゚ )「我慢しろ……おっと」

アヒーラが咄嗟に顔を引っ込め、足を突き出した。
すると、角から槍を持って現れた男がその足に引っかかり、無様に倒れる。
瞬時に男を影に引きずり込むと、アヒーラはその腹に容赦なく拳をねじこみ、男の意識を奪った。


.


92名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 19:58:42 ID:QIgbRAyg0

ミ,,゚Д゚彡「相変わらず容赦ないから……」

( ゚∀゚ )「命奪らないだけマシだ。それよりコイツを見ろ」

アヒーラは男を仰向けに転がして胸元のスカーフを剥いだ。
黒いスカーフには白い十字(クロス)と植物の蔓の模様が刻まれている。

( ゚∀゚ )「数年前に懸賞金が掛けられ、消息を絶っていた【黒旗団】のシンボルだ」

( ;゚∋゚)「え?でもおかしいでしょう。何故この街に彼らが?」

黒旗団の名を知らない隊商はいないといってもいい。
略奪の限りを尽くし、時に村や街を襲っては滅ぼす。
男は殺し、女子供は売りさばく。見境なく秩序もない冷酷無比の盗賊集団。

盗賊に怯えていた街長たち。我が物顔で闊歩する盗賊団。目にする数々の壊れた民家。
先程から蔓延する緊迫した空気と臭気、それからもう一つの奇妙な「におい」。
アヒーラの三白眼と唇の端が、鋭く釣り上がる。

( ゚∀゚ )「……ハン。臭ぇとは思ってたぜ」

ミ;,,´Д`彡「同感だから。臭すぎてたまんないから」

( ゚∀゚ )「そっちじゃねえバカ犬。そこの槍かっぱらっとけ、行くぞ」

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93名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 20:11:35 ID:QIgbRAyg0
銃声。それと同時に兄者たちが動き出した。
そのとき、屋根の上の三人に気づいた男たちが口々に喚き出す。
中には指差す者、銃を構える者もいる。

( ゚∀゚ )「チッ」

アヒーラたち三人も飛び出す。
男らは屋根の上に夢中で、周りに注意を向けようともしない。
フサとクックルにそれぞれ視線を寄越すと、二人とも頷いた。

( ゚∀゚ )「今だッ!」

三,,゚Д゚彡 三 ゚∋゚)

巨漢の二人がアヒーラを追い抜いた。
同時にアヒーラが腰の2梃の銃――どちらも人が扱うには少々大きい――を引き抜き、
兄者らがいる家屋の真下で喚く男たちに容赦なく引鉄を引いた。

ミ,,゚Д゚彡「おーーーーいッ!!こっちィーーーー!!」

フサが大きく手を振り、増援が来たことを知らせる。
すると兄者が顔を出し、フサを視認。一度顔を引っ込め、

( ´_ゝ`)「フサァ、受け止めてーーーーーーー!!!」

ミ,,゚Д゚彡「えっ」

三人分の影が、落ちてきた。

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96名も無きAAのようです [AAS] :2013/02/17(日) 21:39:26 ID:QIgbRAyg0



l|l|l|l|l|( ´_ゝ`l|l川 。々。)|l| i!iiリ。Д。ノル |l|l|l|l|l|l|l|


⊂ミ;,,゚Д゚彡⊃「あわわっわわわわわ」 (゚∈゚; )))オーライオーライ 

ガシッ そ( ´_ゝ`)   (゚々゚ 川そ
     ⊂二ミ;,,゚Д゚彡二⊃「ほあああーーーーッ!!」  i!iiリxдxノ(゚∈゚; )ガシッ

どうにか目測を誤ることなく、フサは二人を受け止めた。
残る一人もクックルが難なく抱きとめることに成功する。

( ´_ゝ`)+「ナイスキャッチ!」

川 ゚ 々゚)プウッ「隊長に受け止めて欲しかったなー」

( ゚∀゚ )「おうおめえら、派手に暴れてくれやがったな」

ニヤニヤ笑いながら撃ち続け、男たちを寄せ付けないアヒーラ。
すると、クックルが少女を抱いたままおずおずと会話に割り込んだ。

( ;゚∋゚)iリxдxノル「あの、お二人共、この子は一体……」
    / キュー \
ミ;,,゚Д゚彡「あれ?そういえばツーヅゥルーがいないから!」

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97名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 21:50:54 ID:QIgbRAyg0



