まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 ∬ _ゝ )にぶんのいちのようです( <_  )


 ※作者注 エログロ等々の閲覧注意
2名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:06:48 ID:pxh8m.qEO






あの子が死にました。





.


3名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:08:30 ID:pxh8m.qEO


あの子が私の手の届かぬ所へ逝ってしまいました。


私のこの手が、この世で一番大切な、何にも代えがたい唯一無二だったあの子の生を断ち切りました。


私は人殺しなのです。


私は罪人なのです。


なのに、それなのに。


どうして、私は今もこうして。


愚かしく、浅ましく、この薄汚い呼吸にしがみついているのでしょうか。


.

4名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:14:03 ID:pxh8m.qEO







にぶんのいちのようです






.

5名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:16:17 ID:pxh8m.qEO




『二人で、死のうか?』




それは、どちらともなく言い出した事だった。



.

6名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:20:40 ID:pxh8m.qEO
どちらともなくそうしようと頷いた。
お互い心の底のどこかで自覚なく持ち合わせていたその言葉は、音にしてしまったことで真実になった。
死にたくなる程のつらい事があったとか、人生に疲れたとか、世の中に飽いたとかありきたりな理由ではなく。
ましてや、明確な境界線で二つに断ち切られたこの関係に違和感を感じたわけでもなく。



“なんとなく一緒に死にたい”



そんな曖昧な気持ちだった。

7名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:22:43 ID:pxh8m.qEO
意味など曖昧だったくせに、言葉にすればあっさりと芽吹いて深く太く心に根を張った。
一度決心がつけばあとは夢中だった。
急な坂道を転がるように勢い付いた衝動のまま、その日の内に身近な人へ宛てた遺書を書いて、二人だけの秘密の場所に隠した。
次の日は、方法を一日中誰にも見つからないようひっそりと話し合った。
場所を決めたのは三日目、あの子が思い出がある所がいいと言ったからそこにした。
決行日はどうする?天気がいい日にしようか?
着ていく服はおそろいがいいかな?最後の食事は何にしよう?
この世に思い残すことがないように、やり残したことがないように、私たちはたくさんたくさん話し合った。
その合間に、一分、一秒を惜しむみながら今まで以上に遊びに出掛けた。
デジカメ片手に遊園地や水族館に映画、海や山、卒業した学校巡りに、果ては子供の頃の遊び場だった場所にも足を伸ばす。
一枚、また一枚とSDカードの容量が何枚も満杯になるほど、昔の思い出を拾い集めながら泣いて、新たな思い出をたくさん作りながら笑って、念入りに死ぬ準備していった。
あの子と過ごしてきた膨大な年月の中で、一番早く過ぎた一週間だった。



それは、あまりにも幸せで儚い時間だった。

8名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:24:15 ID:pxh8m.qEO




あんなに遠いと思っていたのに、気付けばあっという間に決行の日が翌日に迫っていた。




.

9名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:25:59 ID:pxh8m.qEO
最後の夜、灯りを完全に落とした部屋の中。同じベッドでいつものように二人ぴったりとくっついて眠る。
唯一違っていたのは、初めて素肌だけで互いの体温を直に感じていたこと。
今日が最後のチャンスだからと卑怯に縋りついて、子供みたいに駄々を捏ね説き伏せて。









弟者が唯一頑なに越えようとしなかったギリギリの一線を、強引に越えさせたのは私だった。

10名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:27:37 ID:pxh8m.qEO
意識して足早に風呂を終えていた私は、こっそりとベッドに潜んで弟者が風呂から上がってくるのを待っていた。
部屋の電気をすべて消して、カーテンもきっちり閉めて出来る限り暗闇を作る。
数センチ先ですらまったく何も見えない。
寝慣れたはずの場所なのに今日はすごく居心地が悪くて、何回ももぞもぞと身動ぎする。
動く度にふわっと私が使ったシャンプーの甘ったるい匂いが舞った。
いつも以上に香る濃厚なミルクの匂い。
ついさっき身体の隅々まで念入りに洗って、あれこれと準備してしまったことを嫌でも自覚してしまう。
あからさまにがっついてるとかどれだけなんだろうか。
馬鹿な自分に抱いた居たたまれなくて、またもぞり。

11名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:30:55 ID:pxh8m.qEO
早く来てほしい、やっぱりもう少し待ってほしい。


相反する気持ちが入り交じる。
もう緊張で胃の中身をぶちまけそうだった。
いくら手のひらに人を三回書いても治まらない。


∬;´_ゝ`)(……こういう時って素数を数えるんだっけ?)


一応覚えている限り数えてみたものの、まったく落ち着く気配はなかった。
仕方がないから今度は子供みたいに指を折って1から数字を数え始める。これなら尽きることがない。
とにかく何か取り止めのないものを考えていたかった。


∬´_ゝ`)(…108……109……弟者と最後に一緒に数えたのいつだっけ…)


幼かった頃、二桁以降の数がなかなか覚えられなかった弟者に合わせて何度も諳じた。
100の大台を超えると怪しくなって、150を無事に超えられた時は慌てて母者たちに報告しにいった。
偉い偉いと、誉められている弟者が自分のこと以上に誇らしかった。


―――おしえてくれありがとう!

―――だいすき!!!


他愛なくて、大切な思い出。

12名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:31:58 ID:pxh8m.qEO
屈託のない、キラキラとした笑顔を向けてくれるだけで、他に何もいらないと思えた。
弟者がいつも笑ってくれるなら、どんなことだって頑張れた。
弟者が常に隣にいてくれるなら、どんなことだって耐えられた。


父でも母でも、妹でもなく。


弟者だけが、私の存在理由だった。



きっと、この世界に生まれ落ちた瞬間から弟者は“弟”ではなかったんだと思う。

13名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:33:35 ID:pxh8m.qEO
何分かしてドア越しに階段を上ってくる音が聞こえてた。
慌てて毛布被って気配を殺した。さすがに行きなり鉢合わせは難易度が高過ぎる。
隠れたのと入れ違いに古びたドアノブががチャリと重く鳴った。
弟者の気配を感じて、心臓が壊死してしまいそうなほど早鐘を打ち始めた。


(´<_` )「……なんだ、もう寝ちゃったのか…」


残念そうな声とほぼ同時に部屋の電気をつける音がする。


∬ _ゝ )「…つけないで!」


咄嗟に大きな声で制止していた。
一呼吸置いて、どうした?と困惑気味に名前を呼ばれる。
背中にじんわりと汗が吹き出した。
ここまで来れば後戻りなんて出来ないのに、いざその状況になってしまったら上手な誘い文句が思い浮かばなくなった。
悪い例ばかりシミュレーションしていたはずなのに、口が何も言わない。声にならない。
実際に拒絶されたらどうしようとそればかりが思考を占領する。
布団を握った手に一層力が入って、消えられない代わりにくるりと小さく小さく身体を丸めた。
喉が乾いて言葉が貼りついて出てこない。早く何か言わないと余計変に思われるのに。


でも、何を言えばいい?


