まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 ( ・∀・)一握りの幸せ、のようです


作者注 ※グロ注意
2 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:27:58 ID:vi1Dl6lo0

――19**年11月20日。

この年はアメリカでかつて前例のない寒波が、国内全土を覆っていた。
季節はずれの寒波は、アメリカ西部ヴィップシティにも勿論訪れ、幾分か早過ぎる積雪を記録した。

ロッキー山脈を臨むこの街はオオカミ州の州都ではあるが、人口は他の都市部と、比べるとかなり少ない。
斜面は少なく、都市全体がなだらかな平面で形作られているために、いまだに手つかずで残された自然が数多く残る。
例を上げるなら、広大な塩の砂漠『グレート・ソルト・レーク・デザート』、各地に点在する塩水湖だろう。

人口の約60パーセントがニューソク教徒であり、街に住む人々は比較的勤勉でおっとりとした人が多い。
有名なところで彼らは刺激物を好まないため、アルコールやカフェインを摂取しない。

クリスマス、年末ムードの高まるこの時期に、一体全体一口のビールも口にしないで盛り上がるのか、はなはだ疑問の残るところである。

――閑話休題。

つまり、この自然に溢れた片田舎の都市は、およそ凶悪犯罪とは無縁の土地だったということだ。
今から起こる奇妙で奇抜な事件が、いかにヴィップシティ住民を震撼させた事件であるか、お察し頂きたい。


事の始まりはこうだ――。



3 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:28:45 ID:vi1Dl6lo0




( ・∀・)一握りの幸せ、のようです


4 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:35:44 ID:vi1Dl6lo0


何を話したら良いんだい?もう事件については認めたし、動機も話しただろ?

――ああ、調書をまとめたいんだろ?そうだろ?

うーん、何から話したら良いのかな……。
自分の人生について、改めて話す機会なんてそうないだろう?困ったなあ……。
ちょっと、イライラしないでくれよ、奥の厳つい刑事さん。
アンタが怒るのは無理ないし、俺のことを到底理解できないのはよくわかるよ。
ただ、これはアンタの相棒のたっての希望なんだから、辛抱してくれよ。……うーん、どうしたらいいのかな、何か名案はないかい、刑事さん?

……そうだ!

それならアンタ達がやってきたとこから、始めよう。覚えていることから追っていけば、昔のこともスラスラ思い出すってもんさ。
そうだな、あれは……



******


5 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:37:07 ID:vi1Dl6lo0


オオカミ州警察に勤務するギコ・ウィリアムズ警部は、すこぶる陰鬱な表情をして、
街のはずれにある小さなアパートの裏手に立っていた。
今日彼は非番だった。
今まで抱えていた強盗事件が、ようやく一区切りついたので、人手が足りない、と泣きつく上司を振り払って勝ち取った休日だった。

(,,゚Д゚)(何でやすみだって時に限って、事件ってやつは起きるのかねぇ……)

(,,゚Д゚)(今日は子供達のクリスマスプレゼントを選びに行きたかったんだがなぁ)

ギコは目を細めて、街路樹を見やった。
どれも小さな豆電球をつけて、綺麗に彩られている。
その先にある雑貨屋の店員は、店のガラス窓に白いマジックで、トナカイを描いていた。

(,,゚Д゚)(もうクリスマスまっしぐらだな……)

ギコはひとりごちた。それもそのはずで、つい先日街の中心に位置するヴィップ森林公園で、
大々的にイルミネーションの点灯式が催されたところだった。


6 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:37:52 ID:vi1Dl6lo0

ミ#,,゚Д゚彡ムスッ「……。」

横で憮然と仁王立ちしている、フサ・アンダーソンはもっと酷い顔をしていた。
彼は15時間の労働の後、たった2時間で呼び出しを受けたのだ。
目の下には当分消えそうにない隈と、睡眠不足からくる深い皺が刻まれていた。

ミ#,,゚Д゚彡y-「ギコ。俺はこれが事件性まったくなしの、大家の早とちりだったら、すぐさま家のベットに飛び込むからな!」

ミ#,,-Д-彡y-~~フー

(,,゚Д゚)「奇遇だな。俺もそうしたいところだ。」


7 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:49:39 ID:vi1Dl6lo0

アパートのマンホールの周りを、数人の青い作業服を着た鑑識が取り囲んでいる。
彼らの作業が終わらない限り、二人の立ち入りは許されない。
フサは苛立たしげに煙草を靴底で揉み消した。

ミ,,゚Д゚彡「大体俺達は何でまた、こんな街のはずれに呼び出されたんだ?」

(,,゚Д゚)そ「はあ!? お前何にも知らないで、のこのこやって来たのか?」

ミ;,,-Д-彡「ゾンビみたいに眠ってたところを引っ張り出されたんだぞ」

(;,,゚Д゚)「むっ、そうだったな……」

(,,゚Д゚)「要約すればこうだ」

(,,゚Д゚)「昨日ここのアパートの大家、ペニサス・ミラー氏のトイレが詰まっちまったそうだ」

(,,゚Д゚)「そこでミラーさんは、隣りの住民にも聞いてみたんだ、『うち、トイレが詰まっちゃったんだけど、お宅はどうかしら?』ってな」

(,,゚Д゚)「そしたら、答えは『イエス』だ。
あと何人かの住民に聞くと、聞いたやつ全員の部屋のトイレが詰まってる……」

(,,゚Д゚)「で、こりゃ下水管がかなり大変なことになってるんじゃないかって、配管工を呼んだ」


8 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:50:22 ID:vi1Dl6lo0

ミ,,゚Д゚彡「あー、やっと俺の頭の中で繋がってきたぞ」

(,,゚Д゚)「マンホールを開けたら、配管工とペニサスさんはびっくり仰天……」

ミ,,゚Д゚彡「酷い悪臭とホラー映画よろしく
擦り潰されてデロデロになった肉塊が下水に詰まってたってか」

(,,゚Д゚)「驚いたペニサスさんはすぐに保安官に通報した。……何だわかってるじゃないか」

ミ,,゚Д゚彡「前後がわからんままじゃ、気持ち悪いんだよ。落ち着かねぇ」

ミ,,゚Д゚彡y-「どうせアパートの住民で盛大に飲んで、吐いたヤツでもいるんだろ」

フサは二本目の煙草に火をつけようと身を屈めた。
が、空を見上げて、煙草を箱にしまい直した。
薄暗い冬空に、少し早い初雪が舞い降りてきたのだ。


9 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:54:14 ID:vi1Dl6lo0


(鑑識)「ギコ、フサ、待たせたな。もう入って良い」

ミ,,゚Д゚彡「ようやく俺達の出番か。で、鑑識の結果は?」

(鑑識)「下水に詰まっていたものの中に、白い破片が混ざっていた」

(鑑識)「100パーセント人骨だよ」

ミ;,,゚Д゚彡「あー……」

フサは手のひらを顔に当てて、天を仰いだ。

(,,゚Д゚)「ベッドはおじゃんだな」

ミ,,;Д;彡「ちっくしょーめ!!」

フサの絶望的な声が、曇り空にこだました。ギコは力なくうなだれる相棒を放っておいて、鑑識に質問した。
下水管の詰まりから、とんでもない事態に発展したものだ。


10 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:55:08 ID:vi1Dl6lo0

(,,゚Д゚)「下水管を詰まらせたのは誰なんだ?」

直立不動で待機していた太っちょの保安官が、一歩前へ出る。
この寒いのに額に汗を浮かべて話し出した。
今まで経験のなかった事態に顔は困惑しきっている。

(保安官)「ペニサス・ミラー氏と配管工の話によると、このアパートの二階に住む、モリッツ・シェンカー24才男性」

ミ,,゚Д゚彡「シェンカー? そいつはドイツ人なのか?」

フサが首を傾げて口を挟む。

19**年以降、移民は急激に増加していた。
今まで荒廃した土地を辛抱強く開拓し、細々と農業をするくらいしか、産業らしいものはこのヴィップシティにはなかった。
しかし、近年になりバイオテクノロジー産業、IC産業の進出により、人手が大量に必要になったため、海外から出稼ぎにくるものが増えたのだ。

たしかに、もしモリッツが生粋のドイツ育ちで英語が話せなければ、少し厄介なことになる。


11 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 14:56:04 ID:vi1Dl6lo0

(保安官)「日中はほとんど部屋に引きこもっているか、外出するときは夜遅くに出かけているようです」

(;保安官)「ミラー氏はほとんど面識がないみたいですね……。
英語は問題なく話せるようてわすが、ドイツ人かどうかまでは……」

(,,゚Д゚)「ありがとう、助かったよ。えーっと……?」

(*保安官)「マーク、マーク・ブライアンです!ギコ警部」

(,,゚Д゚)「ああ。ありがとうな、マーク。
すまないが、もう少しだけ近辺の警護に当たってくれるかな?ペニサスさんも不安だろう」

(保安官)「もちろんです。彼女とは顔馴染みですから、ご安心を」

(,,゚Д゚)つ(保安官 )ポン「頼むよ」

ギコとフサは保安官の肩を叩いて労を労うと、問題のモリッツ・シェンカーの部屋へ歩き出した。


12 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 15:04:37 ID:vi1Dl6lo0


古いアパートなだけあって、長い廊下は薄暗い。老朽化が進んでいるのかあちこちからすきま風が忍び込んでくる。
ここに住んでいるのは大抵が、近くの工場に勤務する外国人労働者だそうだ。

切れかけの蛍光灯を頼りに、二人は無言でシェンカーという男の部屋を目指した。

ミ,,゚Д゚彡「ギコ、こいつは絶対厄介だ。俺の勘が言ってる」

(,,゚Д゚)「下水管から人骨が出たんだ。諦めろよ、フサ」

ミ#,,゚Д゚彡「まったく、とんだクソ野郎だぜ、モリッツってやつはよぉ」

クリスマス休暇が吹っ飛んだら、俺は署を訴えてやるからな、フサは忌々しげに呟くと、薄汚れたアパートの扉を叩いた。
力任せに叩くので、錆びたドアから剥離したペンキがぱらぱら落ちた。


13 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 15:05:25 ID:vi1Dl6lo0

ミ#,,゚Д゚彡つ”┃ドンドン「おーい、シェンカーさん。ご在宅ですかー?」

 ┃∀・)「ん? アンタ達誰だい?」

(,,゚Д゚)「こんにちは、シェンカーさん。」

今にも飛びかかりそうなフサを押しのけて、ギコは一歩前へ出た。
彼の予想とは反して、ブロンドがよく似合う好青年が、扉の隙間から顔を覗かせた。

(,,゚Д゚)つ□「私はギコ・ウィリアムズといいます。州警察の刑事をやっています」

ギコは警察手帳を差し出して、紳士的に言った。
目の前の青年は幾分か興奮した様子で身を乗り出してくる。
保安官から24才だと聞いていたが、好奇心を抑えられないように手帳を覗き込む横顔は、とても20代とは思えない。
ギコと手帳の両方を、嬉々として見比べている。
まだハイスクールに通っている、と言っても支障ないくらいだ。


