まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 川 ゚ -゚)プルメリアの恋のようです('A`)

217名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 21:58:46 ID:CybtGELY0

街角にある小さくてとても古いアパルトマンがあった。
石壁に覆われた外観、重たい鉄扉のついた時代遅れの建物だった。
それでも、ここにはたくさんの人が訪ねてきた。
たった一人の女に会いに、数々の女達が足繁く通う。

そのおかげでアパルトマンは活気づき、再び息を吹き返した。


218名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 21:59:34 ID:CybtGELY0


女はクーチュリエ(仕立て屋)だった。
クーチュリエと名乗ってはいるが、それは大層なものではない。
自室に少しだけ手を加えた、とても小さな店だった。
看板を掲げているわけではないので、依頼人の御婦人達は、
蔓草を模した門扉をくぐり抜け、石畳の敷き詰められた小さな庭を越えて、彼女の部屋の戸をそっと叩く。

クーチュリエが作る服はけして派手ではないのに、客の心を掴んで離さなかった。
よく肌に馴染み、身体をしっとりと包み込む。
まるでよく訓練された犬のような服を、彼女はたった一人で作り上げることができた。

ζ(゚ー゚*ζ「素晴らしい仕上がりね、クーチュリエ! 
今度のパーティーに絶対に着ていくわ!」

川 ゚ -゚)「なんの、なんの。私も喜んで貰えて嬉しいです、マドモワゼル」

けして己の指先に自惚れることなく、控えめに微笑んで喜びを表した。
彼女は服を作るとき以外はとても内気な少女だった。

219名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:00:44 ID:CybtGELY0


川 ゚ -゚)プルメリアの恋のようです('A`)

220名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:01:40 ID:CybtGELY0
今日もお客様を出迎えるため、クーチュリエは念入りに部屋を磨き上げていた。

川 ゚ -゚)「ふぅ、完璧だ」

腰に手を当てて、満足げに頷く。
客がどんなドレスを欲しいのか想像を巡らせるとき、採寸のため巻き尺を腰にあてるとき、
常に快く過ごせるよう、彼女は細心の注意を払っていた。

床はオイルをかけたように艶やかに光り輝いている。
その中心には年代物の足踏みミシンが据え置かれていた。

辺りを見回して少し思案すると、おもむろに窓辺へ向かった。まだ完璧には少し足りない。
窓際には花瓶がひとつ。その中にはプルメリアの白い花がたわわに咲き誇っていた。

川 ゚ -゚)「あぶない、あぶない。これを忘れるところだった」

クーチュリエは花瓶を抱え、それを流しへ持っていく。
花は揺れるたびに甘い芳香を辺りに漂わせていた。

221名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:02:32 ID:CybtGELY0


彼女はこの花を何よりも好んだ。
つつましい生活を送るなかで唯一の贅沢は、
朝市で並ぶこの花を買い、毎朝窓辺へ生けることだった。
花が散ることのないよう慎重な手つきで花瓶を置くと、しばし花の香りを楽しんだ。

川 ゚ -゚)「うん、良い香りだ」

川 ゚ -゚)「あっ……」

窓の外はやわらかい木漏れ日が差し、斑尾模様の影を作っていた。
その隙間を縫って見えるのは、陰鬱な男の顔だった。

('A`)「……」

川 ゚ -゚)(また、悩んでる)


彼はちょうど通路を挟んだ真向かいの部屋に住んでいる、売れない小説家だった。
いつも眉を寄せ、ぼんやりと机に向かっていた。

着古したシルクのシャツに、緑のボウタイ姿。タイは皺だらけで、干からびたキュウリを思わせた。
タイと同様に本人も大変痩せこけていた。
頬は青白く、ひどく不健康そうだったし、落ち窪んだ眼窩は隅に覆われていた。
男は万年筆を手に取ると、苦しげな呻き声を洩らした。

222名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:04:27 ID:CybtGELY0


クーチュリエは男を売れない小説家だと思ったが、実際に何をやっているのかは欠片も知らなかった。
彼女が知り得ることは、この窓辺から垣間見える男の辛そうな様子だけだった。
ただ、彼は机に向かうときは常に塞ぎ込んでいて、窓も開けず一日中部屋に閉じこもっていた。


      ('A`)ハァ


川 ゚ -゚)(彼の力になりたいな……)

クーチュリエは毎日彼を見るたびに、少しずつ彼を好きになっていった。
しかし、声を掛ける意気地もなければ、温かい食事を用意することもできない。
彼女は服を縫うことは得意でも、他はてんでだめだった。
生地の上でするすると自在に動く指先は、鍋を持ったり包丁を握ると、
いやいやをするように不器用に凝り固まってしまうのだった。

川 ゚ -゚)(私は無力だ……)

川 - -)(……)

彼女にできること、それは窓辺にプルメリアの花を飾ることだった。
男が窓を締め切っていたって構わない。
窓枠の隙間からこの爽やかな香りが彼の許へ届くことを願って、クーチュリエは毎朝花を生けることを欠かさずにした。

223名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:05:29 ID:CybtGELY0


春を超え冬が来て、また再び春がやってきたころ、クーチュリエはあっけなくこの世を去った。
街に流行する熱病にかかったのだ。

何日も咳が続き、凍えるような寒気が体中を蝕んでいた。

川 ;゚ -゚)「ごほっ、ごほっ。早くドレスを仕上げなくちゃ……」

川 ;゚ -゚)(ドレスは後少しで完成する。
そしたら、寝台で身体を温かくしてたっぷりと休もう)