何を言えば正しいんだろうか?


頭の中の引き出しをひっくり返しして手探りしてみても、掴んだものは空っぽだった。


どこまでも、ぐるり堂々巡り。


正解なんて、やっぱり見つからなかった。

14名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:38:19 ID:pxh8m.qEO



ぎっ、ぎしっ。


(´<_` )「…ん、どうした?」

ふいに、私の右側のマットが沈む感触がした。
考え込むあまり弟者の気配に気づかなかった分、驚いて耳の毛が逆立った。
それを知ってか知らずか毛布越しに身体をやんわりと撫でられる。

(´<_` )「なんかよくわからんけど、電気ちゃんと消したから」


安心していいよと、特別返答を急くわけでもなく、何度も何度も丸みに沿って弟者の大きな手のひらが私を甘やかした。
でも、それだけじゃなく。


(´<_` )「なぁ……」

Σ∬; _ゝ )「っひゃぅぁ!」


不意討ちで指先でつんと脇腹を突っつかれた。
全国くすぐられ選手権があるとすれば、きっと優勝するぐらいやばい感度を誇る肌がぞわりと粟立つ。
せっかく少しは落ち着けるかと思っていたのに。軽く殺意が沸いた。

15名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:39:29 ID:pxh8m.qEO
(´<_` *)「想像通りの反応ktkr!相変わらず敏感過ぎるだろwww」

∬; _ゝ )「やっ、まっ、はひやぁうふぁ!?お、お、じゃ、みぇ、まひやぁあひっ!!」

(´<_` *)「えー?いいじゃんべつに減るもんじゃなしw」

∬; _ゝ )「ひきゃっ、おま、ちょ!やめぅぁあゅぅぅ、ぁぁぁぁあひゃぁぁ!!」


一回でやめてくれるのかと思いきや、何度も場所を変え、動きを変え本格的にくすぐられる。
私の身体がビクビクと震えて奇声を発するのが楽しいらしく、ニヤニヤ笑っているのが雰囲気で伝わってきた。
ひどい、やめて、馬鹿、鬼畜、悪魔、最低野郎、あんぽんたん。
そう言いたくても、止むことのない攻め苦と籠った二酸化炭素に阻まれてまともな単語を作れない。
腹筋が痛くなるくらいにさんざん弄ばれ、くすぐられ、どうやってこの魔の手から逃れたらいいかも考えられなくなる。


それはもう、何に悩んで戸惑っていたのか忘れてしまうほど。


∬ _ゝ )



ああ。


やっぱり。



∬* _ゝ )


弟者、なんだなぁ。



すとんと、そう腑に落ちてくる。
緊張の糸の千切れる音が、ぷつんぷつんと鼓膜の奥で鳴っていた。

17名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:40:51 ID:pxh8m.qEO
粗方弄り終わったのか、今度は普通の手つきで耳の辺りを弟者の手が滑る。
騒がしかった空気は鳴りを潜めて、穏やかさだけが残っていた。
代わりに頭をもたげてきたのは願望の塊。
さっきとは逆にもっと触って欲しくなる。
緩い動きにもどかしくなる。もっと乱暴で構わないのに。
毛布越しでは物足りない。直接撫でて欲しい。温かい体温を感じたい。
言わないと。したいこと、して欲しいこと、ちゃんと言わないとこの手はいつまでも優しいままだ。
もしも、だめなら諦める。
だめでも、ここまで慈しんでもらえたなら十分じゃないか。
唾を飲み込んで口を開こうとした、したのに。


(´<_` )「…顔、見たいんだけど……」


笑いを一切排除した真面目な声。
ぐっと、耳に置かれた手のひらに力が入った気がした。
痛いと訴える暇なくぎしっと再びベッドが鳴いて。


(´<_` )「なぁ、顔…見せてよ…」


いつの間にか至近距離に弟者の声があった。
鼓膜を介して脳内に叩き込まれた低音は攻撃力が凄まじく、毛布一枚の隔たりは確かにあったのに、防御なんてまったく出来なかった。
聴力に長けた獣の耳は、必要以上に言葉の重みを拾ってしまっていた。



不意討ちなんて、最低だ。



こんなのってない、馬鹿弟者。



なけなしだった理性が壊された瞬間、私は弟者を押し倒していた。

18名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 22:43:21 ID:pxh8m.qEO
暗闇から抜け出ても、そこは新しい暗闇の中だった。
起き上がった勢いのまま弟者をベッドに引き倒し、逃げられないように素早くお腹の辺りに体重をかけて跨ぐ。
両手首を掴んでベッドに縫い止めて、逃げ場を塞いだ。
闇に若干慣れていた目で弟者を見下ろす。
ひどい耳鳴りがする。内側の血の巡る音が五月蝿い。
頭が痺れてじんじんする。目の奥が痛い。
手が小刻みに震えてうっとおしい。歯を噛み締めてなんとか拘束の力を強めた。
身体中の熱がぐらぐらと沸騰して苦しい。ひたすら溢れていく想いの矛先を見据える。
困惑がさらに濃くなった目と視線が合わさる。



∬´_ゝ`)




∬ _ゝ )



あぁ、どうか、どうか。

19名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:01:49 ID:pxh8m.qEO
(´<_` ;)「痛いなぁ…いきなりどうしたんだよ」