14 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 15:06:59 ID:vi1Dl6lo0

( *・∀・)+「警察手帳なんて初めて見た。貴重な体験をしたよ」

(,,゚Д゚)「ははっ、それは良かった」

ミ#,,゚Д゚彡「ギコ」

フサは辛抱堪らんといった感じで、肘で合図する。
世間話はそれくらいにしろ、ということだ。
ギコは頷くと、軽く咳払いをして話題を変えた。

(,,゚Д゚)「ところでシェンカーさん。今日、アパート中が大騒ぎだったのをお気づきですか?」

( ・∀・)?「何のことだい?」

(,,゚Д゚)「実はアパート中のトイレが詰まりましてね。我々はその詰まりの原因について、ちょっと調べているんです」

( ・∀・)「じゃあ、なにかい? アンタ達は下水の詰まりを直すために、わざわざこんな町外れまで来たのかい?」

( ・∀・)「今の警察はえらくサービスが良くなったんだな」

ミ#,,゚Д゚彡「てっめぇ、すっとぼけるのもその辺にしとけよ……」


15 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 15:11:27 ID:vi1Dl6lo0

ギコは相棒を制して……というよりは、強引に後ろへ押しやって、言葉を続けた。
たとえ容疑者が黒に近いグレーだとしても、それは“クロ”じゃない。
青年が重大な犯罪の容疑者であったとしても、物的証拠がなければそれは変わらない。
フサは少々強引すぎるきらいがあるのだ。

(,,゚Д゚)「シェンカーさん、我々はあなたと楽しいお喋りをしに来たんではありません」

(,,-Д-)「モリッツ・シェンカー、あなたに殺人容疑がかかっています」

(,,-Д゚)「死体をどこに隠していらっしゃるんですか?」

青年は一緒たじろぐと、まじまじとギコの顔を見つめた。それは、穴が開くんじゃないかと思うくらいに。
やがて、ゆっくりと身体の力を抜くと、すべてを了解したような顔で言った。

( ・∀・)「バレちゃったのかぁ……」

( ・∀・)「刑事さん、中へ入って」


16 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 15:12:24 ID:vi1Dl6lo0


青年は顎をしゃくって、二人の刑事を部屋へ招き入れた。
部屋の中は清潔で整っている。磨き上げられたシンクは、新品のように輝いていた。
家具らしいものはほとんどない。
どこもかしこも一切の隙なく整頓されているのが、逆に息苦しい。
まるで、モデルルームに招かれたような錯覚すら覚えた。

(,,゚Д゚)(生活感がまるでないな……)

( ・∀・)つ「刑事さん、こっち」

青年が冷蔵庫を指さす。
ダイニングの隅に据え置かれた、巨大な冷蔵庫だけが、寒々しい部屋の中で異彩を放っている。
家庭用のものとはまるで違う、業務用の大きな冷蔵庫だ。

ギコは慎重に近づいて、冷蔵庫のハンドルに手をかけた。
フサが感じた嫌な予感が的中することのないよう、祈りながら勢いよく扉を開いた。


17 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 15:14:44 ID:vi1Dl6lo0

(,,゚Д゚)「開けるぞ」

( ・∀・)「……。」

ミ,,゚Д゚彡”コクリ

(,,゚Д゚)つガバッ

((;,,゚Д゚)) 「なっ……!」
ミ;,,゚Д゚彡

ミ;,,゚Д゚彡つ「何だこりゃあ……」

フサは無意識に十字を切っていた。
跪くようにして中を覗き込む。冷凍庫には豊富な食材が所狭しと並べられていた。
震える指先で、彩り鮮やかな野菜を掻き分けていく。
まだ刑事としての一片の理性は残っているのか、手には白いハンカチを持って、指紋がつかないようにしていた。

:ミ;,,゚Д゚彡:「ああ、神様……」


18 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 15:16:03 ID:vi1Dl6lo0

巨大な冷蔵庫の棚に大量の肉が詰め込まれていた。
どれも綺麗に切り分けられ、ジップ付きのビニール袋に分けられている。
野菜類も豊富だ。キャベツやニンジン、ビーツの間を縫って、男性らしき太い足が覗いていた。

( ・∀・)「冷凍庫の方を開けて……」

( ・∀・)「まだ二人分の頭が入ってる」
:ミ;,,゚Д゚彡:「こ、こいつ……」



:ミ;,,゚Д゚彡:「こいつ人間を食いやがった!!」


******


22 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 21:40:26 ID:vi1Dl6lo0


――オオカミ州警察署、取調室

モリッツ・シェンカーは二人の刑事に誘われると、さして抵抗もせずに連行された。
ただ、部屋を出るときに一度振り返って、自分の部屋を名残惜しそうに見ていた。


(,,゚Д゚)「話してもらいましょうか、シェンカーさん」

( ・∀・)「モリッツ……」

(,,゚Д゚)「え?」

( ・∀・)「もしくは“モララー”で良い」

ギコはぽかんと口を開けた後、無機質なアルミのテーブルを挟んで、しばし見つめ合っていた。
そしてよくよく青年を見ているうちに、ようやく彼が何を言いたいのかがわかった。

(;,,゚Д゚)「あ、ああ……呼び名のことだね?あってるかな、モララー?」

( ・∀・)「うん、正解だよ」

(,,゚Д゚)「随分と不思議な呼び名だね?」

( ・∀・)「まだ妹が小さかったときに、『モリッツ』を上手く発音できなかったんだ」

(*,,゚Д゚)「ああ、それでモララーか」

ギコは青年に向かって微笑んでみせた。
頭の端で、別室に控えているフサの苛ついた顔が過ぎる。
普段なら、じっくりと話を聞き出すギコと、怖い顔して凄んでみせるフサ、この二人で事情聴取を行う。
上司に事情聴取の記録係りを変更するよう言ったのは、ギコの配慮だ。
ほとんど眠ることなく現場に再び向かわされ、挙げ句の果てに遭遇したのが殺人鬼だ。


23 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 21:57:26 ID:vi1Dl6lo0

(,,゚Д゚)(フサの心中が思いやられるな……)

きっと、マジックミラーの向こう側で、怒りに震えているに違いない。
冷蔵庫の中を見たとき、彼の顔は真っ白になっていた。自分もおそらく同じような顔だったろう。
事件の張本人である彼だけが、俺達を見てきょとんとした顔をしていた。

( ・∀・)「妹以外に俺をモララーって、呼ぶヤツはいなかったけどね」

(,,゚Д゚)「妹さんがいるのか……。妹は故郷にいるのかい?」

( ・∀・)「さあ? どうだろう?
妹は14のときに男と行方を眩ましたまま、よくわからなくなってしまったから」

そう言ったきり、青年は黙り込んでしまった。
少しだけ眉を寄せて、何かを思い出すような仕草をする。

( ・∀・)「去年の冬だ」

(,,゚Д゚)「え?」

( ・∀・)「初めて人を殺したのは、去年の冬」

( ・∀・)「二人目は男。アイルランド系の若い男だった」

( ・∀・)「あのときは身体が重たくて散々だったな。もう男を殺すのはごめんだ、って思ったよ」

( ・∀・)「三人目は……」


24 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 22:12:16 ID:vi1Dl6lo0

(;,,゚Д゚)「モララー、ちょっと待ってくれないか」

ギコは慌てて、青年の言葉を止めた。
冷凍庫に入っていたのは、彼が証言した通り冷えて固まった二体の頭部だ。
その頭部ももちろん回収され、現在身元が割り出されている。
だが彼は、三人目の新たな犯行を自供しようとしていた。

( ・∀・)?「え?」

(,,゚Д゚)「はっきりさせたいことがある。君、一体何人殺した?」

( ・∀・)「混乱させちゃったかな? 悪いね、俺、あんまり人と話さないんだ」

( ・∀・)「四人……全部で四人だよ」

( ・∀・)「去年の冬から今までで、俺は四人の人間を殺して【食った】んだ」


25 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 22:27:08 ID:vi1Dl6lo0
               ・
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               ・


26 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 23:21:11 ID:vi1Dl6lo0

あれは10月……いや、11月になってたのかな?とにかく寒かったよ。
うちのアパートさ、刑事さんもみてわかっただろうけど、ボロいんだよ。すきま風がやばいんだ。
でも、良いところももちろんある。

――家賃、家賃が破格なんだよ、あそこ。
月々250ドル。それだけ支払えば雨風しのげるんだ。文句なしだろ?


あ、また話がそれた。悪いね、何度も言うようだけど、俺話すの慣れてないんだ。
日中は工場で作業してるだけだしね。唯一の趣味といったら食べ歩きかな。

あの日……そう、最初の女を殺した日だよ。
俺は仕事が終わって、馴染みのカフェで休憩した後、隣町まで車で出掛けたんだ。
ヴィップシティは暮らすのには最適だけど、ちょっとばかし刺激が足りないだろ?
越してくるまで知らなかったけど、アルコールを出す店が限られてるってのには、仰天したね。

うん、ニューソク教徒が酒を飲まないなんて、まるで知らなかった。
だって有り得ないだろ?あいつら酒どころかコーヒーや紅茶も飲まないんだぜ?

……まあ、それはどうでも良いか。ごめんよ、本当口下手なんだ。


27 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 23:47:58 ID:vi1Dl6lo0


俺は適当なクラブを見つけて、中に入った。
まあ、暇を持て余してる女の子と一緒に飲めたら良いな、くらいの感情さ。
そしたらいたんだ。おあつらえ向きの、可愛い女の子が。


ミセ*゚ー゚)リ「……。」


クラブの隅っこで、膝を抱えて床に座り込んでたよ。
みんな踊ったり、騒いだりしてるのに全然参加しないんだ。

ただ、ぼーっと座ってるだけ。

ドラッグでもやってるのかな?だとしたら嫌だな、って思ったんだけど、何か気になっちゃってさ。
人混みを掻き分けて、彼女に話しかけたんだ。


28 :名も無きAAのようです :2013/01/10(木) 23:48:44 ID:vi1Dl6lo0

( ・∀・)「……やぁ、何してるの?」

ミセ*゚ー゚)リ「……別に、何にも」

彼女は興味なさそうな顔してたな。言葉は普通だったよ。呂律もしっかりしてたし。
多分ヤクもやってないよ。……うん。

( ・∀・)「何にもしてないってことは、今暇ってこと?」

ミセ*゚ー゚)リ「何? アンタもしかして、アタシをナンパしてるの?」

( ・∀・)「うん、迷惑だったかな?」

俺はだんだん不安になってきた。なんでかって?
刑事さん、アンタはわからないかもしれないけど、俺、かなり空気読めないんだよね。
もしかしたら、この娘も俺のことが嫌いになったんじゃないかってさ。


