まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 第十七話:【( ФωФ)は逃げられないようです】 後編

106 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:03:16 ID:O1n28dTk0

「汝ら怠惰なり。我と共に立ち上がり戦え」

 悪魔の宰相にして闇に棲むもの、ルキフゲ・ロフォカレはそう述べた。

 従う者はなく、皆が彼を疎んじた。

「致し方なし」

 ルキフゲ・ロフォカレは、眷属も置いて唯独り、天空へと消えていった。

 彼の者の最期は伝説、寓話で語られるのみ。

 死して屍拾うもの無し。

 合掌。


.


107 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:05:32 ID:O1n28dTk0

 儚き声に、決して振り返ることなく。


( ・∀・)悪魔戦争のようです


第十七話 【( ФωФ)は逃げられないようです】 後編

108 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:09:30 ID:O1n28dTk0

 ロマネスクが気勢を上げる。

( ФωФ)「はっ!」

 しかし、彼の大剣は天使を捉えられず中空を薙いだ。

 ロマネスクの近接戦闘における技術は、連合国軍でも五指に数えられるレベルである。
 良家の生まれであるとはいえ、後ろ盾や権力を持つわけでもない彼が若くして少将にまで上り詰めたのは、
 その並外れた戦闘力に因るところが大きい(とはいえ、休戦中にはその力を発揮できなかったが)。

 そのロマネスクが、ゼアフォー=サンダルフォンに傷一つ与えられない。

(;ФωФ)(やはり上位天使、圧倒的である)

 頬の傷から流れる血を手の甲で拭い、ロマネスクは剣を構え直す。
 かつてヒート・トソンと対峙した経験はあるが、目の前の鉄仮面はそれ以上の存在に思えた。

 真っ直ぐに大剣を突き入れる。ゼアフォーは両手に持つ剣でそれを防ごうとする。
 しかし鉄塊の質量とロマネスクの膂力を受け止めきれず、剣は二本とも砕け折れる。

( ∴)「『構築』」

 ――が、次の瞬間には、ゼアフォーは新たな武器を手にしていた。

( ФωФ)(次は槍と盾であるか……)

 どうやら『構築』という古魔法は、物質を瞬時に錬成する魔法であるらしい。
 ロマネスクの大剣をも超える長槍と楕円形の盾を手に、ゼアフォーはゆらりと動く。

(ФωФ;)「くっ」

 激しい連撃を避けきれず、ロマネスクの体には裂傷が増えていく。

109 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:12:05 ID:O1n28dTk0

 ここまでの戦闘で、ゼアフォーは『構築』以外の魔法を使っていない。
 信念なのか性質なのかはわからないが、この事実はロマネスクにとって嬉しい誤算であった。
 ヒートのように強力な魔法を駆使してこないならば幾分か対策が立てやすい。

 ただし、体術のみに限定してもなおロマネスクの手が届かない、という事実は。
 決して想定外であったわけではないものの、歓迎できない話である。

(;ФωФ)「はぁ、はぁ、ぐっ……」

 みしり。と、大剣に亀裂が走る。
 持ち主であるロマネスクの体にも、もはや数え切れぬほどの傷が刻まれている。
 指はまだ飛んでいない。剣を握り直すが、握力の方が限界に近づいてきていた。

( ∴)

 上位天使はまた新たな武器を創造する。次は、刃渡りが人の頭ほどもある斧である。

 油断していたわけではない。むしろ、考えられる限り最良の戦い方を選んでいる、にも関わらず。
 ロマネスクは、ゼアフォーの体どころか、その衣服にすら触れられずにいる。必然の劣勢。

( ФωФ)(妹者がいてくれれば……)

 そう考えてしまった自分の情けなさに、思わず苦笑した。
 これではまるで、身勝手に捨てた昔の女にすがろうとしている、下らない男ではないか。

 やはり――負けられぬ。
 これしきの苦境で挫けていては妹者に、プラズマン中将に、申し訳が立たぬ。

110 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:15:32 ID:O1n28dTk0

ミπ`ー)「よう、苦戦してんじゃねえか、おっさん」

 ロマネスクの隣に、そう言いながら並び立つ者があった。にやにやと緩い表情の若い男。
 N=キッド=M=ジンラグ=フロア、ウォルクシアの「用心棒」である。
 背負う武器が擦れあい、じゃらりと金属音をたてた。

( ФωФ)「何用であるか」

ミπ`-)「冷たいな。もう無駄口叩く余裕もないってわけ?」

 ゼアフォーは動かず、注意深くキッドを観察している。

ミπ`-)「まあ下がってろよ!」

 キッドも負けじと睨み返す。その眼には、隠すべくもなく闘志が燃えている。

ミπ`-)「俺の前にいたら、ついうっかり殺しちまうかもしれねえからな」

( ФωФ)「…………?」

 ロマネスクが眉根を寄せたのは、キッドの言動に対してのことではない。
 彼の身体――特に、肩から腕の辺りにかけて――の輪郭が、歪んだように見えたからだ。
 体力が消耗しすぎて、自分の目がおかしくなってきたのか? ロマネスクがそう勘違いするのも無理はなかった。

ミπ`-)「行くぜ、天使様よ――――」

 両腕を振りかざし、背負う剣の柄を握る。

ミπ`-)「詠唱ォォ省略ッ! 『アシュラ』! 『オピストゴネアータ』!」

 次に、腰に差す二本の刀を。

 そして、脚に仕込んだ二本のナイフを。

 「新たに生えた」「二対四本」の「腕」が、掴み、抜き放ち、握り締める。
 六腕で六刃を構えるその姿は――もはや、怪物のそれに近いものであった。

112 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:18:08 ID:O1n28dTk0

ミπ`-)「おらァ!!」

( ∴)「!」

 白刃の竜巻。
 キッドの剣技は、誰にも真似できぬその神髄は、単純にして明快であった。

 ただひたすら剣を振るい、刀を放ち、ナイフを投げ、切り裂き叩き折り砕き潰す。
 攻撃は最大の防御――理論とも言えないようなそれこそが、彼が持つ本質。やられたらやり返せ。やられる前にやれ。

( ∴)「ッ……」

 ゼアフォーは早々に大斧を放棄し、盾と短剣を新たに創り出して攻撃を受け止める。
 キッドの圧倒的な手数は、上位天使をもってしても、防御に専念せざるをえないほどの暴風であった。

ミπ`ー)「はははァ! どうしたどうしたっ!」

 欠け、折れ、役目を終えた武器は躊躇なく捨てる。
 その身体に装着された無数の武器から一つ選び、新たな切っ先を再び敵へと向ける。

ミπ`-)「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!!!」

( ∴)「『構築』『構築』『構築』『構築』『構築』『構築』『構築』」

 加速に加速を次ぐキッドとゼアフォーの交剣は瞬く間に千を数え、弾ける火花が空中に輝線を描いた。

 キッドは武器を、ゼアフォーは魔力を、それぞれ急速に消費していく。

113 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:21:31 ID:O1n28dTk0

 一人の人間が身につけられる武器の数では、上位天使の魔力には遠く及ばない。
 しかしキッドの鬼気迫る気力が、防御に微塵も気を回さない覚悟が、一時的にゼアフォーを圧倒した。

