まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 心は後悔に涙するようです

2名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/25(火) 23:54:34 ID:oYpwFOFw0


12月の空が雨を降らす。
肌寒く、湿った空気のお陰で肌がべたつく。
土砂降りの中、煤けた煉瓦の壁が印象的な喫茶店に、客は一人。

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υ;;| |. // ;;;  ミ爻彡wミ爻彡wミ爻彡w 、、    ̄ ┃  ━━━    ┃ ・ ・ ・
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3名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:55:16 ID:oYpwFOFw0
川 ゚ -゚)

窓際の席で、女は待っていた。
その時を、待っていた。
今か今かと、待っていた。

雨は窓ガラスを強く穿つ。淡々、タンタンタン。
早く、早くと心の声が急かす。悴んだ指を強く掌で包んだ。

カランコロン、ベルが鳴る。彼女はドアへと目を向けた。
冷たい眼差しをついと向けた。ピッチャーで割った氷のように冷たい視線だ。

(´<_` )「こんばんは」

顔色の悪い男がやってきた。
整った顔立ちは青ざめて、今にもバッタリと倒れてしまいそうだ。

川 ゚ -゚)「いらっしゃい」

女は沈んだ声で男を迎えた。男は何も言わず女の向かい側に座る。

5名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/25(火) 23:57:35 ID:oYpwFOFw0



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三三三三三三三三三三三 ..|\\蒜蒜\\.三(  ´_ >三三三三∫三三ノハリルヽ\
 \          \     :|  \\蒜蒜\\ 「   つ ∫   [_] \(-゚ レルリ \\
\. \          \  \   \\蒜蒜\\  \  [_]       と    ヽ  \\
 ̄|ヽ  \          \   \ ..| ̄|ニニニ| ̄|\ \            \ ソ\  | ̄|
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(´<_` )「誰もいませんね」

川 ゚ -゚)「経営している訳ではないからな。今日のためだけに開けたようなものだ」

女は温まったマグカップを顎で促す。
しかし男は固い表情でゆっくりと首を振り、やんわりとこれを拒否した。
女は肩を竦め、自分のマグを両手で包む。カカオの香りが鼻をくすぐった。

川 ゚ -゚)「さて。久しぶりだね、流石弟者くん」

(´<_` )「……半年ぶりです、素直さん」

川 ゚ -゚)「殆ど顔を合わせていなかったのにな。久しく会った気がしないよ」

声色は明るいが、女は微笑みどころか表情ひとつすらみせない。
男、弟者は顔全体を強ばらせた。何かしらに怯えているようにも見えた。

6名も無きAAのようです :2012/12/25(火) 23:58:20 ID:oYpwFOFw0
(´<_` )「……兄に似ているからでしょう。俺と兄者はよく似てましたから」

川 ゚ -゚)「本当に。声までそっくりだ。年は離れているのに、生き写しのようだよ」

(´<_` )「そうですか……」

弟者は視線を落とす。
マグの水面に映る弟者の顔は死人のようだ。
水面のなかで、弟者が唇を動かした。

(´<_` )「……話は聞いています。旦那さんが亡くなられたと」

川 ゚ -゚)「……ああ。過労で倒れて持病が悪化してそのままポックリなんて、間抜けな夫だよ」

フ、と素直は唇の隙間から吐息を漏らす。
沈んだ声が見せる感情は、悲嘆に暮れるよりも、遠い故郷や子供時代を懐かしむ時と似たものを感じ取れた。

(´<_` )「遅れましたが、お悔やみ申し上げます」

川 ゚ -゚)「いい、良い。君は夫と仲が良かったわけでなし、まさかお悔やみの言葉を伝えるためだけにきた訳じゃないだろう?」

8名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:00:17 ID:8qwHJ5yE0
沈黙が喫茶店内に広がる。
皮膚の下を静電気が這い回るような緊張感を弟者は感じた。
乾ききった唇を噛んで舐めると、血の味がした。

(´<_` )「では、単刀直入にお尋ねします」

膝の上で作った拳、掌に爪が食い込む。
弟者は片手をポケットに入れ、指先に当たった固い物を握り締めた。


(´<_` )「どうして旦那さんを殺したのか、お聞かせ願えますか」

(´<_` )「毒婦の素直さん」

川 ゚ -゚)

川 - ー-) フ

川 ゚ -゚)「少し長くなるが、いいかな?」

(´<_` )「構いません。もう、俺には、時間などあってないようなものですから」

川 ゚ -゚)「そうかい、それじゃ…………」

9名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:01:40 ID:8qwHJ5yE0
  心は後悔に涙する                                                                               
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                 し                     /:::::::/:::::::/::::::::::::/:,.r―-- 、l::::|::::|入丨               ようです
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   ι            ι        /:::::::::::::::/::::::::::/:::::::::::::::::::/:::::::::::/  \         ヽ     .        ヽ

10名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:03:12 ID:8qwHJ5yE0





                                       ――――――――毒婦、語りて曰く






.

11名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:05:47 ID:8qwHJ5yE0
まず馴れ初めから話そう。その方が君も分かり易いに違いない。
私が夫に殺意を抱く、その日まで。

川 ゚ -゚)

――――10年前。

毎年恒例の、ミステリー小説サークルの新入生歓迎会。
私は一人、隅の席でちびちびと日本酒を煽っていた。
この時、私は薬学部の3年生、22歳。

(-@∀@)「やっ、飲んでる?」

ふと面を上げると、私とあまり年が変わらなそうな男が隣に座ってきた。
逡巡し、私は冷めた態度で頭を下げた。

川 ゚ -゚)「えっと……こんばんは、朝日教授」

(-@∀@)「こんな美人さんが僕をご存知とは恐縮だ。顔を合わせたのは初めてだと思うんだが」

川 ゚ -゚)「薬学部の3年、素直です。新歓で一度会ってますよ」

(-@∀@)「これは失礼」

川 ゚ -゚)「いえ、お構いなく」

12名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:07:37 ID:8qwHJ5yE0
男、朝日教授は店員を呼び、ビールを注文した。
薄暗い店内にわんわんと響く男たちの酔いどれ声。
にも関わらず、朝日教授の声は騒音をすり抜けるように私の耳にクリアに届く。

(-@∀@)「美人さんが隅っこの席で飲むもんじゃないよ。ただでさえむさくるしいのに」

川 ゚ -゚)「騒がしいのは苦手ですから」

朝日先生は、いわゆる天才と呼ばれる、アメリカ帰りの外科医だった。
大学病院に勤める傍ら、講義で教鞭も振るう良い先生でもあった。

「あれっ、クー?」

背後から声をかけられ、振り返ると、間抜け面が突っ立っていた。
宇津田ドクオ、高校の時から付き合っている私の幼馴染であり、恋人だ。
私より3つ年上の大学院生、25歳。外科医志望だった。

('A`)「見かけないと思ったらここにいたのか」

川 ゚ -゚)「やあ。ドクオも来てたのか」

(-@∀@)「遅いぞ宇津田くん!君も早く座りたまえ!そして飲みたまえ!」

('A`)「飲む前からハイテンションすね、先生」

(-@∀@)+「美人がいるからね!」

13名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:08:32 ID:8qwHJ5yE0
(*-@∀@) ワイワイギャイギャイ ('A`*)

川 ゚ -゚)……

朝日教授はドクオの高校の先輩に当たる人だった。
私と通う学校が違うために接点は無かったけれど、
根暗で人見知りするドクオが慕う人だからということもあり、私は朝日教授に興味を持った。

(*-@∀@)「宇津田くんの恋人だと?中々君は変わっているね!彼の恋人ともなると苦労するだろう」

川 ゚ -゚)「そうです、キスすらまだなんですよ」

(*-@∀@)「あっはっは、彼らしい!でも、彼を選んで良かったろう?」

川* 。。)「……はい」

(*-@∀@)「あっははははは!見る目はあるな、君!」

川 ゚ -゚)「恐縮です」

14名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:09:55 ID:8qwHJ5yE0
(*-@∀@)「困ったことがあったら遠慮なく私を頼りなさい。力になってあげよう」

川 ‐ _ ‐)”「ありがとうございます」

(*-@∀@)「先輩として、応援している。ドクオくんを頼んだよ」

川 ゚ ー゚)「……言われずとも」


(*'A`)「え~二人共俺抜きにして何話してるんすか~?混ぜてくださいよ~」

川 ゚ -゚)「酒臭い、あっち行ってろ」

(*-@∀@)「そうだそうだ~、素直さんを独り占めするんだからあっち行ってろー」

(*'A`)「ちょっとー、俺はクーの彼女ですよー?」

ワハハハハハ……

15名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:12:05 ID:8qwHJ5yE0
接点が出来てからというもの、自然と彼に関わることが多くなった。
以前は意識しなかったけれども、教授を知ると自然と彼の話を耳にすることも多くなった。
私は薬学部であったけども、朝日教授と知り合ってからは外科にも興味を持つようになった。

(*゚ー゚)「私、今度教授のゼミを取ることにしたの。クーもどう?」

川 ゚ -゚)「私は薬学部なんだがな…」

(*゚ー゚)「来て損はないわよ。いらっしゃいよぉ」

川 ゚ -゚)「……考えておこう」

結局、教授のゼミは取らなかった。
その代わり、単位は取れないけども、時間を見計らっては朝日教授にマンツーマンで講義をしてもらうこともあった。

(-@∀@)「いらっしゃい、待ってたよ」

川 ゚ -゚)「今日もよろしくお願いします」

彼は博識で、雑学に詳しく、そして親身で真面目で、実直な性格であった。
彼が天才と呼ばれる所以は、この性格にあったのかもしれない。

16名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:12:54 ID:8qwHJ5yE0
(-@∀@)「――――と。今日はここまでだ」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます」

('A`)「クー」

一対一の講義が終わると、ドクオが迎えにくる。
時にはドクオと二人で、2対1の講義になることもあった。

川 ゚ -゚)「ドクオは、疑ったりしないのか?」

('A`)「何が?」

川 ゚ -゚)「私がもし、講義にかこつけて朝日教授と浮気してたら、とか。考えないのか?」

一度、雨の日の帰り道に、ドクオに尋ねたことがあった。
下らなくてしょうもない事だけども、単なる悪戯心でだ。
するとドクオは目をパチクリとさせて、バカみたいにケラケラ笑ったっけ。

17名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:13:40 ID:8qwHJ5yE0
                            。    i
                          /;;;; \ i
                        /;;;;;;;;;;   \ メ
                       γルリリリノ('∀`) メ
                       トリル ゚ -)  yヽ   
                       γ  )J  │
                       /   ヽ  │
                        ∪∪ ∪∪           

('∀`)「朝日先輩がそんな器用な真似できるわけないだろ。あの人すんげー真面目だしな」

川 ゚ -゚)「そういうものか」

('∀`)「それに、クーは俺のこと好きなんだろ?尚更ありえねーや」

川;*゚ -゚)「ばっ……そういうことを素面で言うんじゃない!」

('∀`)「ほらな?これくらいで照れるやつが浮気なんか出来るもんか」

川;*゚д゚)「うるさいっバカ、バカっ!」

大胆不敵な笑顔で、彼は言ってくれたっけか。
それほどまでに教授のことも、私のことも、信じてくれていた。
私はそれが照れくさくて、嬉しくて、彼がとても愛おしかった。