29 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 00:13:53 ID:EO7PShp.0


ミセ*゚ー゚)リ「ふふっ……」

俺は内心ハラハラしてたけど、なるべく顔には出さないようにした。
女の子は俺の顔見て笑ってるし、本当はどうしたら良いのか全然わからなかったけど。

(;・∀・)「え! 俺何かおかしいこと言ったかな?」

ミセ*^ー^)リ「あははっ。だってアンタ、下手くそなんだもん!」

女の子が仰け反ったとき、チューブトップから胸がこぼれそうになってた。
ねぇ刑事さん、女の子ってなんであんなの着てるんだ?
脱がせにくいし、第一全然セクシーじゃない。
とにかく、女の子はしばらく笑ってたんだ。すっごくおかしそうに。けど、突然俺に向かって話し出した。

ミセ*゚ー゚)リ「アタシを見つけたときから、ずーっとこっち見てるし」

( ・∀・)「えー? そんなに君のこと見てたかい? 俺」

ミセ*゚ー゚)リ「うん」

(;・∀・)「そっか参ったなぁ……」


30 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 00:19:44 ID:EO7PShp.0

もうこの頃には半ば諦めてた。
正直女の子の言葉に傷ついてたしね。
適当に話を切り上げて、早く他の娘をあたろう、って思ってたんだ。

ミセ*゚ー゚)リ「良いよ」

( ・∀・)「へ?」

ミセ*゚ー゚)リ「良いよ。一緒に飲んであげる」

( *・∀・)「本当!? 君、名前は?」

ミセ*゚ー゚)リ「ミセリ、ミセリ・ネルソンよ」

( *・∀・)「俺はモリッツ・シェンカー。よろしく、ミセリ」

俺達は連れ立って、バーへ向かった。
別にミセリが座ってたところで飲んでも構わなかったんだけどさ、何か嫌じゃないか。
俺、別口でアルバイトもしてたから、飯も一緒に食おう、奢るから、ってカウンターの方へ彼女を誘ったんだ。


32 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 21:36:00 ID:EO7PShp.0


腹一杯になるまで飲み食いして、そうだなぁ、一時間くらいたってたかな、彼女、俺がめちゃくちゃ食うから横でびっくりしてたな。
俺すごい大食漢なんだ。いつも腹が減ってるんだ。何でなんだろ……。
あ、俺の工場でのあだな、刑事さんわかるかい?
わからない?俺、『ブラックホール』って影で呼ばれてるんだ。
『何でも飲み込む不気味なヤツ』って意味さ。

いつもならさ、女の子の前だと遠慮するんだ。食うの。……だって恥ずかしいじゃないか。

でも彼女のときは腹が減ってしかたがなかったから、存分に食べた。
ピザを二枚とケバブを五本、仕上げにグラタンを二種類……あと、えーっと。
え?恥じらいはどうしたって?はははっ。
うん、彼女にはもう格好悪いところを大分見られてたしね、ちょっと捨て鉢になってたんだ。


33 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 21:37:20 ID:EO7PShp.0

( ・∀・)ガツガツ「君、んぐっ、どこに住んでるの?」

ミセ*゚ー゚)リ「ちょっとー、食べながら話すのやめなよ」

( ・∀・)ガツガツ「……。」

( ・∀・)「オーケー。今最後のピザを飲み込んだから、もう大丈夫」

ミセ*゚ー゚)リ「しっかしアンタ、よく食べるわねぇ……。そんなにお腹がすいてたの?」

( ・∀・)「いや、体質なんだ。いつもこれぐらい食べないと落ち着かない。
……おかしいよね? 俺……」

ミセ*゚ー゚)リ「何で? 別に太ってないし。アタシ、よく食べる人好きよ?」

その一言ですごい救われたよ。

彼女が天使に見えた、笑うと欠けた前歯が覗くんだけど、それすら可愛く見えた。


34 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 21:42:47 ID:EO7PShp.0

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇ……モリッツ。アタシ、さ」

( ・∀・)「うん? なんだい?」

ミセ*゚ー゚)リ「アタシ、泊まるとこないんだ……」

ミセ*>ー<)リ「お願い! アンタんとこ、今晩泊まらせてくんない!?」

ミセ*゚ー゚)リ「なんなら、ヤらしてあげる。お願い!アタシ、切羽詰まってるんだよー」

( ゚ 3 ゚)..:;.:「ぶっ」

ミセ*゚ Д゚)リそ「うわ、汚っ!!」

(;・∀・)「いやいやいや、何言ってるんだよ!」

ミセ*゚ー゚)リ「え? アタシ、何か変なこと言った?」


35 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 21:45:00 ID:EO7PShp.0

飲んでたコークを思い切り吹いたよ。バーテンが嫌な顔してた。
急に彼女が変なこと言い出すから、俺焦っちゃって。

(;・∀・)「別に構わないけど、俺ん家遠いよ?
ヴィップシティに住んでるから、車で一時間はかかる」

ミセ*゚ー゚)リ「全然オーケー! あったかい毛布にくるまれるんなら、どこだって良い!」

( ・∀・)「そう? なら良いけど……」

ミセ*゚ー゚)リつ( ・∀・)))ズルズル「よし! 決まり!」


36 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 21:47:10 ID:EO7PShp.0


ほとんど彼女に引きずられるように、俺の家に向かった。普通の男なら諸手を挙げて喜んでるところだろうね。
俺はどっちかっていうと辛かったなぁ。
その場限りなら、どんな失敗も気にならないさ。けど、彼女はうちに泊まるって言うんだぜ?
家に着くまで会話が途切れないよう、ずーっと喋りっぱなしで、喉が痛かった。

家に着いてからもそんなに変わらないよ。話して、疲れたから彼女にシャワー浴びたら?って言って、俺はくたくただったからベッドになだれ込んだ。それだけだよ。

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇ、寝ちゃったの?」

( - ∀-)「……。」

ミセ*゚ー゚)リ「……。」

大分長い間寝てたのかな、わからないけど、目が覚めたらやたら身体が重たかった。
 
( - ∀-)「んっ……」

( う∀・)「んあ……」


(;・∀・)そ「えっ! ミセリ、お前何してるんだ!?」

大げさじゃなく、人生で一番驚いた瞬間だったよ。

ミセ*゚ー゚)リ(・∀・;)「……。」

素っ裸のミセリが俺に跨がってた。何をしてたかは、言わずもがな。

(;・∀・)「ミセリー、俺、なし崩しって良くないと思うんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「わらひは、かりほつくりはく、ないほ!(私は借りを作りたくないの!)」

( ・∀∩)「……。」

(;・∀・)「もー知らないぞ!」


37 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 22:00:04 ID:EO7PShp.0


あとはもう……なし崩しさ。はあ、ほんと何て言ったら良いかわからないよ。
ヤってる最中わかったのは、ミセリはとんでもない屑と付き合ってるってこと。
その屑は、キレちまったら彼女を気絶するまで、ぶん殴るってこと。

ミセ*゚ー゚)リ「アタシ……これ以上アイツと一緒にいたら……殺されるって、思って」

たどたどしい息遣いの合間に、一生懸命喋ってた。
前歯が欠けてるのも、多分そのせい。

ミセ*゚ー゚)リ「お願い……首……締めて……」

( ・∀・)「ミセリ、何言ってるんだ?」

ミセ*゚ー゚)リ「アタシ、今の男に仕込まれて……じゃないと、いけ、ないの……」

彼女が俺の腕を自分の首に当てて笑ったとき、心底いかれてるって思った。俺、彼女が怖かった。

ミセ*゚ー゚)リ「お願い……」

ミセ*゚ー゚)リ「アタシなら大丈夫。気を失うだけだから、すぐ目が覚める」

ミセ*^ー^)リ「ね?」


38 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 22:01:08 ID:EO7PShp.0


でも、でも、彼女の情けない笑顔見てたらさ、どうしょうもないんだよ。
俺、何とか彼女の期待に応えなきゃって……。
そこから先はほとんど何も覚えてないんだ。
本当だよ、刑事さん!俺、嘘なんかついてない!!
ああ、疑ってない……の?そう。そっか……ごめんね、刑事さん。
俺、駄目なんだ。混乱すると、頭が上手く回らない。

ミセリ……冷たかった……。気づいたら、ほっぺたが真っ白になってた。
いくらほっぺを叩いても、全然起きやしない……。


39 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 22:02:08 ID:EO7PShp.0


どれくらい茫然としてたんだろう。気づいたら、俺の身体もカチンコチンに冷えて固まってた。

( ・∀・)「ミセリ……」

ミセ*-ー-)リ「……。」

さっき俺と食べたミックスピザが、顔にへばりついてたよ。
多分俺がぎゅうぎゅう締めたから、彼女苦しくて、戻しちゃったんだ。
下半身も俺が出したもので、ひどく汚れてた。

刑事さん、俺とんでもないことをしでかしたのに、そのとき何て思ったと思う?

俺、めちゃくちゃ腹が減ってたんだ……。

すぐにパニックになったよ、何か食べなくちゃ、胃に詰め込まなくちゃって。
でも、ミセリは死んでる。しかもこんな無惨な姿で死んだんだ。

(;・∀・)「ミセリを綺麗にしなきゃ……」


40 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 22:05:27 ID:EO7PShp.0


今考えると、本当に馬鹿げたことをしようとした、って思うよ。
彼女は死んだんだ。綺麗だろうが、汚くしようが、そんなの意味ない。
でも、そのときは真剣だった。幸い、ミセリは小さかったからね。
浴槽に運んでやるくらい、簡単だろうから。

まあそれが大きな間違いだって、すぐにわかったけどね。重たいんだ。
力の抜けた、ゼリーみたいなぐでんぐでんの身体って、何十倍にも重く感じるんだよ。

(;・∀・)つ「よいっしょ……ふぅ、ふぅ」
さっきまで冷たかった自分の身体が、嘘みたいに熱く火照ってきた。
シャツが背中に張り付いて、気持ち悪かったよ。
大汗かいて、なんとか彼女をシャワールームまで運んだときには、身体中の筋肉が悲鳴を上げてた。
でも、さっき感じた空腹感はほとんどなかったな……。不思議なもんだね。
後は浴槽にお湯をはって、彼女を綺麗に洗ってあげたよ。
できる限りピカピカにしたつもりさ。

彼女眠ってるみたいだった……すぐに飛び起きて、また笑ってくれそうな気さえした。


41 :名も無きAAのようです :2013/01/11(金) 23:55:26 ID:EO7PShp.0


彼女を身綺麗にしたら、少しずつ気持ちが落ち着いていくのが、自分でもよくわかった。
そしたらさ、また、猛烈に腹が減りだしたをんだ。

急いで彼女をベッドへ寝かせて、毛布をかけてやった後、冷蔵庫に駆け込んだよ。

(;・∀・)「何か……何か食べないと……」

目の前の景色がぐるぐる回ってた。

こんなこと、一度もなかったのに、腹が減って、腹が減って、死にそうなんだ。

:( ;° ∀ ° )つ:「あっ……」

冷蔵庫に伸ばした指先が細かく震えてたよ。
何度も何度も手を伸ばすんだけど、手は空を切ってた。
早く食いたい一心で、……というか死に物狂いだったかな。冷蔵庫のハンドルを掴んだよ。
けどさ、俺馬鹿だから忘れてたんだ。
自分が今日、何でクラブに行ったのかなんて。

( ;° ∀ ° )「空っ……」

そこに食べ物なんて、

( ;° ∀ ° )「空っぽだ……」

ないのにさ。


42 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 00:09:07 ID:Bb8VDYD.0


ミセリのことで頭がいっぱいだったんだ。
街の中心の方に、大きなグロッサリーストアがあるだろ?
あそこまで買い物に行くのが面倒くさくて、隣町のクラブまで出掛けたのに。重要なことに限って、すぐ忘れちまうんだ。

以前俺はパニックのまま。いや、冷蔵庫に何にも入ってないってわかって、一層混乱してた。

( ・∀・)「どうしよう……」

( ・∀・)「どうしよう、どうしよう、どうしょう……」

( ・∀・)「どうしよう、どうしたらいい?」

( ・∀・)「落ち着け、落ち着かなくちゃ……」

もう自分の頭を何回も殴ってさ、今思い出すと、頭がおかしくなってたのかもな。
ミセリのことなんか頭の片隅から、綺麗さっぱりなくなってたよ。現金なもんだろ?