(;´_ゝ`)「そうだ!彼女、私たちを逃がすために囮になるって、実はまだ向こうに一人で……!」
  _,
( ゚∀゚ )「囮だァ?」

ミ;,,゚Д゚彡「フサ、行ってくるから!」

まだ残って戦っていると知るや、フサは二人を下ろし、
奪った槍を握り締め、巨体からは想像も出来ない速さでもと来た道を駆け出した。
そのスピードたるや、止める間もなくあっという間にその姿は消えていった。

( ゚∀゚ )「…クックルはその女を宿まで運べ。邪魔する奴は殺してもいい」

( ゚∋゚)「了解」

( ゚∀゚ )「クルウ、お前は見つからねえように隊の仲間を集めろ。荷物を纏めさせておけ」

川 ゚ 々゚)「らじゃっ」

( ゚∀゚ )「兄者は俺と来い。案内しろ」

( ´_ゝ`)「把握」


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98名も無きAAのようです [AAS] :2013/02/17(日) 22:06:24 ID:QIgbRAyg0
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瓜ili ∀ )「う、ぐあ」

ドロリと粘り気のある触手が、ツーヅゥルーの首にまとわりつく。
ツーヅゥルーの体の殆どは、ゲルに飲み込まれかけ、それでも逃げようと足掻いていた。


99名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 22:20:17 ID:QIgbRAyg0



兄者らを逃がし、戦い続ける最中にも、ゲルは肥大を続けた。
その結果、ゲルの体は家屋の屋根の面積よりも増え、
ツーヅゥルーひとりの手では負えない状況にまで陥ってしまった。

瓜i! ∀ )「こ、のっ」

抵抗すべく、ゲルに突き入れた手で拳を作る。
刹那、皮膚に刻まれた紋様が妖しく輝き、ゲルの纏った部分が激しく蒸発する。
まるで鉄板に落とした水が弾けるように、その部分だけゲルは消える。
だが肌の露出していない部分は、依然として纏わりついたまま。

瓜i!i! ∀ )「どうした化物、その程度か?」

ツーヅゥルーはがむしゃらに、腕を振り回す。
その度にゲルが溶け、焦げる臭いが鼻を突く。

瓜i!i! Q )「これが、欲しいんじゃなかったのか?

べえ、と舌を突き出す。
そこには黒く輝いていたはずの石が、まるで血が通っているように真紅に瞬いている。
それだけでなく、中心が、心臓のように、鼓動している。

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100名も無きAAのようです [AAS] :2013/02/17(日) 22:29:19 ID:QIgbRAyg0
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101名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 22:40:41 ID:QIgbRAyg0
不定形のゲルが、パックリと上下に割れた。
そこにあるのは、果たして口なのか。
ツーヅゥルーの動きを真似たかのように、だらしなく舌のような何かを突き出してくる。
その仕草は、幼い悪戯っ子がする、あかんべえに似ていた。

瓜!l! ∀ )「う゛ぇ、えっ」

だが腔内から発せられる死臭と、首への圧迫感が、不快感をもたらす。
未熟な体の体力はもはや、限界を迎えつつあった。
抵抗し続けていたツーヅゥルーの腕が、やがて力なくだらりと下がり――


瓜!l!゚∀ )「はな、せっ!!」

――腰の銃を引き抜き、その大口へと向けた。
安全装置を外し、ハンマーに指を添える。そして――銃口が、火を噴く。

ブチッと、何かが引きちぎれる音がする。
それは、照準が逸れ、ツーヅゥルーを絡めていた触手が銃弾により切断されたものだだった。

瓜; ∀ )「あ……!」

宙に放り出され、ツーヅゥルーは屋上から、真っ逆さま。
ゲルを纏ったまま、地面と急接近する――!