18名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:14:39 ID:8qwHJ5yE0
……それから数年が経ち、私は薬剤師の資格を取ると、大学病院の医者になっていた。
ドクオは国家資格を見事通り、立派な外科医として朝日教授の助手となっていた。
この頃から、私はある二人と出会うことになる。
弟者くん、君もよく知っている人だ。

川 ゚ -゚)ツカツカ

仕事に追われ、朝日教授やドクオと顔を合わせることが少なくなった。
代わりに、ある女性と関わることになった。

川 ゚ -゚)「失礼します」

「おはよう、素直さん。今日もせいが出るわね」

川 ゚ -゚)「いえ、これも仕事ですから……」

「ふふっ、よろしくね」

その人は病弱で、生まれたときから外の世界を知らない、私からすればとても哀れな人。
ある深刻な病に侵された、朝日教授の年の離れた妹だった。

19名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:15:29 ID:8qwHJ5yE0
ザー……
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三三三三三三三三三三三..|\\蒜蒜\\.三(  ´_ >三三三三∫三三ノハリルヽ \
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\. \          \  \   \\蒜蒜\\  \  [_]       と    ヽ   \\
 ̄|ヽ  \          \   \ ..| ̄|ニニニ| ̄|\ \          \ ソ \   | ̄|
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  ,_
(´<_`;)「………………………………」

川 ゚ -゚)「……少し、喉が疲れた。休ませてもらう」

クーはマグの中のコーヒーを煽る。
テーブルの下で、弟者は拳を握る力が自然と強まっていった。
膝で、掌の汗を乱暴に拭う。

川 ゚ -゚)「……15年ごろ前に、日本を中心にアジアやオセアニアの一部で流行した病があっただろう」

(´<_` )「マダラワタリ病ですよね。特定の地域で交互に大量の疾患者が発生する、原因不明の病気」

川 ゚ -゚)「そう。……彼女は、朝日教授の妹もまた、マダラワタリ病の発症者だった」

ぐ、とクーの両手がマグを握る力が強まった。
弟者は眉をひそめたまま、額に伝う汗を拭いもせず、一言も発しない。

20名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:16:25 ID:8qwHJ5yE0
マダラワタリ病は、細胞や神経を殺す原因不明の病だ。
人から人へ感染することはないが、長い年月をかけて体を蝕み、体の機能を静かに停止させる。
それはじわじわと効く毒のように、末端神経から、内蔵から、脈絡なく殺していく。
自覚症状もほぼ皆無で発見が難しく、末期症状が現れるまではほぼ健康体と変わらない。
元々病弱で持病を抱えていた朝日教授の妹は、病の発見が遅れ、気づいたときにはもう遅かった。

川 ゚ -゚)「かろうじて薬でもっているようなものだった……。色んな医師たちが、尽力を尽くしたよ」

特に、兄の朝日教授はね。クーは付け足し、マグの縁をなぞる。
雨音が強さを増してきた。壁に寄りかかった置時計が、静かに時を刻む。

川 ゚ -゚)「マダラワタリ病は薬で侵行を遅らせることが出来る。私はその薬を作る担当になった」

朝と夕、きっちり二回注射し、点滴を打つ。
大学で学んだ成果を、クーは遺憾なく発揮した。

川 ゚ -゚)「……彼女の製薬担当になって、3ヶ月経った頃だったかな」

川 ゚ -゚)「君の、お兄さんに会った。秋初めの、雨の降る日だったよ」

21名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:17:42 ID:8qwHJ5yE0

紅葉や銀杏が色付き始める頃のことだ。
私も初めの頃より、それなりに仕事も覚え、使える人間に成長したつもりだった。

「それじゃ、また今度な」

川 ゚ -゚)(ん…………?)

その日私は、看護師を連れず一人で朝日教授の妹のもとへ向かっていた。
途中、聞き覚えのある声を耳にし、私は足を早めた。


 
.                                    |    ┌──────────┐         
.                              ∧_∧   |   < 次は木曜に来るからよ  |  
.            γリレルリ             (  *´_ゝ/~)    └──────────┘ 
.            从リ;゚ o)            γ  ヘヽ/ /  | 
.            γ ヘy             / /    | /    |  
.            /    )           / /    |ノ |    |     。
.           /    /            \ |    |  |     | [面会謝絶]  
.           \   ゞ             |     |  |     |  
.           ∥   \            │    | |     |

22名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:18:30 ID:8qwHJ5yE0
面会謝絶の札が掛かっている扉から、一人の男がでてくる。
でも私は男に怒るよりも前に、驚きに任せて声をかけた。

川;゚ -゚)「お前……!」

(;´_ゝ`)「げっお医者さん!これは違くて、その……」

川 ゚ -゚)「流石か!流石兄者だろう!?」

ヾ(;´_ゝ`)ノ「わーわー誤解です誤解!トイレの場所間違えちゃっ……え?」


                                       .ヘ               へ
                                           / \             /  \ 
.      ┃   ┃┃                         /    \            /    \ 
.      ┃                 √______   /_      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      ヽ
.      ┃     ━━━━    /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ丿                    │
      ┗━┛       ━┓γ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ        ソ、.          |
                    |:::::::::::::::::::::し:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::リ ::::::::::::::::::    \        │
                  ⌒ |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::し:::::::::::::::::::::::J::::ル:::::::::::::::::     . \     . .|
                    |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|  :::| :::::::::              |
                    |::::::::::::::::::::::::し:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|  ノ             し   |
                    |:::::::::::::し:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| く                   |
                    |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|                     |

男、流石兄者は目の前で両手を振るのをやめ、まじまじと私を見つめた。
眉間に思い切り皺を寄せ、私の顔をこれでもかと凝視した直後、ぽんと手を叩いた。

23名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:19:32 ID:8qwHJ5yE0
(*´_ゝ`)「素直!もしかして美府中のマドンナ素直さんか!?」

川;゚ -゚)「そんな呼び方されたのか、私。やっぱり流石で合ってたんだな」

(*´_ゝ`)「うわーうわーすげー久しぶりじゃね!?何年ぶりだよ、同窓会以来か?」

兄者は私だと分かるや異様なハイテンションで絡み始める。
彼は中学時代の三年間の中で、学内の数少ない友人だった。

( ´_ゝ`)「へえ~、ここで働いてるのか。今まで会わなかったのが不思議だよ」

川 ゚ -゚)「まあな。で、流石は何をしてるんだ?」

(*´_ゝ`)「あ、俺?実は頑張って警察官に」

川 ゚ -゚)「そうじゃなくて、今さっき何をしていた?
    私の目が正常であれば、君はさっき面会謝絶の病室から出てきたように見えたんだが…」

(;´_ゝ`)そ「えっ!?いやー実は病室とトイレを間違えちゃってさHAHAHAHAHA」

問いただした途端に慌てふためく兄者。実に分かり易いやつだ。
私は呆れ返って、溜息をつくしかなかった。

24名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:20:53 ID:8qwHJ5yE0
川 ゚ -゚)「……見なかったことにしてやるよ」

(*´_ゝ`)「おっ!いつもながら素直さんは話の分かる人だぜ!」

川 ゚ -゚)「注意した所で君は辞めないだろうしな。くれぐれも患者の負担にかけるようなことはするなよ」

( ´_ゝ`)ヾ「面目ない」

会話もそこそこに、その日は兄者と別れた。
病室に入ると、カーテンの向こうから透き通るような声が私に声をかけた。

「あの、先生。大きな声が聞こえましたけど、外で何かトラブルでもあったのですか?」

川 ゚ -゚)「いえ、先ほど旧友に会いまして。それだけですよ」

「もしかして、兄者さんのことですか?」

声がぱあっと晴れやかになったのを私は聞き逃さなかった。
それだけで、二人がどんな間柄なのかは大体察しがついた。

川 ゚ -゚)「朝日さん、今の貴方は面会謝絶なんですから、外の人と会っちゃいけないんですよ?」

「ごめんなさい……でも、兄者さんの話って面白くて……」

25名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:21:36 ID:8qwHJ5yE0
どのようにして二人が出会ったか定かではない。
少なくとも、彼女にとって兄者の存在は、人生の重要なファクターのひとつに違いはなかった。
彼女が春のひだまりのような笑顔を見せることなど、本当に、滅多になかったのだから。


( ´_>`)「ダメかなー」

川 ゚ -゚)「駄目だ。もう1週間は様子を見る必要がある」

けれどもそれはそれ、これはこれ。仮にも私は医者だ。
医者たるもの、患者の容態を第一に考えなくてはならない。

( ´_>`)「約束したんだ、また話聞かせてやるって」

川 ゚ -゚)「マダラワタリ病の症状ははタダでさえ患者の精神に影響されやすいんだ。
    外界から下手にちょっかいをかけると病状が悪化しかねない」

( ´_>`)「……病気なら、仕方ないか」

患者を持ち出すと彼はすんなりと引き下がった。
彼も学生の頃に比べれば大人になったのだろうと、私は時の流れを実感した。
・・・だがそれも、彼がこっそり彼女と密会していると知るまでの間だが。

26名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:22:33 ID:8qwHJ5yE0
(;-@∀@)「治す手立てがある筈だ……絶対に……!」

(;'A`)「教授、オーストラリアで症状が軽減した一例が発見されたみたいです。こちらの治療法はどうでしょう?」

(;-@∀@)「駄目だ、今のあの子にそんな体力はない!」

朝日教授は、年を追うごとに焦っているようだった。
ろくに睡眠もとらず、目が血走り、書斎に引きこもることも多くなった。

('A`)「朝日教授の家族は、妹さんだけなのさ。だからあんなに必死なんだよ」

教授をよく知るドクオは言う。
朝日教授の父母は若い頃に離婚し、母は蒸発。
極力周りに頼らず、まだ幼い妹を、朝日教授は必死の思いで育ててきたのだという。
その過去が、今の教授を形成していたといえよう。

川 ゚ -゚)「そうか……」

教授は私と似ている。不躾だがそう思った。
私もまた、両親を早くに、事故で亡くしていた。
私の元に残ったのは、父母の経営していた、古い喫茶店だけ。
ドクオはそんな私を気にかけて、ずっと傍にいてくれた。

27名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:23:23 ID:8qwHJ5yE0
川 ゚ -゚)「必死だろうな……教授も」

同情心からではなく、親近感から飛び出した言葉だった。
唯一の家族すらも亡くしてしまったら、教授はどうなってしまうのだろう。
物思いに耽っていたからか、私はドクオの足が止まっていることに気づくのに数秒かかった。

('A`)「…………なあ、クー」

夜の路地、切れかかった街頭の下で、ドクオの顔が照らされる。

川 ゚ -゚)「ドクオ?」

('A`)「あのさ。今まで、言おう言おうと思って、言えなかったことがあるんだ」

急にいずまいを正して、ドクオは私の目を見た。

('A`)「俺たち、付き合ってもう10年も経つだろ?なのに未だ独り身だ。それに何時死ぬとも分からない状況にいる」

川;゚ -゚)

まさか。咄嗟に思い浮かんだのは、別れ話だった。
こうして隣を歩くのも何ヶ月ぶりだったか。
それこそ、10年経ってキスすらしていない。もしかして、いよいよ愛想を尽かされたのではないか。