クーチュリエは事切れる寸前まで、ミシンを踏んでいた。
最後のひと縫を終えたとき、息を一つついて、彼女は身体をミシンにもたれかけた。

川 ;゚ -゚)(ごほっ、ごほ……。花、買いに行けなかったな……)

川 ゚ -゚)(何だかとても身体が重い……)

川 - -)(少しだけ……このまま……)


川 - -)(……)

224名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:06:22 ID:CybtGELY0


彼女は誰にも看取られることなく、ひっそりとその短い生涯を終えた。

翌日、クーチュリエの葬式がしめやかに行われた。
アパルトマンの住人、花屋、顧客は彼女の作った色とりどりのドレスを着て、葬儀に参列した。
誰しもが皆、クーチュリエを愛し、彼女の服を愛していた。

ζ(;、;*ζ「あぁクーチュリエ、こんなに若いのに。
神様はなんて不公平なの」

⌒*リ´・-・リ「きっとクーチュリエの指先が神様に愛されたのよ」

(*うー;)「そうね。彼女は多分天国で、天使達の衣を仕立てているに違いないわ」


      ***川 - -)***


レースの手袋をした喪服の婦人達は、彼女の棺いっぱいにプルメリアの花を手向けた。
プルメリアはたくさんの涙の粒を浴びて小さく震える。
芳醇で懐かしい香りが部屋中に広がると、
婦人達は身を捩って彼女の早すぎる旅立ちを悼んだ。

225名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:07:07 ID:CybtGELY0


とうとう、彼女の遺体が部屋から運び出されても、
向かい側にすむ男は彼女の部屋に訪れなかった。

では何をしていたのか?

男は一日中浴室にへばりついて、反吐を吐いていた。

(lll'A`)「うぇぇ、おぇ……」

景色は歪み、明滅を繰り返す。
男の頭はベルトで絞られたようにキリキリと悲鳴をあげていた。
周りの風景が滲んでぐねぐね動くたびに、胃は律儀に痙攣した。

(ヽ'A`)「うぅ……」

最後の胃液を吐ききると、男は冷たいタイルにぐったりと横たわって、そのまま昏倒してしまった。
彼はクーチュリエが死んだことなど少しも知らなかった。
アパルトマンの周りがざわざわと騒がしくても、窓をしっかりと施錠して、膝を抱えてうずくまっていた。

226名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:07:59 ID:CybtGELY0


クーチュリエがいなくなって、アパルトマンは驚くくらい様変わりした。
石壁はくすみ、門扉は錆びた音を立てた。
小さな庭は荒れ果て、草がぼうぼうと伸び、支離滅裂な印象を与えた。

ここを訪れる人はなく、アパルトマンはまた荒んだ寂しい建物に逆戻りしてしまった。

 「よっこいっしょ!」

227名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:08:48 ID:CybtGELY0


誰かが、がたがたと乱暴な音を立てた。

アパルトマンの僅かな住人は、クーチュリエの死を悼み、部屋にひっそりと閉じこもっている。
不躾な音を立てたのは向かい側に住む、あの売れない小説家の男だった。

(*'A`)「んぐぐ……しばらく開けていないから、建て付けが益々悪くなってやがる……」

男は顔を赤くして、息んでいた。

細い腕でようやく窓をこじ開ける。

(;'A`)「はぁはぁ、やっと開いた」

額に滲む汗を拭うと、外の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

('A`)「うん、良い朝だ」

日差しに照らされた横顔は、以前と比べると随分ましになっていた。
青白かった頬には血色が戻り、ヨレヨレだったシャツは、糊のきいた真新しいものに着替えられていた。

ひどくせいせいとした顔をして、襟を整えると、ブルーのタイをきっちりと締めて居住まいを正した。
背筋はぴんと伸びて、もはやあの病的な面影はすっかりなりを潜めていた。

228名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:09:29 ID:CybtGELY0


男は、とある病を患っていた。

それはとてもやっかいで、解決する術のない病だった。
その病は神経からくるものらしく、発作が度々起きていた。
時には目が回るような感覚を覚え、またある時には耐え難い頭痛が彼を苛んだ。

男はうつ伏せになり背中を丸めて、苦痛が過ぎ去るのをじっと待つ。
いつ発作が起きるのかと、彼はびくびくしながら日々を過ごしていた。

229名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:10:11 ID:CybtGELY0


一つ、打ち明け話をしよう。

彼は向かいの少女が毎朝飾る白い花の芳香が大の苦手だった。
もはや憎んでいたと言っても差し支えないくらいに。

あれが窓の隙間から入り込み、強烈で無遠慮な匂いを漂わせるたびに、彼の発作はどんどんひどくなっていった。
それどころか、あの匂いをきっかけに発作が起こるようになってしまっていた。

やがて男は部屋を締め切って、窓の隙間に詰め物をし、一歩も部屋から出なくなった。
ものが書けなくなったので、その日の食べ物すら困窮する有り様だった。

230名も無きAAのようです :2012/12/22(土) 22:11:25 ID:CybtGELY0

('A`)(それも今日で終わりだ……)

日差しの眩しさに目を細めて逃れる。
男の口許は自然と持ち上がり、笑みを形作った。
笑みをを浮かべたまま、意気揚々と机に向かう。
なぜあの花の香りがしなくなったのか、男は知る由もなかった。
ただ、いつもより空気が澄んでいて、身体がしゃっきりとしていた。

('∀`)φ「よーし、書くぞ」

男は病が改善したのだと一人合点して、うんうん頷いた。

その顔は、クーチュリエが見たこともない、生気に満ち溢れた清々しい表情をしていた。


(ヽ'ω`) ブーン系鬱祭りのようです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1352205445/217-



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