102名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 22:47:45 ID:QIgbRAyg0






「ツーヅゥルーーーーゥウウ!!」

落ちるさなか、野太い声に呼ばれた刹那。
大きく固く、ごわごわとした「何か」がツーヅゥルーをかっ攫う。
途端にツーヅゥルーは浮遊感から脱し、嗅ぎ覚えのある独特の香の香りが鼻をくすぐる。

瓜;゚∀")「へ……」

ミ;,,゚Д゚彡「大丈夫だから!?」

近い。獣面が至近距離で映り、ぎょっとする。
けれども倦怠感がリアクションの邪魔をして、声ひとつ上げることも叶わない。

ミ;,,゚Д゚彡「何アレ臭いから!気持ち悪いしありえないから!あと臭いから!」

瓜;゚∀")「に、逃げて……あれは一人でどうにかなるものじゃ……」

フサがオーバーに驚きながら、屋根の上にへばりつくゲルを見上げる。
ゲルもまたフサたちを見下ろし、幾つもの目玉をぎょろつかせる。

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103名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 22:58:10 ID:QIgbRAyg0
ばちゃ、べちゃ、ばちゃり!
不定形で揺蕩うだけだった不定形に、足が生える。
計八本の節足が沸くように出来上がり、さながら蜘蛛のような姿へと変わる。
中心に集まった目玉らが一斉にフサとツーヅゥルーを見た。

ミ;,,゚Д゚彡「こ、こっち見んなだから!」

瓜;゚∀゛)「逃げて!!置いてっていいから、逃げて!」

ツーヅゥルーは力の限り腹の底から叫ぶ。
フサは一瞬ぎょっとしたが、ツーヅゥルーの抱く力を強めて、

ミ#,,゚Д゚彡「嫌だから!!」

と素早く踵を返し、大きな通りへと駆け出す。
時同じくして、ゲルの足が一歩前進し、家屋の壁を一気に駆け下り、
先程までの愚鈍な動きを忘れるほどのスピードでフサたちを追う!!

ミ,,゚Д゚彡「ここまでおいでー、だから!」

だがスピードだけならフサも負けていない。
人狼ならびに獣人は屈強な肉体と並外れた体力と俊敏さで知られている。
ゲルに比べて小回りもきき、するりするりと触手を掻い潜る。
片手に槍、片手にツーヅゥルーを抱えていても、その動きはとても軽やかだ。

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104名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 23:08:30 ID:QIgbRAyg0

瓜;゚∀゚)「フサ、良いよ下ろして!アイツは私を狙ってんだ!」

ツーヅゥルーは揺れる腕の中で必死にフサに訴える。
いつの間にか彼女の肌にあった紋様は輝きを失い、黒ずんでいた。
しかしフサは一向に耳を貸さない。

ゲルは八本の足を駆使しとてつもないスピードで追いかけてくる。
途中、何も知らない住民たちとすれ違うと、ゲルを見て悲鳴をあげ、逃げ出す。
10分とも経たずして、街は混沌と恐怖に叩き落とされた。