( ∴)「!?」

 隙を縫って差し込まれた剣が、ゼアフォーの脇腹を抉る。

ミπ`-)「よう! 上位天使様も、赤い血を流すんだな?」

 油断したキッドの顔面にゼアフォーの蹴りが入り、軽い身体が吹き飛ばされる。
 ごろごろと地面を転がり、ロマネスクの足下で止まった。

( ФωФ)「大丈夫か?」

ミπ`-)「おーいてぇ、軽口叩いてる場合じゃなかったな。鼻血出てねえ?」

 ロマネスクが差し出した手を、キッドは三本の手で掴んだ。

ミπ`-)「しかしちっと疲れたな。どうだおっさん、選手交代と……ん?」

 浮かべていた笑みが消えてしまうほどの、はっきりと形をもつかのような怖気が走った。
 ゼアフォーが発する膨大な魔力と、息苦しい濃厚な空気が漂う。

( ∴)「『魂の構築』」



  _
( ゚∀゚)「おっ、久々に出番ですか」


 ゼアフォーの前に立つ男は、状況にそぐわぬ明るい声で言った。

114 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:25:25 ID:O1n28dTk0

【基地内・中央棟三階通路】

 その邂逅は、お互いにとって想定していない状況であった。

从 ゚∀从「……おっ」

( "ゞ)「ハインリッヒ……さん」

 ツンを探していたハインリッヒと、現状を把握するため歩き回っていたデルタ。
 共に世間話を楽しめるような気分ではなかったが、出逢ってしまっては仕方がない。

从 ゚∀从「意外と驚かねェな。オレがここにいるって知ってたのか?」

( "ゞ)「ええまあ、色々ありましてね」

从 ゚∀从「相変わらず聡いねェ……」

 兵士がロマネスクに来客を告げた際、デルタはベッドの下に隠れていた。
 その後の基地内の混乱はデルタに都合よく働き、咎められることもなく探索できていたのだった。

( "ゞ)「ハインリッヒさんには聞きたいことがいくつかあります」

从 ゚∀从「だろうなァ。だが、すべてに答えてる時間はないんだ」

( "ゞ)「……では一つだけ。あなたは、ツンをどうするつもりですか?」

 ハインは口角を歪めた。デルタは――この少年は本当に賢く面白い奴だ、と思った。

从 ゚∀从「戦えるようにするのさ」

115 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:30:28 ID:O1n28dTk0

 正直に話す必要はなかった。むしろ、ハインリッヒの行為は機密の漏洩にあたる。
 だが――現状の説明を求めるか、ズーパルレでのことを糾弾するための質問も、デルタには選べたはずだ。
 それでいて彼が選んだ質問は、客観的に見ても優先度が低いものであった。

从 ゚∀从「魔人は貴重だ。確保して戦力にしろと、ウォルクシアは望んでいる」

( "ゞ)「どうして今更そんなことに?」

从 ゚∀从「生まれた時から、ツンの能力は監視下にあった。限られた人間だけがそのことを知ってた」

 オレにも知らされていなかった、若いからかねェ――と科学者は言う。

从 ゚∀从「ま、ある人物が反対して、とりあえず兵器利用はしないってことになってたんだがなァ。
      ズーパルレでの事件があって、国王が決めちまった。利用できずとも、魔人は管理下におくと」

( "ゞ)「本人の意向は無視ですか」

从 ゚∀从「怒るなよォ。オレは悪いと思ってるんだぜ? こうなったのはオレのせいだからなァ。
      だからこんなキャグレイとかいうクソ遠いところまで、こうして直々に迎えに来てるんだ」

从 ゚∀从「それにさ、むしろここにいる方が危ないかもだぞ」

( "ゞ)「正直に話してくださってありがとうございます」

 ハインリッヒの言葉を遮り、デルタは溜息を一つ吐いた。

116 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:35:44 ID:O1n28dTk0

( "ゞ)「あなたは権力も実力も持ち合わせていて、根のところでは良い人だと思います。
     でも、ツンの運命を強制することは許せません。彼女自身に選ばせるべきです」

从 ゚∀从「正論だねェ」

( "ゞ)「僕らはモララー君を捜しに行かなくちゃいけないんです。戦争に関わっている暇はありません。
     あなたがツンを連れていくと言うのなら、僕は……それを認めることは絶対にできない」

 デルタは短い呪文を詠唱し、粗末な剣を虚空から取り出した。
 両手で剣を握りしめる。

从 ゚∀从「やめとけ」

 問答無用とばかりにデルタは剣を振り上げ、科学者に切りかかった。

 少年が、それも病み上がりが振るう剣である。
 ハインリッヒは事もなくそれを避け、軽く脚を上げた。

(;"ゞ)「うぐっ」

 赤く堅い靴が鳩尾を鋭く抉る。
 デルタの顔に苦悶の表情が浮かび、剣を取り落とす。

 ハインリッヒはもう一度、今度は顔面を、脳が揺れるように蹴り飛ばした。

从 ゚ー从「若さもそこまでいくと笑えねェ」

 気絶したデルタを見下ろし、独りごちる。

从 ゚∀从「……まァ、オレが悪役になってやっから、好きなだけ頑張ってみろよ」

117 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:42:09 ID:O1n28dTk0

【ケノル駐屯地周辺・戦場】

 闘争は苛烈を極めた。

 あちこちに肉塊や臓物や何かわからないものが転がり、潰れ、弾けている。
 足を踏み出せば血溜まりが跳ね、死者は汚泥に塗れて沈んでゆく。

「軍曹! ギェンが死にました!」

 多数の獣型悪魔を従える男が、喧噪にかき消されないように叫ぶ。

「くそっ……! 限界だ、撤退するぞ! 基地に支援を要請しろ!!」

 軍曹と呼ばれた男が声を張り上げる。
 眼前に迫った下位天使に槍を突き刺し、引き抜き、もう一度突き刺した。

「ダメです、狙撃手は空中戦で手一杯です!」

「そうか」

 天使の巨大な死骸を蹴り飛ばした軍曹は、周囲の部下に指示を飛ばす。

「ノーティ! ナーハ! 『ゴーレム』を先行させて退路を確保しろ。実験場に向かう」

「了解!」

「コッヴは俺と後尾で迎撃だ、残りは先頭二人を守れ、死んでも守り切れよ!」

118 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:45:34 ID:O1n28dTk0

 召喚された二体の『ゴーレム』を先頭に、部隊は撤退を始める。
 無数の下位天使によって緩やかに包囲されている状況であったが、岩の巨人が強引に突破口を開く。

 下位天使は人に比べて大きく、強靱で、恐れを知らぬ優秀な兵士である。
 しかし『ゴーレム』はさらに大きく数倍も頑丈な手足を振るって、下位天使を弾き飛ばしていく。
 地響きを轟かせながら、巨人は敵味方の死骸を踏みしめて一歩ずつ進んでゆく。