28名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:24:19 ID:8qwHJ5yE0
川;゚ -゚)

('A`)「クー」

川;> -<) ギュッ

ドクオが一歩、近づいた。
私は得体の知れぬ恐怖でたまらず、目を固く瞑った。
胸を締め付けられる痛みで、呼吸が荒くなる。


('A`)「結婚しよう」

川;> -<)

川;゚ -゚)「……、へ」

瞼を開けば、あと少し動けば唇同士が触れ合うほどの至近距離に、ドクオの顔。
驚いて飛び退こうとしたけれど、腰に回された手がそれを許さない。
ぎゅっと抱き寄せられて、もう片方の手が四角い箱を握っていた。

('A`)「絶対、幸せにする。死ぬまでずっと、傍にいてくれ」

川 ゚ -゚)

川。゚ ー゚)ポロッ「………………ビックリさせるな、馬鹿」

29名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:25:12 ID:8qwHJ5yE0
世界一静かで、私の心に刻まれたプロポーズ。
奇しくもこの日は、私たちが付き合って10周年目のことだった(ドクオは実はこれを狙っていたのかもしれない)。

(*'A`)「て、照れくさいな、こういうの」

川*゚ ー゚)「……絶対、居なくならないでくれよ?」

(*'A`)「もちろんさ」





「……愛してる」


結婚式は半年後に行うことに決めた。
みなが二人を祝福し、幸せの絶頂だった。
そして、街頭の下でファーストキスを交わした夜から、3ヶ月後のある日の朝。




ドクオが、倒れた。

30名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:28:35 ID:8qwHJ5yE0

診断の結果、ただの過労だとのことだった。
私は仕事の間をぬって、ドクオのもとへ毎日のように訪れた。

(ヽ'A`)「ごめんな、クー…俺が倒れたばかりに」

川 ゚ -゚)「大丈夫だドクオ、きっと直ぐによくなる」

川 ゚ー゚)ニコッ「大切なイベントが控えてるんだ。お前には早く良くなってもらわないとな」

(ヽ'ー`)「……そうだな。式場とお前のドレスを選びに行かなきゃいけないもんな」

川 ゚ー゚)「仲人は朝日教授にやってもらうとするか」

(ヽ'∀`)「スピーチでガチガチになっちまうかもな、先輩なら」

川 ゚ー゚)「かもな。他の教授がたや同僚たちに招待状を送らなきゃいけないし…」

(ヽ'∀`)「それに……クーの親にも挨拶に行かなきゃ…」

川 ゚ー゚)「ああ。……………………必ず、行こう。約束だ」


.

31名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:29:25 ID:8qwHJ5yE0
二人で、なんでもない、幸せな未来を語り合った。
近いうちに実現するだろう将来の計画を、ああでもない、こうでもないと打ち立てて。
元気になってもらう為ならば、何だってやった。

川 ゚ -゚)「ドクオ、おめでとう」

(ヽ'A`)「どうした、藪から棒に」

川 ゚ -゚)「なんだつれないな、せっかく父親になれたっていうのに」

(ヽ;*゚∀`)そガバッ「ええっ!?それってつまり……!!」

川 ゚ー゚)「2ヶ月だとさ。まだ性別は分からないけど……」

嘘だった。けれど、活力を与えるためならば、コレくらいどうということはないだろう。
ドクオはベッドから飛び出さんくらい大喜びした。
罪悪感はあったけれど、ドクオが元気になるならばと感情をおし殺した。

(ヽ;∀`)ポロポロ「ありがとうな…ありがとな、クー……」

川 ゚ー゚)「泣くくらいなら、とっとと元気になれよ」

(ヽ;∀`)「うん、俺、頑張るよ……」

ドクオは私のお腹をさすって、泣きながら何度も何度も頷いた。

32名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:30:10 ID:8qwHJ5yE0
ガチャ( ´_>`)「見舞いにきましたよーっと」

川 ゚ー゚)「いらっしゃい。兄者、彼が私の婚約者だ」

(ヽ'A`)づ「初めまして。こんな姿で挨拶とは申し訳ない」

( ´_>`)づ「いえいえ。早く良くなってくださいね。素直さんのためにも」

教授の妹さんの容態が安定してからは、兄者くんも顔を見せる回数が増えてきた。
時に彼の話術に和まされ、ドクオも新たな友人を得て元気になったように思う。

川 ゚ -゚)セッセ、セッセ

(ヽ'A`)「何作ってるんだ?」

川 ゚ -゚)「お前のマフラーだよ。首を冷やしちゃいけないからな」

その間も私は頑張って働き続けた。
薬剤師として、未来の夫を支える妻として努力しようと誓った。

(-@∀@)「根を詰めるなよ、素直くん」

川 ゚ -゚)「分かってますよ、教授」

妹さんが回復するにつれて、朝日教授も昔のように精気溢れていた。
このまま順調に回復すればいいと、願っていた。

33名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:31:20 ID:8qwHJ5yE0
だがそんな私たちを嘲笑うように、ドクオの容態は治るどころか悪化するばかりだった。
最早只の過労では済まなくなった。

発作、手足の痙攣、高熱。
謎の症状が度々、重なるようになった。
会話の途中で、何度ナースコールを押したか分からない。

まさか。そんなことがある訳がない。
私は可能性から目を逸らした。「あっていいはずがない」。


(;-@∀@)「素直くん、ドクオくんのことだが…………」

川;゚ o゚)「教授。ドクオは只の過労ですよね?ただ疲れているだけ……でなければ風邪と炎症が併発して……」

私の仮説はことごとく、教授の首の横振りで却下された。

(;-@∀@)「……尿検査の結果が出たよ。……陽性だ。ドクオくんは、マダラワタリ病だよ」

川;゚ o゚)

川; д )クラッ

嘘だと言ってくれ、神様。
こんな三流の少女小説みたいな展開を、私は望んでなんかいないのに。

34名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:32:09 ID:8qwHJ5yE0
川   - )「……私は、打ちひしがれたよ。やっと幸せを掴んだのに、って。神様は残酷だと思った」

クーは責めた。
彼の病気に気づかなった自分を責めた。

川   - )「彼は病にかかったにも関わらず、私は健康のままだった。それが更に悔しかった」

せめて同じ病気だったならば、苦しみを分かち合えただろうに。
どうしてもっと早く気づいてやれなかったのか。
何故、もっと早く病状を改善する方法を探し出せなかったのか。

川  - )「けどね、絶望はここで終わりじゃなかった」

過度のストレスに耐え切れず、私は倒れ、流産した。
腹には、本当に新たな命が宿っていたのだ。
ドクオとの間の子は、僅か2ヶ月半の短い一生を腹の中で終えた。

川   - )「同時に私は、子を産む機会を永遠に失ったんだ」

女としての幸せを、一度に全て奪われた。
ウェディングドレスも着れない。子供も産めない。愛する人が隣にいない。

35名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:33:26 ID:8qwHJ5yE0
(;-@Д@)「緊急手術だッ!オペを行うぞ!!」

(;*゚□゚)「先生ッ先ほど交通事故が起きまして、怪我人が……!」

(;-@Д@)「他の先生方に任せておけ!私はこっちの手術で手いっぱいだ!」

(;*゚□゚)「それが、他の先生も皆別の手術で忙しくて……」

(;-@Д@)「~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」


ドクオは緊急手術の後、面会謝絶となった。


それから僅か、1ヵ月後。



(;-:::::∀:::::)「済まなかった……全力は、尽くしたんだ……っ!!」

川 ; Д ;)「ドクオ……!ドクオぉお…………………!!」

(:::A:::)



ドクオは、死んだ。

36名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:34:13 ID:8qwHJ5yE0

通夜はしめやかに行われた。ドクオの葬式に現れる親族はいなかった。
ドクオは母子家庭で父親が分からず、母親も随分前に亡くなったためだった。

――今思えば、彼は無意識に自身の内に巣喰う病に気づいていたのかもしれない。
だからこそ私に結婚を申し込んだのではないか。
独りで死にゆく寂しさを味わいたくなかったのではないか。
……そう考えると、ただやりきれない。

                                           ┌─┐
                                           │霊│
                                           │安│
                                           │室|
                        γ::::::::ヽ                 └─┘
                         - リルリリレ-, .
                     _ _, -/  γ::::::::ヽ l⌒丶
                   | |二二二二│::::::::::│二二| |
      _ _ ____|_|         ∪∪      |_|___ _ _


川ヽ゚ -゚)「…………………………」

(:::A:::)

霊安室の仄かな灯りに照らされた、ドクオの死に顔は、驚く程安らかなものだった。
苦しかっただろう。辛かっただろう。
最期の最後までいてやれなかった事実が、私の胸に重くのしかかった。

37名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:35:25 ID:8qwHJ5yE0
(-@д@)「……素直くん」

川ヽ゚ -゚)「彼は、安らかに死ねたのでしょうか?」

(-@д@)「気を確かに持ってくれ、素直くん」

川ヽ  - )「彼は辛くなかったでしょうか?度重なる発作に苦しまなかったでしょうか?」

(;-@Д@)「素直くんっ!もう休むんだ!明日出棺する、君も休め!!」

川ヽ o  )「彼に言いたいことがたくさんあるんです。謝りたいことがたくさんあるんです。」

「医者の癖に、病気に気づいてやれなかったんです。女の癖に、彼の子を生めなかったんです」

(;-@Д@)「もういいッ!!これ以上自分を責めるな、素直くん!」

川ヽ д )「どうして、どうして彼は居ないのですか教授。なぜドクオは死んでしまったんですか。何故私ではなかったのですか」

(;-@ヘ@)「…………………………」

川ヽ д )「どうして………………何故、もっと生きてくれなかったんだ……………………」


川ヽ;д;)「どうして…………………………………約束を破って逝ってしまったんだ……!」

38名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:36:15 ID:8qwHJ5yE0
ドクオの死を受け入れるには、とにかく時間を要した。

元々友人の少なかった私の傍には、ひと握りの知り合いしか残らなかった。
ドクオの死以降、兄者くんの顔も見なくなった。

(-@∀@)「早く元気になってくれ。ドクオくんへの一番の供養だ」

川ヽ゚ -゚)「…………」

その中でも、朝日教授はとりわけ私に気をかけてくださった。
私が仕事を辞め、家に引きこもっても、朝日教授は毎日のように家へ赴いてくれた。

(-@∀@)「このまま自堕落に過ごしたところで、ドクオくんが浮かばれないよ」

川ヽ゚ -゚)「ごめんなさい……」

やがて私の中でドクオの死の整理がついた頃。
私は朝日教授にプロポーズされた

(-@∀@)「ドクオくんの事は忘れなくてもいい。ただ、君を精一杯幸せにすると約束しよう」

川 ゚ -゚)「でも…………私は子供も産めないんですよ?」

(-@∀@)「そんなこと、君を愛さない理由にはならない。ドクオくんもきっと、君の幸せを願っている」

彼の熱意に負け、私は朝日教授と結婚した。
天国のドクオを心配させたくなくて、私は朝日教授の説得の通り、彼の分まで幸せになろうと決めた。

39名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:37:21 ID:8qwHJ5yE0
けれど。
僅かな時間で、その誓いはいとも容易く砕かれた。