43 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 00:14:53 ID:Bb8VDYD.0


うん、刑事さんのお察しの通りだよ。







( ・∀・)「なーんだ」


ミセリを


( ・∀・)「ここにあるじゃないか」


切り刻んで



            ミセ*-ー-)リ



食べたんだ。


48 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 19:25:22 ID:Cqb22T3o0


ふふふっ。俺、多分本当に焦ってたんだろうな。
まだ身体がふらふらして、上手く立てないのに、何度も立ち上がろうとしてさ。
四回目くらいかな?顔面を強打したんだ。鼻が折れてないのが不思議なくらいだよ。

まあ、いくら俺が馬鹿でもさ、かなり痛かったから諦めて、這いずるみたいな感じ?……何て言ったら良いのかな、そう、ほふく前進!それでベッドまでたどり着いたんだ。

ちょうど目の前に、ミセリの太腿があったなぁ。
美味そうでさ、口の中から唾がさぁーって、湧いた。
産毛もほとんど生えてないんだ、ツルツル。俺、堪らなくなって、太腿に思い切り噛みついた。


49 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 19:26:16 ID:Cqb22T3o0

( ・∀・)ガブッ「んぐっ……」

( ・∀・)そ

(;・∀・)「え……?」

噛み切れないんだ。俺ができたのは、ミセリの太腿に赤い歯形がついただけ。
全くもって愚かだよね。皮膚って人が思うより、ずっと頑丈なんだ。

でも傷口からぽつぽつ血が湧いてきて、それを見てたら、腹がぐーって鳴った。
俺、すぐに台所へ戻って、ナイフを取ってきたよ。
まだ少しだけ、理性は残ってたからね、ここでミセリを解体したら、部屋がベタベタになることくらいは気づいてた。


50 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 19:27:15 ID:Cqb22T3o0

( ・∀・)つニニフ「……。」

σ(・∀・;)ポリポリ「うーん……」

(;・∀・)「やっぱ風呂場でやんないと、まずいよなぁ……」

( ・∀・)「よしっ!」

( >∀<)バチンッ!

顔を叩いて精一杯気合いを入れてさ、彼女をまた浴室まで引っ張った。
できればラムとか飲みたかったんだけどね、冷蔵庫、ミネラルウォーターくらいしか入ってなかったから。
たださっきよりコツを掴んだみたいで、時間も半分くらいしか、かからなかったよ。


51 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 19:28:07 ID:Cqb22T3o0


一息つきたいところだけど、作業はこれからが本番さ。これが驚きの連続だったんだ。
ミセリをタイル張りの床にうつ伏せに寝かして、足に力任せにナイフを突き立てたら、血が噴水みたいに吹き出てきたんだ。

血が天井まで飛び散ってたよ。俺もスプラッタよろしく全身血まみれ。
普段なら、すぐさまシャワーを浴びるだろうね。
けど、なにせ腹が減ってたから、一心不乱にナイフを動かしてたかな。
脂肪でナイフの刃がすぐに使い物にならなくなるんだ。苦労した割に300グラムくらいしか削りとれなかったと思う。
あ、誤解しないでくれよ?今じゃもっと手慣れてる。
およそ四時間くらいかな?捌ききるのにかかる時間。
一日仕事で大変だけと、肉は鮮度が命だからね。なるべく早く済ませるように努めてるよ。


52 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 19:34:09 ID:Cqb22T3o0

( *・∀・)「やったー」

肉を切り取った瞬間、喜びがこみ上げてきたよ。やっと、食えるって。
すごく安心したし、なんだろう……達成感?あれで胸がいっぱいだった。

服がぐずぐずで気持ち悪かったから、とりあえず服をゴミ箱に放り込んで、素っ裸のまま、さっそく料理に取りかかっよ。
もう、ワクワクしちゃってさ、新しいことにチャレンジするのって、良いことだよ。うん。

反省すべき点があるとすれば、無計画で行き当たりばったりだったこと。
何かを実行するとき、100パーセント成功したいなら、準備を怠らないことだよね。

身をもって実感した。あ、刑事さんは慎重なタイプ?


53 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 19:35:38 ID:Cqb22T3o0


( *・∀・)「さあ、何を作ろうかなぁ」

肉の塊が一つ。これは俺にとっては重大な問題だった。
一つでも失敗したら、せっかくの肉が台無しだからね。
冷蔵庫には、ブイヨンにチリソース、それにガーリックが一欠片。
ローリエがあれば最高だったんだけどなぁ……。そしたら最高のスープが完成してたところだよ。

はあ、今でも後悔してるんだ。ミセリとクラブから帰るときに、ローリエを買えば良かった、って。
人生って得てして上手くいかないもんだよね、刑事さん。

(;・∀・)(参ったなぁ……。これじゃ、ステーキぐらいしか作れないぞ)

( ・∀・)(ん?)

( *・∀・)!「そうか、ステーキ! ステーキにしよう!」

熱したフライパンに油をひいて、ガーリックをカリカリに焼く。そこにすかさず肉を加えるんだ。
ニンニクは焼きすぎると苦味がでるから、適当なところで取り除いた。
程良く焼き目がついたら、ステーキは完成。


54 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 19:36:45 ID:Cqb22T3o0

次はソース作りだ。
ニンニクを適当におろして、さっき肉を焼いたフライパンに残った油の上で、少しだけ炒める。
次にソイソースと、隠し味に砂糖をちょっぴり加えれば、俺の特製ソースが一丁あがり。
ここにおろしタマネギを入れたほうが、上品な仕上がりになるよ。刑事さんも、是非試してみてよ。かなりお勧めなんだ。


( ・∀・)「完成っと」

我ながら素晴らしい出来だったよ。ありあわせのもので作ったなんて思えない、完璧だった。
盛り付けもこだわりたいところなんだけどね、俺、料理作ってる間もずっと空きっ腹だから。
手掴みで肉にむしゃぶりついてた。

パンもサラダもないけど、美味かったなあ。
こう……全身に染み渡るって言うのかな。食べ終わるまで無心で食らいついてたよ。


55 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 20:24:57 ID:Cqb22T3o0


(;,,゚Д゚)「モララー」

( ・∀・)「脂身はクセがあるんだ、もし食べるなら……」

(;,,゚Д゚)「モリッツ、モリッツ!」

( ・∀・)?

(;,,゚Д゚)「ストップ、ストップだ。」

(;・∀・)「あっ、ごめん。俺、また夢中になって……」

青年は弾かれたように身体をぴくりと震わせた。
そして、しばらくの間ぼんやりとして、当たりを見回していた。

(,,-Д-)フー

(,,゚Д゚)「モララー、少し休憩しよう」

( ・∀・)「へ?」

まだ自分の役目は終わっていない、と青年は言わんばかりに首を傾げてみせた。
それは、ギコの言葉の意味を理解しているのかも、疑わしくなるような虚ろな表情だった。


56 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 20:26:03 ID:Cqb22T3o0

(,,゚Д゚)「君、ここへ来てから、かれこれ二時間は喋りっぱなしだ」

(,,゚Д゚)「喉が渇いただろう?」

( ・∀・)「そんなにたってたんだ……」

( ・∀・)「うーん。どちらかというと、腹が減ったかな。」

ギコの横で黙々と職務をこなしていた若手の警官は、顔を真っ青にして青年の言葉を聞いていた。
手が震え、握った鉛筆がカタカタという細かい振動音をたてる。

ギコはどちらかというと、青年を体調を配慮して休憩を申し出たというよりは、経験の浅い書記係が限界を迎えようとしていたからだった。
青年の尽きることのない、旺盛な食欲にも内心目を剥いていたが、そんな様子はおくびにも出さない。

(,,゚Д゚)「丁度良い、ならランチ休憩にしよう」

(,,゚Д゚)「支払いは自分でしなくてはならないが、デリバリーがいくつかあるんだ。
後でメニューを持ってこさせるよ」

(,,゚Д゚)「それで構わないかな?」

( ・∀・)「うん。問題ないよ。」

(,,゚Д゚)「よし、なら決まりだ。一時間後に事情聴取を再開する、オーケー?」

( ・∀・)「オーケー、了解した」


57 :名も無きAAのようです :2013/01/12(土) 21:14:38 ID:Cqb22T3o0

ギコは書記係の腕を掴んで、半ば引きずるように扉の方へやった。

(,,゚Д゚)「行ってこい」

(;書記)ヨロヨロ「す、すみません……」

( ・∀・)「……。」

( ・∀・)「あの人、大丈夫かい?」

(,,゚Д゚)「大丈夫。心配しなくて良い」

( ・∀・)「そう……」

このとき初めて、青年はギコに対して探るような眼差しを向けた。
彼は自分が他人を傷つけたかどうか、ひどく敏感だった。
また、彼は過剰に繊細な心を持ちながら、不思議なくらい他人に対して鈍感だった。

(,,゚Д゚)「……。」

(,,゚Д゚)「さあ、俺もランチを食べてくるよ」

( ・∀・)ノシ「うん、またあとで」

(,,゚Д゚)「ああ、またあとで」

ギコは精一杯何も考えないようにした。

ただ、自分の背後で扉がぱたりと閉まった音を聞いたとき、全身のこわばりがゆっくりとほぐれていくのを感じた。


58 :名も無きAAのようです :2013/01/13(日) 00:33:45 ID:0y9XMjyc0


一時間の休憩の後、事情聴取は再開される。事情聴取を行うのはギコ、それと先程の年若い刑事と入れ替わる形でフサが書記、記録係を務める。

ギコ、フサの願いとしては、一刻も早く第三、第四人目の被害者の名前を聞き出し、犯罪の確たる証拠を掴みたいところである。
しかしながら、二人の意に反してモリッツ・シェンカーは自分の生い立ちについて話し出す。

彼の発言は犯行の告白とはうってかわって、確実性のない、不明瞭なものになる。
記憶の欠落、あるいはでっち上げ、そして妄想が渾然一体となり、もはや創作性に富んだファンタジーに近いものだった。
そのまま記すことも考えたが、あまりにもたどたどしく、わかりにくい数々の証言の列挙となることは避けられない。
そのため、可能な限り彼の主観を取り除いた、簡易のプロフィールのようなものに変更させて頂く。