 その時、後方より飛来した光弾が『ゴーレム』の背中で炸裂した。

「敵方の砲撃!」

 二体の『ゴーレム』に十を越える光弾が殺到し、次々と爆発の華を咲かせる。
 岩の体にはヒビが入り、砕け、削れてゆく。
 ついに『ゴーレム』は崩れ落ち、悪魔の死骸を乗り越えて天使たちが迫り来る。

「くそ、もう一度召喚を――」

 軍曹が前方に振り向いた時、既に召喚者ノーティとナーハは天使の波に飲み込まれていた。
 首がねじ切られ、胴体に鋭い爪が突き刺さり、これ以上ないほどに死にながら倒れ伏していく部下たちが見えた。

「ああ……」

 軍曹が思考できたのは数秒ほどの短い時間であっただろう。
 故郷の家族、夕暮れ、出来の悪い部下、温かいスープ、悪魔との契約、天使。

 人生のすべてが脳裏を走った。
 数秒の後、現世との別れを迎える寸前に彼が遺した言葉は、自身ですら驚くようなものだった。

「神よ」

 それを聞いた者はいない。 否、いなくなった。

119 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:48:52 ID:O1n28dTk0

ミπ -)

( Фω )


 キッドとロマネスクはおびただしい量の血に塗れ、泥がぬかるむ中倒れ伏していた。
  _
( ゚∀゚)「いやー、こいつら弱すぎんな」

(-@∀@)「それは違う。僕たちが強すぎるんだよ」

 ジョルジュとアサピー、二人の軍人はその台詞を言い放つが早いか、体が肉塊となって崩れ落ちる。
 汚物の山の向こう側に佇むは、鉄仮面の上位天使。

( ∴)

ミπ`-)「好き勝手……言い……やがって……」

 キッドは右頬に冷たい大地を感じつつ、血混じりの痰を吐き出した。
 立ち上がろうと頭では考えるが、指の一本に至るまで言うことを聞こうとしない。

ミπ`-)「……もう五十回はてめえら……殺したっつーの」

120 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:51:28 ID:O1n28dTk0

 かすむ視界がかろうじて捉えているのは、同じように倒れている大男。

ミπ`-)「ようおっさん……あいつら何なんだよ、ゾンビか……?」

( ФωФ)「……わからんが、死者の姿形を利用、しているのは……間違いないであろうな」

 ロマネスクは彼ら二人と面識があった。全滅したデミタス隊に所属していた、有望な兵士だったはずだ。
 別段に親しかったわけではないが、向こうもロマネスクの顔は知っている。

( ФωФ)(姿、能力……性格。生きていた頃とほぼ変わらないが、まさか本当に魂を作っているわけでは……)

 しかし、どうやら生前の記憶はなく、天使に使役される状況に違和感もないらしい。
 倒しても倒しても、ゼアフォーは新たに二人の死者を構築してみせた。

ミπ`-)「はぁ……キツいぜ全く」

 拳で体を支え、なんとか膝をつこうとするキッド。
 その懐から何か小さなものが転び出て、地面を跳ねて落ちた。

ミπ`-)「あ、無理。げっほ」

 血反吐を吐いて呻くキッドよりも、彼が落としたものの方にロマネスクは目を奪われた。
 それは、その紅い石は、血溜まりの中で、笑うように妖しく煌めいていた。

( ФωФ)「『血魂石』……?」

 世界が ぐるりと  回る。

121 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:56:33 ID:O1n28dTk0

 刹那の後、自分が広大な部屋の中央に座っていることに、ロマネスクは気付いた。
 部屋は何もかもが赤く染まっていた。壁も、天井も、床も、二つの椅子も。

 対面の椅子には、この部屋の中で唯一赤くない少女が膝を抱えて座っている。

l从・∀・ノ!リ「久しぶりじゃな、ロマネスク」

 『ヴァンパイア』妹者は、金髪の先を指で弄びながら、退屈そうに話しかけた。

( ФωФ)「……ここは?」

 ふん、全くお主は、と妹者が笑う。白い顔の口元に、小さな牙が覗いた。

l从・∀・ノ!リ「底抜けに愚かじゃのう。これほど血をもらっても飲みきれんわ」

( ФωФ)「貴様――今まで、何をしていた?」

l从・∀・ノ!リ「ふん! 以前にも言ったがな、儂のことを貴様などと呼ぶでない。儂の名前は――」

 紫鬼の舌先から血の雫が垂れ落ちる。

l从・∀・ノ!リ「――妹者、じゃ。他の何者でもない。忘れてくれるなよロマネスク、儂の"元"主よ」

( ФωФ)「…………」

 ここは妹者の精神世界か何かであろうか。
 思えば、ロマネスクの体にあるはずの無数の傷も綺麗さっぱり消えている。

122 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 21:59:39 ID:O1n28dTk0

( ФωФ)「手を貸してくれるのであるか?」

l从・∀・ノ!リ「何故そう思う? "元"主よ。儂が手を貸してやる理由などあろうか?」

 唇を尖らせる妹者。

l从・∀・ノ!リ「せっかくの好意を無碍にされた記憶もあるしのう、薄情者め」

( ФωФ)「……ふっ」

l从・∀・ノ!リ「なんじゃ、何を笑うておる、殺すぞ」

( ФωФ)「いや、失礼。我輩よりよほど年上なのだろうが、まるで子供のようであるな」

l从#・∀・ノ!リ「はああああああああ!?? おぬっ、お主、この儂を子供じゃと!?」

l从#・∀・ノ!リ「生意気で分別もつかず不合理で非常識で泣き喚き反省せず愚図で無能なクソガキじゃと!!?」

( ФωФ)「いやそこまでは……」

l从・∀・ノ!リ「ふっ、ふん。ふっふっふ。よかろう。その安い挑発にのってやろう。後悔するなよ」

( ФωФ)(挑発したつもりはなかったのであるが)

