まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 棒線がたりなかったようです

139名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:26:00 ID:B7mM2p/wO



 気がついたらいつもここに居た。



 日中の、少し暖かい日差しと足早に通り過ぎていく名も知らない人達がいないこの場所。



 商店街の隅、夜10時。いつものベンチに座って、閉まったシャッターの数を数えるくらいなら、背もたれ君に支えてもらって、ゆっくり上を向いて、星を数えていたい25歳の春。



 なんて、そんなくだらないことを考えていたら握り締めていた暖かいレモンティーもすっかり冷めちゃった。



('、`*川「ぷはー」


140名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:27:12 ID:B7mM2p/wO
 もったいないから飲むけど。喉を通る冷たい柑橘と、重たい吐息が白く、街灯の明かりに消えていった。



 私はいつもここで、誰かを待っているのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。



 ただ、舟をこぐ。きっと、叶わなかった思い出の一編を危なげなく遊覧したいから。

141名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:28:25 ID:B7mM2p/wO



(-、-*川「……」



 目を瞑って、耳を澄ませて、まだ残っている冬の匂いを嗅ぐの。



猫足のバスタブに浸かって、白人の彼が微笑んでいるよりも、こっちのほうが性に合っていると思ってしまうのは、なんだか複雑。



 ……もちろん、電波じゃないよ。好きな小説家は江國香織。



 くるくると回っている。星が? ううん、自分が。



 霧の中で回っている舟はそんなに広くない湖をくるくると、当てもなく回って、水面を騒がせる。


魚はいるんだろうか。ごめんね、もう少し、お邪魔させて。

142名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:29:30 ID:B7mM2p/wO
 ベネチアのゴンドラみたいなオシャレで風情のあるものじゃないけど、同じく車も通らないこの商店街は好き。



まだ開いているお店は流行っていないバーくらいで、人通りもほとんどない。



 こうして、自分の世界に入っていても誰の迷惑にもならないし、誰の得にもならない。

143名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:30:25 ID:B7mM2p/wO
 だから、石畳が余計に鳴らす革靴の音がこっちに向かってくることを気づけなかった私は、その声に転覆した。



「伊藤……?」



(-、`*川「……ひゃい?」



 変な声が出た。星が話しかけてきたわけでもなければ、中身が空になったレモンティーが声を出したわけでもないし、背もたれ君は相変わらず無言。前を見よう、私。

144名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:30:57 ID:B7mM2p/wO



  _
( ゚∀゚)「伊藤じゃないか」





('、`*川「……長っち?」

145名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:31:59 ID:B7mM2p/wO
 まずは下から、キレイな靴。プリーツのはっきりとしたダークネイビーのストライプスラックス。



ベルトは見えなかったけど、二つボタンのジャケットと、ライトグレーのボタンダウンシャツ。ノーネクタイ。



 カッコいいの定義なんて人それぞれだけど、見ていて不快にならないそれが、



こんなところでこんな時間にベンチで呆けている女をナンパしようとするバカみたいな男じゃないってことは、声を聞いて分かった。

146名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:33:00 ID:B7mM2p/wO
  _
(* ゚∀゚)「久しぶりだな!? 元気だった?」



 私が知っている彼──長岡は、アッシュグレイの髪色で、ウルフヘアーの長い襟足をしていたはずなのに、目の前にいる『元カレ』は、黒髪短髪。



もう、5年以上経ったんだから当たり前といえば当たり前。変わっていなかったのは無駄に凛々しい眉毛だけ。



(゚、゚*;川「う、うん。
 え、っていうか、
 え、は、なんでここにいんの?」



  _
( ゚∀゚)「仕事でこっち帰ってきてたのよ。で、終わったからバーでも行こうかなと」

147名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:34:31 ID:B7mM2p/wO
 声は変わっていなかったから気づけたものの、ただ通り過ぎただけだったら絶対に振り向くことなんてしないほど長岡はおっさん――失礼、ナイスミドルだ――になっていた。



ごめん、だって、おかしいもの。



  _
( ゚∀゚) 「……どしたの?」



('、`*川「ご、ごめん……
  あんまり変わってたから」



 噴出しそうになる口元を押さえながら、私は謝った。

148名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:35:55 ID:B7mM2p/wO
  _
( -∀-) 「ハハハ、まぁさすがにな……そうだ」