結婚披露宴をすませた夜。
その時、二次会ですっかり酔い潰れた教授を、私は介抱していた。

(*-@∀@)「うぃ~~」

川 ゚ -゚)「酔いすぎだぞ、モララー」

(*-@∀@)「ぼきゅはよってましぇーん!しぃちゃーん、おみずー」

川 ゚ -゚)「やれやれ、困った旦那だ」

家に連れ帰り、玄関で駄々をこねる教授のため、私は台所へ向かった。
水を汲んでやり、教授のもとへ戻る。
すると教授は、玄関に掛けられた姿鏡を誰かと勘違いしたのか、ぶつぶつと話しかけていた。

(*-@∀@)「あーあー、俺もとんだ貧乏くじ引いちまったもんだなあ」

川 ゚ -゚)ピクッ

教授の言葉に、私の足は止まった。
ほんの少し目を逸らせば、私がいる距離。朝日教授は私など気にも留めず、酔いどれ口調で語る。

40名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:39:03 ID:8qwHJ5yE0
「思えば、俺の人生ってお荷物ばかりだよなあ」

川 ゚ -゚)

「親はクズだしよー、妹は病気ばっかで金は掛かるわ、外に出たいとかワガママ言うわで」

川 ゚ -゚)「もら、らー?」

「同僚は俺を目の敵にしやがるし、…………ブツブツ後輩は揃ってグズで体力も根性もねーし。特にドクオぉ!お前だお前ぇ!」

川;゚ -゚)「おいモララー、何を」

「ブスで根暗、要領も悪い癖にちゃっかりオンナはつくってやがる。腹立つったら……ボソボソ」

川 ;゚д゚)「…………」

「気に食わなかったぜ…ブツブツ……よりによって交通事故の日に発作起こしやがって……お陰で途中で治療他の奴に任せるハメになったし…」

川 ; д )

「ま、流石の兄貴のほうも、脳みそブチまけて手遅れだったがな。どいつもこいつも結局死んでやがんの。全部無駄だったじゃねーか」

川 ; д )「あ…………あああ……………………」

「残ったのは金のかかる妹と子宮のねえドクオとよく似た女。…………ま、あの父親の子にしちゃ妥当な人生だわな」

41名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:39:44 ID:8qwHJ5yE0
それ以上はもう、聞いていられなかった。
酒の勢いと一緒に吐き出された彼の本音は、聞くに耐えなかった。

川   - )

ドクオは見殺しにされた。手術を後回しにされて、結果手遅れになった。
私の友人も、殺されたも同然だった。あんな適当な嘘をつく男の手できっと、殺されたのだ。
途端に、目の前の男が憎くなった。
この男は、私から大切なモノを奪って、あまつさえ私たちを侮辱したのだ。


―――許せなかった。

(-@∀@)「職場復帰するって?」

川 ゚ -゚)「ああ。働いていた方が気も紛れる」

私は結婚後、また薬剤師として働き始めた。
目の前の汚らわしい男と一緒にいることが耐えられなかったこともある。
けれどもそれ以上に、私には遂行せねばならない計画があった。

42名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:40:51 ID:8qwHJ5yE0
川 ゚ -゚)「…………」

仮にも私は薬剤師だ。薬に関する知識ならば朝日教授よりも上だと自負している。
私は職員たちの目を盗んでは薬を拝借し、実験を重ねた。

マダラワタリ病と類似した症状を発動させる毒薬を、作り出すため。

(-@∀@)「へえ、このお茶美味しいね」

川 ゚ -゚)「最近、茶にはまってな。色んな煎れ方を試してるんだ」

無味無臭の毒を少量ずつ、茶に混ぜて飲ませた。
何時バレるかもしれないと手に汗握る私をよそに、教授は何の疑いもせず、有り難そうに飲み干した。

(*゚ー゚)「大丈夫ですか?教授」

(;-@∀@)「最近疲れているみたいでね。年かな」

効果は着実に現れていた。日を追うごとに、彼は衰弱していく。
私は大胆にも、食事にも毒を混ぜた。やはり彼は疑問すら抱かなかった。
職場で倒れ、寝たきりになるまで時間はかからなかった。

44名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:41:43 ID:8qwHJ5yE0
教授が倒れると、私は一切の連絡を断ち、孤立させた。
不審がられぬよう、医師業はもう続けられないと辞めさせた。

(;-@∀@)「うう…………」

川 ゚ -゚)「苦しい?大丈夫?」

(;-@∀@)「み…………………みず、を……………」

川   - )「苦しいんだね?でも駄目だ、あなたにはもっと苦しんでもらわないと」

川   ヮ )「だって、ドクオたちの苦しみは、こんなものじゃ無かったんだからな」

寝たきりの朝日の耳元で、私は毎日のように呪詛を囁き続けた。
もう私は狂ってしまっていたのかもしれない。
結婚披露宴の夜から、物言わぬ遺体を見守っていた夜から、ドクオが倒れた日から。
行き場を失った負の感情を、こんな形で発散させていたのかもしれない。

足が動かなくなった。
周囲に怪しまれぬよう、トイレにも行けない朝日を、私は世話してやった。
代わりに、食事や飲み物には相変わらず毒を盛り続けた。
時間さえあれば、口すらまとも動かせない朝日の耳元で、怨嗟の言葉を奏で続けた。

46名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:42:26 ID:8qwHJ5yE0

数ヵ月後。


彼は、苦しんで、苦しんで、苦しみぬいて、死んだ。


高熱に魘されながら。手足が震え、感覚が消えていく恐怖に怯えながら。

五臓六腑が煮え滾るような、耐え難い激痛に堪えながら。

神経という神経を壊され、静かに死に歩まなければならぬ絶望と向き合いながら。


                   「殺されたんだ」

ザー……
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
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三三三三三三三三三三三 ..|\\蒜蒜\\.三( ;´_ > 三三三三三三 ノハリルヽ \
 \          \     :|  \\蒜蒜\\ 「   つ     [_] \(::::: レルリ  \\
\. \          \  \   \\蒜蒜\\  \  [_]       と    ヽ   \\
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  | \  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||\ ゙\|  |..   ..|  |  \ || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| \  \ |  |
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47名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:43:29 ID:8qwHJ5yE0

(´<_`; )「…………………………殺された」

川 ::::-:::)「ああ。私が殺してやった」
   
コーヒーはとっくに冷め切っていた。
降りしきる雨の中、ガラスを叩く雨音と時計の音の狭間で、クーの声が交錯する。


川:::::: -゚)「私の夫――




                  (    -@)






                                           ――朝日モララーを」

48名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:44:25 ID:8qwHJ5yE0
川 ゚ ー゚)「これで、満足かな?」

テーブルに肘をついて、クーは小首をかしげた。
雨の音が一瞬遠ざかって聞こえるほど、弟者はクーの話に聞き入っていた。

ザー……
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
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三三三三三三三三三三三 ..|\\蒜蒜\\.三( ;´_ >三三三三三三 ノハリルヽ \
 \          \     :|  \\蒜蒜\\ 「   つ〆て  [_] \(-゚ レルリ \\
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 ̄|ヽ  \          \   \ ..| ̄|ニニニ| ̄|\ \          \ ソ\  | ̄|
  | \  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||\ ゙\|  |..   ..|  |  \  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||\ \  |  |
   ̄ ̄| ||              ||\| ̄ ̄  |    |   ̄ ̄|  ||              ||\| ̄ ̄ ̄ |
 ̄ ̄ ̄                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                 ̄ ̄ ̄

弟者はポケット中の固いソレを取り出し、テーブルの上に置く。
なんてことない、それは只の「髪留め」だった。

川 ゚ -゚)「……これは?」

(´<_` )「………………俺が殺した女の、唯一の遺品です」

49名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 00:45:08 ID:8qwHJ5yE0
        すでうよ                                             るす涙に悔後は心
                    \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
                      \         \
                    \ ̄ ヽ         ヽ              
.                     \/           \   
.                     / 、ソ           |
                     ヽ `:::::::::::::::::::::::::::     │
                     / :::::::::::::::::::::::::::::::     │
.                    ./ :::::::::::::::::::::::::::し      │
                   ノ                 .| 
                   \                .| 
                     ヽ             _.| 
                      ヽ─ー丶    //  ┤
                       \     //     ヽ_ 
                         \_//    / \  ̄ ̄\
                             く    /  /      ヽ
                          (:::::/ ヽ/\ /         \
                          / ノ /    \            \
                         /  /                     \

50名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:46:00 ID:8qwHJ5yE0







                                        ───────殺人鬼の追想




.

51名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:46:53 ID:8qwHJ5yE0




俺は、ひとりの女を殺しました。







.

52名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:47:38 ID:8qwHJ5yE0
最初の転機は、ある年の春のこと。
その日の兄者はやけに足取り軽く、つまづいて転びやしないかとハラハラするほどだった。

(´<_` )「やけに上機嫌だな、兄者。刑事になったことがそんなに嬉しいのか?」

(*´_ゝ`)「あたぼうよ!なんたって15年以上追っかけ続けた夢だからな!」

兄者は俺より7つも離れた社会人だ。
この年は兄者の巡査時代の功績が認められ、刑事課に異動となったのだ。

( ´_ゝ`)「地道に努力した甲斐があったってもんだ」

(´<_` )「ふうん。そんなに警察っていいもんかね」

( ´_ゝ`)「ま、しがらみとか派閥とか色々あるけど、やり甲斐はあるよ」

兄者はそういって得意げに笑った。
飽きっぽい兄がそういうのならば、本当にやり甲斐はあるのだろう。

( ´_ゝ`)「ま、俺が捕まえるのはコソ泥とかの専門だけどな」

(´<_` )「ほう、刑事にも色々あるのか」

(*´_ゝ`)「そうそう、事件を追うだけが仕事じゃないんだ。麻薬専門だったり、少年事件専門だったりな」

54名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:48:58 ID:8qwHJ5yE0
好きなものを語る兄者は、とても輝いている。
我が兄ながら、分かり易い人だとは思った。
その輝きの一因に、とある女性が関わってくると知るのは、後々。

(´<_` )「おはようございます、朝日先生」

(-@∀@)「おやおや流石くん、今日も朝早いね」

俺は兄者と違い、医学部に進んだ。将来は外科医を目指すつもりだった。
理由はこれまた単純なもので、むかしある病にかかり手術を受け、医者に憧れを抱いたからだ。
ほかならぬ、目の前にいる朝日先生に憧れて。

(-@∀@)「君ほど熱心な子がうちの学部に来たのはいつ以来だったかな。近頃の若いのはやる気ってもんが見当たらない」

朝日先生は天才外科医として名を馳せていた。
そしてもう一つ、教授の後ろにはある噂がついて回っていた。

「朝日先生には、マダラワタリにかかった妹がいる」

当時、革新的な抗ウイルス剤が発明されるまで、マダラワタリ病は不治の病だった。
通常、マダラワタリは空気感染も遺伝することもないが、デマを信じる人は多く、
それ故に病気を隠す人も多かった。

マダラワタリの実態を見たことがなかった俺は、その事もあり、好奇心から朝日教授に近づいた節もあった。

55名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:50:38 ID:8qwHJ5yE0
( ´_ゝ`)「マダラワタリとはどんな病気なんだ、弟者よ」