******


67 :名も無きAAのようです :2013/01/13(日) 23:42:51 ID:0y9XMjyc0


19**年3月25日、モリッツ・シェンカーは旧東ドイツ北西部、ポーランドの国境に近い小さな農村で生を受けた。
ベルリンの壁崩壊後、約二万人の若者が都市部へ流出し、経済格差が広がる東ドイツのなかで、もっとも影響を受けた地域といえる。今も失業率は上がり続けており、村人の四人に一人が失業しているため、現在も職を求めて出稼ぎへ赴いているものが多い。

モリッツ・シェンカーの父親、アルフレッド・シェンカーもその被害者の一人だ。
彼は村で何百年にも渡って、伝統を受け継いできたシベリア織物の職人で、幼い頃からその腕を研いてきた。

( ・∀・)「俺の父親は工場で細々と働く織物職人だったんだ」

( ・∀・)「もっとも、俺が物心ついた頃にはただの飲んだくれだったけど」

シベリア織りとは村独自で発展を遂げた織物のことで、丹念に寄り合わせた絹糸に、天然染料を染み込ませたもののことである。
目の眩むような、混ざりけのない天然色の鮮やかさや、織り上げられた瞬間、浮かび上がる精緻な紋様は一見の価値がある。
しかしながら、嘆かわしいことに忍び寄る資本主義の波は、この生産性に乏しい工芸品を良しとはしなかった。


68 :名も無きAAのようです :2013/01/13(日) 23:44:06 ID:0y9XMjyc0

( ・∀・)「俺が生まれて二、三年くらい後かな、工場は瞬く間に潰れて、親父は無職になった」

( ・∀・)「母さんは俺とまだ赤ん坊の妹を抱えて、死に物狂いで働いた」

( ・∀・)「でも、そんな生活に嫌気がさしたんだろうな、俺が六歳のときに、俺達兄妹を置いて出て行ったよ」

このときの彼の証言には、一部誤りがある。
彼は母親のエリーゼ・シェンカーが、出て行ったという離婚を匂わせる表現をしているが、そんな事実はない。
ベルリンにほど近い国立病院の記録によると、彼女は19**年5月2日に救急搬送され死亡が確認されている。死因は頚部圧迫による窒息死。
縊死した際に見られる特徴的な下肢の死斑と、蒼白な顔面から自殺と判断されている。


69 :名も無きAAのようです :2013/01/14(月) 00:03:54 ID:BMmsWyho0


( ・∀・)「俺と妹は毎日を切り抜けるのに、必死だった。残念ながら親父は役立たずだったからね」

彼は十四才までは、学校にもろくに通わずに、盗みを働くか、川を見つめて日々を過ごしていたという。
友人は一人もおらず、常に一人で行動していた。
妹はこの時点ですでに家出していたため、彼はアルコール中毒の父親と二人きりで青春を過ごしたことになる。

( ・∀・)「妹はすでに客をとるようになってた」

( ・∀・)「そこらの路上娼婦より、ずっと稼ぎが良かったみたいだよ」

ここまで読み進めて頂いた方なら、すでにお気づきであろうが、モリッツ・シェンカーと妹、マルガレーテ・シェンカーの関係性は極めて希薄なものだった。
兄妹は幼い頃から会話がなく、彼の記憶によれば遊んだこともほとんどないという。
彼らは過酷な環境に立ち向かう運命共同体でありながら、家族ではなかったのだ。

( ・∀・)「妹には男がいたし、ごくたまに街で挨拶を交わすくらいだったかな」

( ・∀・)「時々、俺が客を紹介してやると、ガムとかチョコレート、あと缶詰めとかをくれたよ」

( ・∀・)「アイツ一度酷い客にあたっちゃってさ、商売の最中にしこたまぶん殴られたことがあるんだ」

( ・∀・)「それで、随分と客選びに慎重になってね。俺がおとなしそうな客を選んでよこすと、『お礼に』って、何かくれるんだ」


70 :名も無きAAのようです :2013/01/14(月) 00:54:22 ID:BMmsWyho0

彼にとって、ドイツで過ごした日々は内向的な性格を、より一層根深いものへと決定づけたことだろう。
モリッツ・シェンカーは十八才まで、ゆっくりと自己の内面に孤独を育んでいた。

だが、このような先の見えない、暗い青春にも終止符が打たれる。
父、アルフレッドが肝炎により死亡したのだ。
彼は病院へ搬送される父親を見送ると、すぐさま荷物をかかえ、アメリカへ渡米する。
そして右も左もわからないまま、凄まじいバイタリティーによって、職を勝ち取る。

( ・∀・)「言葉がわからないから、最初は大変でさー」

( ・∀・)「とにかく目に付く店や工場は全て回って、仕事をくれ、って頼み込んだんだ。」

( ・∀・)「ほとんど浮浪者みたいな生活だった。だけど、なんとか今の工場に就職して、暮らしが一変したんだ」


71 :名も無きAAのようです :2013/01/14(月) 01:57:52 ID:BMmsWyho0

そして驚きなのは、彼は工場に勤務している間、期間にすればおよそ三カ月で、英語をほぼ完璧に理解したという点だ。
ここで、彼が高いIQの持ち主であることが窺えるだろう。

一方暮らし向きが安定したことにより、モリッツ・シェンカーは今までに感じたことのない、不思議な感覚に捕らわれるようになる。

( ・∀・)「収入が安定したら、なぜか始終腹が減るようになったんだ」

( ・∀・)「食べる量は倍増したのに、体重は増えないし……。
おかしな、とは思ったけど、身体の調子はすこぶる良かったから、放っておいた」

( ・∀・)「給料のほとんどが食費に消えてたかな」

( ・∀・)「でももったいないだろ。食べ物って、食べてる間は良いけど、生活用品みたいに残らないし」

( ・∀・)「だから食べたものはノートにイラストを書いて、感想を書き留めておくことにしたんだ」

後に警察によって回収された彼の自作のノートは、十数冊に及ぶ。
毎日食べたものが几帳面に記入され、味に対するコメント、添加物の有無、盛りつけなどの感想が詳細に記録されている。


72 :名も無きAAのようです :2013/01/14(月) 14:05:43 ID:BMmsWyho0

( ・∀・)「それがさっき刑事さんに話した、今やってる別口のアルバイトのきっかけみたいなものだよ」

( ・∀・)「PCでチャットをしてたときに、食べ歩きの話で盛り上がったから、俺もいつもより積極的に参加したんだ」

( ・∀・)「『あそこに新しくできたインド料理店はタンドリーチキンが絶品だ。』とか、『スナック菓子なら~社が一番美味い。』とかたわいのないおしゃべりだよ」

(;・∀・)「そしたら俺が何に対してもコメントをよこすから、ちょっとした有名人になっちゃって……」

( ・∀・)「V.I.P.新聞社の記者が興味をもったみたいで、俺にじかにメールをくれたんだ」

( ・∀・)「『うちのHPでコラムを書きませんか。』って」

そこで、モリッツ・シェンカーは何度か記者とメールでやり取りをした後、互いに条件を出し合って、およその方向性を確認した。


73 :名も無きAAのようです :2013/01/14(月) 14:08:15 ID:BMmsWyho0

( ・∀・)「俺は毎月決まった日に原稿を渡すかわりに、匿名にしてくれって条件を出して……」

( ・∀・)「記者さん? フィリップ・チェンバーっていうんだけど、彼は俺に対して、素材の産地や料理人のこだわりをもっとレポートしてくれ、って言った」

( ・∀・)「こうして俺は、工場の仕事とコラムの二足の草鞋を履くようになったんだ」

以上が、モリッツ・シェンカーが現在に至るまでの簡単な略歴である。実際にかかった時間は二時間を越えていた。
しかも、話はすぐに横道へそれ、脈略のない話になるので、傍らで辛抱強く耳を傾けていた捜査員達の疲労は筆舌に尽くしがたいものであった。

彼らの心労がどれほどのものであったのか、ひとつエピソードを紹介しよう。


76 :名も無きAAのようです :2013/01/14(月) 22:58:37 ID:BMmsWyho0

犯行を自供したことで、青年はかなり饒舌になっていた。
嬉々として話していたのが信じられないくらい、暗い調子で話してはいたが、口だけは別物のようによく動いていた。

( ・∀・)「うーん、俺が八歳くらいのときかな。妹が産まれて、病院に親父と二人で見に行ったときに……」

(,,゚Д゚)「ちょっと待ってくれ、モララー」

( ・∀・)「ん? なあに?」

(;,,゚Д゚)「君、最初に『お母さんは六歳のときに出て行った。』と、証言したはずだ」

( ・∀・)「あれ……? そう、だった、っけ?」

青年は鮫のようにどんよりと濁った瞳をしていた。
その瞳に質問者のギコは映っていない。
ぽっかりと開いた口は真っ黒で、ただの穴のように見える。
二人の刑事はまるで、不吉なものを目撃したかのようにはっと息をのむと、そっと視線を逸らした。

(,,゚Д゚)「それに、君と妹さんは八つも年が離れているのか?」

だとすれば、妹、マルガレーテが売春をしていたという話はおかしい。

( ・∀∩)「ううん、たしか一つ違い……」

( ・∀∩)「妹が母さんに抱かれてた」

( ・∀∩)「俺、聞いたんだ『何でマルガレーテは手を握り締めてるの? この子、何か持ってるの?』って……」

( ・∀・)「そしたら母さんは『赤ん坊っていうのは、幸せを握り締めて産まれてくるのよ。』って……すごく優しい顔をして笑ったんだ」


78 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 00:12:37 ID:724crQPQ0

ミ#,,゚Д゚彡「おい」

( ・∀・)「なら、なら、俺は……」

ミ#,,゚Д゚彡「おい! てめぇ、聞いてんのか!」

( ・∀・)「俺は……いつ、握り締めた指先を開いてしまったんだろう……」

青年は未だに焦点の定まらない目で、二人の刑事を見つめ続けている。
そんな彼の姿を見て、フサは舌打ちをして立ち上がり、自分が座っていたパイプ椅子を思い切り蹴り飛ばした。

ミ#,,゚Д゚彡ノ┌┛ガッΣ┏┫(・∀・ )(゚Д゚,,;)

( ・∀・)「あっ……」

:(;° ∀ ° ):カタカタ「あっ、あっ……」

青年の身体が小刻みに震え出す。

青年は自身の身体を強くかき抱くと、そのまま崩れ落ちるように、机に突っ伏してしまった。
震えは次第にひどくなっていく。やがて、腕を唇へ持っていくと、その白い腕を血がにじむくらい、強く噛み締めた。