瓜;゚∀゚)「フサ!」

ミ#,,゚Д゚彡「だから!そんなの嫌って言ってるから!!」

フサは、今はもう使われていないだろう壊れた家屋によじ登り、
迫り来るゲルへと振り返る。その距離わずか10メートルほど。

ミ,,゚Д゚彡「来い、化物!」

瓜;゚∀゚)「駄目フサ、逃げてェ!!」

フサは右腕に、血管が幾つも浮かぶほど満身の力をこめ――――

ミ#,,゚Д゚彡「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

大口を開け涎を撒き散らし、肉迫するゲルの喉奥に、槍を突き刺した。


105名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 23:21:06 ID:QIgbRAyg0

槍の先が、ゲルを貫通する。
突き破られた先からゲルの体液が迸り、辺りに拡散する。
ゲルは形容し難い咆哮を上げ、ビリビリと空気を震わせた。

瓜;゚∀゚)「っ!」

ツーヅゥルーも咄嗟に槍を握り締めた。
再び肌の紋様が赤く輝き始め、槍も同調するように熱を帯びる。

ミ#,,゚Д゚彡「どおぉおおおーーーーーーりゃああああああああああああ!!!」

そのまま、フサは右腕を横に薙ぐ。ツーヅゥルーもそれに合わせる。
ゲルの体内で槍がかき乱され、ジュウジュウと捌かれた部分が蒸発していく。

ミ;,,゚Д゚彡「臭っ!」

瓜;゚∀゚)「でも、確実に弱ってる!」

薙ぎ抜くと、ゲルの半分が引き裂かれ、そこからもヘドロが沸き出してくる。
ヘドロが抜ける分だけ、徐々にゲルは空気が抜けたように萎んでいく。
小さく小さくなっていき――ついにはフサの背丈と変わらないくらいにまで縮んだ。

ミ#,,゚Д゚彡「どぉおおっせええええええええええええいいいい!!」

そして、フサが大上段に構えた槍が振り下ろされ、トドメの一撃。
――ゲルは真っ二つにされてしまった。

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106名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 23:29:30 ID:QIgbRAyg0



一方、遅れて兄者とアヒーラはフサの後を追っていた。

( ゚∀゚ )「こっちで合ってるのか?」

(;´_ゝ`)「もうすぐです!」

確かに前方が騒然としている。
腐臭が色濃く周りに満ち、不穏な気配と交じり合う。
するとにわかに、地鳴りと、何か重い物が闊歩するような音が地面を通して伝わってくる。

( ゚∀゚ )「何だ!?」

( ;´_ゝ`)σ「隊長、あれ!」

八本足の半透明な何かが、石の壁を這い蹲り、蜘蛛のように闊歩している。
時に飛び移り、その度に家屋が重みに耐え切れず半壊する。
中からは住民が悲鳴をあげ、血相を変えて飛び出していく。
しかし八本足は意に介さず、ただ眼前を駆けていくフサらを見据えて追いかける。

( ゚∀゚ )「ありゃあ…………………………………スライム…………か?」

( ´_ゝ`)「スライムってあんなに臭くて凶暴でしたっけ……」

( ゚∀゚ )「とにかく追うぞ!」

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108名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 23:44:06 ID:QIgbRAyg0
八本足は躊躇なく、家屋を破壊し、牛や馬を踏み潰し、フサを追う。
その巨体からは計り取れぬ素早さは、馬すら凌ぐだろう。
幸いその足跡と巨体で、見失うことはないが、光景は凄惨たるものだ。

(;´_ゝ`)「それにしてもあの盗賊たち、あんな物を子飼いしてたなんて…!」

人ごみに逆らうように、アヒーラと兄者は追いかける。
移動中にかいつまんで事情を聞いていたアヒーラは、情報のピースを繋げ始める。
アヒーラの中で何かが繋がりかけていた時、視界にあるものが入った。

( ゚∀゚ )「兄者、先にいけ。急用が出来た」

そう言い残すと脇にそれ、走るスピードをはやめる。
その先に居たのは、同じく逃げようとする街長のシラヒーゲとその部下たちだ。

( ゚∀゚ )「ちょいと待てよ街長さん、お話しようぜ?」

(ili´W`)「ヒッ……あ、アヒーラ殿…………」

肩を掴まれたシラヒーゲは今にも卒倒しそうな顔色の悪さであった。
実際に膝を笑わせて、足を動かし逃げるのもやっとなのだろう。
弱々しい力で振り切ろうとするシラヒーゲに、アヒーラはぐっと顔を近づけ睨み合う。