(´<_` )「なんだ、藪から棒に」

ある日の食事時、兄者は唐突にそう切り出してきた。
マダラワタリ病は名ばかりが有名で、その実どのような症状が出るかまでは詳しく発表されていなかった。
元々病気に縁のない、学にも興味ない兄者からそのような質問が飛び出してきたので、
その日のことは大変印象に残っている。

(´<_` )「ん……マダラワタリ病は、正式名称・神経不全及び内蔵機能低下症という病気でな」

(;´_ゝ`)そ「長っ!弟者はよくそんなの覚えられるな」

(´<_` )「…………長いから掻い摘むと、神経がことごとくやられていって、手足が動かなくなったり、
     臓器がまともに機能しなくなって、結果抵抗力なども下がって色んな病気を併発するんだ」

(;´_ゝ`)「ひょええ~……でも、なんでマダラワタリなんて名前なんだ?」

(´<_` )「噂によると、マダラワタリを発症した患者の体に、黒いまだら模様が出るらしい。
     で、この病気は期間ごとに発生する地域が変わるんだ。まるで渡り鳥のようにな」

( ´_ゝ`)「なるほど、だからマダラワタリ病か。恐ろしい病気だな弟者よ。対処法はないのか?」

(´<_` )「……はっきり言っちまおうと、無い。こればかりは運だ。治療法も、症状を遅延させるくらいのもんさ」

( ´_ゝ`)「…………………………そうか」

56名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:51:40 ID:8qwHJ5yE0
( ´_ゝ`)「時に弟者よ、お前の大学の周辺で、近頃引ったくりが出没している。気をつけとけ」

(´<_` )「ああ。兄者も、無理をするなよ」

( ´_ゝ`)「こればっかりは分かってるさ。刑事は体が資本だからな」

えっへん、と兄者は胸を張る。
一瞬だけ見せた陰りのある表情を消し飛ばすかのように、普段通り明るく振舞っていた。
俺もその時は、たまには真面目な話題を口にすることもあるんだな、と軽い気持ちで終わらせた。


それから数週間、兄者は家を空けることが多くなった。
なんでも、大学病院周辺に出る泥棒を捕まえるためらしかった。

(*゚ー゚)「ちょっと弟者くん、これ朝日教授に届けてくれる?多分、隔離病棟にいると思うから」

(´<_` )「分かりました。行ってきます」

ある日、先輩にちょっとしたお使いを頼まれた時のこと。
俺は隔離病棟に向かうすがら、あの噂を思い出した。

「マダラワタリにかかった、朝日教授の妹」。
もしかしたら、お目にかかれるチャンスかも分からない。
俺は快く引き受け、人づてに朝日教授を探して回った。

57名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:52:32 ID:8qwHJ5yE0
とはいっても、病院は広い。
隔離病棟だけでも、ひと一人探すのは一苦労だ。

(´<_`; )「ふぅ……ふぅ……ん?」

「絶対次も来てよ、流石さん」

「ああ、次は木曜日にくるからよ」

(´<_`; )(流石?いやまさか……)

あてもなくウロウロと探し回っていた折、俺の耳が聞き覚えのある声を拾った。
気取られぬようこっそりと死角の位置となる場所から様子を覗きみた。

ヾ(;´_ゝ`)ノ「わーわー誤解です誤解!トイレの場所間違えちゃっ……え?」

(´<_`; )(やっぱり兄者!?ナニヤッテンダカ)

そこには、仕事中の筈の兄が医師に向かって懸命に弁明をしている最中だった。
医師の発言が飛び出すまで、同級とすら気づかない辺りは、いっそ流石というべきか。
俺は兄者が先ほど出てきた「面会謝絶」の札がかかった扉へ視線をやった。
あの中には一体、「何者」がいるのだろうか。
仕事を抜け出してまで、兄が会いに行く人物。そして、以前の兄者らしくない会話を思いだした。

(´<_` )「…………探りを入れる価値はありそうだ」

俺は「そいつ」に興味を持った。

58名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:53:22 ID:8qwHJ5yE0

注釈しておくと、俺と兄者はルックスがとてもよく似ていた。
身長もほぼ同じ、顔に至っては双子と間違われるほどに瓜二つ。
強いて挙げるならば、ホクロだ。兄者の顎の下には、小さいホクロがある。
それ以外はまず、バレることはない。

(´<_` )「兄者、その背広とコートもだいぶ汚れたな。俺がクリーニングに出しておこう」

( ´_ゝ`)「おっ、悪いな。任せた」

兄者のトレードマークともいえるコートとスーツを入手するのは容易かった。
警察手帳までは流石に借りる気になれず、代わりに俺と兄者の免許証をすり替えた。
兄者は警察だから、まず身分証を提示することはないだろう。

( ´_>`)「すみません、北塔の×××号室の方と面会したいのですが」

そして俺は何食わぬ顔で、流石兄者として病院に赴いた。
隔離病棟で面会謝絶だ、門前払いは覚悟していた。

川 ゚ -゚)「また君か、流石くん」

しつこく会わせてくれと粘っていると、女医師が俺に声を掛けた。
素直と呼ばれる薬剤師だ。兄者の中学時代の同級と聞いている。
元より会えるとは思っていない。俺は兄者になりすまし、それとなく情報を聞き出そうと試みた。

59名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:54:15 ID:8qwHJ5yE0
( ´_>`)「どうしても面会したいんだ」

川 ゚ -゚)「駄目だ。朝日さんの容態は今良いとは言えない。」

ビンゴ。やはりあの病室には朝日教授の妹がいる。
もっと情報が欲しい。確定的な情報が。俺はなおも食い下がった。

( ´_>`)「ダメかなー」

川 ゚ -゚)「駄目だ。もう1週間は様子を見る必要がある」

( ´_>`)「約束したんだ、また話聞かせてやるって」

適当なことを言ってでっち上げる。
素直医師は俺が兄者でないことに気づいていない。

川 ゚ -゚)「マダラワタリ病の症状ははタダでさえ患者の精神に影響されやすいんだ。
    外界から下手にちょっかいをかけると病状が悪化しかねない」

噂は本当だった。俺はこっそりほくそ笑んだ。
変に悟られぬようすぐ唇を真一文字に戻し、俺はここらで引き下がることにした。
情報はこれだけで充分。大収穫だ。

( ´_>`)「……病気なら、仕方ないか」

その日俺は、兄者が戻るより早くコートとスーツをクリーニングに出し、何食わぬ顔で自宅に戻った。
この出来事を、最後まで兄者が知ることはなかった。

60名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:55:14 ID:8qwHJ5yE0
休みに入ると、俺はある計画を実行することに決めた。
会いに行くのだ。マダラワタリにかかった、朝日教授の妹に。
そして確かめるのだ。マダラワタリの実態を。

(´<_` )「失礼しますよっと」

マダラワタリ病の患者がいる為、休みが始まってからは隔離病棟の一部は立ち入り禁止となった。
不用意に一般人が立ち入らぬよう、見張りまでつく始末。
だがリサーチ済みの俺に不足なし。

(´<_` )「まるでスパイダーマンだな」

朝日教授の妹の病室に行くためには、窓を伝っていくのが一番早い。
怖くないといえば嘘になるが、まあ落ちても心配はいらない。
丁度真下には、屋根のない小さな小屋に、不要になったシーツ等を積み重ねて置く場所がある。
高さもそこまでないので、よしんば落下したところで打ち身や足を捻る程度だろう。

(´<_` )(ま、兄者のメモ見ただけなんだけどね)

ご丁寧に、兄は警察手帳にこの侵入経路や侵入しやすい時間帯などを記していた。
そうまでして会いたいものだろうか。相手は患者、しかも恐ろしい病を抱えているのに。

(´<_` )「俺も人のこと言えないけどな」

メモはかなり前のものだった。ということは、以前からこの手を使っていたのだろう。
あの兄のやんちゃぶりは、子供の頃から変わらない。

61名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:56:07 ID:8qwHJ5yE0

(´<_` )「えっと、この窓か」

窓は締め切られ、分厚いカーテンのせいで中の様子を伺うことは出来ない。
ということは、中から開けてもらうしかないのだ。
二人にはある合図があるらしく、俺は兄者のメモ通りに従うことにした。

(´<_` )(えっと、まず窓ガラスを三回、小刻みに二回叩く)

<コン、コン、コン、ココンッ>

カーテン越しに誰かがこちらを見たようだ。

<コンッコンッコンッ>

そして内側から一度、叩き返される。
中に人が入れば1回、人が来る気配がしたら2回、人がいなければ3回叩かれ、開く。
この3回はつまり、誰もおらず、中にいる人物が開けてくれるということだ。

「いらっしゃい。来てくれたんだね」

( ´_>`)「………………約束したからね」

内開きの窓が、弟者を出迎えるように開く。
鈴がリンと鳴るような透き通った声と共に、白い肌の女性が、カーテンの隙間から顔を突き出した。

瓜゚∀゚)「今日も面白い話聞かせてね」

( ´_>`)「勿論だとも」

朝日づー。
朝日モララーと10も年の離れた、マダラワタリ病の末期患者だ。

62名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:57:15 ID:8qwHJ5yE0

瓜゚∀゚)「でも、びっくりしちゃった。もっと遅れてくると思ってたんだもん」

( ´_>`)「どうしても君に会いたくてね、こっそり来ちゃった」

瓜^∀^)「あはは、弟さんが聞いたらきっと怒っちゃいますよ」

( ´_>`)(その弟が俺なんだけどね)

瓜゚∀゚)「ねえ、またお話して下さいよ。ほら、この前話してた姉者さんと喧嘩したときの話」

ずい、とづーは身を乗り出して弟者を見た。
しまった、と弟者は一瞬焦った。二人がどんな会話をしていたかまでは考えていなかったのだ。

(;´_>`)「えーと……どこまで話したっけな。最近忘れっぽくってな」

瓜゚∀゚)「やだー!忘れっぽいのはいつものことじゃない!すぐ適当なこと言うし」

(;´_>`)(助かった……普段兄者が抜けた性格で本当よかった……)

兄者の抜けた性格に助けられつつ、その日は即興で辻褄を合わせてその場をしのいだ。
その日から、兄者になりすます日々が始まったのだった。

63名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:57:56 ID:8qwHJ5yE0
それからというもの、度々「づーさん」の元へ訪れては、彼女の話し相手になった。
兄者の話したことの続きを語り、時に兄者と共通の思い出を面白おかしく話した。
まずは兄者に完璧になりきる必要があった。

瓜゚∀゚)「あはは、あなたって本当面白い人ね!」

「づーさん」は俺の話を聞くといちいち手をたたいて喜ぶ。
なんてことない、他の人が聞いたらアクビしそうな話でもづーさんは喜んで聴く。
こんなに楽しんで耳を傾けてくれるならば、話好きの兄者が足繁く通うのも分かる気がする。

ところで、病室に出ることのないづーさんと、
病院にとんと縁のない兄者がどうやって出会ったのかという疑問が俺の中で湧き上がってきた。
それとなく聞き出そうか考えあぐねていると、意外なことに本人から話を聞くことができた。