l从・∀・ノ!リ「指をよこせ、ロマネスク」

123 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:03:26 ID:O1n28dTk0

 ロマネスクが左手を差し出すと、妹者はその薬指を口に含んだ。
 ぷち、と妹者の牙が皮膚を突き破り、赤い血潮が流れだす。

 小さな舌が薬指の腹を舐める。
 たっぷりと味わったあとに妹者が口を離す。指先と唇に赤い唾液が糸を引いた。

l从・∀・ノ!リ「再契約じゃ」

( ФωФ)「……すまんな。助かるである」

l从・∀・ノ!リ「言っておくが、また勝手に契約を解除しようものならお主の首を引きちぎるからな」

( ФωФ)「構わん。我輩も覚悟を決めた」

( ФωФ)「どちらかが死ぬべき時まで、共に戦おう」

l从・∀・ノ!リ「…………主」

l从・∀・ノ!リ「儂の本当の名を、本当の声を知りたいか?」

( ФωФ)「いや、我輩にとってそれは重要ではない」

l从・∀・ノ!リ「ああつまらん奴じゃ。後で教えてくれと泣いて請うても知らんぞ」

 赤い部屋が徐々に溶け始め、形が保たれなくなってゆく。

l从・∀・ノ!リ「それでは、そろそろ始めようかのう。よろしいか」

( ФωФ)「是非もあるまい」

l从・∀・ノ!リ「今日の宴は少々荒っぽいからの。振り落とされるでないぞ、ロマネスク!」

l从・∀・ノ!リ「さあ――――儂の名を呼べ!」

( ФωФ)「我輩の力となれ、『妹者』!!」

124 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:08:26 ID:O1n28dTk0


( ∴)「…………」

 ゼアフォー=サンダルフォンは、今まさにキッドの息の根を止めようとしていた。
 いつの間にか消えているロマネスクの事を気にかけている様子もない。

 人間二人分の質量はあろうかという巨大な斧を、ゆっくりと振りかぶる。

 そして。

l从・∀・ノ!リ「そこまでじゃ」

( ∴)「!」

 衝撃が走り、ゼアフォーは斧を取り落とす。妹者が放った血の刃が、彼の両手の掌を貫いていた。

 鉄仮面が妹者とロマネスクの方を向く。

l从・∀・ノ!リ「暑い。まだ太陽が出ておるではないか」

( ФωФ)「すまんな」

l从・∀・ノ!リ「あそこに転がってる半死人は助けた方がよいかの?」

( ФωФ)「できれば頼む」

l从・∀・ノ!リ「あい任せろ」

125 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:11:47 ID:O1n28dTk0

 妹者が地を蹴り駆け出すと、その矮躯からは大量の血液が迸る。
 背中には鷹の翼。両腕に虎の爪。紅い体液が妹者の体を覆ってゆく。

l从・∀・ノ!リ「――――はっ!」

 一羽撃きごとに妹者は加速し、迅雷の速度でゼアフォーに迫る。

( ∴)「『構……ッ!」

 妹者の巨大な掌が天使の身体を掴み、拘束する。
 爪は長い鎖へと変形して絡まりあい、さらに強い力で締めあげてゆく。

l从・∀・ノ!リ「ロマネスク! そいつはお主が運べ、体は動くじゃろう!」

 拘束具から細い腕を引き抜き、妹者は能力『赤の誓約』を全力で展開し始める。

( ФωФ)「お……応」

 妹者の言うとおり、ロマネスクは自身の体をやけに軽く動かすことができた。
 おそらく妹者の血が体内に入って作用しているのだろう、と考えながらキッドのもとへ急ぐ。

ミπ`-)「おっさん、悪いが肩を貸してくれよ」

( ФωФ)「……回復が早いな」

 武器を使い果たしたキッドの小柄な体を、ひょいと担ぎ上げるロマネスク。
 斬られたのか消えたのか、生えている腕も今は二本だけに戻っているようだ。

ミπ`-)「そういう体質だからな。しかしあんたの使い魔、ありゃ強いぜ」

126 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:15:33 ID:O1n28dTk0

 ゼアフォーの『構築』は瞬時に物質を創り出す古魔法である。
 鉄塊のような単純な物質ならば、いくつも同時に巨大なものを出現させることができるが、
 「意味」や「効果」などをもつ複雑なものだと、極端にサイズを制限されてしまうことになる。

 「自身が殺害した生物を再現し操作する」という複雑さにもなれば、人間大のものを同時に二つ。
 先に見せた『魂の構築』では、実のところそれが限界なのであった。

( ∴)「『構築』」

 武器を用いての近接戦となれば、膨大な魔力を持つゼアフォーに対抗できる者は少ないだろう。

l从・∀・ノ!リ「えらく無口じゃのう! 前の上位天使はもっと喧しかったがな!」

 だが、この場では、わずかに妹者が優勢に立っていた。

 ロマネスクやキッドとの戦いが、ゼアフォーに疲労を蓄積させていたのかもしれない。
 『魂の構築』による魔力の消費が大きく、余剰魔力を節約せざるをえないのかもしれない。
 あるいは、単純に妹者の気勢と迫力が圧倒的であったのかもしれない。

 いずれにせよ、妹者の『赤の誓約』に対するゼアフォーは、防戦を強いられているように見えた。

l从・∀・ノ!リ「『乱紅蓮』!」

 鷹の翼を前方に振るうと、羽根の一枚一枚が抜け落ちて微細な刃となる。
 妹者が指さす方へ――その刃は、意志に呼応する一陣の疾風。

127 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:19:51 ID:O1n28dTk0

 防御態勢のゼアフォーを飲み込んで、赤い暴風が走り抜けた。

( ∴)「ッ……」

 急ぎ構築した盾は、天使の体を覆い隠すのに十分な大きさではなかった。

l从・∀・ノ!リ「痛む時には叫ぶがいい! 『常盤楓』!」

 妹者が指を打ち鳴らすと、ゼアフォーに突き刺さった刃が震動し破裂する。
 全身でいくつも引き起こされた爆発は、皮を剥ぎ、肉を削ぐ。

( ∴)「…………」

 致命傷にはほど遠い。胴や頭には傷一つ与えていない。
 しかしそれでも、妹者の攻撃は、ゼアフォー=サンダルフォンを押し止めていた。

( ФωФ)(これは……もしや、勝てる?)

 そう、妹者は上位天使の一人であるトソン=WB=バラキエルにも負けてはいない。
 あの場にギコ=シャティエルが現れるという事故がなければ、おそらく勝っていた。

 上位天使に単独で対抗できるほどの力をもつということ。
 それは、上級悪魔といえども少数しか存在しない強者の証である。

 ロマネスクの家柄。才能。人脈。体格。それに妹者という悪魔の庇護が加われば。
 軍の最上部に近い地位に登り詰めることも、あるいは不可能ではないのだろう。

128 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:24:46 ID:O1n28dTk0

 ゼアフォーは踵を返し、脱兎の如く逃亡を図る。

( ФωФ)「追うな!」

 勝てる可能性はある。しかしここで万が一にも妹者を失うわけにはいかない。
 逃走する敵を追跡しない――というロマネスクの判断の根底には、そのような考えがあったのかもしれない。