( ゚∀゚ )「どこへ行こうってんだい?そこらでお茶しようってだけだぜ?」

(ili´W`)「そ、それどころではありません!見えないのですか、あの化物が!!我々もとって食われてしまうのですぞ!!?」

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109名も無きAAのようです :2013/02/17(日) 23:56:14 ID:QIgbRAyg0

シラヒーゲは声を荒げて化物――八本足を指差した。
半透明の八本足は家屋に激突し、抜け出そうともがいていた。
右をみても左をみても、八本足の暴れた跡が残っている。

(ilil゚W゚)「ああ、おしまいだぁあ。この街は呪われているんだぁああ!」

街長は頭を抱えその場に座り込んだ。
部下たちは狼狽して、街長を見捨て我先へと逃げ出す。
八本足の周囲には、黒旗団と思わしき男たちが集まっていた。

調伏しようとしているのか、男たちが何か口々に言っている。
だがめりこんでいた体を引き抜くと、八本足はすぐ足元にいた男の一人を踏み潰した。
辺りに血が飛び散り、断末魔が轟く。
仲間の凄惨な最期を目にするや、さしもの黒旗団も、パニックに陥り逃げ出した。

( ゚∀゚ )「ハン、テメエのペットもまともに躾けられないたあ、盗賊が聞いて呆れるぜ」

(ilil゚W゚)「あ…………………あああ………………………………!!」

虚ろな目でその光景にただただ見入るシラヒーゲ。
アヒーラはしゃがんで老人と視線を合わせた。

( ゚∀゚ )「昔からおとぎ話もある。【旅人を呑む街】があるってな」

(ilil゚W゚)「…………………………………………………」

( ゚∀゚ )「どこぞの街から発注を受けた隊商が戻らないことがある――それは別に珍しいことじゃねえ」

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110名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 00:13:44 ID:UWbBrnqE0

切羽詰った状況にも関わらず、アヒーラの声は穏やかだった。
老若男女入り混じる、混乱と喧騒の中で、シラヒーゲの耳にしかとその言葉が流れ込んでくる。

「砂漠を渡るってのは命懸けさ。砂の中には化物がうようよ。盗賊が舌舐りしてる。砂嵐だって馬鹿にできない」

「けれどな、そんな過酷な環境で荷物を確かに届ける、それが俺達【隊商】の仕事」

「でよぉ。長いこと仕事してるとさ、嫌でも小耳に挟むもんよ、おかしな噂のひとつやふたつ」

アヒーラたちの脇を、街人に混じって黒旗団たちが逃げ惑う。
最早この場において、上下関係など皆無。
今は皆等しく、命の危機に晒された小虫の一匹でしかない。

「【旅人を呑む街】。おとぎ話じゃあ、無人の街に迷い込んだ隊商が、街のバケモンに食われちまうお話だっけなあ」

「バケモンは姿を見せねえ。ただ街に入った者は食われる。噂を聞いた勇者がその街に赴いて、バケモンを倒すんだったなあ?」

アヒーラは暴れ狂う八本足とシラヒーゲを交互に見た。

「バケモノの姿は最期まで明かされねえ。ただ街の下には大量の骸骨と金銀財宝が眠ってるんだっけ」


       【略奪者】  
( ゚∀゚ )「 お 前 ら という化物を孕んだこの街の下には、何が眠ってるんだろうなあ?」

大人なら誰でも知る昔話を聴かせた声は、軽蔑と嘲笑を含んでいた。

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115名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 22:32:03 ID:UWbBrnqE0

(ilil゚W゚)

シラヒーゲの視線が、無意識に壊れた家屋へと向けられた。
理由も分からず、倒壊したまま撤去すらされていない建物の数々。
彼の意図に気づいたアヒーラの笑顔がすっと消え、瞳に静かな憎悪が満ちた。