( ´_ゝ`)「そういえばさ、何で俺が刑事になれたか言ってなかったっけ」

(´<_` )「空き巣の常習犯捕まえたからだろ?」

( ´_ゝ`)「そうとも。実はさ、その時、弟者の大学の病院で、空き巣らしき人がいるって教えてくれた人がいてな」

(´<_` )「ふうん。その人のお陰という訳か」

( ´_ゝ`)「そうそう。だから恩返しをしたいんだけども、……その方法が思いつかなくてな」

64名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 00:58:39 ID:8qwHJ5yE0

(´<_` )「適当に何か買ってやればいいんじゃないのか?」

( ´_ゝ`)「いや、その人は物欲が無くてな。何か欲しいものがあるかと聞いても、首を横に振るばかりなんだ」

(´<_` )「へえ……」

その人というのが、づーさんだったという訳だ。
成程、兄者の行動が読めてきた。兄者のことだ、まずはづーさんと仲良くなろうと考えたのだろう。
親密度を上げれば、づーさんが本当に欲しいものを言ってくれるに違いないと、大方そう考えているのだろう。
短絡的だが、兄者ならおそらくそうする。




瓜゚∀゚)「雨が、とても綺麗ですね」

( ´_>`)「そうか?気が滅入るし、濡れるとべたつくし、いい事ないと思うぞ」

瓜゚∀゚)「そうでしょうか、そういうものでしょうか」

づーさんの感性は人と少々ずれている節がある。
そう思ったのは、六月の雨を窓越しに眺め、ふとそんなことを言い出した時だ。

70名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:28:23 ID:8qwHJ5yE0
俺は梅雨なんて嫌いだ。兄者も雨より晴れが良いと言うだろう。
都会人にとって、雨が降ることにメリットはない。俺に至っては頭痛を起こす一因だ。

瓜゚∀゚)「雨って、神様の優しさなんだと思うんです。
     きっと、地上の生き物たちに、『元気になーあれ』っておまじないをかけてくれるんですよ」

おまじない、ね。俺は鼻で一笑した。
彼女が信じる神様とやらがいるなら、彼女がマダラワタリを患うことなんてなかっただろうに。

( ´_>`)「じゃあ、なんで人は病気にかかるんだ?神様がおまじないがありゃ、健康でいられるはずだろう?」

瓜゚∀゚)「あら、それは違いますよ」

づーさんは窓を開け、花瓶を持ち上げて雨に晒した。
活けられた菖蒲の花びらが、雨粒に当たって踊る。

瓜゚∀゚)「病気は神様が指のひとふりで治すものじゃありません。
     私たちの体の中にいる白血球やマイクロファージたちが、バイキンやウイルスをやっつけるものです。
     神様はね、上から見守ってくれるんです。『頑張れ、頑張れ』って応援してくれてるんですよ」

( ´_>`)「随分無責任な神様だな」

瓜゚∀゚)「病人の私からすれば、「頑張れ」の言葉ひとつが、有難いことですよ」

づーさんは、そう言って笑った。

71名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:30:07 ID:8qwHJ5yE0


瓜゚∀゚)「…………………それに。それに、私は、雨が羨ましいのです」

( ´_>`)「雨が?どうして」

づーさんは一度言葉を切り、窓の外を見た。
雨で霞む景色の先、づーさんの瞳は灰色の空を見ていた。

瓜゚∀゚)「雨は、雲の塊の一部。雲は行き先を決められないけど、どこにでもいけます。
     足がなくても、手がなくても、臓器がなくても、どこまでも、どこにでも飛んでいける」

それが、たまらなく羨ましい。
彼女はか細い声で、そう呟いた。

「…………雨になれたなら…………………どこにでもいけるのに………………………」

俺は視線を落として、彼女の足を見た。
布団で隠された両足に、俺は強固で重すぎる鎖を見た。

72名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:31:03 ID:8qwHJ5yE0

また、ある日のこと。
いつも通りのルートを使い、づーさんの部屋に向かうと、既に窓が開け放たれていた。

(´<_` )(珍しいな。いつもなら閉まってるのに…)

「ええー、それ本当ですかー?」

「おうともよ、それでな……」

(´<_`; )(げ、兄者!?)

既に先客として、兄者が来訪していたのだ。
俺は悟られぬよう、こっそりと覗き込んでみた。やはり兄者とづーさんが、楽しげに話している。
もやもやとした何かが、俺の心臓からぬるりと這い出てきた。

( ´_ゝ`)「何度も違うっつってんのに、弟者と勘違いされて告白されてなー」

瓜*゚∀゚)「へえー、そんなにそっくりなんですか」

( ´_ゝ`)「偶に家族すら間違えるからな、現にそっくりだし」

どうやら俺に関する話題のようだった。
話の内容は、づーさんの為に話そうと思っていた過去の話と全く同じだった。

73名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:35:31 ID:8qwHJ5yE0
瓜*゚∀゚)「お話してみたいなー、兄者さんの弟さん」

( ´_ゝ`)「あいつ、この病院の大学にいるから、会おうと思えば会えるんじゃねーか?」

瓜゚∀゚)「私、この部屋から出られませんから……」

(;´_ゝ`)「あ…そっか。ごめん」

兄者は直ぐさま頭を下げる。
チラ、とづーさんの下半身を見やって、尋ねた。

( ´_ゝ`)「お尻、痛くないのかい?」

瓜゚∀゚)「え?お尻?」

( ´_ゝ`)「ずっと座ってばかりだと、尻がコるっていわねえ?」

なんとまあ見当はずれなことを聞く兄なのか。デリカシーをどこかに置き忘れてしまったのではないか。
普通の女性なら怒るだろう。それが当然の反応だ。
づーさんは少しだけ考える動作をすると、ニコッと笑った。

瓜^∀^)「尻がコるってことは無いかな。病気と一緒で、もう慣れちゃったんだもん」

( ´_ゝ`)「そっか。でも、無理はするな」

瓜^∀^)

74名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:37:58 ID:8qwHJ5yE0

( ´_ゝ`)「病気と一緒で、か……」

兄者はづーさんが放った一言を、口の中で何度も繰り返した。
病を「慣れ」と表現することに、何か思うことがあったのかもしれない。

瓜゚∀゚)「兄者さんと弟者さんって人が並んでるところ、見てみたいかも」

( ´_ゝ`)「なら、今度内緒で連れてきてやろうか?」

瓜*^∀^)「本当?やったー!」

ニコニコと笑うづーさん。本当は、そんなこと出来っこないと思っているに違いない。
けれどもその笑顔はきっと、望みを叶えてやろうという、兄者の優しさに応えてのものだろう。

(´<_` )「…………………」

俺は顔を出すに出せず、その場から退散した。
兄者にだけは、適わない気がした。

あんな眩しい彼女の笑顔を、俺は咲かせることができないのだから。

75名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:39:30 ID:8qwHJ5yE0

(´<_` )「なあ兄者よ、最近本当に機嫌がいいな」

(*´_ゝ`)「お?そうか?そう見えるか?実はこないだ、ようやく引ったくり捕まえてよー」

俺が兄者に成りすます生活が始まって一ヶ月。未だに兄者にはバレていない。
本人はつい先日、大学病院付近を彷徨いていたという例の犯人を捕まえて意気揚々だ。
勿論、それだけでないことは俺も知っている。
その功績を「づーさん」に褒められたことが、よっぽど嬉しいのだ。

(*´_ゝ`)「そーいう弟者こそ、最近ご機嫌じゃないか。彼女でもできたか?」

そ(´<_`*;)「ぶぶふっ!?」

このバカ兄、なんてことを!飲んでいたコーヒーを盛大に噴出しちゃったじゃねーか!

(*´_ゝ`)「あー良いなー、俺もゴイスーなパイオツカイデーのジョーカノ欲しいなー」

(´<_`; )(古……)

彼女ときいて、ふとづーさんを思い浮かべてみた。
……正直、好みのタイプではない。恋人候補にするには些か過ごした時間も短すぎる。
兄者はづーさんのことを、づーさんは兄者のことを、お互いどう思っているのだろう。

76名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:40:41 ID:8qwHJ5yE0

瓜゚∀゚)「兄者さん、ここの所訪ねてくる回数が増えましたよね」

( ´_>`)「そうかな。そうでも無いと思うけど」

瓜゚∀゚)「だって、昨日も来てくださったわ」

( ´_>`)(まあ、それは本物の兄者だしな)

づーさんは次第に、俺たちの来訪を訝るようになった。
その度に俺は上手く誤魔化して、づーさんを納得させるようにした。

瓜゚∀゚)「兄者さん、しょっちゅう私に会いにきてくれますけど。恋人さんはいないですか?」

( ;´_>`)「い、いないよ。仕事が忙しくてな」

瓜゚∀゚)「あら、その割には頻繁に私の所に来るじゃないですか」

ドキリとした。
昨日、兄者と交わした会話の内容と似ているだけに、妙なデジャヴを感じたのだ。

77名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:41:35 ID:8qwHJ5yE0
( ´_>`)「づーさんは、居ないのかい?気になる人とか」

瓜゚∀゚)「うーん……ここ、出会いがないですしねー」

あ、と俺は彼女の言葉で、ここがどこかを思いだし、申し訳なく思った。
づーさんは気にしていないらしく、クスクスと笑うだけだった。
恥ずかしくて、俺の顔は沸騰してるんじゃないかってくらい熱くなった。

瓜゚∀゚)「兄者さんこそ、恋人見つけりゃいいのに。ここに通い続けるのも、つまらないでしょう?」

( ;´_>`)「そっそんなことはない!」

否定する言葉に、力がこもる。
これは、今になって考えれば、俺の本心だったのかもしれない。
づーさんは目をパチパチとさせて、ふふふ、と笑った。

瓜^∀^)「ありがとう、兄者さん。私、うれしい」

( ;´_>`)「はは、は」

心臓が馬鹿みたいに喧しかった。
聞こえるんじゃないかと、馬鹿らしい心配までしてしまうほどだった。

78名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:42:24 ID:8qwHJ5yE0

瓜゚∀゚)「お互い、独り身ですね」

( ´_>`)「そ、そうだな」

瓜゚3゚)「あーあ、こんな所じゃ、外を歩くどころか、普通の恋も出来ないもんなー」

づーさんはベッドの上で、膝を抱えて愚痴る。
明るい声なのに、背中はとても寂しそうに見えた。

瓜^∀^)「もう、こうなったら兄者さんが貰ってくれないかなー、なんちゃって」

( ;´_>`)「え”」

瓜*゚∀゚)「ねえねえ兄者さん、どうお?フリーだよ?」

本人はふざけてるつもりなんだろう。俺の腕を引っ張って、おどけてみせる。
――こんな元気な姿を見て、誰が彼女をマダラワタリ病だと思うだろうか。

79名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:43:17 ID:8qwHJ5yE0

( ;*´_>`)「いや、俺は……」

瓜*゚∀゚)「あはは、兄者さん照れてるー!かーわいいー」

慌てる俺の反応が面白いのか、づーさんは面白がって俺の腕にしがみついた。
俺は驚いて、反射的に体を仰け反らせた。

瓜;゚∀゚)「きゃ……」

( ;´_>`)「うわわっ」

どさり。パイプ椅子が傾いて、俺は転んだ。
俺の腕にひっついていたづーさんも、一緒に引っ張られてベッドから落ちる。
頭をぶつけて、視界がぐらついた。

”く( ;´_>`)「ててて…」

瓜;゚∀゚)「あわわ、兄者さんごめんね!大丈夫!?」

80名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:44:02 ID:8qwHJ5yE0

づーさんは慌てて、俺の頭に出来たタンコブにそっと手をやった。

瓜;゚∀゚)「良かった、血は出てないみたいですね」

( ;´_>`)「あ、ああ。もう大丈……ぶ……」

痛みが引いた途端、今の状況を理解した。
づーさんが俺の上にのしかかって、づーさんの顔が至近距離にある。
細くて柔らかい体が俺と密着して、長い睫毛が分かるほどの距離。


