まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 ('A`)は深海魚のようです

272名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:21:30 ID:FwtSLtIE0





     ('A`)は深海魚のようです



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273名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:22:33 ID:FwtSLtIE0

 夢の中で鳴っていたけたたましい音が、硬いものに触れた感触で掻き消えた。

 瞼を開く。
 視界は暗く、眠気もかすかに残っている。
 無意識に伸びた手が目覚まし時計のボタンを押している事に、数秒の時間を要した。

 遅れて夜の冷気を感じ、手を毛布の中に引っ込める。
 昔感じた手の温もりを思い出して、少しだけ気分が沈んだ。

('A`)「……」

 畳の上に座っているデジタル時計に目をやると、まだ午前二時前だった。
 七時にセットした筈だったが、時間を間違えてしまったのか。

 現在時刻の上に表示されているアラーム時刻は、
 「01:58」という、中途半端な時間で止まっている。
 恐らくセットしている途中で眠ってしまったのだろう。


 状況を理解して行く内に、目と頭が醒めてきた。
 かすかにぼやけていた部屋の畳も、輪郭がはっきりと見えてくる。
 と同時に、喉がカラカラになっている事に気付く。

274名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:23:52 ID:FwtSLtIE0

('A`)(暖かいもん飲みたいな……)

 布団から這い出て、ゆっくりと立ち上がり台所へ向かう。
 靴下を履いている為か、さほど冷たさは感じない。

 台所にある棚を開く。
 が、望んでいたものは無い。
 コーヒーのドリップパックは既に使い切られ、空袋だけがむなしく転がっていた。


('A`)(どうする? お湯でも飲むか?)

 しかしそれでは味気ない。
 他の何かを電子レンジで温めようとも思ったが、
 冷蔵庫には生憎、飲み物は何一つ残っていない。

('A`)(自動販売機で買うか……)

 アパート付近の大通りには自動販売機がある。
 屋外は寒いだろうが、深夜の町を歩くのも悪くないかも知れない。

 寝巻の上からジーパンを穿き、ジャンバーを羽織り、手袋をして外へ出る。
 寒さに肌が粟立ち、思わず体が震える。風が吹いていないのが救いだ。
 ひんやりとしているが、澄み切った空気の中を歩いて行くのは、どこか心地良い。

275名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:25:18 ID:FwtSLtIE0

 歩みを進める。夜に閉ざされた大通りはひっそりと静まり返っていた。
 薄く積もった雪、点滅する信号機、明かりを灯した街灯。

 夕暮れ時は、ひっきりなしに車が往来していたというのに。
 静寂を絵に描いたような深深とした景色に、「師走」という事を忘れそうになる。

 それもそうか。

 この街は都会と言うほど発展しておらず、田舎と言うほど住宅が疎ではない。
 いくつかビルは並んでいるが、駅には新幹線など通っていないし、ましてや夜だ。
 人の動きも活発ではない。ただ、他県に比べて消極的な人が多いというのは聞いた事がある。

 自分もその中の一人だろう。
 芯の部分は昔と殆ど変らない。


 小さい頃は、大人になったら好きな人と結婚して、暖かい毎日を送るのが普通だと思っていた。
 それが当然だと、盲目的に信じていた。

 だが、実際はどうだ? そんな自分はどこにもいやしないじゃないか。
 今だって、誰かと手を繋いでなどいない。
 白い息を吐き、一人きりで雪道をざくざく歩いている。

276名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:26:50 ID:FwtSLtIE0

('A`)(ん)

 頭に冷たさを感じ、空を見上げると、粉雪がぱらぱらと降り出していた。
 俺は雪男だったのか? と、心の中で笑う。

 さぞかし雲に覆われているだろうなと思っていた夜空には、瞬く星たちがいくつも見えた。
 ときおり薄い雪雲が通り、光を遮る。月を探してみたが、どこにも見当たらない。雲に隠れているのだろう。
 すぐ傍にある街灯が、満月のように思えてしまった。


('A`)「……」

 ネオンを尻目に通りを一人で歩いていく。冬の寒々しさも相まって、普段より孤独感が湧いてくる。
 寂しくはないが、自分は一人だという事を強く思い知らされる。
 夜が支配する街。静けさが包む街。まるで、索莫とした海の底のよう。

 だとしたら、自分は何だろう。
 こんな街を歩いている自分は。


 さながら、一人ぼっちで海底を泳ぐ深海魚だろうか。


.

277名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:28:23 ID:FwtSLtIE0

('A`)「!」

 少しつんのめって立ち止まる。既に自動販売機は目と鼻の先にあった。
 思索に耽っていると、つい目の前の事を忘れてしまう。

 小銭入れから硬貨を出して、入れる。
 缶コーヒーの下のボタンを押す。

 反応がない。

('A`)「?」

 もう一度押してみるが、変化なし。
 訝しげに指を離すと、そこには「売り切れ」の文字があった。

 コーヒーさえ俺を温めてくれないのか。
 隣のお茶はまだ残っていたので、仕方なくそれを買う。
 がこん、と聞き慣れた音の後、落ちてきたお茶を取り出す。

 手袋越しに冷たさが伝わってきた。
 ああ、「あったか~い」と「つめた~い」を間違えたのか。
 とことん駄目だな。今はもう家に帰った方が良いのかも知れない。

278名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:29:52 ID:FwtSLtIE0

 踵を返し、ゆっくりと帰路につく。

 同じ道で帰ろうとしていたが、ふと思い立ち、寄り道をしてみる事にした。
 橋を渡り、いつもなら真っすぐに行く所を右に曲がり、川沿いの路地に進む。

 しばらく歩くと左手に公園が現れる。
 ブランコが四つと、屋根つきのベンチが二つあるだけの、簡素な公園。

 公園の敷地に入る。と、携帯が震えだした。
 サブディスプレイに表示されているのは、「ジョルジュ」という名前。

('A`)「もしもし。久し振りだな、こんな夜中にどうした?」

『おおスマン。いや、ちょっと目が覚めちまって。ふとお前はどうしてるんかなーと思ってさ』

('A`)「奇遇だな。俺も今目が覚めてるところだよ。頭は冴えてないけどな」

『相変わらずだな』

('A`)「そうかねぇ……」

 ベンチに座り、友人からの言葉に溜息まじりで返す。
 ひゅう、と風が吹き抜け、身を切るような寒さに体を縮こまらせた。

279名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:31:16 ID:FwtSLtIE0

('A`)(風が出てきたか)