( ゚∀゚ )「……成程。崩壊した家屋をわざわざ瓦礫どかしてまで調べる阿呆はいねえわな?」

(ilil゚W゚)

(ilil゚W゚)「………………どこまで……………知って………………」

( ゚∀゚ )「国からお達しがあったのさ。納品報告の出ていない隊商が定期的に必ず現れるからよ」

( ゚∀゚ )「腐った所だな。盗賊にビビってた街がまさか盗賊の根城たあ、恐れ入る」

アヒーラは立ち上がり、八本足の向かった方を見据えた。
街は遠くに人の叫び声が響き、周辺はがらんどう。物がずさんに散らばるばかり。
彼の視界には、もうシラヒーゲは映っていなかった。

( ゚∀゚ )「この際、おめえら以外の誰が俺達に発注したかなんざどうでもいい。忠告通り、今日にも退かせてもらうぜ」

(ilil W )

アヒーラはそれだけ言い残し、上へと駆けていった。
残されたシラヒーゲは、ただ打ちひしがれ、項垂れるのみであった。

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116名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 22:34:40 ID:UWbBrnqE0
―――――――――――――

―――――――

――――

(;´_ゝ`)「ツーヅゥルー!フサー!」

ミ,,゚Д゚彡ノシ「兄者ー!こっちー!」

駆け上ってくる兄者に、ツーヅゥルーを抱えたままフサは大きく手を振る。
その足元では、ズブズブに融けて腐っていくゲル。
黒煙を上げ、泥のような体液を時折撒き散らし、拡がっていく。

(;´_ゝ`)「こ、これ…………死んだの?」

ミ,,゚Д゚彡「多分!フサたちで倒したから!」

えっへん、とフサは得意げに胸を反らす。
その横でツーヅゥルーはこっそりと黒い多面体の石をポケットに滑り込ませた。

(;´_ゝ`)「ツーヅゥルー、怪我は!?」

瓜゚∀゚)「大丈夫だよ。ほらっ!」

瓜;゚∀")「らっ……?」

ツーヅゥルーは何ともない、とくるりと一回転してみせる。
だがその実、体は激痛を訴え、多大な疲労感が蓄積されていた。
その結果、ツーヅゥルーの視界は暗転し、意識を手放した――

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117名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 22:37:35 ID:UWbBrnqE0




夜。

( ´_ゝ`)「静かですね」

( ゚∀゚ )「街にいた殆どの連中が逃げちまったからな」

宿屋の窓から、がらんどうになった街並みを見下ろして、兄者はぽつりと呟いた。
ベッドの上ではアヒーラが煙管をくゆらせ、クルウがその腰にしがみついて甘えている。
向かい合ったベッドでは、少女とツーヅゥルーが小さく寝息を立てている。

ミ,,゚Д゚彡ノシ オーエス オーエス  (゚∈゚ )ヒッパレー!

階下では、隊商の面々が倒壊した家屋の瓦礫を撤去している。
既に幾つかの瓦礫を取り除いた結果、地の下では大量の白骨化した死体が見つかった。
恐らく、架空発注しておびき寄せられ、こぞって殺された他の隊商たちだろう。

あくまでアヒーラの推測に過ぎない。
この街では盗賊が街と結託し、少ない資源を補うためにキャラバンを襲っていた。
そして分け前を寄越す代わりに、この街での蛮行を許されていたのだろう。

シラヒーゲがこの街から退くよう促したのは、なけなしの人の心から来る人情だったのかもしれない。
もしくは、盗賊たちの抑圧から抜け出すきっかけでも欲しかったのかもしれない。
結局のところ、真意は闇の中。

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118名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 22:41:47 ID:UWbBrnqE0

シラヒーゲは他の街人同様、何処へと姿を消していた。
追いかけるつもりはない。アヒーラたちは只の隊商であり、罰を下すべき立場ではない。
だがせめて、理不尽な死に放り込まれた商人たちを供養すべきだ。
そう考えての判断だった。