予想外にあっさりとした苦情が弟者から零れた。
ただふざけてちょっかいをかけている思ったのかもしれない。
全く違うのに、なされるがままなのが歯痒かった。
違う、もっと、もっとちゃんと真剣だって気付いてよ。
きちんと考えて、ありきたりだと流さないで、異常事態だって、わかってよ。
組み敷いて触れている意味を、拘束を解き離せない意味を。
これが、これが、だから。




∬ _ゝ )「…………」





好きだよ。

20名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:02:43 ID:pxh8m.qEO




好きだから。






大好きだから。








愛してしまったから。

21名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:04:12 ID:pxh8m.qEO


















∬ _ゝ )「…………抱いて、ほしい」





死ぬほど馬鹿で、ごめんなさい。

22名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:08:34 ID:pxh8m.qEO



( <_  ;)「……っ…!」


ついに吐いてしまった言葉に弟者が絶句した。
三年前に同じ台詞を口にした時とまるで一緒。
みるみる血の気を引かせていくのがわかる。


( <_  ;)「…ぁ………だめ、だって。それだけは絶対しないって言ったろ?」


また同じだ。
ああ、やっぱり拒絶された。
でも、でも、でも、ね。


∬ _ゝ )「でも、これが最後だからっ!」


引き返せるわけがなかった。
結局ぐだぐだと御託を並べても諦められなかった。
好きだから、愛しているから。それが免罪符になるなんて思っていない。
血も、肉も、呼吸も、一つ一つ比べても同じ父と母から産み出されたもの。
到底許されるなんて思ってない。
それがありありとわかっていながらも、気持ちは生まれてしまっていた。
大きく育って腐ったなれの果てが今だ。
形振り構わず最後だからと、今日だけだからと、弱い盾を振りかざして我を通す。
意地汚く、みっともなくて、強欲。
人の道を踏み外してでも、弟者を道ずれにしてまでも、それでも最後にこの子と共に生きた証が欲しかった。


( <_  ;)「……」

∬ _ゝ )「……弟者、ごめんなさい」


謝る。でも止めるとは絶対に言えなかった。

23名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:15:05 ID:pxh8m.qEO



( <_  )「……絶対、後悔するよ」


ぽつり、弟者が言った。


∬ _ゝ )「絶対するわけないよ」


間髪入れずに否定する。
何度言われようと変わらない。
ありえない。理由がない。
するなら始めからこんなこと頼まない。
後悔なんて今日の日のためにどこかに捨ててきた。


(´<_` )「…ん…そっか」


急に小さくため息をつきながらそう言った。
きゅっと引き締められた口はそれ以上何も言ってくれない。
本格的に呆れられたのか。
不安に押し潰されそうになりながら様子を伺っていると、手のひらに違和感が走った。
弟者が自由の利かない両方の手首を前後に少し揺すっていた。
抵抗を引き剥がそうしているのとはまったく違うその動き。よくわからなくなって弟者の一挙手一投足に神経を研ぎ澄ます。


(´<_` )「………はぁ…」


今度は大きくため息が吐き出された。
覚悟を決めたように唇がゆっくり開かれた次の瞬間、驚くほどの強い力で押さえていた手を振りほどかれる。
びっくりして、何も出来ないでいる私に向かって、弟者はにっこり笑っていた。


(´<_` )「ほら、おいで」


目の前にあった顔が突然なくなって、グレーが視界に広がった。
それがベッドに敷いてあったシーツだとワンテンポ置いて脳に伝わる。
耳に当たる生暖かい感触は弟者の肌。
近くなった音は弟者の心音。
身体を締め付けているのは弟者の腕。


私は弟者に強く抱き締められていた。

24名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:18:02 ID:pxh8m.qEO
今まで感じたことがないほどバクバクと心臓が動いていた。
思考が木っ端微塵になっていて全く機能していない。
希望が叶った、そういう認識をしていいんだろうか。
弟者、ねえ、どういう解釈が正しいの?
私の居場所はここでいいの?
聞けない代わりに必死に弟者の服を掴む。


(´<_` )「……端っから勝てるはず、なかったんだよなぁ」


意味不明な台詞が耳にかかる。
何が、それもやっぱり聞けなかった。



引き剥がされるの同時、口を切る前に弟者の唇に塞がれる。
行為自体が最高の答えだった。







∬ _ゝ )(…ありがとう)







初めて知る他人の味は、いつも使っている歯みがき粉のミントの味がした。

25名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:20:09 ID:pxh8m.qEO
それから弟者は黙って好きなようにさせてくれた。
というより、言い出しっぺなんだからリードしてみろと私を放り出したというべきか。
ボーダーラインを越えた弟者はいつも以上に私で遊んでいる節があった。


(´<_` )「あ、ちょっとたんま」

∬;´_ゝ`)「え、な、なに?」

(´<_` )「明かりつけて」

∬;´_ゝ`)「……どうしてもつけなきゃだめ?」

(´<_` )「だめ。顔みたいから早くつけて」


有無を言わせぬ口調。
勝手につければいいと返せば、私につけて欲しいとごねられる。
行為を止めてしまうのを恐れて嫌と口に出来ない私は、結局その要求を飲むしかなかった。
改めて顔を見て引かれたらどうしよう。
正気に返られて気持ち悪いと突き飛ばされたら、きっとこの場で死にたくなる。
恐る恐る手を伸ばし、枕元のルームライトをつける。
白色の小さく柔らかい光が辺りを照らした。


(´<_` *)「大変よく出来ました」


想像していた悪夢はあっさり晴れた。
頭をわしゃわしゃと撫でられる。
子供扱されても文句が言えない。それどころか泣きそうになるなんて思わなかった。



そんなに嬉しそうな顔、可愛いなんて反則だ。

26名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:26:10 ID:pxh8m.qEO
初めての行為に戸惑いながらも、覚束ない手つきで弟者のスウェットを剥いで、露になった首筋に吸い付いた。
淡い光に照らされて赤い跡が浮かぶ。
風呂上がりでまだ少ししっとりしている温かい肌に鬱血の跡が小さくついている。自分のものなんだとうっとり優越感に浸った。
もっとつけたくなって、おずおずと鎖骨に下がっていった。
じわじわ、ぺたぺた、いくつもいくつも夢中で印をつけた。
臍の辺りに差し掛かった時、ぎしっと大きくベッドの軋む音がした。
いきなりぐるんと身体が大きく傾いて天地が反転した。
よく見慣れた天井と弟者のしてやったり顔が見えて、そこでようやく自分が反対に押し倒されていたことに気づいた。
まだ途中なのにと、思わず眉根を寄せる。