79 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 01:34:30 ID:724crQPQ0

(,,゚Д゚)ノドンッ≡Σミ;,,゚Д゚彡

ミ;,,゚Д゚彡「痛てっ!」

(;,,゚Д゚)「モララー!」

(,,゚Д゚)「モララー、息をゆっくりと吸うんだ」

ギコは青年に近づくと穏やかな口調で声をかけ続けた。
特に、青年にはけして触れないように注意しながら。
このような発作的なパニックを起こしている人間は、危害を加えるようなことを連想させる動作を殊更に嫌う。
それは、新たなパニックを起こすきっかけになりかねないことを、ギコは長い刑事としての経験から学んでいた。

:(;° ∀ ° ):「……。」

(;° ∀ ° )「すーっ」

(,,゚Д゚)「良いぞ、そのままゆっくり息を吐いて。深呼吸するんだ」

( ・∀・)「はあー……」

(,,゚Д゚)「いいか、モララー。ここには君を傷つける人は一人もいない」

(,,゚Д゚)「落ち着いて……」

( ・∀・)「……もう、大丈、夫」


80 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 01:37:47 ID:724crQPQ0

ミ,,゚Д゚彡「……。」

ミ,,゚Д゚彡(おい、ギコ。このイカレ野郎の扱いがえらく上手いじゃねぇか)

(,,゚Д゚)(以前扱った事件の容疑者と、反応が似ている。そいつもパニックを起こすと、自傷行為にはしるんだ)

賢明な一人の刑事の判断により、最悪の事態は免れた。
青年は青ざめた顔をして、ぐったりと机に身を預けている。
フサは冷めた目でその様子を見やると、また盛大に舌打ちをした。
青年は突然に引き起こされたパニックによって、疲れきっていた。

(,,゚Д゚)「人を呼んでくる」

ミ,,゚Д゚彡「俺が行こう」

( ・∀・)「いかつい刑事さん」

ミ ,,゚Д彡))クルッ「何だ?」

( ・∀・)「冷蔵庫に入ってた、二つの首の持ち主の名前は……」

( ・∀・)「レモナ・ブルックス」

( ・∀・)「デミタス・ワトソン」


82 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 18:39:30 ID:724crQPQ0


こうして、一日目の長い事情聴取は終了する。
青年の供述した通り、自宅で発見された二人の遺体の身元は一致。速やかに遺族への連絡がなされた。
レモナ・ブルックスに関する物的証拠は少なかったものの、優秀な観察官達の素晴らしい働きによって、
最後の被害者、デミタス・ワトソンを殺害した際の痕跡が部屋に数多く残されていた。

翌朝九時きっかりに、ギコはいつものように署へ出勤した。
頭の中にはヘドロのように疲れがこびりついていた。身体は鉛の重く、気分はすぐれない。
ギコは気だるい身体を無理やり引きずって、喫煙ルームを目指した。

(,,゚Д゚)y-~~「……。」

(,,゚Д゚)y-~~(今日で、全ての決着がつくだろうか……?)

まだはっきりとしないの中で、ギコは思考を巡らせた。が、そればかりはベテランの捜査員が議論したとしてもわからないことだった。

ミ,,゚Д゚彡「よう」

(,,゚Д゚)y-~~「おはよう、フサ」

(,,゚ー゚)「ひどい顔だな」

ギコはやつれ果てた相棒の顔を見て、苦笑した。おそらく昨夜はろくに食事もとらずにベッドに入ったのだろう。
いや、この場合は食事をしようとしても、喉を通らなかった、というのが正解だろうか。
そして、フサの顔に刻まれた皺は、昨日より、より深いものになっていた。

ミ,,゚Д゚彡「お互い様だろ」

ミ,,゚Д゚彡「鏡を見てみろよ。お前の方がよっぽどひどい顔してるぜ」

(,,-Д-)「違いないな」


83 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 19:14:21 ID:724crQPQ0

(,,゚Д゚)「フサ……」

ミ,,゚Д゚彡「何だ」

(,,゚Д゚)「昨日、モララーが……モリッツ・シェンカーがなぜレモナ・ブルックス、デミタス・ワトソンの名前を出し渋っていたか、お前、わかるか?」

ミ,,゚Д゚彡y-カチッ「……。」

ミ,,゚Д゚彡y-~~「さぁな。俺達の鼻面に餌をぶら下げて、挑発でもしてたんじゃないのか?
もしくは、ああいうイカレ野郎に多い、自己顕示とか……」

ミ,,-Д-彡y-~~フー「どちらにせよ、俺はいかれた変態野郎の考えなんて、知りたくもないね」

吸い殻で山盛りになった灰皿の上に、フサは吸いかけのタバコをねじ込んだ。
押し込んだ衝撃で、灰がテーブルの上にこぼれ落ちる。
二人ともそれを、ただ屍のような顔で見守っていた。


84 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 19:55:22 ID:724crQPQ0

(,,゚Д゚)「俺は……」

(,,゚Д゚)「俺は違うと思う」

ミ,,゚Д゚彡「何だって?」

フサは眉間に皺を寄せて、苦々しい顔をしてみせた。
ギコは黙り込んだまま、煙草をくゆらせている。
フサは何も答えないギコを見て、ますます眉間に深い皺を作った。

(,,゚Д゚)y-~~「フサ、お前奴の部屋を見て、どう思った?」

ミ;,,゚Д゚彡「どうって……」

ミ,,゚Д゚彡「不自然に綺麗すぎると思っただけだよ。埃一つ……いや、シンクに水滴一つついてなかったんだぞ」

(,,゚Д゚)y-~~「それだ」

ミ,,゚Д゚彡「は?」

要領の得ないギコの返答にフサは当惑を隠せないようだった。
首を傾げ、気の抜けた表情でギコを見つめる。


85 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 20:10:11 ID:724crQPQ0

(,,゚Д゚)y-~~「俺は強迫性障害の可能性を疑っている」

(,,-Д-)「綺麗すぎる部屋、自分に与える他人には理解しがたい厳しいルール、几帳面すぎると言っても過言ではない性格……」

ミ#,,゚Д゚彡「はあ!? じゃああの変態野郎は俺達に精神疾患をアピールして、ことを有利に進めようと……」

(#,,゚Д゚)「違う」

ミ#,,゚Д゚彡「あ? 何が違うってんだよ?」

(,,゚Д゚)「なら初めにすぐさま弁護士を呼ぶ。彼らの立ち会いのもと、証言するはずだ」

(,,゚Д゚)「モララーは一度だって『弁護士を呼んでくれ。』と言ったか?」

ミ#,,゚Д゚彡「じゃあ何だったってんだ!」

(,,゚Д゚)「落ち着けよ、フサ」

ミ#,,゚Д゚彡「ギコ、てめぇはまどろっこしすぎるけどな」


86 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 20:20:55 ID:724crQPQ0

フサは神経質そうにこめかみを揉んで、もうたくさんだ、と主張していた。
確かに、朝からこのような憶測ばかりの、確実性のない不毛な会話を続けることは、疲弊し切った二人の刑事の体力を奪うだけで、とても賢明とは言い難いことであろう。
しかし、ギコは相棒に堪えてくれ、と目で合図を送ると言葉を続けた。

(,,゚Д゚)「フサ、お前は感じなかったか?
モララーは愚鈍に見えて、ずっと狡猾で賢い男だ」

(,,゚Д゚)「彼は気づいているんだろう。一人目の被害者、ミセリ・ネルソン、そして今日話すであろう二人目の被害者男性……」

(,,゚Д゚)「彼らを殺害した証拠は、ほぼないに等しいと」

ミ,,゚Д゚彡「……。」

(,,゚Д゚)「モララーを逮捕したとき、俺達がもっとも知りたかった情報は何だ? 二つの頭部の身元だろう」

(,,゚Д゚)「それを話してしまえば、俺達のモララーに対する関心は逸れてしまう……」

(,,゚Д゚)「だから、彼はレモナ・ブルックス、デミタス・ワトソンのことは後回しにして、ミセリ・ネルソンのことを話し始めたんだ」

(,,-Д-)「証言のみで、最初の二人の犯行を立証するために」

(,,゚Д゚)「俺達の関心がそちらにも向かうように」


87 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 20:37:35 ID:724crQPQ0

ミ;,,゚Д゚彡「……。じゃあ、じゃあ何で自分の生い立ちまで、ベラベラ話し出したんだよ?」

(,,゚Д゚)「それは俺にもわからない……」

(,,゚Д゚)「だが……」

ミ,,゚Д゚彡「だが?」

(,,゚Д゚)「話し始めたら止まらなくなったんだろう」

(,,-Д-)「きっと誰かに聞いてもらいたかったんだろう」

ミ,,゚Д゚彡「そう、かよ……」

三十分ばかりの会話は、こうして途切れた。
二人の刑事は示し合わせたかのように同時に立ち上がると、無言で取調室へ歩き出した。


88 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 21:06:56 ID:724crQPQ0


おはよう、刑事さん。ひどい顔色だね。二人とも真っ青だ。
気分?ああ、俺?すこぶる快調だよ。昨日は取り乱したりなんかして、ごめんよ?悪気はないんだ。

さて、今日は何から話す?……ああ、ミセリの話、途中だったっけ?昨日から喋り通しだろ、俺。もう、何をどこまで話したのやら……。
大丈夫だって、ちゃんと思い出して話すから。そんなに睨まないでよ。
ふう、どうやら俺といかつい刑事さんとの相性は最悪みたいだね。言わなくてもわかるよ。

で、何だっけ。俺、ミセリを食べてから、話してないんだよね。たしかどうやって死体の処理をしたかは話してない。……当たり?
オーケー、そっからだね。大丈夫、俺、自分の生い立ちはたいして覚えてないけど、そっちは昨日のことのように克明に覚えてるから。


******


89 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 22:03:19 ID:724crQPQ0


ミセリを殺した翌朝、俺は死体を浴室に放置して工場に出勤した。
しょうがないだろ?急に休んだりして、工事の責任者に目を付けられたくないんだ。

本当は死体をどうにか処理しちゃいたかったんだけどねぇ。いくら気温が下がってるとはいえ、肉が傷んじゃうだろ?
俺、まだまだあの頃は道具も持ってなかったし、どんくさかったから。

うん、いつもと変わらない様子で過ごしたと思うよ?誰も俺のことを気味悪がって近づかないから、他人からどう見えたのかはわからないけど。
たださあ、いつもみたいにランチタイムになって、待ってましたとばかりに食堂へ出掛けたんだ。俺の唯一の至福のひとときだからね。
あそこの工場、ランチが食べ放題なんだ。素晴らしいだろ?
もう、腹が減ってしかたがなかったから、すぐに飯をかき込んだ。
でも……でも、うーん、いつもみたいにたらふく食べたんだ。けど、なぜか満足しなくて……。

物足りないんだけど、休憩は終わっちゃうし。まあ、おかしいな、と思いながら仕事に戻ったよ。
家へ帰ればたっぷり食べ物はあるわけだからね。空腹もあまり気にならなかったかな。
どちかというと、次は何を作ろうかな、とか、道具を仕事帰りにあらかた揃えなくちゃ、とか考えてた。


90 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 22:32:06 ID:724crQPQ0

仕事がようやく終わって、俺は近所にある、大きなDIYストアへ出掛けた。そこなら大抵欲しい者は揃ってるし。

携帯で豚の捌き方とか調べて、何が必要かきちんとリストアップしてさ。大型のナイフだろ、バケツにハンマー……それとノコギリ!
ノコギリは音のでない、って文句が貼り付けてあった、電動のやつを買ったよ。