( ´_ゝ`)「この街、結局謎だらけでしたね……」

( ゚∀゚ )「いいじゃねえか。俺達は刑吏(ワリ※警官のようなもの)でも勇者でもねーんだから」

アヒーラは心の底から興味なさげに、煙と共にその一言を吐き出す。

川 ゚ 々゚)「お墓たてたら出て行くの?」

( ゚∀゚ )「そうだな。……にしても、生モノの積荷が無駄になっちまったぜ」

川 ゚ 々゚)「いいじゃない、骨と一緒にお宝も出てきたんでしょ?代金代わりに貰っちゃえばいいじゃん」

クルウの言う通り、瓦礫の下からは宝の類も掘り出された。
恐らく少しずつ切り崩して、金に変えていたのだろう。
だがアヒーラは首を横に振った。

( ゚∀゚ )「あれは商売しに来た彼らのための「品物」だ。ここに置いておくべきさ」

どこか遠い目で、彼はゆっくりとした口振りで言った。
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119名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 22:47:20 ID:UWbBrnqE0


川 ゚ 々゚)「ふうん。隊長がそういうなら、そうなんだろうね」

諭されたクルウは、何の反論もなく頷いた。
掘り出された死体は、皆が墓をたて、出てきた宝を遺品として共に埋められる。
クルウはしばし黙していたが、「墓づくりを手伝ってくる」と言って外へ飛び出していった。

ランタンを手に駆けていくクルウの背を見送りながら、兄者は一人つぶやく。

( ´_ゝ`)「街の人達は戻ってくるでしょうか?」

( ゚∀゚ )「一度は戻るだろうな。だが出て行く連中が大半だろうよ」

この街で生きてきた人々は、この日までの悪夢を消して忘れない。
暴力の恐怖が消えた今、この街を呪われた地と唾棄し、ひとり、またひとりと去っていくだろう。

( ゚∀゚ )「でも、確かにクルウの言う通り、手ぶらで出て行くもなんだな」

アヒーラはそうぼやくと、眠る少女らへと振り返る。
身を清められ、恐怖も忘れて安らかな顔で寝息を立てている少女へ。

( ゚∀゚ )「この街から盗賊を追い出したんだ、【礼】の一つくらい貰ったって、構わないよな?」


―――――――――

――――
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120名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 22:54:33 ID:UWbBrnqE0

夜明け前。皆起きて、馬車を発車させる準備に備えている。
その中には、すっかり体力を回復したツーヅゥルーの姿もあった。

( ´_ゝ`)「無理しなくてもいいんだよ?」

瓜゚∀゚)「本当に大丈夫だってば。兄者は心配性だなあ…」

しきりに何度も体調を心配する兄者に、ツーヅゥルーは苦笑いをこぼす。
本来ならばあと2、3日は横になっていたいが、一人だけずっと休むわけにはいかない。
空元気で積荷を運ぶツーヅゥルーの背中を、兄者は困り顔で見ていた。

ミ,,゚Д゚彡「あれ?もうツーヅゥルー元気になったから?」

瓜゚∀゚)「フサ」

ノッシノッシと熊のような大柄がツーヅゥルーを見下ろす。
ツーヅゥルーはニッカリ笑うと、力こぶしを作ってみせた。

瓜゚∀゚)「今度こそ、もう平気!」

ミ,,^Д^彡「なら良かったから!でも無理はいけないから!」

ワハハ、と豪快に笑い、力強くツーヅゥルーの背中を叩く。
あまりに力強すぎて、たまらずよろけるほどだった。

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121名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 22:59:27 ID:UWbBrnqE0