 湖で漕いでいた舟が難破する。でも溺れることはない。だって、足がつくのだから。



  _
( ゚∀゚)「良かったら、
  飲みにいかないか」



 紅茶を置いて、差し出された手を取って、私は浅いところから現実に浮き上がった。



 その指先には余計なものなど一つもなかったことが、どうにも私を困惑させた。

149名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:36:47 ID:B7mM2p/wO
~~~



 思えば、生まれたての姿でしたのはこの男が初めてだった。




 身体は火照るのに、心は冷めていて、申し訳程度の嬌声は三流役者の演技にも劣る。




 今思えば、長岡もわかっていたんだろう。私達は合わない。別れることになるのに時間はかからなかった。



  _
(* ゚∀゚)「でさ、部長が言うんだよ。
ハンコ! ハンコがない! って」



('ー`*川 「フフフ、
      なにそれ!」

150名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:37:38 ID:B7mM2p/wO
 私達は流行っていないバーに来ていた。カウンター6席だけの寂れたバー。なんて言ったらマスターは怒りそうだけど、口に出さなければ良い。



 長岡は2杯目のラフロイグをゆっくりと口に運んでいた。そのしぐさが、昔とは違ってなんだか洗練されていて、私は目を逸らす。


  _
( ゚∀゚)「総合職だったか、
     君も大変だろう?」



 一つ、思ったことがあった。姿形以外に変わったことだ。私を呼ぶときに君という表現を使うようになった。

151名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:38:29 ID:B7mM2p/wO
 別に、いつぞやの時と距離が離れたことを嘆いているわけでもなければ、なんだかくすぐったいような感覚に酔いが回っているわけでもなくて、ただ昔と違うというだけ。



 『お前なぁ……』



 『お前さぁ……』



 嫌いだったんだ。お前って言われるのが。



なにも対等な立場が云々と講釈を垂れるつもりはなかったが、どこかこの男が言う見下したような言葉遣いに苛立ちを覚えていた。

152名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:39:10 ID:B7mM2p/wO



 それが、『君』って。



('、`*川「むー、
  まぁ、ぼちぼち」



  _
( ^∀^)「そっか。
相変わらず頑張り屋さんだな、君は」



 取りとめもなく話を終わらせることも、私の心情を慮ってのことだろうか。



別に突っ込んで聞いてくれてもなんら問題はないのに、どうにもこの男は慎重になりすぎている気がする。

153名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:39:51 ID:B7mM2p/wO
 それが、果たして一夜限りのロマンスでも楽しみたいというナルシズムなのか、何かに失敗して学んだ経験則なのかは知らないしどうでもいい。




 ただ、私はこの空間が、この一瞬が。




 なぜだか、とても楽しく思えていたからだ。

154名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:40:38 ID:B7mM2p/wO



('、`*川「マスター、
  アレキサンダーください」



(´・ω・`)「はい」



 マンハッタンにでもしようかと思ったが、止めておいた。あれは一人で飲むものだ。



男と一緒に飲むには私には早すぎし、この男にも早すぎる。



 シェイカーにブランデーを注いで、生クリームとカカオを入れた店主は、店内にかかっている名も知らないジャズの音量よりも大きく音を鳴らした。

155名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:41:22 ID:B7mM2p/wO
  _
( ゚∀゚)「甘いよ?」



('、`*川「知ってる」



  _
( ゚∀゚)「甘いの好きだったっけ」



('、`*川「長っちは嫌いだったね」



  _
( -∀-)「まぁ、な。
でもアレキサンダーは好きだよ。

バニラアイスみたいで」

156名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:42:06 ID:B7mM2p/wO
 少し噴出した。子供みたいな評価をする。そういうところは、なんだか変わっていない。



  _
( ゚∀゚)「なんだよ、いいじゃないか別に」



 拗ねる彼のほっぺたを指先でつついてみた。払いのけもせずに、なされるがままだったから、デコピンしてやった。



  _
(; ゚∀゚) 「痛って! 暴力反対!」



(^、^*川 「アハハハハ」

157名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:42:50 ID:B7mM2p/wO
 妙に可笑しかった。私はバーに居るにも関わらず、何よりも大きな音をたてて笑った。



 布団の中であっちむいてホイをしている時が幸せという言葉の意味がなんとなく分かった気がする。



  _
( -∀-) 「全く……
そんなんじゃ嫁にいけないぞ、暴力伊藤」




('ー`*川 「あれ、もらってくれるんじゃなかったの?」



  _
( ゚∀゚) 「いつの話だよ」



('ε`*川 「ふふん」

158名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:43:36 ID:B7mM2p/wO
 どうぞ、という言葉と一緒に、目の前に差し出された淡い、茶褐色の液体を口にする。



このマスターはナツメグを入れないレシピを使ったようで、生クリームの匂いが鼻腔を刺激した。



('、`*川 「ふぅ」



  _
( ゚∀゚) 「酔ってるんじゃないのか?」



(-、-*川 「酔わせてどうするつもりよ」



  _
( ゚∀゚) 「アホ、帰るよ」



('д`*川 「えー、 もうちょっといたいー」



  _
( -∀-) 「ダーメ。
  せっかく久しぶりに会ったのに、行きずりのってのは勘弁」

159名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:44:25 ID:B7mM2p/wO
 彼は両手の人差し指でバツ印を作って、マスターに見せる。



うなずいて、私に見えないよう伝票を差し出したから、慌てて財布を取り出そうとした。



  _
( ゚∀゚) 「いいよ」



('、`*川 「ダメだよ」



 いつもこうだった。呼び方といい、どうにも亭主関白な気がある長岡は、私に払わせることを良しとしない。

160名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:45:09 ID:B7mM2p/wO



  _
( -∀゚) 「今度、
  また飲むときに
  奢ってもらうから」



('、`*川 「……」



 そう言われたら黙るしかなかった。



それは、社交辞令のつもりだったのだろうに、酔いが回った私には、また会えるという約束に取れてしまったから。

161名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:45:55 ID:B7mM2p/wO
(´・ω・`) 「ありがとうございました」



  _
( ゚∀゚) 「ありがとう、
  ごちそうさまでした。
  さ、出よ。 外は寒いぞー」


 そういって、羽織っていたジャケットを脱ぐと私に着せる。ブカブカの上着は、厚着している自分にとってちょうどいい。



 彼のジャケットは、タバコの匂いがした。

162名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:46:38 ID:B7mM2p/wO
~~~