( *・∀・)「いやあ、良い買い物したなぁ」

大満足だったよ。ついでに野菜類や新しいスパイスも買い込んだしね。スキップしながら家に帰ったくらいだ。

ミセリの死体を解体しなくちゃならないってのは、気が重かったけどね。だって、前日あれたけ苦労して削り取れたのが300グラムだよ?
自分が手早く作業を進められるかどうか、不安だったなあ。

いや?予想外に上手くいったよ。初めてにしては上出来さ。
一晩中かかったけど。皮を剥ぐのと、血抜きに時間を取られたから。


91 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 22:54:43 ID:724crQPQ0


(;・∀・)「さあ、頑張るぞ」

まずは手足、それと首の切断。
切断した手足は切り口を逆さにして、浴槽の中へ立てかけて血が流れるように。首はバケツへとりあえず入れた。

胴体はナイフで腹を割いて、内臓を取り出す。寒くて良かったよ、内臓は腐敗が早いし、日持ちしないだろ?
心臓と肝臓は取り出して、綺麗に洗った後、ジップ付きのビニール袋に保存した。
他の臓器は調理方法が思いつかなかったから、バケツに放り込んでおいたよ。今考えるともったいないことしたよなあ。

後は湯を沸かして、ナイフの脂を溶かしながら、皮を剥いでいけば、大体の下処理は終わりだね。
これもちょっとしたコツが必要でさ、要領を掴むまでは大変だったかな。
皮を剥いだ肉の切り分けは驚くくらいすぐ終わったよ。日頃料理してるおかげさ。

頭と僅かに残った内臓、それと手と足、指がついてるところね。
そこはどうしても食べる気がしないから、細かくミンチにしてさ、あ、頭部はできるだけ顔の肉を削いだんだ。
で、アパートと隣の家の隙間に捨てた。この辺山が近いだろ?
キツネとか、タヌキとか……野生動物が全部片付けてくれたよ。


92 :名も無きAAのようです :2013/01/15(火) 23:26:46 ID:724crQPQ0

これで……ミセリについてはあらかた話したかな。衣服やなんかはゴミの日に細かく切り刻んで捨てた。

死体については、もう言わなくてもわかるだろ?
全部食べたよ。綺麗さっぱり。
シチューにミートボール入りのスパゲッティー、etc.etc. ……。あ、タレに漬け込んだ薄切りの肉をサンドイッチにして、工場へ持って行ったこともあった!
連日肉料理ばかり作ってた。ベジタリアンなら、卒倒してたろうね。

不自然だなぁ……俺にとってはとてつもなく、幸せな時間だった。
何でかって?俺、ミセリを食べている間は、一度も腹が減らなかったんだ!常に満たされていたよ。

骨になった頭部や大きな骨はハンマーで粉々に砕いて捨てたし。
出汁に使ったりしたから、案外骨は簡単に砕けたんだ。ハンディのノコギリを買うまでもなかった。


97 :名も無きAAのようです :2013/01/16(水) 20:17:49 ID:mXIPCuFQ0


次は二人目の被害者だね。……。何だか俺が被害者って言うと違和感があるなぁ。
殺したきっかけ?そんなもの聞いてどうするの?
そう、動機も重要なんだね。
何でかって、聞かれてもなぁ。腹が減ったんだよ。
もうすでにこの頃から自覚はあったんだ。



【この空腹は、普通の食事じゃ満たされない。】



確信はなかった。だけど、解体した肉が少しずつなくなっていくたびに、どす黒い不安がこみ上げてくるんだ。

もちろん衝動を抑える努力もしたさ。
ミセリを口にする頻度を減らしたり、なるべく食事のことを考えないように、映画館へ出掛けたりね。


98 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 01:14:23 ID:D73Ayowk0

二人目の被害者……いや、犠牲者。うん、これならしっくりくる。
二人目の犠牲者の名前はショーン・ビアード。確かそんな感じの名前だった。
映画館の帰り道、どうしても気持ちが落ち着かなくってさ、迂回して帰ったんだ。

深夜のドライブってやつ?思い切り車を跳ばせば、少しは気が紛れるかと思ったんだ。
シタラバ通りはドライブスルーも何にもないけど、スピードを馬鹿みたいに出すのにはおあつらえ向きだから。

(;- ∀・)「はあ……」

刑事さん、例えば刑事さんが暗い夜道を一人で歩いていたとしよう。辺りは真っ暗。めぼしい明かりは一つもない。
手探りで歩き続けて、歩き続けて、ようやくたどり着いたのが……。

どんづまりだったら、刑事さんはそのとき何を思う?

(*´・ω・`)ノ” 「おーい!」
つ[NEXT TOWN]

( ・∀∩)キキッ「……。」

抑えきれない渇望を抱えた俺の前に

(*´・ω・`)「ありがとう!」

(;´・ω・`)「ヒッチハイクしてたんだけど、みんな、なかなか止まってくれなくて……」

脂ののった、何も知らない人間が目の前に現れたら

( ・∀・)「俺、ヴィップシティーまでだけど、それでも良いかい?」

(*´・ω・`)「もちろん!」

――ねえ、刑事さん。あんたならどう思う?

( ・∀・)「そう?なら、さあ乗って」

ふふふっ、俺?俺はね……

(´・ω・`)「ありがたい。僕の名前はショーン……」


俺は絶望してた。


99 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 15:15:41 ID:nMasqwtU0

あとは簡単に想像できるだろ?
ショーンはバックパッカーだったんだ。着の身着のままで旅をしてるんだから、もちろん泊まるところだってない。

( ・∀・)「あー、もし急がないんなら、君、家へ泊まってくかい?」

(*´・ω・`)「良いのかい!?そりゃあ、ありがたいけど……。
僕、現金の持ち合わせがほとんどないから、たいしてお礼できないし……」

( ・∀・)「……風呂場の掃除」

(´・ω・`)「え?」

( ・∀・)「うち、浴槽がついてるんだ。珍しいだろ?だけど、掃除が面倒でさ……」

( ・∀・)「風呂場をピカピカにしてくれたら、軽い食事とダイニングのソファーを貸すよ。
あ、食事は俺が作るんだけど、味付けについての文句は言いっこなしだ」

( ・∀・)「翌日朝一番で君をヴィップシティーの街の中央まで送る」

( ・∀・)「これでどう?」

俺は言葉巧みに彼を自宅へ誘い、彼をいとも容易く殺害した……。
食事を出したときに、べろべろになるまで飲ませたからね。殺すのは簡単だった。


100 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 16:01:06 ID:nMasqwtU0

あとは解体するだけのルーティンワークさ。
言葉にするとあっけないものだね、刑事さん。俺にだって、少しばかりの葛藤や逡巡があったはずなのに。

後悔?……。おかしなことを聞くね、いかつい刑事さん。

( ・∀・)「後悔なんてする人間が、こんなこと、すると思うのかい?」

ミ,,゚Д゚彡「……。」

:ミ,, Д 彡:「……。こぉんの……」

ミ#,,゚Д゚彡「この、クソ野郎がああ!!」

(;,,゚Д゚)「フサ、やめるんだ!」

( ・∀・)「アメリカの警察は優秀だ」

( ・∀・)「証拠不十分でミセリ・ネルソン、ショーン・ビアードの二件の刑事告訴断念するなんて、有り得ない」

( ・∀・)「……いや、あってはならない」

( ・∀・)「アメリカの警察が本気を出せば、ありったけの状況証拠を、かき集めることは不可能じゃない」

ミ;,,゚Д゚彡「……。」

( ・∀・)「おそらく俺はこのままだと第二級殺人罪での逮捕だ。そうだね、刑事さん」

(,,゚Д゚)「……俺達が立件を諦めれば、そうなるだろう」

( ・∀・)「第二級殺人罪においての一般的な刑罰は、二十五年程度の禁固刑及び、終身刑」

( ・∀・)「保釈の可能性すらある」


103 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 17:04:05 ID:nMasqwtU0


蛍光灯の光の下で、無表情な青年の、ぬらりとした顔が浮かび上がっていた。
透き通った青い瞳は、なぜかギコには深く暗い沼を連想させた。

(,,゚Д゚)「……フサ、すぐにモンタージュ作成依頼を」

ミ,,゚Д゚彡「おう」

(,,゚Д゚)「モララー、ショーン・ビアードは君の家に宿泊した際に、何か話していなかったか?」

( ・∀・)「たしかソーサク州出身だと言っていた。アメリカ全土をボランティアをしながら巡っていると」

( ・∀・)「髪はダークブラウン。アイルランド系アメリカ人だ」

( ・∀・)「ミセリは……ごめん、ミセリについてはほとんどわからない。」

( ・∀・)「彼女にとっては、一晩の逢瀬のつもりだったはすだ」

( ・∀・)「名前すら偽名を名乗ったのかもしれない……」

( ・∀・)「ミセリは十代女性。アメリカ人。
瞳はブルー、髪は特徴的な赤毛。たぶん染めたりはしていない。」

(,,゚Д゚)「そうか……」


104 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 17:34:01 ID:nMasqwtU0


モリッツ・シェンカーの協力的な証言により、オオカミ州警察はミセリ・ネルソン、ショーン・ビアードの本格的な捜査を開始する。
制作したモンタージュ写真は速やかにメディアに公開。広く一般に呼びかけを行った。

情報公開から三ヶ月後、難航するかと思われたミセリ・ネルソンの母親を名乗る女性が現れ、事件は一気に進展する。

ショーン・ビアードについては、地元のボランティアサークルに登録をしていたため、身元の確認がスムーズに行われた。

V.I.P.放送はもっとも事件に協力的で、警察の要請を快く受け入れた。
ただちに特番が組まれ、アメリカ全土に放送される。
視聴者達から寄せられる情報の大半が、勘違い、もしくは虚言であったが、その中には有益な情報も含まれていた。


105 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 18:48:37 ID:nMasqwtU0

執念――そうともいえる捜査員のたゆみない努力によって、確実に証拠が挙げられていく。

(,,゚Д゚)(なぜだろう……)

(,,゚Д゚)(捜査は順調だ。それなのに……)

(,,゚Д゚)(なぜか虚無感を感じる)

それは、掴みどころのない、砂上に放り出されたような、言いようのない感覚だった。
証拠が積み上げられていくたびに、ギコの心は渇き、次第に潤いを失って干からびていった。

その晩、ギコは夢を見た。

暗闇をただ一人で歩かされる、寂しい夢だ。
地面は柔らかい砂山で、ギコが何度ももがいても、足は簡単に砂に埋もれて身動きがとれなくなる。

堅く握り締めた拳には、ふつふつと汗が滲んでいた。
助けを求めて伸ばした拳を開けば、そこには一握りの砂があった。
砂は風に浚われて、ぱらぱらと空中へ舞い上がる。

ギコはその様子をただ茫然と見守っていた。


106 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 20:04:18 ID:nMasqwtU0
******