l从・∀・ノ!リ「何故じゃ! ここで逃がしてなんとする!」

( ФωФ)「妹者、周囲をよく見るである。我々も離脱すべきだ」

 今まではゼアフォーが遠ざけていたのだろう、下位天使がロマネスク達を包囲している。

l从・∀・ノ!リ「乱戦は望むところじゃ。……しかし、我が貧弱な主は耐えられぬかのう」

 致し方あるまいな、と妹者は呟く。

l从・∀・ノ!リ「儂が道を開こう」

( ФωФ)「すまんな。キッド、歩けるか?」

ミπ`-)「殺す気かよ」

l从・∀・ノ!リ「言っておくが、お主等を担いで飛ぶことはできんぞ。自分の道は自分で歩け」

( ФωФ)「……そういえば、キッド。何故『血魂石』を持っていた?」

ミπ`-)「あー、そのこと、訊かねえでくれ」

( ФωФ)「……まあ、よかろう。結果として助かったのであるから」

129 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:28:17 ID:O1n28dTk0

【基地内の一室】

从 ゚∀从「ようやく見つけたぜ、ツン」

 ハインリッヒを出迎えたのは、ツンの無表情であった。

从 ゚∀从「そう怖い顔すんなよ。お姉さん傷ついちゃうなァ」

ξ゚⊿゚)ξ「ハインリッヒさん。何しにここへ?」

从 ゚∀从「迎えに来たんだ。ウォルクシアに帰りたくないか?」

 ツンの表情は困惑に変わった。硬いベッドの上で膝を抱く。

ξ゚⊿゚)ξ「あなたが何を考えているのか、わかりません」

从 ゚∀从「オレの意思じゃねェ。……いや、ズーパルレであんな事があって、信用できないのもわかる」

ξ゚⊿゚)ξ「そりゃそうですよ。私たちを吹き飛ばしておいて……モララーは行方不明だし……」

从 ゚∀从「モララーか」

 ツンは、何としてでも連れて帰らなくてはいけない。それがハインの使命だ。

从 ゚∀从「モララーなら無事だぜ。ウォルクシアにいる」

ξ゚⊿゚)ξ「え!?」

130 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:30:39 ID:O1n28dTk0

 もちろんツンに真偽を確認する手段は無い。
 デルタならばこの程度の嘘は見抜いてくるだろうが、この場にはいない。

从 ゚∀从「さっきデルタにも会ったんだがなあァ、あいつも体を治ったら帰るってよ」

ξ゚⊿゚)ξ「デルタが? えっと……本当に?」

从 ゚∀从「あァ。実を言うとな、オレをここに派遣したのはオレの親父なんだ」

从 ゚∀从「キングポップ=O=エンジン。魔術士養成所所長。オレの親父」

ξ゚⊿゚)ξ「エンジン所長が? ……そう言われると、どことなく似てるような」

 この親子関係は歴とした事実である。たくさんの嘘に事実を混ぜると、どれも真実のように見えるものだ。

从 ゚∀从「親父はさ、生徒を保護するのは自分の役目だとか言ってたな」

从 ゚∀从「多少は信じる気になったか? 身分証を見せてやってもいいぜ、親父の名刺も持ってる」

ξ゚⊿゚)ξ「いや……、そうですね……」

 逡巡した後、顔を上げて科学者の目を見据える。

ξ゚⊿゚)ξ「わかりました。ここにいるよりは、ウォルクシアの方が安心できそうだし」

从 ゚∀从「よし。じゃあまァ――後で迎えに来るから、この部屋で待っててくれ」

131 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:34:04 ID:O1n28dTk0

【中央棟・司令室】

 誰がどう見ても、戦況は悪いに違いなかった。

(´・ω・`)「まずいなあ」

 そもそも、天使との大規模な白兵戦などそう頻繁に発生することではない。
 休戦期間があったこともあり、この駐屯地に天使との実戦経験のある兵は多くなかった。

(´・ω・`)「この基地は防衛戦なんて想定してないんだよね……」

 司令室に飛び込んでくる報告は概ね危機的なものであった。
 部隊の損傷、半壊、壊滅。あらゆる部署での人手不足。彼我戦力差の拡大。
 それでも報告があるだけまだマシな方であり、報告すら行われないような領域で、
 もっと悪い何かが進行していることは明らかであった。

(´・ω・`)「勝算があってこの戦いを始めたんだと信じてるよ、ロマネスク?」

从 ゚∀从「ちょっと失礼しますよ~ッと」

 騒然としている司令室の扉が開き、派手な格好の女がずかずかとショボンに迫ってきた。

(´・ω・`)「何か用ですか?」

从 ゚∀从「露骨に嫌そうですねェ」

(´・ω・`)「この忙しいときにあんまりうろちょろされるとね」

从 ゚∀从「まあまあ。どうも戦況が悪いようだし、ここは一つ協力してさしあげようかと思いましてね」

132 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:37:37 ID:O1n28dTk0

(´・ω・`)「協力。あなたが前線に出てくれるんですか?」

从 ゚∀从「いやいやオレはそんなに強くないですし?」

 それは韜晦が過ぎるな、とショボンは口を歪めて笑う。

『ロマネスク少将、ご帰還なされました!』

 数名の部下に付き添われ、ロマネスクの長身が司令室に姿を見せた。
 あちこちの傷はもはや隠しようがなく、応急処置で足りるとは思えない状況である。

(´・ω・`)「おや、少将。今にも死にそうだ」

( ФωФ)「実際死にかけたである。今も『ヴァンパイア』の力でなんとか動いている」

(´・ω・`)「『ヴァンパイア』? 再契約できたのか? それはなんとも――
       待てよ、『血魂石』は僕の研究室に保管してあったはずだが……」

从 ゚∀从(やべェ、キッドの大馬鹿野郎め……)

(´・ω・`)

从;゚ 3从~♪

( ФωФ)「不思議なこともあるものだな。ところで、眼前に見た敵の話をしてもよいか」

(´・ω・`)「……そうだね。時間が惜しい」

从 ゚∀从(助かったァ~~)

133 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:41:17 ID:O1n28dTk0

( ФωФ)「――――というわけである」

从 ゚∀从「キッドは医務室ですかァ」

( ФωФ)「うむ。衛生兵には最優先で治療に当たらせている」

(´・ω・`)「『構築』か。能力から察するに、ゼアフォーの序列は下の方だろう」

( ФωФ)「同感である。他の上級天使ほどの圧倒的な力ではない」

(´・ω・`)「ボロボロのロマネスク少将が言うと最高に面白いなあ」

( ФωФ)「…………」

从 ゚∀从ノ

 黙って手を挙げるハインリッヒ。黙ってそれを無視するショボン。

(´・ω・`)「とはいえ、敵軍勢の中に隠れられると厄介ではあるね」

从 ゚∀从「あのちょっと、いいですかねェ」

(´・ω・`)「今無視したのわかりましたよね? ウォルクシアの人は空気が読めないのかな?」

从 ゚∀从「いやすいません。キャグレイの人は足下の小銭しか見えないのかと思いまして」

134 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:44:56 ID:O1n28dTk0

(´・ω・`)「で、何です?」

从 ゚∀从「作戦を立案しようとね。よろしければ参謀に就いても構いませんか?」

( ФωФ)「力を貸していただけるなら、どんな形でも有り難い」

(´・ω・`)「…………。とりあえず提案をお聞きしましょう。手短にお願いします」

 苦虫を噛みつぶしたような顔で、ショボンは先を促した。
 余計な話をしている暇はない。この女は、それをわかっている。

从 ゚∀从「一応言っておきますが、そちら側の全面的な協力が必要ですからねェ」


* * * * *


(´・ω・`)「――――なるほどね」

 概要を聞き終え、ショボンは深く頷いた。

(´・ω・`)「まさに今持てる全ての戦力を費やした作戦というわけか……」

从 ゚∀从「えェ。どこかで歯車が噛み合わなかったら、その時点で我々はオシマイですね」

135 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:47:52 ID:O1n28dTk0

( ФωФ)「我輩の話を聞いて瞬時にその作戦を組み立てるとは、『科学者』の面目躍如たるな」

(´・ω・`)「おもしろい……いや、おもしろい。作戦の鍵となるのは二人……」

(´・ω・`)「ツン=D=パキッシュ、そしてN=キッド=M=ジンラグ=フロア」

( ФωФ)「どちらも不安が残る。キッドはかなり深手を負っているが……」

从 ゚∀从「あいつなら平気です」

 ニヤリと笑うハインリッヒ。

从 ゚∀从「キッドはウォルクシアが誇る『人間兵器』ですからねェ」

(´・ω・`)「……それ、詳しく聞いてもいい話かい?」

从 ゚∀从「機密なんで。ま、あと十分もすれば全快しますからご心配なく」

 目を丸くするショボンとは対照的に、ロマネスクは心の内で納得していた。

( ФωФ)(あの若さであの戦闘力だ。ずいぶんと強引な方法を用いたのであろう)