(´<_` )「慣れてないのバレバレなんですけど」


無理すんなってと、楽しそうに言ってキスしてくれた。
放り出したのはそっちなのに何て言いぐさなんだろうか。
もう少し頑張らせてくれればそれなりになったのに。
眉間の皺をさらに深くしているとそこにも啄むように軽く触れてくる。
ご機嫌とりが成功したと思われるのも癪で、皺が緩まないよう眉をきゅっと寄せていた。
それも見通されていたのか弟者の笑いが深くなった。
しばらく軽い触れ合いをしていたけれど、キスが本格的に深くなった頃、服の中に弟者の手がするっと侵入してきた。
私の時とはまったく別物の小慣れた動きで簡単に服は床に散らばった。
緊張している身体のラインを直に辿られ、快感を引き出すように性感帯をあちこちねっとり撫でられて身を捩る。
知らない、こんな弟者全然知らなかった。
この動きを作ったであろう他人の影に激しく嫉妬した。
この子のすべては私の物だ。
抱き締め返してくれるこの腕だけが安堵をくれる。
撫でて、キスして、もっと、どんなにされても足りない。
他の女にしたよりも何倍もの愛情をこの手で恵んでほしい。
足を噛んで、指を舐めて、身体中いたぶって、どんな風にあいつらを愛してやったのかこの身体に刻んでほしい。
許せない。私のなのに。
誰にも渡したくない。渡すものか。


憎悪。



嫌悪。



恐怖。



だから私は……。

27名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:30:22 ID:pxh8m.qEO
散々慣らされた誰も知らない場所を弟者に踏み荒らされる。
いくら慣らしたとはいえ、狭い器官は巨大な異物を拒んでぎちぎちと食い締める。
含み切れなかった反動でそこは傷だらけ。だらだらと血を流して滑っていた。
壮絶な痛みで無意識に弟者の背中に容赦なく爪を立てる。
受け入れ難いつらさに噤み切れなかった悲鳴が小さく漏れた。
ぴたりと侵入が止まって、心配そうに伺う視線が私を見た。


∬ _ゝ )「なんで…やめ、大丈夫、だいじょうぶだから…続けていいから…」


慌てて弟者から手を離し顔を覆って首を振る。
苦痛の為だと思われたくない。


(´<_` )「でも、こんなに…血が…」

∬ _ゝ )「へ、き、だから…なんともないから…」

(´<_` )「………わかった。ゆっくりするけど、つらかったらすぐに言って…」


私の身体が悪い。血なんか流して不愉快にさせて、せっかく抱いてもらっているのに。
弟者につらい思いをさせてもやめると言えないわがままな私が悪い。
否定しないで、拒まないで。嫌わないで。
優しいこの子が本気で止めたくならないように、必死になって悲鳴を噛み殺し飲み込む。
動き、止まり、あやされ、その度に大きな嘘と小さな喘ぎを吐き捨てる。
どう取り繕ったってバレている。それでもわかりやすく虚勢を張った。
少しでも罪悪感を覚えてほしくなくて必死だった。
そう頑固に行為を押し通そうともがく私に、弟者はずっと付き合ってくれていた。

28名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:31:55 ID:pxh8m.qEO
壁の薄い二人の部屋、誰にも聞かれないように押さえていても時折殺しきれなかったくぐもった声が絶え間なく響く。
次第に綻ぶ身体。深く深く押し付けられる楔。
いけないと思うほど確実に本能が理性を食い殺していった。


痛い、いたい。


熱い、あつい。


苦しい、くるしい。


甘い、あまい。


嬉しい、うれしい。


隅々まで幸福で満たされてる。
涙が溢れて、ずっと止まらなかった。
痛みも悦びも、すべてひっくるめて弟者がくれてる。


∬* _ゝ )「す、き…おとじゃ、だいすき…おとじゃ、おとじゃぁ……」


際限なく同じ言葉が口から漏れた。
むしろ口にする度に膨らんで弾けそうになる。
うっとりと見上げた先に汗をいっぱい滲ませた弟者がいて、あまりの熱気に当てられて目を伏せれば、歯列をなぞるように深くキスされた。
突き上げられると汗がぽたりぽたりと身体に落ちてくる。
肌が震えるぐらいの気持ちよさに目を開ければ、眉をきつく寄せた顔とこんばんは。
ひたすら、ただひたすら幸せ。
言葉にならないほど弟者が愛おしくて幸せだった。



仄明るい光の淵に弟者と私だけ、ふたりぼっち。



一生、大切にしたいふたりだけの秘密。






ずっとこんな世界に取り残されたいと思った。

29名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:35:08 ID:pxh8m.qEO





……ピッ、ピピピッ!





…ピピッ、ピピピッ!





ピピピッ、ピピピッ!









どこかで耳障りな音がする。

30名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:39:33 ID:pxh8m.qEO
ピピピッ、ピピピッ!


ピピピッ、ピピピッ!


∬-_ゝ-)づΩ


腕を伸ばして音をならしている物体を軽く叩いた。
ようやく五月蝿い音が止んで静けさが戻ってくる。


∬つ_ゝ-)「……んぅ」


けれど眠気は頭から飛ばされていた。
目をこすり、くっついていたまぶたをゆっくり開く。





∬´_ゝ`)(´<_` *)


いきなり弟者の顔が数センチのところにあった。


(´<_` *)「おはよ!」


しかも元気よく挨拶された。


∬´_ゝ`)

∬´_ゝ`)「え?」

(´<_` *)「おはよう寝坊助」

∬´_ゝ`)「あ、うん、おはよう」


一瞬なんで弟者がこんなに至近距離にいるのか理解出来まま、おはようを返す。
ゆっくり深呼吸して、瞬きを数回、ようやく気付いた。



そうだった。昨日、弟者と。

32名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:41:58 ID:pxh8m.qEO
弟者は頬杖をついて、それはそれは楽しそうに私の顔を覗き込んでいた。
いつから起きていたのか。
いつから見ていたのか。
いつから見られていたのか。
わからないけれど、ずっと弟者に隙だらけで無様な寝顔を晒していたのは確かだ。
自覚した途端ぶわりと羞恥が込み上げる。
何年もそうしてきたというのに、昨日の今日ではあまりにも恥ずかしくて、慌てて毛布を引き上げて中に隠れる。
けれどその逃亡も数秒と持たなかったのだけれど。
無理矢理覆いをめくり取られて顔を掴まれる。そのまま強引におでこにちゅっと音を立てて軽いキスされた。