( ・∀・)「おはよう、刑事さん」

稀代の殺人鬼、モリッツ・シェンカーはその危険性、異常性から、オオカミ州立拘留所の独居房に収監されていた。

コツコツというギコの革靴の音が、冷たいコンクリートに静かに響く。
独居房の両サイドには、警官が二人。
しゃっちょこばってギコに敬礼をしていた。

(,,゚Д゚)「明日、公判が開かれる」

コツ、コツ、コツ――。

青年の足音が重なった。

(,,゚Д゚)「君は明日、司法のもとで裁かれることになるだろう」

( ・∀・)「ようやくお役御免だね」

( ・∀・)「お疲れ様、刑事さん」

( ・∀・)「そんなことを言いに、こんな所まで来たのかい?」

(,,゚Д゚)「なぜ来たか、か」

(,,-Д-)「俺にもわからない」

砂上の夢を見たからかもしれない、ギコはふと、思った。
自分がこの男に関心を示すのは、危険だとわかっていながら近づく猫のようだ。

不健康な恐怖への抑えがたい好奇心。

そんなところだろうと、ギコは自己分析した結果、結論づけた。

(,,゚Д゚)「モララー」

( ・∀・)「何だい?」

(,,゚Д゚)「俺達オオカミ州警察は、君の期待に応えることが、できただろうか?」

( ・∀・)「もちろん」


107 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 20:18:56 ID:nMasqwtU0

青年は僅かに唇を震わせた後、笑みを浮かべてみせた。事情聴取の際には見せなかった、穏やかな笑顔だ。
少しだけ目の端に浮かぶ涙が、自分に対する感謝によるものなのか、もしくは自己憐憫によるものなのか、ギコには判断できなかった。

(,,-Д-)「そうか」

(,,゚Д゚)「ならば、もう話すべきことは、何もないようだ」

( ,,゚Д )「失礼しよう」

( ・∀・)「そう」

( ・∀・)∩”「さよなら、刑事さん」

(  )「ああ、さよなら」

青年が手を振るより先に、ギコは後ろを向いた。
そのまま歩き出すと、拘留所の門をくぐり抜けるまで、一度も後ろを顧みることはなかった。


109 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 21:41:26 ID:nMasqwtU0


19**年5月21日。

デルタ・ホワイト判事を裁判所に、モリッツ・シェンカーの公判がしめやかに幕を開けた。
審議の論点は、数々の証拠から、『犯行を行ったか』ではなく、『モリッツ・シェンカーに責任能力があるかどうか』が問われることとなる。

検事側は責任能力があるとみなし、死刑を求刑。
当時のアメリカでは、英断ともいえる決断だった。

一方弁護側は、幼い頃に作り上げられたトラウマ――。
母親の自殺を目撃したことによるものから引き起こされた、死への過剰な恐怖心があるとし、責任能力なしと主張した。

陪審員達は混乱に混乱していた。
どちらの主張も一応の筋が通っており、判断が難しいところだった。

流れを変えたのは、一人の刑事の証言だ。

この日、ギコ・ウィルソン警部は法廷に出廷し、検察側の証人としてこう発言している。

(,,゚Д゚)「彼は犯行時の供述の際は、終始穏やかに証言していました」

(,,゚Д゚)「供述は筋が通っており、事情聴取の際、彼は進んで証言してくれていました」

この証言を受けて、モリッツ・シェンカーは大きな拍手を返している。
彼は審議の最中にたびたび口を挟むため、公判は何度か、彼への注意で中断していた。


110 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 22:07:58 ID:nMasqwtU0

一通りの公判を終えて、陪審員は評決に入る。
陪審員達の下した判決は一致することがなく、判決を下すまでにかなり長い時間を要した。
この折に、裁判所のデルタ・ホワイト判事はこう述べている。

( "ゞ)「モリッツ・シェンカーは極めて邪悪な心を持った、真人間だと、私は思います」
この発言は後々陪審員を故意に誘導したとして、物議を醸すこととなる。
まことに興味深い話題ではあるが、こちらではあまり関係のないことなので割愛させて頂く。

陪審員が下した判決は死刑。

公判は検察側の圧倒的な勝利で幕を下ろすこととなった。


112 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 22:25:22 ID:nMasqwtU0



20**年12月28日。

モリッツ・シェンカーに死刑が執行される。
モリッツ・シェンカーはオオカミ州で一般的に行われていた薬物投与による刑の執行ではなく、銃殺刑を希望した。
オオカミ州立拘留所はこの申し入れを認め、銃殺刑を執行。


モリッツ・シェンカー28才。

寒い冬の日のことだった。


******


115 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 22:42:04 ID:nMasqwtU0


忙しい毎日が、たった一つの怪事件によって一変するわけもなく、街はゆっくりと日常を取り戻していた。
それはギコも同様で、彼もまた、慌ただしい日常に絡め取られ、あの忌まわしい事件を思い出す日は次第に少なくなっていた。

(,,゚Д゚)y-~~「……。」

ミ,,゚Д゚彡「よう、ギコ!お前、相変わらず早いな」

(,,゚Д゚)y-~~「……フサか。おはよう」

ミ,,゚Д゚彡y-カチッ「なんだぁ?その、しけた面は?」

(,,゚Д゚)y-~~「ふっ、ひどい顔ってやつか?」

ミ,,゚Д゚彡y-~~「……。」
(,,゚Д゚)y-~~

ミ,,゚Д゚彡y-~~「ギコ」

(,,゚Д゚)「何だ」

ミ,,゚Д゚彡y-~~「執行されたな、ヤツの刑……」

(,,゚Д゚)「そうだな……」


(,,゚Д゚)「なあ、フサ」

(,,゚Д゚)「お前、“幸せ”ってなんだと思う?」

ミ;,,゚Д゚彡y-~~「はあ? 何だよ急に」


116 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 23:02:28 ID:nMasqwtU0

フサはもう癖になっているのか、眉を寄せ、眉間に深い皺を作ってみせた。
そして、しばし腕組みをして唸ってみせた後、こう答えた。

ミ,,゚Д゚彡「『幸せとはなんぞや?』という問いに対して」

ミ,,゚Д゚彡「アリストテレスは『幸福は行為である』と言い……
まあ、楽しいことやれば幸せなんじゃねぇの? って感じか?」

ミ,,゚Д゚彡「ソクラテスは『幸福になろうとするならば、節制と正義とが自己に備わるように行動しなければならない』と言った」

ミ,,゚Д゚彡「ゲーテは『幸福は世にあるものだ。しかしわれわれはそれを知らない』だとよ。
つまり、気づかないが幸せは身近にあるってことだろ」

ミ,,゚Д゚彡「人生を考えるプロフェッショナルが山ほど幸福についての定義を出している……」

ミ,,゚Д゚彡「好きなのを選びな」

(,,゚Д゚)「はははっ。違いないな」


117 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 23:31:30 ID:nMasqwtU0

(,,゚Д゚)「彼の人生は……いや、モリッツ・シェンカーの、モララーの人生はいったい何だったんだろうか……」

(,,゚Д゚)「厳しい運命に翻弄され、挙げ句の果てに冒したのは犯罪だ」

(,,-Д-)「許されざる大罪だ」

ミ,,゚Д゚彡「……。」

(,,゚Д゚)「俺は彼が生を受けた際に持っていた幸せが……」

(,,゚Д゚)「彼の幸せが一握りの、300グラムの肉片だとは思いたくない」

(,,-Д-)ハー「……。」

(,,゚ー゚)「フサ、今日の俺はずいぶんセンチメンタルだとは思わないか?」

ギコは深く溜め息をつくと、自嘲気味に微笑んだ。
そして小さな声で、犯罪に肩入れするなんて、刑事失格だな、と呟いた。


118 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 23:33:20 ID:nMasqwtU0

(,,゚Д゚)「俺はよもやモララーを放置していたとしても、もう人は殺さないだろうと確信してた」

ミ;,,゚Д゚彡「何だって?」

(,,゚Д゚)「フサ、モララーの始めの方の供述で、彼は『二人目は男を殺害したが、もうこりごりだと思った。』と言ってなかったか?」

ミ;,,゚Д゚彡「ああ、たしかに言ってたが……」

(,,゚Д゚)「なのに四体目の被害者は男性だ」


ミ,,゚Д゚彡「奴の気が変わったとかじゃないのか?」

(,,゚Д゚)「いや、それはないと思う」

(,,゚Д゚)「俺は彼が、あえて最後は男性を殺したんだと思う」

ミ,,゚Д゚彡「……。」


121 :名も無きAAのようです :2013/01/17(木) 23:59:50 ID:nMasqwtU0

(,,゚Д゚)「一人目の被害者、ミセリ・ネルソンは優しかった母親」

(,,゚Д゚)「二人目の被害者、ショーン・ビアードはうだつの上がらない父親」

(,,゚Д゚)「三人目の被害者、レモナ・ブルックスは唯一自分をモララーと呼んでくれる妹」

(,,゚Д゚)「そして最後の被害者、デミタス・ワトソンは自分……」

(,,-Д-)「モララーは家族に見立てた被害者達を取り込むことで、幸せを手に入れようとしてたんじゃないだろうか……」

(,,゚Д゚)「彼は、他人の握り締めた幸せが、とてつもなく、うらやましかったんじゃないだろうか……」

ミ,,゚Д゚彡y-カチッ「……。」

ギコの声は掠れ、最後には呟きすら聞こえなくなった。
フサは背を老人のように折り曲げてうなだれる相棒を見て、その背中を強く叩いた。


122 :名も無きAAのようです :2013/01/18(金) 00:00:39 ID:iZsTrlDk0

(;,,゚Д゚)「ぐぇ!?」

ミ,,゚Д゚彡「まったく、やりきれねぇなあ」

ミ,,゚Д゚彡「願わくば……」 

(;,,゚Д゚)「……。」

ミ,,゚Д゚彡「願わくば彼の最期が」

ミ,,゚Д゚彡「安らかであらんことを」

ミ,,゚Д゚彡「けっ」

ミ#,,゚Д゚彡「俺はあんないかれ野郎、地獄に堕ちろって思ってるけどな!」

(*,,゚Д゚)「はははっ。モララーだって、天国に行くとは思ってないだろうな」

(,,゚Д゚)「……。」

(,,゚Д゚)「そうだな、願わくば……」

(,,゚Д゚)「願わくば彼が握り締めている幸せが」
         マミ
(,,゚Д゚)「彼の傍らで見えんことを」

二人の刑事は笑いあうと、どちらとも言わずに立ち上がった。
そして、いつも通りの慌ただしい日常へ、ゆっくりと歩き出した。


123 :名も無きAAのようです :2013/01/18(金) 00:02:03 ID:iZsTrlDk0




( ・∀・)一握りの幸せ、のようです 




                   【完】



※このお話は英国の殺人鬼、デニス・ニルセンをモデルに書かれています
  お題は『寒波』、『お湯』、『天然色』、『幸せとはなんぞや』
( ・∀・)一握りの幸せ、のようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1357795602/



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