『調子は良いか?』

('A`)「まあまあかな。ジョルジュは?」

『クリスマスだってのに深夜に男と二人で話してる時点で、察してくれよwww』

 向こう側からは笑い声が聞こえたが、どこか無理をしているように思えた。
 以前はもっと覇気も威勢もあった筈だが。

『ま、今日も朝起きたらジョギングして、んで走り込みに行くかな。お前のアパートの前も通るかも知れんね』

('A`)「通ったら目覚ましに声でもかけてくれ」

『気が向いたらな。んじゃ、叶えるまで頑張るわ。じゃあな』

('A`)「おう。またな」

 電話を切る。
 丁度、雪垂りの音がした時だった。


('A`)(まだ目指してるのか……)

 大学で知り合いになった時から今現在まで、
 ジョルジュが目指しているものは全く変わっていなかった。

280名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:33:05 ID:FwtSLtIE0

 小さい頃から走る事が好きで、オリンピックに出る事をいつも夢見ていたらしい。
 必ず出てやる、絶対に叶えてやる、と息巻いて。
 しかし当然の事ながら、現実は甘くはなかった。

 中学時代はぐんぐん伸ばしていた記録も、高校、大学へと進むにつれ伸び悩み、
 卒業して八年以上経った今もそこから抜け出せない、と聞いている。
 だというのに、まだ夢を捨てていない。


 何でだ?
 何で、現実を知った今でも、上を向いて進んでいける?

 あの時見えていた道は、幻だったんだよ。
 前を向けよ。現実を受け入れろよ。もういいだろ。

 もう、諦めろよ。

 お前が見てる夢は、目を閉じてる時の夢だよ。
 叶いやしないんだよ。

 もう出来っこない。遅すぎるんだ。
 大人になったのなら、現実を目の前から見据えて、受け入れて、前を向いて歩いて行かないといけないんだよ。
 届かないものを目指す事ほど、意味のないものは無いのだから。

281名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:34:38 ID:FwtSLtIE0

 でも。

 そうなら。
 もし、そうなのなら。
 この、胸に何かが潜り込んでくるような気持ちは何だ?

 鳩尾を突き刺すような感触は何だ?
 目元に押し寄せてくる波は何だ?
 何で、昔に抱いた願いが蘇ってくるんだ?

 何で、俺は――


(;A;)


 涙を、流しているんだ?


(;A;)「……」

 小さい頃は。
 大人になったら好きな人と結婚して、暖かい毎日を送るのが普通だと思っていた。
 それが当然だと、盲目的に信じていた。

282名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:36:48 ID:FwtSLtIE0

 だが、実際はどうだ? そんな自分はどこにもいやしないじゃないか。
 今だって、傍には誰一人いない。
 気力と希望をすり減らし、ただ時間だけを重ねた、萎んだ自分がいるだけ。

 大学を卒業し、一人で暮らしていく事を決めた時に、不安は湧かなかった。
 誰かと付き合いを重ねていき、深い所まで知り合う事の方が、
 疑いを捨てて人を信じ切る事の方が、遥かに不安だった。


 いつからだろう。差し伸べられた手を握るのが怖くなったのは。
 いつからだろう。鏡を見る事が怖くなったのは。
 いつからだろう。朝を迎えるのが怖くなったのは。


 中学時代。小学校からの友人が他人と話している所に来た時、
 俺が友人なのかと聞かれ、違う、と言われた時からだろうか。


 高校の時のクリスマス。
 クラスメートに手を繋がれて告白され、約束された場所に着いた時、
 それが実は嘘だったと、嘲笑の声と共に理解した時からだろうか。


 入学しろ、入学しろ、と耳にタコが出来るほど言われていた難関大学に受かる事が出来ず、
 親が「産まなければ良かった」と愚痴っていたのを聞いた時からだろうか。

283名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:38:33 ID:FwtSLtIE0

 分からない。分かりたくもない。


 もしかしたら自分でどうにか出来たかもしれない。
 でも、積み重なった悔いは、降り積もった過去は、雪のようには解けてくれなかった。


 今はもう。

 流氷が漂う、冷たい冷たい海の底から、星の粒を見上げる事しか出来ない。
 既に、届かない所まで落ちてしまっている。

 自分があの時信じていた温もりは――もう、掴めやしない。



 夜空を見上げる。
 瞬く光の粒。流れる雪雲。

 昔に見た澄み切った空とは、似ても似つかない。


(うA;)「……」

284名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:39:47 ID:FwtSLtIE0

 また一つ。


 星が雲に隠れた。


 雪は止み。


 風は強さを増していく。


 何一つ浚わずに。


 何一つ殺さずに。


 ただうなりを上げて。


 ただ凍みだけを連れて。


 夜の街を。


 吹き抜けていく。

285名も無きAAのようです :2012/12/24(月) 18:40:48 ID:FwtSLtIE0





     ('A`)は深海魚のようです

           おわり




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(ヽ'ω`) ブーン系鬱祭りのようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1352205445/272-



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