∬*゚_ゝ゚)「なっ、なにす…!」

(´<_` *)「何っていちゃいちゃしてる。真っ赤になっちゃってまぁまぁ…」

∬#゚_ゝ゚)「いちゃ…!?開き直るんじゃありません!あと指痛い!」


茹だってしまっているほっぺたをにやつきながら人差し指でぐさぐさと弄ってくる。
こんなあからさまに、べたべたと睦んでこようとするなんて思ってもみなかった。
避けられるとか、よくて普通だと思っていた。
想像していた以上に高い垣根を飛び越えてきてくれたことが嬉しかった。
今まではどちらかというと私ばかりがちょっかいをかけていたのに。される側に回り慣れていないせいかつい身構えてしまう。
まったく、初心者に対してすこぶる心臓に悪い対応をしないでほしい。
ほらそれ。警戒して伏せた耳をふにふにして無理に立たせるのとか、イヤータフトをくるくる弄る指だって全部反則行為だ。


(´<_` )「だってしたいんだもん」

∬;´_ゝ`)「いい年してもんはやめなさい、もんは…」

(´<_` )「だが断る」

∬;´_ゝ`)「なんでそこまで使いたいのかさっぱりわかんないんだけど…」


裸のままだった肌がぴったりとくっつけられる。
すり寄られて、頭をぽんぽん。猫なで声で名前を呼ぶコンボで一発アウト。
この期に及んで甘えん坊なんて、ずるい。

33名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:44:21 ID:pxh8m.qEO
弟者のあんまりな変貌ぶりに戸惑いながらも、ここで意地を張るのはもったいないかなと、ちょっぴり勇気を出してイタズラしている指に自分のそれを絡めてみる。
繋いだ指がなんだか恋人同士みたいでくすぐったい。思わず頬がとろんと緩んだ。


(´<_` *)「なんか素直すぎて気持ち悪いな」

∬#´_ゝ`)「………」


前言撤回、通常営業にしておけばよかった。


∬#´_ゝ`)「あぁ、もう邪魔だから!」


腹立ち半分、恥ずかしさ半分でピシャリと手を叩き落とすと弟者の腕から強引に這い出た。
温まった空気が動きに合わせて足早に霧散していってしまう。
名残惜しかったけれど戻るに戻れれない。
強引に床に下ろした足を踏み出そうとした。けれどまったく腰に力が入らずペタンとその場に座り込んでしまった。


(´<_` ;)「あ、こら!無理するなって」

∬;´_ゝ`)「……いや、無理したつもりはないんだけど…何か下半身が自分じゃないっていうか」

(´<_` ;)「それを無理って言うんだ馬鹿!風邪引くから早くこれを着ろ!」

∬;´_ゝ`)「あ!…ぁ…え、うん」


近くに落ちてあった下着とパジャマを取って寄越してくれた。
よく考えれば素っ裸。しかも動いてわかったけれど、全身違和感だらけだった。

34名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:48:53 ID:pxh8m.qEO
しかも、あらぬ場所に疼痛まで感じてますます居たたまれない。
弟者の視線に晒されるのは恥ずかしい。
さっさと貧相な裸体を隠したい。でも思うように身体が動かない。
パンツを履くだけでだいぶもたついていた。
力の入らない手足にイライラが募る。


(´<_` )「ごめん…かなり無理させたもんな」


見かねた弟者の手が太ももから一向に動かなかったパンツを引き上げる。


(´<_` )「そっちも貸して」

∬;´_ゝ`)「あ、あとはいい!別に自分で着るからいいって!」

(´<_` )「パンツ履くだけで5分もかかってるのに?これ以上任せてたら日が暮れそうだなぁ…」

∬;´_ゝ`)「……ごめんなさい」

(´<_` ;)「あ、いや、違うんだって!俺が加減出来なかったのが悪かったから心配で…その…言い方が悪かった。ごめん…」


一旦こっちに寄越した服を再び手元に戻すと、甲斐甲斐しく全部着せてくれた。
赤ちゃんみたいにおとなしく、なされるがまま。
時々身体を心配する声がかかってもぼんやりと上の空。
ますます心配されても浮わつく思考は止まらない。



加減出来なかった、だって。



∬ _ゝ )


∬* _ゝ )



頭の中でさっきの弟者の言葉を何度も反芻して、自惚れていた。

35名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:52:12 ID:pxh8m.qEO
再び収まった弟者の腕の中。
他愛なく触れ合うのは楽しかったけれど、そろそろそうも言っていられないことは二人とも気付いていた。


∬´_ゝ`)「あのさ、カーテン開けてほしいんだけど、いい?」


外と内を隔てている薄水色の遮光カーテン。
薄暗い室内が実はずっと気になっていた。
自分で行ってはまたさっきのように迷惑ががかかる。申し訳ないなと思いつつお願いする。


(´<_` )「把握。ちょっと待ってて」


私の要求通り、弟者はすぐにカーテンを開けに行ってくれた。
シャッと軽快な音と共に、外に溜まっていた目映い日の光がのびのびと侵入して、部屋に明るさが一気に広がった。
そして鍵を外して窓を開け放つ。
爽やかに冷えた秋の空気が雪崩れ込んで、火照った身体にはちょうどよかった。
すぐそばの電線に雀が2羽、仲良く日向ぼっこしているのが弟者の肩越しに見える。


