まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 夏の夢のようです


934名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:31:01 ID:USnqYIBQ0
八十二本目

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 (i,)
  |_|

     夏の夢のようです


935名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:32:03 ID:USnqYIBQ0

('A`)「はぁ……」

( ^ω^)「どうしたお」

('A`)「夏っていいよな……」

( ^ω^)「そうだおね」

(´・ω・`)「夏は良いよね。透明感というかなんというか」

('A`)「はぁ……」


( ^ω^)「で、何で溜息ばっか吐いてるんだお」

('A`)「いや、な……昨日、ある夢を見てさ」

(´・ω・`)「ほう。聞かせてもらおうか」

('A`)「ああ……」




 * * *




938名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:33:12 ID:USnqYIBQ0

 ふと気付くと、俺の目の前には夏の景色が広がっていた。


 青々しい空、気ままに漂う白雲、輝くような緑の田園と畦道。

 傍らには向日葵畑があって、少し向こうには澄んだ小川が流れてて。

 振り向くといかにも田舎っぽい日本家屋があって、後ろには大きな山がそびえてる。

 聞こえるのは騒がしい蝉の声と、透き通った風鈴の音に、小川のせせらぎ。


 なぜだか懐かしさを覚えてしまう風の匂いにつられて視線を移すと、

 虫取り網と虫取り籠を持ち、麦わら帽子をかぶった子供たちが、笑顔で駆けていた。


 日本家屋の縁側には、これまた夏休みを満喫していると思しき子供が、

 鮮やかな色をしたスイカに齧り付いている。

 とても美味しそうだ。瞬く間に平らげると、庭に寝転がっていた猫と戯れ始める。


940名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:34:31 ID:USnqYIBQ0

 それで、いつの間にか俺は歩き出していた。

 突き刺すような日差しの中、線路沿いの道を、ゆらめく逃げ水を辿りながら。


 歩く、歩く。

 無人駅の改札を抜けると、ちょうど電車が来る所だった。

 がたん、ごとん、とお馴染みの音を響かせて。


 中には誰も乗っていなかった。ただ、涼しさだけが満ちていた。

 整理券を取って席に座る。ドアが閉まって、走り出す。

 電車に揺られながら、自転車で走っていく学生や、遠くの入道雲、流れる景色を眺め続ける。


 数分ほどで、電車は止まった。

 整理券と、財布から取り出した小銭を運賃箱に入れて、運転手さんに会釈をして外へ出る。

 目の前には、深い緑に覆われた山々。変わり映えのしない景色。


942名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:35:24 ID:USnqYIBQ0

 でも振り向くとそこには、空の色を映した海原が、限りない広がりを見せていた。

 水平線はどこまでも真っすぐで。たまに吹き抜ける潮風も、鼻をくすぐる磯の匂いも、どこか心地よくて。

 時間もゆったりと流れていて、いつまでもここにいたい気分になった。


 そこで、ふと気付く。プラットホームに座っている人物に。

 白いワンピースを着て、麦わら帽子をかぶって、長い黒髪を垂らした、幼馴染に。


 幼馴染の姿は、高校を卒業して別の道に進んでからも、あまり変わっていなかった。

 多少、大人びた雰囲気をしているくらいだ。

 白い肌に、純朴そうな瞳、華奢な体、けれんみのない笑顔。

 あの時と同じ佇まいで、プラットホームに座っていた。


 しばらく見つめ合っていると、ちゃりん、と何かが落ちる音がした。

 駅舎の外に目をやると、子供が小銭を拾っていた。小遣いだろう。

 駄菓子屋にでも行くつもりなのか、拾い集めると、嬉々とした声を上げながら走り去っていった。


943名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:37:13 ID:USnqYIBQ0

 俺は、幼馴染の隣に座った。

 そこで潮騒の音に耳を傾けながら、いろんな事を話した。


 あれからどうしていたか。どこに住んでいるか。今、何をしているか。

 体は大丈夫なのか。これからどうするのか、友人には会ったか、好きな人は。


 会話に花を咲かせていると、あっというまに時間が過ぎていく。

 夕立が降っていたことにも気付かなかった。ホームの雨跡が、傾いた日の光を受けてきらめいている。

 海の方を見る。

 茜色の光が、沈みゆく太陽の光が、空も、雲も、海面も、町も――何もかもを染め上げている。

 外側だけじゃなく。それは胸の奥にまで入り込み、どこにも逃げないまま、底へと沈んで沁み渡っていく。


 賑やかな声は止み、山からはひぐらしのさざめきが聞こえ、そこはかとない郷愁を誘う。

 それに加えて。

 夕映えの中、遠くからこちらへ向かってくる、電車の音。


944名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:38:06 ID:USnqYIBQ0

 もう、こんな時間か。

 できれば暮れ果てるまでここに座っていたかったが、ここは電車の本数も少ない。

 帰らなければならない。


 意を決して立ち上がると、俺の手首を、幼馴染のか細い手が握っていた。

 寂しいのか。それとも別の感情なのか。分らない。

 俺は別れを名残惜しむように、彼女を抱き寄せてその唇に――









.


945名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:38:52 ID:USnqYIBQ0






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(;'A`)「!?」


947名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:40:05 ID:USnqYIBQ0

 見た事もないおっさんが、レールの向こうからとてつもない勢いで走ってきた。

 「現実」と書かれた紙を広げ、雄叫びを上げながら。



 気付くと、隣の幼馴染が消えている。電車も消えている。

 馬鹿な、さっきまでそこにいたじゃないか。何で、何で、何で、どうして。


948名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:40:49 ID:USnqYIBQ0

k2_re.jpg


949名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:41:35 ID:USnqYIBQ0

k3_re.jpg



(;'A`)「ひぃ!」


950名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:43:00 ID:USnqYIBQ0

(;'A`)「ひぃ!」

 そこら中に、奇妙なおっさんがわんさか溢れている。

 やばい、やばい。

 焦燥感に苛まれ、必死で家へと走る。


('A`)「ふぅ……」

 いつの間にか家にはたどり着いていた。

 安堵して扉の鍵を開け、中へと――


952名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:44:00 ID:USnqYIBQ0

k4_re.jpg



( A )「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ
    ああああああああああああああああああああああああああああああああああ
    ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


953名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:44:54 ID:USnqYIBQ0

 そこで、やっと分かった。

 あれは幻だったのだ。


 思い通りに過ごせなかった自分が、夢現で、夢想感に浸りながら創り上げた幻。


 決して追いつけない。

 幻は幻のまま。

 どこまで追いかけても、結局は逃げ水に変わりないのだ。

 虚像に触れる事など出来はしない。


 それに気付いた時。

 ようやく俺は、目を覚ます事が出来た――



 * * *


954名も無きAAのようです :2012/08/19(日) 03:45:50 ID:USnqYIBQ0

('A`)「……」


( ^ω^)「……まあ」


(´・ω・`)「何も言わないでおこうか……」


('A`)「ああ……」


('A`)「そっとしといてくれ……」








  (
   )
  i  フッ
  |_|

 八十二本目 終わり



( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1344607128/

[ 2013/06/25 19:55 ] 短編 | CM(0)
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