(  _> )

ぶつり、と。
俺の中で、鳴ってはいけない、何か音がした。

瓜゚∀゚)「? 私の頭は何ともないですよ?」

俺がづーさんの頭を抱き寄せても、彼女は俺の真意なぞ分かっちゃいない。
見当違いの言葉を口に出して、更に俺と顔の距離が縮まる。

瓜;゚∀゚)「あ、兄者さん?」

(  _> )

81名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:44:59 ID:8qwHJ5yE0


瓜;*゚д゚)「ちょ、兄者さん?具合悪いんですか? どうし、」

(  _> )「づーさん」

瓜;* д )「ひっ……」

耳元で低く、名前を呼ぶ。びくりとづーさんの肩が跳ねた。
小さな手が、俺の服に皺ができるほど強く掴んだ。
逃げられないように、体を俺の両足で挟む。細くて、小さくて、頼りない体だ。
こんな体じゃあ、病気にかかったって仕方ない。

瓜;* д )「あ、あにじゃ、さ」

そっと前髪をかきあげて、まじまじとづーさんの顔を見る。
美人、とは言い難い。せいぜい、中の上くらいの顔。パッとしない、と言われるだろう。
けれども、この時の俺は、その唇に今すぐにでも噛み付いてむしゃぶりつきたい衝動に駆られていた。

瓜;* д )「な、なに、を」

震えている。可愛い。

82名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:46:20 ID:8qwHJ5yE0

(  _> )「ねえ、づーさん」

体を抱きしめる力を強めた。
今にもへし折ってしまいそうだ。

( <_  )「目、閉じて」

瓜;*>д<)ギュッ

俺が怖いのか、づーさんは素直に目を固く瞑った。
馬鹿な人だ。きっと今から、何をされるかも分かっていない。
づーさんの唇を親指でなぞり、顎をしっかりと掴んだ。
俺と、づーさんの顔の距離が、更に近づいて、触れ合いそうになる――


びしゃっ。


.

83名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:47:28 ID:8qwHJ5yE0

一瞬、頭が真っ白になりかけた。


( <_`; )「…………え?」

べっとりと、顔に何かがかかった。
拭うと、真っ赤なものが俺の手についた。

血だ。俺の顔に、血がかかった。
俺は怪我などしていない。じゃあ血は、どこから?

瓜; д )ゲフッ、ゲウッ

血が出ている。づーさんの口から、赤黒い血が出ている。
とめどなく血が溢れて、床を真っ赤に染める。赤く、赤く、赤く……

(゚<_゚; )「づーさん!!しっかり!!」

途端、我に返った。マダラワタリの発作だ。
俺は声をかけながら、咄嗟にナースコールに手を伸ばした。

(゚<_゚; )「早くこい、早く来い、来てくれ、誰か!早く!」

ナースコールを何度も押す。血のついた指で何度も押して、ボタンまで真っ赤になった。
突然、扉が開く。ナースコールを聞きつけて人がきたのだ。

84名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:49:17 ID:8qwHJ5yE0

(;*゚ー゚)「流石くん!?どうしてあなたがここに!?」

(´<_`; )「あ……実は、用があってこっちに来たら、音がして!そしたらこの人が!」

(;*゚ー゚)「……分かった、そういうことにしといてあげる。早くそこを退いて!」

いの一番に駆けつけてきたのは、先輩だった。
俺の弁解をとりあえず信じて、づーさんを運んでいく。
担架に担がれて、運ばれていく彼女を、俺は見送ることしかできなかった。

その日、俺は念入りに消毒をされて、先輩にこってり絞られた。
「朝日教授には言わないであげる」の優しさが、神の言葉に聞こえたのは言うまでもなく。
それから一週間、づーさんに会えない日が続いた。

すっかり忘れていた。彼女は、マダラワタリ病の末期患者なのだ。
それなのに、俺は。俺は――――――――


( <_ ; )(俺は………………………)

力任せに壁を叩きつける。
俺の拳からは、血が一筋流れ落ちるだけだった。

85名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:50:07 ID:8qwHJ5yE0
づーさんが発作を起こして、2週間近く経った。
あれ以来、顔を出していない。


( ´_ゝ`)ハァ…

(´<_` )ハァ…

( ´_ゝ`)「元気がないな、弟者よ」

(´<_` )「兄者こそな……」

( ´_ゝ`)「うむ、この間捕まえた引ったくりが保釈されてな、また引ったくりを繰り返してるらしいんだ」

(´<_` )「反省ってもんがないな、そいつも」

( ´_ゝ`)「しかも今度はバイクでの犯行らしい。素早いから捕まえ辛くてな。事故にでもなったらおおごとだ」

(´<_` )「それは困ったな」

( ´,_ゝ`)「ま、捕まえてみせるがな」

86名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:51:43 ID:8qwHJ5yE0
それよりもなー、と兄者は再び肘をついた。
能天気な兄者が滅多に見せることのない憂いの表情を浮かべていた。

( ´_ゝ`)「この間言った、恩返しをしたい人に最近会えなくてな」

(´<_`; )ドキリ

づーさんのことだ。先日の出来事を思いだし、心臓が早鐘のように打つ。

( ´_ゝ`)つ〆「その人、お洒落もしてないし、せめて髪留めでも贈ろうかと思ったんだけど……」

兄者はポケットから髪留めを出した。
シンプルなデザインで、銀色だ。少々値が張りそうな代物である。

(*´_ゝ`)「如何せん、いざ惚れた相手となると、選ぶのに気合いが入っちまったよ」

ズキリ。
何かが俺の心臓に突き刺さった。
そう錯覚させられるほどに、俺の心臓が痛い。

( ´_ゝ`)「せめて元気かどうかだけでも分かればいいんだけど……」

(´<_` )「…………渡せると、良いな」

色々と胸中で渦巻いた様々な言葉は、喉の奥へと引っ込んだ。
俺がづーさんと再び顔を合わせることが叶ったのは、それからかなり後のこと。

87名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:53:06 ID:8qwHJ5yE0
再び、信頼出来るツテから、ある話を聞いた。
朝日教授の妹の容態が安定したこと。
そしてもう一人、マダラワタリ病の患者が、大学関係者から出、そして死んだこと。

( ´_>`)「…………」

最早、俺の中でマダラワタリへの興味は失せていた。
代わりに渦巻くのは、彼女のこと。づーさんの笑顔。

俺はいてもたってもいられず、もう一度会いに行くと決めた。
あの日のことを謝りにいこう。
それから、兄者のフリをして今まで騙していたことを白状することにした。

( ´_>`) コンコンコン

いつものルートを使い、軽く窓を叩いてみる。

『ん?何か今、窓の方から音がしなかったかい?』

返事を待つよりも早く、状況を理解した。中に人がいる。
最悪なことに、朝日教授の声だ。

『多分風よ、兄さん。今年の冬は風が強いって聞いたわ』

づーさんの声が聞こえてきた。
そうかい、と朝日教授は気にも留めず、そのうち気配が消えた。

88名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:53:53 ID:8qwHJ5yE0

窓が開けられる。俺は素早く、滑り込むように中に入る。
後ろ手に窓を閉め、俺はづーさんと向き合った。

( ´_>`)「…………久しぶり。元気にしてた?」

俺から言葉を切り出す。もしかしたら拒絶されてしまうのではという恐怖があった。
けれども、数拍の間をおいて、返ってきた答えは、

瓜-∀-)「遅いですよ。もう来てくれないのかと思ってました」

( ´_>`)「ごめん、最近忙しくて」

歓迎の言葉だった。
俺はすっかり安心しきって、言うべき言葉も頭からすっぽ抜けていた。

瓜゚∀゚)「看護婦さんから聞きましたよ。私が発作を起こしたとき、兄者さんがナースコールを押してくださったって」

( ;´_>`)「ああ、驚いたよ。いきなり血を吐いたからさ」

瓜゚∀゚)「あのときは有難うございました。処置が早くて、何事もなく済みましたよ」

すぐに記憶が舞い戻り、罪悪感が俺の心臓を締め上げる。
づーさんは何か言い淀む様子だったが、勇気を振り絞るように言葉を出した。

88名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:08:50 ID:8qwHJ5yE0

瓜゚∀゚)「兄者さん、以前も言いましたが……私、マダラワタリ病なんです」

知っている。
末期だということも、両足が動かないことも、臓器の大半がまともに機能していないことも、とっくに知っている。
横にある点滴がなければ、1日と経たず死んでしまうことも。

瓜゚∀゚)「医師から……宣告されました。頑張って、あと1ヵ月だって」

( ´_>`)「…………」

瓜゚∀゚)「死が怖くない、といえば嘘になります。でも、覚悟してるつもりです」

づーさんは、俯いた。

瓜 。。)「…………ただ。心残りがあるまま、死にたくはないんです」

そういうと、顔をあげた。
づーさんの小さい手が俺の手に重なって、濡れた瞳が、俺を見た。

瓜゚∀゚)「もうじき、私、きっとまともに話をすることも出来なくなります。
    だからその前に、兄者さんにどうしても言いたいことが……」

( ´_>`)

ああ。そうか。そうなのか。
今、俺の中で、こみ上げて、渦巻いて、胸の内を打つ感情に、名前が付いた。

88名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:09:34 ID:8qwHJ5yE0

瓜 ∀ )「兄者さん、私……わたし…………!」

違う。違うんだ、づーさん。
君がその言葉を言うべき相手は、俺じゃないんだ。

( ´_>`)「づーさん」

俺は指でそっと、づーさんの震える唇を押さえた。

瓜゚∀゚)「……?」

( ´_>`)「2日。今から2日間、づーさんが欲しいものを考えて」

瓜゚∀゚)「え?どういう……」

( ´_>`)「3日目に、答えを聞く。その時に、づーさんの話も聞いてあげるから」

そう言って、俺は逃げ出した。

兄者が次にこの病院を訪れるのは、確か3日後だ。
づーさんの言葉を聞くべきは兄者だ。俺じゃない。
彼女が恋しているのは、兄者なのだ。俺でなはく、俺が扮した兄者なのだ。

89名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:54:36 ID:8qwHJ5yE0






「おい、流石くん!!」

隔離病棟を離れ、一般病棟の廊下を早足で歩く。
そのとき、背後から声をかけられ、振り向く。ただならぬ様子のようだ。

(´<_` )「何か?」

「お、落ち着いて聞いてくれ!今しがた病院の近くでひったくりがあってな」

(´<_` )「はあ…?」

「スクーターに乗ったやつでな、そいつが事故を起こしてパトカーが一台巻き添えをくらったって……」

(´<_`; )「パトカー?まさか…………!」

ひったくり。スクーター。パトカー。警察。

嫌な予感がする。
頼む、的中しないでくれ…………………!



「…パトカーの運転手が、君のお兄さんだって聞いてっ………………!!」



.

90名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:57:52 ID:8qwHJ5yE0

















.