从 ゚∀从「ツン……も、まあ、やるときゃやると思いますよ」

( ФωФ)「賭けるしかあるまい」

136 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:51:29 ID:O1n28dTk0

(´・ω・`)「なんにせよこのままじゃジリ貧だしね。やるしかないか」

( ФωФ)「ハインリッヒ殿、早速準備を頼みます。ショボンは全体の指揮連絡を」

( ФωФ)「妹者、聞いていたか?」

 ロマネスクの肩に、ちょこんと座った吸血鬼が現れる。

l从・∀・ノ!リ「こんな奴らの命令で動くのは癪じゃのう」

( ФωФ)「妹者にしかできないことである。頼む」

l从・∀・ノ!リ「……やらんとは言ってないぞ。まだ暴れ足らんところじゃし」

 そこの阿呆女、とハインリッヒを指さす。

从 ゚∀从「オレ?」

l从・∀・ノ!リ「お主が一番ムカつくからお主に言う。日傘を持ってこい。そうすれば手伝ってやろう」

l从・∀・ノ!リ「赤いやつじゃ。赤がなければ紫でもよい。黒でも我慢してやる」

l从・∀・ノ!リ「どれも無ければ、血でも臓腑でも使って染めてこい!」

137 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:55:50 ID:O1n28dTk0

【基地・中央棟屋上】

『――亀裂に似る格子、散りぬる波乱』

『恥ずべき解決に下げられし焦熱、干渉器は精神を掃く』

『群衆の掟は魂剥ぎを追放し、禁じられた宝石が睡蓮に涙を落とす――』

 詠唱は幾重にも織り重なり、荘厳な調べで辺りを包んでいた。

从 ゚∀从

 ハインリッヒ=ハイヒルズ=クラシカは、腕を組み佇んでいる。
 呪文を詠唱する魔法士たちを眺め、精神を集中しているようにも見える。

从 ゚∀从「『グレンツェント・ブリッツ』!」

 腕を解き、指から閃光が迸る。魔法の矢は真っ直ぐに飛び、彼方より飛来していた砲弾と接触、爆発。

从 ゚∀从「さァ! 気にしないで続けてくれ。砲撃はオレが全部防ぐから」

 轟音にかき消され途絶えていた詠唱が、ハインの励ましで再開された。
 屋上に集った魔法士たちは、先ほどまで基地を守るために結界を強化していた要員である。
 彼らが業務を離れたことにより、結界は、数分に一度は敵の砲撃がすり抜ける程度に弱まっていた。

从 ゚∀从「首尾は上々、と行きたいもんだね」

 視界の片隅、上空には真紅の花火が。

138 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 22:59:04 ID:O1n28dTk0

l从・∀・ノ!リ「はー、やる気になれんのう」

 妹者は優雅に日傘を掲げ、上空をふわふわと漂っていた。

 眼下では無数の天使が蠢き、妹者に狙いを定め魔法の砲撃を浴びせかけている。
 それは滝が上へと昇っていくように激しいものであったが、妹者の矮躯に届く前に爆ぜ散る。
 滴り落ちる血液が盾となっているのだが、弾けた血液と砲撃の火花が、青空の下で大輪の花を咲かせていた。

l从・∀・ノ!リ「せめて中位天使でも持ってこんかい。暇で寝てしまいそうじゃ」

 妹者の役割は、自衛手段を持つ囮である。
 防御が薄くなっている基地に攻撃が集中しないよう、あえて敵数が多い地点を飛行しているのだ。

l从・∀・ノ!リ「ん……」

 そして彼女には、もう一つ作戦の中核を担う役を任されている。

l从・∀・ノ!リ「あの辺かの」

 背中に生えた翼が空を撫ぜる。やや遅れ、天使からの攻撃も後を追う。
 数分ほど高速で飛行し、めぼしい地点で再び浮遊を開始する。

l从・∀・ノ!リ「……ふん」

 目標を発見できず、妹者は唇を尖らせる。再び、翼が冷たい風を切る。

140 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:04:04 ID:O1n28dTk0

【基地・西棟屋上】

 ハインリッヒがいる中央棟の屋上からおよそ200メートル。
 西棟の屋上には、数人の軍人に囲まれた大きな竜の姿があった。

『よーし、よし、落ち着け!』

 吠え猛る竜の首を軽く叩きなだめようとする兵士は、ロマネスクの部下である竜使いの若者だった。
 黒い竜の悪魔『ジルニトラ』は興奮状態にあり、背中に乗る人間を振り落とそうとしている。

ミπ`-)「なんとかしろよ! 飛ぶどころじゃねえぞ」

『こいつは女を乗せるのが嫌いなんだ、もう少し時間がかかる』

ξ゚⊿゚)ξ「あ……すみません」

 竜使いの他に、キッドとツンが『ジルニトラ』に騎乗していた。二人とも必死に背中の鱗にしがみついている。
 ツンに用いられていた『ギフティヒ・ハルト』は解除され、普段のような厚着で体を覆っていた。