 外は言うとおり寒かった。内と外の気温差が身体の体温を奪っていく。



 それでも、酔っていた私には心地よかったし、柔らかくて軽いジャケットの感覚が、抱きしめられているようで落ち着いていた。


  _
( ^∀^) 「ふぅ、美味かった」



('ー`*川 「ご馳走様。ありがとう」



  _
( ゚∀゚) 「いいえ、どういたしまして」

163名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:47:30 ID:B7mM2p/wO
 お礼を言って、二人で商店街を歩く。もちろん、向かっている先は出口。このひと時ももう終わる。



('、`*川 「ねぇ」



  _
( ゚∀゚) 「ん?」



('、`*川 「また、会えるかな?」



  _
(; -∀-) 「そうだな、
仕事が片付いたらまた来るよ。
でも部長がなぁ……」



(-、-*川 「そうじゃなくて」

164名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:48:18 ID:B7mM2p/wO

 ああ、くだらない。



 けんもほろろ。



 ふわっふわでくだらない。

165名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:49:07 ID:B7mM2p/wO
  _
( -∀-) 「……」



('ー`*川 「連絡先、変わったよね」



  _
( ゚∀゚) 「……」



 別れてから数ヶ月、ふと思い出したようにメールを送ったことがあった。返ってきたのはびっしりと書かれた長文。英語は読めない。



  _
( ゚∀゚) 「番号までは
  変えていないさ。
  何かあったら電話でも
  してくれればいい」



('ー`*川 「……」

166名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:49:54 ID:B7mM2p/wO
 それが出来るほど強くもないし弱くもない。思いもないし、想いもない。


ただ、ちょっとした好奇心で、それが『愛情』だと気づくことまで私はずっと舟を漕いでいた。





 戻れないかな。





 たった一言、そういうだけで済むのだろう。慕情というにはキレイすぎるこの気持ちが、私の口から悪態をつかせた。

167名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:50:26 ID:B7mM2p/wO



('、`*川 「愛してた?」



  _
(; ゚∀゚) 「は?」

169名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:51:15 ID:B7mM2p/wO
('、`*川 「私のこと、愛してた?」



  _
( -∀-) 「あぁー……」

170名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:51:56 ID:B7mM2p/wO
 我ながら面倒くさい女だと思った。困る長岡の顔を見て、口角が上がってしまうのだから。答えを聞きたかった。



  _
( -∀-) 「んー、愛してたよ」



('、`*川 「嘘」



  _
( -∀゚) 「ホント。っていうか──」

171名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:52:49 ID:B7mM2p/wO



( ゚∀゚)「……
  俺は申し訳ないと思っている。
  ちょうど、20歳だっけか?
  んー、なんていうかなぁ……
  ちいさかったんだよ、器が。
  ん、そうだ。器が小さかった。
  微妙なところだった、ホント。
  ロマンに憧れて――
  ん…………意味わからんか」

172名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:53:51 ID:B7mM2p/wO
  _
(; -∀-)「まぁ、なにが言いたいのかって言うと」



  _
( ゚∀゚) 「今でも愛してるさ」



 彼も酔っていたのかも知れない。ベラベラと連ねて、バカみたいだと思った



 でも、その言葉の意味は、私にとっての最大限の真実で、彼にとっての落とし所だったのだろう。

173名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:54:48 ID:B7mM2p/wO
 きっと、『愛着』だったんだ。だから、別れた。絶対に元には戻らない、正反対の同じ言葉。



  _
( ゚∀゚) 「タクシーを捕まえよう、おいで」



 居た堪れなくなったのだろうか、背中を向けて、一歩先へと国道へ向かう。



 もう舟を漕ぐ必要もない。いつものベンチに腰掛けて、背もたれ君に身を預けることもない。

174名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:55:22 ID:B7mM2p/wO
('ー`*川 「うん」



  _
( ゚∀゚) 「あ、タバコ吸っていい?」



('、`*川 「いいよ」



  _
( ^∀^) 「ありがと。
そうそう、また部長の話なんだけどね、これがまた──」

175名も無きAAのようです :2015/02/11(水) 17:56:42 ID:B7mM2p/wO



 彼を誘ってベネチアにでも行こうか。ううん、どうせなら白人の男と行ってもいい。



 朝は猫足のバスタブに浸かって、昼からゴンドラで揺られるの。





 そう思う、25歳の春。


★☆★ マイナーカップリング祭り専用スレ ★☆★
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