91名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:58:40 ID:8qwHJ5yE0

3日後。


瓜゚∀゚)「…………………遅いなあ。もう夜だよ………………」


瓜゚∀゚)「せっかく、マフラー編んだのに…………………」


瓜゚∀゚)「……………………………………」



<コンッコンッコンッ>


瓜*゚∀゚)(あっ!きた!)


<コンッコンッコンッ>


瓜*゚∀゚)「待ってましたよ!」


「ああ、遅くなってごめんよ。欲しいものは決まったかい?」


瓜*゚∀゚)「ええ! 実をいうと……かなり無理があると思うんですけ
ど、良いんですか?」


「勿論さ。言ってご覧」

.

92名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 08:59:20 ID:8qwHJ5yE0


瓜*゚∀゚)「えっと、海に行きたんです!ここ、山ばかりだから、海なんて見えないし……」

「そうか、海が見たいのか」

瓜*゚∀゚)「私の大好きな雨が生まれる場所を、見てみたいんです。一度でいい、この目で」

「でも、点滴を外したら死んでしまうぞ?」

瓜゚∀゚)「良いんです。一ヶ月も一日も、私からすれば同じです」

「そうか…………」

瓜*゚∀゚)「えへへ……連れてってくれますか?」


( ´_>`)「勿論ともさ。それが欲しいものならばね」


.

93名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:00:06 ID:8qwHJ5yE0

兄者は死んだ。
頭からモロに潰れて、誰かも分からないくらいにグチャグチャになって、死んだ。
パトカーもスクーターもぺしゃんこになって、犯人だけが生き残っていた。
自分が死んでも相手が生きているとは、流石は俺の兄なだけある。

〆(´<_` )

死んだ兄者の手には、例の髪留めが握られていたという。
本人は血だらけだったが、髪留めには血痕ひとつ残っていなかった。

瓜゚∀゚)「わあ、綺麗」

夜の海は雄大で、満月がぽっかりと浮かんでいた。
づーさんを抱えて砂浜を駆け、ニコニコと笑って俺にしがみつく。
波をはたき、飛沫と戯れ、とても楽しそうだった。

( ´_>`)「づーさん、これ。プレゼントだ」

瓜*゚∀゚)「わあ、可愛い!有難う!」

髪留めを受け取ると、づーさんは本当に嬉しそうに笑った。

瓜*゚∀゚)「似合う?」

( ´_>`)「ああ、よく似合ってる」

94名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:01:45 ID:8qwHJ5yE0

どっちの本音なのだろう。俺か、兄者か。どちらもだろう。
はしゃぎ疲れたづーさんは、俺の上に座って、ぴっとりとひっついてきた。

瓜*^∀^)「えへへ……」

今度は顔が近くても、俺の心臓は穏やかなままだった。
少し濡れた前髪を撫でつけると、くすぐったそうな顔をみせた。

瓜゚∀゚)「ねえ」

( ´_>`)「なんだい?」

づーさんは俺の顔をまじまじと見つめて、すうっと大きく息を吸った。

瓜゚∀゚)「好きです」

( ´_>`)「…………知ってたよ」

瓜*゚∀゚)「なあんだ、知ってたんだ」

( ´_>`)「……………俺も、好きだよ」

瓜*^∀^)「ふふふ、知ってた」

95名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:02:37 ID:8qwHJ5yE0

俺の胸板に、づーさんは顔を埋めた。
波の音が静かに、満天の星が輝く夜空に吸い込まれていく。

瓜゚∀゚)「……ねえねえ、キスする?」

( ´_>`)「したい?」

瓜゚∀゚)「うん」

言うや、づーさんの唇が俺のと合わさった。
彼女の死が、唇越しに伝わってきた。
消える直前に燃え盛る炎のような熱さだ。きっと、彼女の最期の命の暖かさだ。
それが俺の唇に伝わって、胸の中に溶けて行く。

瓜;* ∀ )「あはは、泣いてる」

( <_ 。 )「煩い」

この熱があまりに愛しすぎて、何度も角度を変えては唇を重ねた。
キスで命を分け与えられたら、どんなに良いだろう。
悔しかった。苦しかった。悲しかった。切なかった。恨めしかった。愛しかった。

96名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:03:33 ID:8qwHJ5yE0

瓜;* ∀ )「苦しいよう」

( <_  )「ごめん」

瓜;* ∀ )「痛いよお」

( <_  )「すまない」

瓜;* д )「さみしいよお」

( <_  )「ここにいるよ」

瓜;* д )「ねえ、あにじゃ、どこ?」

( <_  )

手を彷徨わせている。
俺はしっかりと、彼女の手をとった。

97名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:04:52 ID:8qwHJ5yE0

「俺はここにいるよ、づー」

瓜;* д )


瓜;* ∀ )



「ずっと、いっしょだよ」






.

98名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:06:54 ID:8qwHJ5yE0








さようなら、    。








今際のきわに、彼女が呼んだ名前は、果たしてどちらだったのか。
今となっては、知るすべもない。

.

101名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:10:33 ID:8qwHJ5yE0

川 ゚ -゚)「…………」

(´<_` )「死体は海に捨てました。彼女は海が好きでしたから」

川 ゚ -゚)「……君の話はこれで終わりか?」

(´<_` )「ええ。逃げることにも疲れましたし、自首するつもりです」

川 ゚ -゚)「そうか…」

弟者の話が終わり、クーは不意に席を立ち上がった。
奥へ向かい、しばらくして、一冊のノートを手に戻ってきた。

(´<_` )「それは?」

川 ゚ -゚)「朝日教授の日記だ。最後のページを見て欲しい。私の話は、まだ最後まで終わってないんだ」

クーは読め、と促した。
弟者は言われるままに、ページを開いた。

102名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 09:11:18 ID:8qwHJ5yE0


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103名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 09:12:07 ID:8qwHJ5yE0

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104名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:14:25 ID:8qwHJ5yE0

寝たきりになって、もう何日経つだろう。
毎日クーは僕の耳元で恨み節を囁いている。 
致し方ない。全ては僕の責任だ。ドクオくんを救えなかった。
僕の実力不足だ。言い訳のしようもない。

ドクオくん、すまない。
きみとの約束は果たすことはできないようだ。
彼女は僕を憎んでいる。きっと僕は≡されるだろう。それは構わない。僕の命で罪が償えるのなら。

けれど、彼らが気がかりだ。愛する僕の妹、僕の妻。病を患った多くの患者たち。
同僚たちは悲しんでくれるだろうか。
救いきれなかった人たちは、僕を許してくれるだろうか。

ドクオくん、君は言ったね。
クーに迷惑がかかるくらいなら、死んだほうがましだって。それは本当かな。
確かに、マダラワタリ病の治療には莫大な金がかかる。時間がかかる。
でも、それでも、クーは、君に生きてて欲しかったんじゃないかな。
僕が妹に願ったのと、同じように。

でも、全て終わったことだ。何もできることはない。僕は近いうちに死ぬ。
もうこの手もろくに動かなくなってきた。彼女は本当に優秀な薬剤師だ。
出来ることなら、彼女を「幸せ」にしてあげたかった。これだけは、僕の本心だ。

105名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:15:22 ID:8qwHJ5yE0

僕は、どこで、間違ったのだろう。
どうすれば、僕は正しい道へ進めたのだろう。

君を無理にでも治療して、生かすべきだったのだろうか。
それがどれだけ茨の道だとしても、君に延命の選択肢を与えるべきだったのだろうか。
自殺幇助なんて行為を、否定すべきだったのだろうか。

いや、きっとそうだ。君はもう少し、生きるべきだった。
彼女が、クーが、周りに人がいなくても強く生きられるよう、励ますべきだったのだ。

ドクオ。
君でなくては、クーを幸せにしてあげられなかったのだ。
嗚呼。僕はなんてばかだったのだろう。

今は、後悔ばかりだ。
悔やみ続けるばかりだ。きっと死ぬまで悔やみ続ける。

この日記は誰にも見せないでおこう。
本の間にでも隠しておけば、彼女は捨てるに違いない。

――――願わくば、僕が死んだあと。
彼女が今度こそ、幸せに恵まれますように。

106名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:23:39 ID:8qwHJ5yE0


(´<_`; )「……」

弟者は絶句した。
どのように反応していいか、分からなかったのだ。
これを書いた朝日教授の真意も、事実も、クーの胸中も、全て汲み取るには短すぎる文章。

ひとつ、分かっていることがある。クーの恋人は自ら死を願っていたこと。
マダラワタリにかかった者は、治る見込みがないと絶望し、自殺する者も多いと聞く。
ドクオもその一人だったのだろう。そして、死ぬ間際に朝日教授にクーを託した。

でも。クーからすれば、話は変わってくる。
彼女はドクオを見殺しにされたと思い、朝日を殺したのだ。
だが、これでは……。

川 ゚ -゚)「私がその日誌を見つけたのは、朝日教授が死んだ日のことだったよ」

クーさんはおもむろに、時計へと目をやった。

川 ゚ -゚)「彼が死んだ日も、雨が振っていた。雨のひと粒ひと粒が落ちる音が、やけにうるさく聞こえてね……」

白い手がマグを持ち、中身を全て飲み干してしまった。

川 ゚ -゚)「…………そろそろ時間だ。達者でな」

(´<_`; )「? それは、どういう……」

107名も無きAAのようです [AAS] :2012/12/26(水) 09:28:14 ID:8qwHJ5yE0
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
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;;l;lll;ザー…;;;;;;| |/iilili;i;ili;iliii;ili;ili;iili;ili;;| |;;;;;lllll;ll;l;l;;;ull;;;;;;;i; /| |/;;;;;i;i;;;u;;i;i;;i;i;i;;;;;;,;,;.;,;,| |
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三三三三三三三三三三三 ..|\\蒜蒜\\.三( ;゚_ >そ 三三三三 从 ノハリルヽ \
 \          \     :|  \\蒜蒜\\ 「   つ〆て  [_] :.(д゛ レルリ \\
\. \          \  \   \\蒜蒜\\  \  ゴファッ .::::::: と    ヽ   \\
 ̄|ヽ  \          \   \ ..| ̄|ニニニ| ̄|\ \          \ ソ\  | ̄|
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(゚<_゚; )「う、うわあああああああああああああ!!」

弟者の目の前で、クーが夥しい量の血を吐き出す。
あっという間にテーブルは、真っ赤な液体で染められ、床にまでこぼれ落ちた。
クーの体は何度かビクビクと跳ねると、やがて動かなくなった。
弟者は立ち上がり、血から後ずさった。
そして弾かれたように喫茶店を飛び出し、雨が降るのも構わず走って逃げた。

川:::::-::)

後には、死体が残った。
喫茶店の中では、相変わらず、時計と、雨の音が、静かに鳴り響くだけだった。

108名も無きAAのようです :2012/12/26(水) 09:29:06 ID:8qwHJ5yE0







心は後悔に涙するようです




END.



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 ※ 「(-@∀@)お茶」「川 ゚ -゚) 手編みのセーター」「( ´_ゝ`)+求婚」というお題を使用して書かれたそうです。(セーターをマフラーと空目)
心は後悔に涙するようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1356447230/2-

※ 勝手ながら一部大型AAのズレを修正、病名を>>19より『マダラワタリ病』に統一しました


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