『いや、あんたのせいじゃない。……いい加減におとなしくしろ!』

 怒鳴り声に体を震わせ、竜はやや平静を取り戻したように見えた。
 四本の脚でしっかりと地を踏みしめ、翼を広げる。

『大佐……じゃない、少将殿。準備できました』

( ФωФ)「うむ」

141 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:05:45 ID:O1n28dTk0

 竜の脇に佇むロマネスクは、片手で耳を押さえて何かぼそぼそと呟いていた。

( ФωФ)「……見つけたか? ……よし……方角は?」

( ФωФ)「…………は? それは終わってから話そう……いや……」

( ФωФ)「そうではないが……いや…………今話すことであるか? それは……」

ミπ`-)「おいおっさん! まだかよ!」

( ФωФ)「いいから早く方角を言え……うむ…………」

 耳から手を離し、ロマネスクは声を張り上げる。

( ФωФ)「十一時方向へ飛べ! その後、妹者の位置から二時方向!」

『了解! 『ジルニトラ』、離陸します! 行け!』

 兵士の声に合わせ、竜は屋上を駆け始める。
 勢いよく端から飛び降りると同時に翼が空気を掴み、力強い羽ばたきで空を滑りだす。

( ФωФ)「我々も中央棟に向かうである」

142 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:08:35 ID:O1n28dTk0

ミπ`-)「こりゃー楽しいな」

 風を切る『ジルニトラ』の背中で、キッドは嬉しそうに笑った。
 みるみるうちに地面は遠くなり、ぐんぐんと飛行速度が上昇していく。

『飛行型の天使を避けるために、かなり高いところを飛ぶ必要がある。
 この高度で命中するとは思わないが、敵の魔法に気をつけろよ。身を乗り出すな』

 その言葉を聞き、ツンは厚い毛皮の外套越しに自らの肩を抱いた。

ミπ`-)「おい、下の方見てみろよ。絶景だぜ」

ξ゚⊿゚)ξ「む、無理……」

ミπ`-)「そうやってると、お前が『魔人』だとはとても思えねえな」

 手綱を握る竜使いの若者が、横目でツンを見る。

ミπ`-)「気楽に考えろよ! 遅かれ早かれ人は死ぬんだ、今を楽しめ」

ξ゚⊿゚)ξ「……あなたは、楽しいんですか?」

ミπ`ー)「楽しい。楽しまなけりゃ人生に失礼だ」

 キッドは快活な笑みを見せる。

ミπ`ー)「楽しいからこそ俺は、いつ死んでもいいと思ってんだからな」

143 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:10:32 ID:O1n28dTk0

 下方に『ヴァンパイア』が発する赤い光が見え、竜は二時に進行方向を変えた。

『間もなく目標地点に到達するはずだ』

ミπ`-)「おうよ。準備できてっか?」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

ミπ`-)「おい、頼むぜマジで。お前にかかってんだぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「……そんなこと言われても……思うように能力を使えたことなんてないし、
       急に力を解放しろって、言われても、どうすればいいのかわかりません」

ミπ`-)「やるしかねえんだよ。やらなきゃ、お前も俺たちも無駄に死ぬだけだ」

 『ジルニトラ』が咆哮した。
 いくつか地上からの魔法が竜に迫り、やむなく急旋回で避ける。

『ここだ! 停止飛行はできない、一度通過してからまた戻る』

 激しい攻撃の間隙を縫うように竜は飛ぶ。

『次に通るときに合図するからな。一回で決めてくれ、何度も接近したくない』

ミπ`-)「任せとけい」

144 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:12:54 ID:O1n28dTk0

ミπ`-)「いけるか?」

ξ゚⊿゚)ξ「……無理、です」

ミπ`-)「そうか」

 風が吹きすさぶ竜の背中で、キッドは剣を抜き放ちながら立ち上がった。

ミπ`-)「やりたくはなかったが、仕方ねえ。俺を恨むなよ」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

ミπ`-)「おい、ツン=D=パキッシュ、呪われた『魔人』よ」

ミπ`-)「お前は罪を償わなければならない」

 それは、断罪の言葉であった。

ミπ`-)「お前は人を殺した。殺人はあらゆる国において裁かれるべき罪だ」

 その表情や口調に起伏はなく、彼の心情を推し量る術もない。

ξ゚⊿゚)ξ「な……なにを」

ミπ`-)「記憶がなくても、お前は知ってるはずだ。お前が殺した少女のことを。ズーパルレでのことを」

145 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:16:40 ID:O1n28dTk0

ミπ`-)「思い出せ。お前はもはや俺と同じだ。殺すための決戦存在だ」

ξ ⊿゚)ξ

 ツンは首を振る。

 キッドの言葉を否定するかのように。
 しぃの死を否定するかのように。

 自らの存在を、否定するかのように。

 その目はもはや映るはずの景色を捉えていない。

ミπ`-)「安心しろよ、お前の罪を裁くのは俺じゃねえ。お前自身だ」

ξ ⊿ )ξ

『もうすぐだ! 数えるぞ、五、四、三……』

 キッドの足がツンの肩を踏む。

『二、一、――今だ!』

ミπ`ー)「さあ、死にたくなけりゃぶち殺せ!!」

 彼が脚に力を込めて蹴ると、ツンの軽い体はゆっくりと傾き、戦場の大空へと投げ出された。

146 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:19:14 ID:O1n28dTk0

( ∴)「!」

 ゼアフォーは気付く。
 膨大な、そして異様な魔力。冷涼な空気が辺りを包み始めたことに、気付く。

 周囲には下位天使の側近たちが控えており、彼らに変わった様子はない。

( ∴)「……!」

 上を見る。蒼天に白雲。かすかに、何かが見える。小さな影である。

 それは速度を増しながら落下している。
 ゼアフォーが肌で感じる気温は、もはや極寒の夜のようであった。

ξ ⊿ )ξ

 ツンは着地の手段をもたず、ただ重力に従って墜落した。
 あるいは、そのまま死んでしまっても構わないという思いがあったのかもしれない。

 魔人の能力が彼女を生かした。

 地面に激突する寸前、ツンの体は厚い氷に覆われ、無意識に自身を防護した。
 大きな衝撃が走る。落下地点にいた下位天使は一瞬で粉砕され、地面にはいびつな穴が空いた。

( ∴)「構築」

 ゼアフォーにそれほど近かったわけではないが、彼は本能的にその落下物の危険性を見抜いた。
 すぐさま古魔法を起動し、鉄でできた壁を二重三重に展開する。

147 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:23:22 ID:O1n28dTk0

ξ ⊿゚)ξ

 手を突き、立ち上がる。周囲の天使がツンに殺到する。
 彼女に触れたものは――否、触れる寸前に、天使たちは凍りつく。凍り、割れ、砕ける。

 ツンを中心として同心円上に、氷の世界が広がってゆく。
 その美しい輪に飲み込まれた者は悲鳴も上げず苦痛も持たず、ただ静かに絶命する。

 恐るべき速度で拡大する死の波を前に、ゼアフォーは壁を造り続けた。

 構築された壁は瞬く間に冷却され、死神の息吹はたやすくその内側に忍び込む。
 物理的な遮蔽は意味を成さない。魔力そのものが障壁となりうるが、それすらも越え霜が走る。

( ∴)「チッ」

 ゼアフォーは舌打ちし、後退をやめて精神を集中する。

( ∴)「『空間封鎖』」

 巨大な白い立方体がゼアフォーの体を覆うように出現した。
 上位天使が共通して扱える古魔法『空間封鎖』は、外界からのあらゆる影響を一時的に遮断する。


 そして、再び上空から何かが飛来する。

148 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:25:47 ID:O1n28dTk0

 それは異形であった。
 詳しく描写するならば、それは六対の腕と二対の脚を含む異様な輪郭の人間。

 立方体の真上に降ってきたそれは、手足を犠牲にして着地した。

ミπ`-)「かあッ! いぃいってえ、もう二度とやらんぞこんなこと。ハイン死ね!」

 ぐしゃぐしゃに潰れた手足を引きちぎりながらキッドは毒づく。
 純白であったはずの立方体上面は、彼の血液でまだらに赤く染まっていた。

 人間の姿に戻ったキッドは、凍てつく波動の中心を見据える。

ミπ`-)「……ちっと発破かけすぎたか?」

ξ ⊿゚)ξ

 ツンの外見は大きく変容していた。髪は逆立ち、額から二本の角が突き出している。
 肌はところどころ透き通り、氷のような質感に見える。そして、腰の辺りから長い尻尾が伸びていた。