瓜゚∀゚)「フサ、昨日はありがとう」

ミ,,゚Д゚彡「へ?」

ツーヅゥルーは礼を述べ、足の爪先に視線を落とす。
フサは何のことやら心当たりがないらしく、首を傾げた。

瓜゚∀゚)「アレに追われてた時、ずっと私から手を離さないでくれた。アイツが私を狙ってるって、何度も言ったのに」

ミ,,゚Д゚彡「ああ、そのこと?」

ようやく合点がいったらしく、ぽん、と拳を手のひらで叩く。

ミ,,゚Д゚彡「だってツーヅゥルーは、もう隊商の一員だから」

ミ,,^Д^彡「隊商の皆は家族。家族を助けるのは当たり前だから!」

林檎の色は赤いのは当然と同じくらいに、当たり前のようにフサは答えた。
ツーヅゥルーはといえば、ポカン、と口を開けてフサの顔を凝視する。
その時、フサの大きな背中を小突く一人の影。

( ゚∀゚ )「お前たち、グダまいてねーで荷物運べよ」

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122名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 23:10:51 ID:UWbBrnqE0


i!iiリ;゚ -゚ノル

相変わらずのきつめの三白眼を光らせ、隊長・アヒーラが二人を睨んだ。
その後ろには、昨日助けたあの少女が控えている。
目を丸くして少女に視線を移すと、アヒーラが少女の背をおした。

( ゚∀゚ )「今日からコイツも隊に入れることにする」

瓜゚∀゚)「え?彼女を?」

( ゚∀゚ )「街から盗賊を追い出したんだ、使いっぱしりの一人くらいかっぱらったって構わねーだろ」

ケラケラ笑うアヒーラ。
依然としておどおどとした立ち振る舞いの少女を、ツーヅゥルーの前にずいっと押しやった。

瓜;゚∀゚)「でもこれって、誘拐になるんじゃ……」

i!iiリ゚ -゚ノル「……いいの。私自身、納得してるし、むしろ着いていきたい」

少女は顔をあげて、まっすぐツーヅゥルーを見た。

i!iiリ゚ -゚ノル「私、何も知らずに、一人で粋がってた。あの怖い女の子に言われて、ようやく気づいたの」

i!iiリ゚ -゚ノル「無知のまま、捨てられたこの街で何もせずに死んでいくのは嫌。一歩外に出ようって、決めたの」

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「それにあのままじゃ、何も知らずに死んでた。貴方に助けて貰った命を、この隊商で考えていきたいの」

少女はそう言うと、初めてようやく笑った。

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123名も無きAAのようです :2013/02/18(月) 23:23:06 ID:UWbBrnqE0

ツーヅゥルーは何と言葉をかけるべきか考えたが、
服の袖を掴んでいる少女の震える手を見て、口を噤んだ。
あの街のあり方を否定してまで街を守ろうとした彼女が、
住み慣れた場所から離れることをとても悩んだ筈だ。

それでも見捨てられたこの街に残るより、外へ出るほうを選んだ。
ツーヅゥルーは目の前の少女に何も言葉をかけず、ただ手を差し出した。

瓜゚∀゚)「……そっか。私ツーヅゥルー、よろしくね。

i!iiリ゚ ヮ゚ノル「私、ヴェイサ。よろしく、ツーヅゥルー!」

微笑ましく握手を交わすツーヅゥルーとヴェイサ。
その様子を見ていたのか、スタスタとクルウが髪をなびかせ歩いてくる。

川 ゚ 々゚)「言っておくけど、また迷惑かけるなら馬車から放っぽり出すからね」

瓜゚∀゚)そ

i!iiリ;゚ -゚ノルそ

二人をジト目で睨みつけると、クルウは踵を返しさっさとその場から立ち去る。
ツーヅゥルーとヴェイサは顔を見合わせ、互いに苦く笑うのみであった。

「出ぱァーつ!」

そして隊商は、新たに仲間を乗せ、ウィークリィの街を後にするのであった。
新たな街への期待と、ほんの少しの不安を乗せて………………………………。


1.強弱  終

.



 ※ 08/06現在、投下分はここまで
奏でられる物語のようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1360592587/

[ 2013/08/06 23:57 ] ミニラノベ 2013/02 | CM(0)
[タグ] (*゚∀゚)


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