∬´_ゝ`)「……天気予報」


そして、予定通りの空が見えた。


∬´_ゝ`)「……ちゃんと当たったんだね」


それはそれは、死に際に相応しくない、綺麗で無垢な青い空。


ここで踏み留まれていたら。






何か、変わっていたんだろうか。

36名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:54:45 ID:pxh8m.qEO
汚れてしまったベッドの後始末をして、いつもと変わらないよう寝乱したように偽装した。
他にも少しでもいつもとおかしいところがないようチェックして、普段通りに部屋を散らかしておく。
唯一計画を書き記していたパソコンには何重にもトラップとロックをかけた。
正しく解除されない限り跡形もなく消える。計画が漏れることはない。
最後に、すぐ捜索されないよう居間に置いてある連絡用のホワイトボードに二人で出掛ける旨を書いた。
日常の出来上がり。これでこの家でやるべきことは終わりだ。
お気に入りだった色違いのパーカーを羽織って、色違いのスニーカーを履いた。
弟者のフードが裏返しになっていたので後ろに回って直してあげる。
振り向いた弟者と目があって、そっと頷いた。


(´<_` )「行こうか」

∬´_ゝ`)「うん」


玄関の敷居を跨ぐ。
振り返って、深く深く一礼。


∬ _ゝ )(父者、母者、最悪の親不孝をして本当にごめんなさい…)


でも、決めたことだ。



家族に気づかれないようそっと扉を閉めて、私たちは22年間住み慣れた家を後にした。

37名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:58:27 ID:pxh8m.qEO
今日はいつにも増して予定を気にて行動した。
家を出てまず向かったのが行き付けだった駅前のカフェ。
顔見知りの店員さんに一番奥の席案内してもらう。そこは二人で勝手に決めたの特等席だった。
頼むのは必ずケチャップがかかった大きめのオムライスとさっくさくのアップルパイ、それと甘いミルクティー。
時々あーんなんて幼稚なことをしたりして、ゆっくり時間をかけて味わった。


∬´_ゝ`)「だーかーらー、あの時弟者が走らなければちゃんと捕まえられたんだってば!」

(´<_` )「何、記憶操作してんの?あれは先にそっちが走ったからだろ。あそこでしくじらなけりゃ今頃億万長者だったのに…あーあ、もったいない」

∬´_ゝ`)「そっちこそ改変乙。大体昔から記憶力は私の方が上だったじゃない。ほら?あれおぼえてるでしょ?数字数えるの苦手で、つっかかるたんびに鼻垂らして泣きべそかいてたの」

(´<_` #)「ちょ、おい!そ、それと記憶力は関係ないだろ!」

∬*´_ゝ`)「はいはい、仕方がないからそういうことにしといてあ、げ、る」

(´<_` #)「………」


眉間にぎっちり皺を寄せて無言になったかと思うと、残り少なくなった私のオムライスを全部強奪していった。


∬#´_ゝ`)「ふーん、そういうことしちゃうわけね…」


仕返しに半分残っていた弟者のアップルパイをぺろり。


∬#´_ゝ`)

(´<_` #)


数秒睨み合って、やめた。


∬´_ゝ`)「ごめんね」

(´<_` )「俺もごめん」


不毛な喧嘩は両成敗と相場が決まってる。
謝るついでに私はアップルパイ、弟者はオムライス、それぞれまだ残っていた方の皿を交換して仲直り。
ふざけ合い、小さかった頃の思い出話をしながら笑い会う私たちは、きっと端から見ればこれから自殺しようとする人間にはまったく見えないんだろう。


本当なら、あと数時間もすれば私たちはこの世にいないはずだった。

38名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:01:03 ID:Rn6pNEN2O
乗り慣れた電車に揺られながら、いよいよ終焉の場所に向かった。
幼い頃からよく遊びに来ていた、大好きだった海辺の丘。
この時期は寒さのためか人気がほとんどないことを知っていた。
今日も例外ではなかった。
人っ子一人いないハイキングコースを、二人手を繋いで上っていく。
どこまでも二人きり。
私たちには好都合この上なかった。
息が切れて辛かった坂道を抜けて、かつて草まみれになりながら寝転んだ原っぱを抜けて、生い茂る雑木林を掻き分けたその先に待っていたのは、私たちが人生に終わりを告げる為の場所だった。
私たちが踏み込んだそこは、丘が地崩れを起こして陥没し、切り立った崖になっている危険な所。
水面からの高さは悠に10mを越えていた。
本来なら立ち入り禁止区域になっているそこは、中学生の時に迷い込んで以来、誰も近寄らない私たちの秘密基地になっていた。
楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、つらいこと、いろんな想いを抱えては二人でここに来て吐き出していた。
だから最後もこの場所に想いを残そうと弟者が決めた時、すぐに賛成したのだ。

39名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:04:44 ID:Rn6pNEN2O
崖の側に座りながら、青空と対になった無限に広がる水面を無言で眺めた。
ここからあと何歩か踏み出せば、渦を巻いた仄暗い水流に全てが容易に飲み込まれてしまうだろう。
底無しのように見えてもまったく怖くなかった。
むしろ穏やかな気分ですらあった。
弟者と一緒に死ねるのだから。
ちらりと右隣を見れば、黄緑色をした綺麗な毛並みがふわふわと秋の海風に揺れていた。
風を孕む感覚がくすぐったいと、耳を伏せて笑う弟者の頭を優しく撫でる。
途端、ひやりとした冷たさが手のひらの皮膚を刺してきた。
思わず反射的に抱き締めた。
服を着ていてもなんとなくわかる、筋肉の少しついた成長途中のしやかさの残る身体。
微かに優しい日向の匂いがした。
いつもそうだった。この子の周りはいつも日向で溢れていっぱいだった。
いつも眺めているだけで、幸せだった。
それと同時、堪らなく胸が苦しかった。
今だってこんなに近いのに苦しい。
少し腕の力を強めると、胸の中に収めた身体が身動いだ。


( <_  )「ずっと一緒に…いたい…」


私にしか聞こえない声量で弟者が呟いた。
切実に、まるで祈るような声で。


∬ _ゝ )「…これからだってずっと一緒にいられるよ」


大丈夫、何も心配ない。
大丈夫、何も変わらない。
大丈夫、私はここにいる。
安心してほしくて弟者に回した腕に自然と力が籠った。

40名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:05:30 ID:Rn6pNEN2O
この溢れ出して止まらない気持ちを、どれほど正しく弟者に伝えられていたんだろうか。
教えてほしかった。
直接聞く勇気もないのに無い物ねだりしてしまう。
心がすべて見えなくてもどかしくて堪らなかった。
ああ、このまま溶けて境界線がなくなってしまえばいいのに。
手も足も、心すらまぜこぜになって何もかも曖昧になってしまえばいい。
私は弟者で、弟者は私で。
理解されて、理解して、全部知りたい、全部わかりたい。