 半人半魔。まさに『魔人』と言うべき、不安定で不完全な姿。

 辺りは静寂に包まれ、動くものは皆無であった。時間すら止まったように思える。
 ツンの魔力は半径二百メートルほどを氷の世界に変え、今、発散を終えた彼女は静かに佇むのみ。

149 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:28:43 ID:O1n28dTk0

ミπ`-)「よっ」

 たん、とキッドは跳躍した。

 一跳びでツンの側にまで迫り、ツンの頭に手を押しつける。

ミπ`-)「ウォルクシアに帰ったら、バカでかい勲章をもらおうぜ」

 キッドの掌には光り輝く石が。それが肌に触れると、ツンは崩れ落ちた。
 石はツンの魔力を吸収し、かろうじて保っていた意識を消散せしめたのだ。

 倒れた彼女は、元の可憐な少女に戻っていた。

 中核を失い、地を凍りつかせていた冷気はたちどころに消えてゆく。
 もの言わぬ氷像と化していた下位天使たちは、ようやくその縛めを解かれて地に倒れ伏す権利を得た。

ミπ`-)「さて」

 再び立方体の前に立つキッド。

ミπ`-)「……俺の前で動かないもの、っつーのは二種類ある」

 獰猛な笑み。

ミπ`ー)「死んでるやつか、今から死ぬやつだ」

150 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:31:06 ID:O1n28dTk0

 『空間封鎖』はあらゆる力から内部を保護するが、決して無敵の防護壁ではない。
 特に魔力を帯びた攻撃に対する耐久力は低く、『ケーニヒ』級の魔法であれば一撃で破壊できると言われている。
 しかし、物理的な衝撃のみを用いた場合、封鎖を突破することは非常に難しい。

( ∴)「!」

 立方体が瓦解し空間封鎖が解かれた瞬間、ゼアフォーは動揺した。
 死にかけていたはずの男が目前にいる。そして、こいつはどうやら物理的に空間封鎖を破壊した。

 間を詰めるのはキッドの方が早かった。踏み込みながらナイフを投擲する。
 一瞬の硬直がゼアフォーの滑らかな対応を奪った。かわしきれず、ナイフは肩に刺さる。

 『構築』で長剣をその手に携える。

 双方が躊躇なく相手に刃を向け、駆けた。
 金属音と湿った音。

ミπ`-)「うご……」

 長剣がキッドの腹部を貫いた。傷と口から血が溢れ出る。

ミπ`-)「こ……れで、いいん……だ」

ミπ`-)「剣でお前を……殺せる……とは、思ってねえよ」

( ∴)「……?」

 なおもキッドは前進する。ずぶずぶと刀身がめり込んでゆく。

ミπ`-)「……終わりだ」

 石を、投げつける。ツンとキッド、ハインリッヒ、そしてゼアフォー自身の魔力を蓄えた石。

 その石に刻まれているのは、ハインリッヒの転移魔法。


 ゼアフォーの姿はその場からかき消えた。


.

151 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:35:57 ID:O1n28dTk0

( ∴)「……!?」

 再び彼が姿を現したとき、既にそこは戦場ではなかった。

从 ゚∀从「来た! 狙えェ――――」

 ハインリッヒが指すのは、十メートルほどの上空に浮かぶ上位天使。
 環状に並んだ魔法士たちが、延々と練り続けた呪印と魔力を解放する。
 束ねられた魔法の激流。それは、灼熱の電撃。それは雷光の熱線。


 そう、ここは戦場ではない。


『『グレンツェント・ドラッヘン・デア・ハオプト』』



 ――天なるものの処刑場だ。



( ∴)


 竜が鉄仮面を飲み込んだ。


.

152 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:39:19 ID:O1n28dTk0

 十分な時間をかけて詠唱された『グレンツェント・ドラッヘン・デア・ハオプト』は、
 幾条にも束ねられた光の竜となって天空へ駆け昇っていった。

( ∴)

 天使はゆるゆると墜落した。
 なんとか両足で着地したが、すでに自身の体重を支えるだけの力はそこになかった。

( ФωФ)「注意しろ! 近づくな!」

 膝をつくゼアフォーを前に、しかしロマネスクは警戒を促した。

(´・ω・`)「直撃したね。さすがに上位天使もここまでか」

( ∴)「ぐっ……」

 彼の衣服は焼き切れ、露出した肌も焦げて炭のようになっている。
 手足、胴、頸部、体の全てにびっしりと彫られた紋様が、ちぎれ、黒地に白く浮き上がっていた。

 ただ鉄仮面の冷たい輝きだけが、変わらずそこに。

 ロマネスクが歩み寄る。

( ФωФ)「ゼアフォー=サンダルフォン。今すぐ天使軍を撤退させるならば、命は助けるである」

( ∴)「……あれらは我が死ねば自ずと帰還する」

 ゼアフォーの肉声は、意外にも穏やかであった。

153 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:42:33 ID:O1n28dTk0

( ∴)「我の首を斬れ、人の子よ。さすれば勝利を得られよう」

( ФωФ)「……最後に言い遺すことはあるか」

 大剣を振り上げる。


( ∴)「……我を許し給え、人の子らよ」




( ∴)「汝らに栄光あらんことを願う」




 冷たい刃が、天使の頸部を切断した。

154 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:45:23 ID:O1n28dTk0


*告示*


 去る日、連合国軍少将ロマネスク=ガムラン率いるケノル駐屯地軍、

 上位天使、七領域の一翼、『構築』のゼアフォー=サンダルフォンを撃破。

 人間の手で上位天使を討ち取ったことは、歴史上初の快挙である。


 その後、匿名で寄せられた告発を元に、執行部がケノル駐屯地内を調査したところ、

 研究員ショボン=フレットレスによる複数の違法行為および条約違反の証拠を得た。

 これは連合国軍法規に照らし合わせても重大な事件である。

 執行部は速やかにショボン=フレットレスを絞首刑に処すことを決定し、五日後に刑は執行された。


 処分

 シャキン=フレットレスは監督責任を果たさず、実弟であるショボン=フレットレスの犯罪行為に荷担した。

 よってシャキン=フレットレスは中将の任を解かれ、今後の処遇は軍法会議によって決定される。

 状況を鑑みて、中将不在の期間は可能な限り短くする必要があるために、

 前述の功績と合わせ、新たにロマネスク=ガムランを昇格させ中将とするものである。

155 ◆BR8k8yVhqg :2015/02/13(金) 23:46:58 ID:O1n28dTk0


 その日、確かに世界は揺れた。


 第十七話:【( ФωФ)は逃げられないようです】 後編 了



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( ・∀・)悪魔戦争のようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1405431357/106-



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