こんなに、こんなに、こんなにも。


だから、私は。




∬ _ゝ )「……っ…」




どんなに弟者を掻き抱いても焦燥は大きくなるばかり。


生きている限りこの渇きはなくなりはしないと、無意識に心のどこかで知っていた。







だから、だから、私は。

41名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:08:23 ID:Rn6pNEN2O



∬;_ゝ;)


気付けば私は声を上げて泣いていた。
私の涙がぼろぼろと頬を幾筋も伝って、弟者の服へ染みていく。


(´<_` ;)「ちょ、どうした?」


唐突に泣いてしまった私を、弟者は驚きながらも一生懸命宥めてくれた。


(´<_` ;)「ほら泣くなって、な?」


優しく頬を撫でられるたびにしゃくり上げて、困らせたくなくて必死に泣き止もうとするものの、意識すればするほど涙の粒は大きくなっていった。
耐えきれない衝動が、形となって弟者の手をしとどに濡らす。
もうすでに私自身、なんの感情でこうなってしまうのかわからなくなっていた。
死ぬのが悲しくて泣いていたんじゃない。
ようやく計画を実行出来る嬉し涙とも少し違う。
やっぱりよくわからないものだった。



けれど、あえて名前をつけたとしたら。





残薄な懺悔、だったのかもしれない。

42名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:13:11 ID:Rn6pNEN2O
一時間くらいそうしていただろうか。
きちんと泣き止んだのを確かめて、用意した真っ白いリボンで二人の手首を結んだ。
離れない、約束の証。
聞き手側を差し出したせいで上手く結べなくて四苦八苦してしまう。


(´<_` )「まったく、あんたって本当にぶきっちょだな」


あまりのおたおたぶりにリボンを奪われた。


∬;´_ゝ`)「うぅ…返す言葉が見当たらない…」

(´<_` )「いや、そこは素直に謝れよぶきっちょ」

∬´_ゝ`)「えー…念押され過ぎるとお姉ちゃん反抗したくなるなぁ」

(´<_` ;)「…っ……事実なんだからしょうがないだろ」

∬*´_ゝ`)「だってぇー、器用さは弟者の為にー、母者のお腹に置いてきたもん。だから弟者が悪い!」

(´<_` )「まったく、よくわからん屁理屈を…ほら、出来たよ……」


綺麗に蝶々結びになったそれを、弟者は何故だか悲しそうに見ていた。
さっきまで笑っていたのに、今度は弟者が泣きそうになっていた。

43名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:14:09 ID:Rn6pNEN2O
物理的な安心が欲しいと望んだのは弟者なのに。
希望通りのはずなのに。


∬´_ゝ`)「どうし」

(´<_` )「……………ん」


理由を訪ねようとした台詞は聞き取れなかった声に遮られた。



∬´_ゝ`)「え?何?ごめん、聞こえなかった」

(´<_` )「んー…ん、あー……何でもないよ」


改めて聞き直したものの、やんわりと拒絶された。
誤魔化す時に必ずする、ふにゃりとした笑顔つきで。
この笑顔をされてしまえば最後、もう何を言っても話してくれないと知っていた。
わざとすり抜けていく弟者の飄々とした態度にいつも困りながらも、そんな所も大好きだった。
弟者が形作るもの、弟者を形作るもの、この子を取り巻く全てが大好きだった。



大好き、だったのに。









どうして手放そうなんて思えたんだろうか。

44名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:18:23 ID:Rn6pNEN2O
一瞬、風がぴたりと凪いだ。
波の音だけが穏やかに響いた。
お互い顔を見合わせる。


言葉にしなくてもついに“その時”がきたんだと悟った。


∬´_ゝ`)「いこうか」

(´<_` )「…うん」


リボンの絡んだ手を繋ぐ。
目を瞑ると弟者が優しく触れるだけの口づけをくれた。



唇が。



弟者の最後の体温が。




怖いくらいにひどく温かかった。

45名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:21:21 ID:Rn6pNEN2O
深呼吸を一回。
同時に踏み出す、終わりの一歩。
平地に着地する事のなかった足。重力のままに傾く二人の身体。
空と海が天地をなくして入り交じる。
今までに味わった事のない不思議な浮遊感の数秒後、今までに受けた事のない強い衝撃が襲ってきた。
岩のように固い海水が全身包んで、一緒に飛び込んだ空気がぼこぼこと気泡に変わる。
波に煽られ揉まれ、必死で互いに引き合い抱き締める。
じわじわと重くなる意識、背中に死が這い寄っていた。
でも、側に弟者がいる。
ちっとも恐くない。
ちっとも冷たくない。


大好きな、大好きな、私の弟者。

一緒に天国に逝こうと、指切りした。


ずぅっと、ずぅっと、一緒。


離れるなんて、許されなかった。


( <_  )「……ぃ……き、……て、……、…に……ゃ」


泡沫の中で目の前の弟者がにっこりと笑った気がした。
口がパクパクと意味ありげに動いたけれど、水に遮られこぽこぽ泡になって私に届く前に消えていく。
教えてほしくて、空いている指で動く唇に触れた。
その刹那。


ぶつんっっっ!!!


その理由も意味も問えぬまま、突然真っ暗闇に意識が濁った。



未来永劫わからない言葉。



一生教えてもらえないあの言葉は。




きっと、あれは、私に遺そうとした恨み辛みに違いなかった。

46名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:22:46 ID:Rn6pNEN2O
















.

47名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:25:18 ID:Rn6pNEN2O






∬ _ゝ )





∬´_ゝ`)




.

48名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:27:08 ID:Rn6pNEN2O
気をやっていたのはほんのわずかな時間だったらしく、あんなに暗かった思考がふわりと緩く浮いた。
そんなに遠くない位置に光が見える。
ゆらりゆらり、激しかった波は鳴りを潜めていて、ゆったりとした波に任せて漂った。
意外と一思いに死ねないものなんだ、なんて呑気に考えていた。
息を水の壁に塞がれて徐々に息苦しくなってきて、このまま弟者と死ねるんだと嬉しくてまた意識を落とそうとする。
けれど、何かが足りない気がした。
弟者を抱き締めていた腕が緩んでいる。何故か水圧しか掴めない。慌てて目を開ける。
鈍く澱んだ視界の先に、右手からほどけていく白だけが見えた。
隣にいたはずの弟者がどこにもいない。
辺りを見渡せば少し遠くに影が、ゆらゆらと柔らかそうな何かが揺れていた。


色違いで揃えたパーカー。


綺麗な黄緑色の毛並み。


ゆら、ゆら。


ゆぅら、ゆぅら、ゆぅら。


力なく布切れみたいに漂っているのは。





( <_  )




見間違えるはずなんて絶対にない。


あれは紛れもなく弟者だった。

50名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:27:58 ID:Rn6pNEN2O



離れてしまった。


理解した途端に例えようもない絶望が広がった。
さっきまで水の冷たさなど微塵も感じなかったのに、急激に体温が下がっていった。
自分の身体が水の中なのに小刻みに震えているのがわかった。
死ぬと決めてから初めて怖い思った。
あの子がどこかへ離れてしまう。
鎖が、絆が、必死に繋いだはずのものがするりするりと腕から零れていってしまう。
だめだ、行かないで、いやだ。
ありったけ水を蹴って手を伸ばしたその瞬間、焦った反動かごぽりと水が私の喉を容赦なく犯した。
想いとは反対に急激に肺が萎んで、吐き出した気泡がぼこぼこ地上へ向かっていった。
徐々に弟者が深海の闇に引きずられ消えていく。
見えなくなっていく。
あの子の手が掴めない。
切れていくなんてだめ、切れちゃいけないのに。
掴めない、怖い、いやだ、やだ。
弟者が側にいない死なんて、いやだ。


そんなの。


怖い。

51名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:29:37 ID:Rn6pNEN2O




      怖い

           嫌だ


   怖い



       嫌だ




  こわい



           いやだ



  ひとりで



      ひとり




         ぼっちで  

.

52名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:31:22 ID:Rn6pNEN2O






     あ



              あ


         あ




    あ




            ご


  め


         ん




       な




              さ


   い


 


.

53名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:33:57 ID:Rn6pNEN2O




∬ _ゝ )





今度こそ本当に意識が沈もうとしたその間際、気付いてしまった。




先に絆を手離したのは。








大切な指切りを捨てていたのは。







私。


.

54名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:35:44 ID:Rn6pNEN2O




















.

55名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:36:32 ID:Rn6pNEN2O








――――………?





―――………ゃ?






――………じゃ?







―……あねじゃ?


.

57名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:38:11 ID:Rn6pNEN2O


誰かの声がする。



誰かが誰かの名前を呼んでいる。


∬-_ゝ-)「………」




―……姉者?




ざわり、身体が戦慄いた。




無性にその声に、答えないといけない気がした。

58名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:39:54 ID:Rn6pNEN2O



∬―_ゝ-)「………ん」


重い意識を力一杯押し上げる。


∬´_ゝ-)


重いまぶたを力一杯押し上げる。

∬;>_ゝ<)「…んっ!」


目映い光が視界を突き抜ける。
起きたばかりの私には頭がくらくらした。
ぱちぱちと何度かまばたきを繰り返して、目を光に慣れさせているとその光を遮るように誰かの姿が視界に入ってきた。





l从・-・ノ!リ人






心配そうに覗き込むこの顔は。

59名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:43:30 ID:Rn6pNEN2O



∬´_ゝ`)「……い、…じゃ?」


小さな妹が、そこに立っていた。


l从・-・ノ!リ人「…っ!?」


∬´_ゝ`)「……っ、…こ、は?」

l从・д;ノ!リ人「あ…あ…」


∬´_ゝ`)「…ん?…も…じゃ?」

l从;д;ノ!リ人「…ぅ…あ、ぁぁ…しゃべ、喋ったのじゃ!あね、姉者が起きて喋ったのじゃぁぁぅぁぁぁぁ!!!」

∬;´_ゝ`)そ


途端、頭が割れそうなほどの大きな悲鳴が耳をつんざいた。


三l从 ;д;ノ!リ人「は、は、ははじゃぁぁぁぁぁあああ!ち、ち、ち、ちちじゃぁぁぁぁああ!!あぅ…あ、あね、あねじゃがぁぁぁあぁぁあ!!!」

∬;´_ゝ`)「…え?あ?…い、も、え……ぁ……」


ばんっとドアが跳ね返るほど乱暴に開け放ち、妹者がどこかへ駆けて行ってしまった。
話をする暇もなく、まったく状況がよく飲み込めない。
もう、二度と会えないはずのない妹者がいた。
嗅ぎ慣れない薬臭い空気。
見慣れない綺麗な白い天井。
いくつも並んだ大掛かりな機械。
鼻や腕から何本もだらりと伸びた管。
開けっぱなしのドアの向こうから聞こえる微かな話し声と足音。



ここには、生きているものの匂いが充満していた。





ああ、そうか。

60名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:46:13 ID:Rn6pNEN2O
大体の状況を悟って心底落胆する。


∬´_ゝ`)「………たす…っち…たのか…」


声が驚くほど嗄れていた。
一体どれぐらいの間、こうしていたんだろう。
話を聞きたくて辺りを見回しても誰もいない。
他にベッドを置くスペースがないところを見ると、どうやら一人部屋にいるらしい。
弟者はどこにいるんだろう。
探しに行きたいけれど、機械に拘束されてまったく起き上がれない。
唯一まともに動かせる視線が捉えるのは、ひたすら見知らぬものばかり。
ざわり、ざわり、喉の奥から不安が迫り上がってくる。
気持ち悪い。嘔吐感をぐっと堪える。
弟者はどこだろう。
きっと違う病室にいるだけだ。
きっと大丈夫だ。
無事でいるに決まってる。
生きていているにちがいない。
心からそう願った。



それからすぐ妹は父と母と、見知らぬ白衣を着た男を連れてきた。


弟者はどこ?



問いかけた瞬間、三人の顔が揃って強張った。






それは、途方もない地獄の始まりだった。


∬ _ゝ )にぶんのいちのようです( <_  )
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1356440553/1-



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