まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 ( ^ω^)は火を使うようです。


157名無しっていいもんですね :2013/09/15(日) 09:07:42.70 発信元:1.75.243.177
0.影 -発端-

 鬱蒼と茂る木々。
 普段なら隙間から落ちてくる日の光がかろうじて足元を照らしてくれるが、赤く染まり始めたそれは足元を危うくさせていた。
「はっ……はっ」
 そんな森の中、道なき道を走る一人の少女。
 ブレザーの制服はみだれ、茶色の革靴は土で汚れている。
「くっ」
 下唇を噛んで眉間に皺を寄せながら小脇に抱えた鞄から白い紙を取り出し、振り向きざまに上方に向かって投げる。千円札程度の大きさのそれはただの紙とは思えない速さで飛び、浮かぶ黒い塊に当たった。
『キーーー!』
 当たった瞬間にバレーボール大の黒い塊は水に包まれ、動きを止めた。同時に響くガラスを釘で引っ掻くような音。しかしすぐに水を滴らせながら動き始めており、少女は振り向きもせず駆け出した。
「水も駄目。やっぱ火じゃなきゃ駄目か」
 走る少女を同じ速さで追う黒い塊。
「もう、どうしろっていうのよ。…これは私じゃ使えないし」
 鞄を抱えた左腕。その握られたこぶしをチラッと見てからまた前を見る。
「あー、もう!もうちょっと、距離をあければ書けるのに」
 再び鞄から紙を取り出し、胸ポケットからペンを取る。
『キーーー!』
 突然視界が開け、目の前に広がる街並み。そして声と同時に足元の土が吹き飛ぶ。
「きゃっ」




158( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 09:10:04.18 発信元:1.75.243.177
 衝撃波で転ぶと、倒れたすぐ目の前に現れる鉄の柵。
 そして、光を反射させながら放物線を描いて柵の向こうへ落ちていく『物』。
「えっ?」
 山を切り崩して道路を作ったためにできた崖。十メートル程コンクリートの山肌の先、アスファルトの道路へとそれは落ちていった。
「ダメ!」
 柵の間から腕を伸ばすが届くはずもなく、むなしく空を掴むだけ。
「あーっ!もう!」
 立ち上がりながら左手で鞄を拾って右手に持った紙とペンをジャケットのポケットに突っ込むと、後方に浮かぶ黒い塊を睨んだ。しかしすぐ視線を動かして柵に目をやると、再度鞄から紙を取り出しながら胸ほどの高さまである柵を乗り越え、空へと身を投げた。


159( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 09:14:37.33 発信元:1.75.243.177
1.火 -本能-

 夕日は空を赤く染め、道路には長い影が伸びている。
 片側一車線ずつの道路。大きなカーブを描くその道は高台にある学校への一本道のため、朝晩に職員の車が通る以外はほとんど大きな歩道と化していた。
 帰宅部の者が帰る時間としては遅く、部活動をやっている者にとっては早いこの時間、周囲を見回しても歩いているのは三人の少年だけだった。
「これで冬休みを満喫できるお!」
 一番前を歩いていた中肉と呼ぶには少し丸い体格の少年が、片手に鞄を持ったまま伸びをする。
「今年の学校もあと四日間か。冬休みはどうする?二人とも」
 一番背の高い少年が、穏やかな口調で会話にならない会話をした。首元までちゃんと締めたネクタイが、生真面目さを現している。
「いつもと一緒でいいんじゃね?クリスマスは飯食って、大晦日は年越しで初詣」
 一番細い少年が、けだるそうに口を開く。着崩したブレザーが、やる気のなさを醸し出している。
「二人とも、ぼくの話はスルーかお?」
 最初の少年が立ち止まり、振り返った。
「頬を膨らませるな、気持ち悪い。それをやっていいのは可愛い女の子だけだ」
「テストの後のお決まりごとだからね。今更って感じかな」
 と、同時に浴びせられる言葉。細身の少年は三白眼の眼をさらに険しくして人差し指をさし、もう一人は笑顔を見せながらずれた眼鏡を直す。
「で、ブーンは?」
「お?」
「冬休みだよ。今年はどうする?」
「今年は……」
優しい笑顔と呆れた顔を見た後、ニヤッと笑う。
「今日、ぼくんちで計画を立てるお!」
「え?」
「は?」


160( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 09:17:04.54 発信元:1.75.243.177
「先に行って用意してるからショボンとドクオも早く来るお!」
 驚いた顔をした二人にもう一度笑いかけてから歩いていた方向を向き、
「ブーーーーーン!」
 と、叫びながら両手を広げて駆けていく。
「え、ブーン?」
「ちょ、おま!」
「家で待ってるおーーー!」
 カーブを曲がり、既に見えなくなった彼を呆然と見送る二人。
「あいつはまったく」
「どうする?ドクオ」
「いくしかないんじゃね」
「走る?」
「歩きでいいんじゃね」
 そういいながら呟きながら歩き始める二人。
「まったくしょうがないな、あいつは」
「嬉しいのは分かるけどね。ちょっとはしゃぎ過ぎかな」
「補習がなければ、家にいられるからな」
「もう、半年たったんだね」
「ああ」
「今年は、全部ブーンの家かな」
「おばさんも来てくれれば、おまえんちでもいいんじゃね」
「ドクオの家の道場でも良いと思うけど?充分広いでしょ」
「うちの親父がクリスマスやると思うか?正月の寒稽古なら招待するけどよ」
「あれは止めておくよ」
「遠慮するなって」
「いやいや。僕は家で本でも読んでいるから」
「親父に伝えておくよ。ショボンが『久し振りに寒稽古に出ようかな』って言ってたって」
「本気で怒るよ」


161( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 09:19:28.52 発信元:1.75.243.177
「親父もお袋も喜ぶのに。たまには顔見せてやってくれよ」
「稽古無しで良いならいつでも行くけどね。あれは本気で許して」
「つれないな」
「いや、本気であれは」
 まっすぐ前を向いて歩いていた二人が立ち止まり、お互いを見て苦笑しあう。
「オレは物心ついたころから頃からずっとだぜ」
「ご愁傷様です」
「助けてくれよ」
 再び歩き始める二人。
「あーあ」
「ま、体もなまったしね。寒稽古が終わったくらいに顔出すよ」
「ん、頼む」
「さて、そろそろ本気で行かないとブーンが怒るね」
「ちょっと急ぐか」
「うん」
 夕焼けが、二人の頬を紅く染めていた。


「ブーーーーン!」
 緩やかなカーブを道なりに走るブーン。
 両手を大きく広げ、左手に持った鞄を揺らしながら駆け抜けていく。
 その額に当たる、小さな赤い光。
「お?」
 顔をしかめて立ち止まる。
「なんか当たったお」
 それほど痛くはなかったが額に手を当てながら周囲を見回すと、少し先にほんのりと赤く光る物があった。
「お?」


162( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 09:22:30.95 発信元:1.75.243.177
 近寄り、しゃがみ、拾う。
「おお?」
 それは、指輪だった。
 一センチ程の幅で銀色のそれには所々に小さな赤い石がちりばめられ、全面に紋様が彫られていた。
 そして、石だけでなく全体から、赤い光を放っていた。
「なんだお?」

「どいて!」

「お?」
 自分の右掌の中のそれを見て小首をかしげた瞬間、突風が吹き、女の子の叫び声が響く。
 吹き荒れる風に眼を細めながら後ろを振り向くが、誰もいない。
「お?」
「退けって言ってるでしょ!」
 声のした方向、上を向くと、目の前に膝小僧があった。
「ひでぶ!」
「何で退かないのよ!バカ!」
「み、水色」
「水色?このバカ!スケベ!」
「あうっ!」
 仰向けに倒れたブーンの上に女子高生が馬乗りになっていた。
「な、何で上から」
「え、あ」
 慌てて横に移動する少女。そしてみだれた制服を直しながら呼吸を整えている。その隙に上半身を上げるブーン。
「ご、ごめんなさい」


163( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 09:25:18.80 発信元:1.75.243.177
「いや。っていうか、何で上から…。あれ?伏木さん…だお」
「な、内藤君!」
「伏木さん?今、上から」
「ごめんね内藤君。ぶつかっちゃって。急いでたから走ってたんだけど、止まれなくって。ぶつかっちゃった」
「いや、上から」
「大丈夫?内藤君?ぶつかった拍子に頭打ってない?」
「え、でも」
「そんなに強くぶつかっちゃったかな?記憶間違いしちゃうくらいに。ごめんね、内藤君。病院行かなきゃ」
「い、いや、大丈夫だお」
「でも」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと思い違いをしただけだお」
「そう?良かった」
 笑顔で手を差し伸べる伏木。ブーンは一瞬不思議に思ったが、すぐに手を振りながら立ち上がった。
「一人で立てるお。もう大丈夫だお」
「ごめんね」
 その前にしゃがみ、ブーンのズボンについた砂埃を払う。
「い、いいお!そんなことしなくて!」
「え、でも」
 慌てて後ずさりしながら自分で砂埃を払う。
「これでもう大丈夫だお」
 そう言って笑うブーンにつられて伏木も笑顔を見せる。しかし、すぐに視線を下に向けた。
「内藤君」
「もう大丈夫だお」
「あ、うん。あの、ね。この辺りに指輪が落ちてなかったかな?」
「お?」
「それを探して走ってきたんだけど」
「これのことかお?」


164( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 09:27:10.60 発信元:1.75.243.177
 手に握ったままだった物を思い出し、握ったまま胸の高さまで手を上げた時、足下のアスファルトが砕けた。
「おお!」
「もう!空気読みなさい!」
 下を見るブーンと上を見る伏木。
 思わずしゃがみこむブーンを庇う様に空に浮かぶ黒い塊の前に立ち、胸ポケットから一枚の紙を取り出して投げ付けた。
それは塊に当たると旋風と化し、塊を飛散させる。
「内藤君!指輪は!」
「お、お、お」
 しゃがんだまま一部始終を見たブーンは腰を抜かしながらも右手を差し出す。
「そう、それよ!ありが…とう……。光ってる。まさか」
 ブーンの右手を両手で包むように持ち、指輪を見る。
 そして大きく目を開いて、内藤を見た。
「内藤君……。あなた」
 再び砕け散るアスファルト。
 振り向いた伏木と内藤の目に映る黒い塊。
「再生が早い!」
「な、なんだお!あれはなんだお!」
「内藤君!」
「お?」
 掌から指輪を取った伏木が内藤を見ている。
 淡い茶色の瞳が、じっと。
「ふ、伏木さん?」
「今だけで良いから力を貸して」
「お?」
「お願い!早くこれを嵌めて!」


165( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 09:30:17.45 発信元:1.75.243.177
 改めて指輪を内藤に渡し、再び振り向く。
 同時に投げられる白い紙。今度は土でできた槍と化して塊を飛散させる。
 しかし飛び散った黒い欠片はすぐに集まり始めた。
「え?」
「いいから早く嵌めなさい!」
「は、はいだお!」
 勢いに押されて右手の人差し指に指輪を嵌めた。
「はめたお!」
「よし!」
 倒れこんだ内藤の右側に座り、彼の右腕を持つ。
「掌をあいつに向けて!」
「はいだお!」
 右腕をピンと伸ばし、指を空に向けて掌をまとまりつつある塊に向ける。それに添えられる伏木の両手。
「叫んで!」
「はい!!」
「『炎』!」
「お!」
「早く!」
「いや、それはあまりに中二病的な」
「早くしなさい!」
「はい!」
 驚いたように隣にいる伏木を見るが、真剣な眼差しの彼女に押され、再度塊を見て叫んだ。
「『炎』!!」
 掌から噴出す紅蓮の炎。
 太い丸太ほどあるそれは黒い塊を包み込み、消した。
「う……そ」
 それはこっちのセリフだと思いながら隣を見るブーン。
 そこには指示を出したはずの彼女の呆然とした顔があった。


170( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 10:09:51.67 発信元:1.75.243.129
「こんな……こんなすごい炎が出るなんて」
「伏木さん、これはいったい」
 ブーンの言葉に我に返り、慌てて手を離して立ち上がる。
「あ、ありがとう内藤君」
「今のはいったいなんだお?」
「今のは……」
 視線をはずし、口篭る伏木。一度チラッとブーンを見るが、再び視線を外す。
「伏木さん」
「内藤君には、関係ないことよ」
「か、関係ないって」
「ありがとう。そして、ごめんね」
 近寄り、しゃがみこみ、ポケットから出した何も書いていない白い紙を内藤の額に当てる。
「伏木さん?」
「ほんとにありがとう。でも、ごめんなさい。遅いかもしれないけど、巻き込むわけにはいかないの」
 ペンをその紙に当てようとしたその時、横から伸びて聞いた手に両手を掴まれる。そして首筋にひんやりとした物が当てられた。
「え?」
「……」
「ブーンに何をするつもりかな?返答によってはぶち殺すよ」


「ドクオ!ショボン!」
 ドクオはペンを持つ手の手首を掴み動きを止め、ショボンは紙を持つ手の手首を掴みながら伏木の首筋にボールペンの先を当てている。
「そいつ、マジだから動かないほうが良いぜ」
「うん、そうだね。とりあえず手に持つ物を放そうか。話はそれからだね」


171( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 10:11:48.73 発信元:1.75.243.129
 眼球だけで自分の動きを封じている二人を見る少女。
 二人とも表情は冷たく、視線だけで心が竦む。
「もう少し力を緩めてくれないと、動かせないわ」
「そこまで強く押さえていないよ。第一、ブーンの額に当てている手はほんの少し上に上げれば良いし、ペンは人差し指の力を抜くだけで良いでしょ」
 冷たいショボンの声。
「あいにくと、本当に怯えているのか何か策のためにオレ達の力を緩めたいのか、どちらなのか分からないんでね」
「それでも出来ないって言うなら、意識を失うことになる」
ショボンの言葉を受けて、ドクオの空いた拳が握られる。
「二人とももういいお!」
「駄目だよ、ブーン」
「あんな火だとか槍を操るようなやつだ、何をするか分からない」
「一見した所この紙が媒体みたいだけど、実は違うってこともあるからね」
「あの火はぼくの手から出たんだお!」
「お前はそんな事出来ないだろ」
「でも出来たんだお!」
「おそらくそれも、この女の力によってでしょ」
 ブーンと会話しながらも二人もしくはどちらか片方は常に伏木を見ている。その視線の先で、大きくため息をついた。
「貴方達も、見ていたのね」
「びっくりしたよ」
「伏木さんは悪い人じゃないお!」
「はぁ」
「お人よしだね。ブーンは」
「分かったわ」
 紙がひらひらと舞い、ペンが下に落ちた。
「どちらにせよ、説明しなければいけないみたい。けれど…」
「伏木さん」
「……」 
「『けれど』?」
「後悔するのは聞いた貴方達よ」


172( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 10:15:29.82 発信元:1.75.243.129
 木製のテーブルと椅子。
 一つ一つの卓はほとんどが四名用で、テーブルとテーブルの間は十分な距離があけられており、決して小さくはない店内だが一度に入る客はそれほど多くはないのが伺える。
「この店、初めて入ったお」
 その一番奥。周囲を観葉植物と木の柵で囲まれた席に、四人はいた。
 半個室になっているその席は正方形のテーブルを囲むように三つの二人掛けのソファーが置かれ、一番奥のソファーに伏木、右側のソファーにドクオ、左側にショボンとブーンが座っている。
「美味しいけど、ちょっと高いからね。僕も一人になりたいときに入るくらいだよ」
「ぼくは水で良いお」
 メニューを見ていたブーンだったが、値段を見て顔を青くし、静かにテーブルに置いた。
「今日は僕がだすから好きなの頼みなよ。せっかくだしさ。ブーンはコーヒー苦手だから紅茶とかどう?それにここ、ケーキも美味しいよ」
「駄目だお!」
「ここに誘ったのは僕だからさ。あまり人に聞かれたくない話みたいだから、人の少ない店の方が良いからね。僕たちが入れる店で人が少ないところって、近場だとここしかなかったから」
 ブーンに笑顔で話しかけながらメニューをもう一度渡し、『それに…』と言いながら冷たい目線で伏木を見る。
「あんまり、家を知られたくないからさ」
「それ、どういう意味」
「分からないかな?」
 伏木の鞄はショボンが持ち、自己申告によって制服のポケットから差し出された数枚の紙はドクオが持っていた。
「でもやっぱり悪いお」
「オレはコーヒーと苺ののモンブラン。ショボン。勿論オレにも奢ってくれるんだろ?ブーン、早く選べ」
「ドクオも実は甘党だよね。コーヒー、豆は?」
「ワカンネ。酸味が弱いやつにしてくれ」
「了解。ほら、君も選んで良いよ。奢ってあげるから」
 投げるようにメニューを伏木の前に置く。
「私はいらない」
「もし僕達に信用してもらいたいのなら、注文することだね」
 自分の感情を隠そうとしないショボンの声。


174( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 10:20:48.01 発信元:1.75.243.129
「出されたものを疑わずに食べるのは、出した相手を信用するという目に見える行為であると同時に、だから自分も信じてほしいという目に見えない思いの行為でもある……と、僕は思う」
 ショボンを睨みつける伏木。
しかし彼はそれを鼻で笑って撥ね返す。
「分かったわ」
 忌々しげに息を吐き、メニューを取って捲りはじめた。
「ブーン、決まった?」
「本当に良いのかお?」
「良いよ。実を言うとねこの店は知り合いの店なんだ。だから安くしてもらえるから、本当に気にしないで良いよ」
「うぅ…」
「決まったわ」
 憮然とした表情でショボンを見る。
「なに?」
「この一番上に書いてあるダージリン・ゴバルダラ・セカンドフラッシュってやつ。それと苺の生クリームとカスタードのタルト。バニラアイスも添えて」
「……遠慮もなく一番高いものを頼むね」
「あ、それウマそう。オレもそれにしよっかな」
「ドクオ…」
「少しあげるから、あんたのモンブランも一口よこしなさい」
「……OK」
「ブーンも、僕にはこれくらい厚顔無恥になってくれて良いんだよ」
 呆れたように伏木を見た後、ブーンに笑いかける。
 それを見て、ブーンも笑顔を見せてメニューを見直した。


175( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 10:23:46.92 発信元:1.75.243.129
・・・・・・・・・・・・・

「それを、信じろってのか?」
「信じなくても良いわ。でも、真実よ」
 伏木から語られた内容に呆れ顔の三人。
「いくらなんでも、酔狂だね」
「でも、ブーンの手から火が出たのは本当だお」
 ブーンの指にはめられた指輪をじっと見る三人。伏木はティーカップに口をつけている。
「整理させてもらって良いかな?」
「どうぞ」
 ショボンの声に導かれて白磁のカップがソーサーの上に戻され、挑戦的な目が彼を射抜く。
しかし彼は臆することなく見返し、ずれた眼鏡を直した。
「君『伏木奈子』は、別の世界からやってきた」
「『常世』よ。こちらの世界は『現世』と私達は呼んでいる」
「君の住むその世界『とこよ』はこの世界『げんせ』と密接に繋がっていて、どちらかの世界に大きな衝撃が起こると、もう片方にも何らかの影響が現れる」
「近頃の自然破壊はこちらにも大打撃よ。向こうでフォローしているからこっちも何とかなっているんだから、感謝してほしいわ」
「けれど、その『常世』にも危機が訪れた」
「均衡が崩れたのよ。世界を、暗闇が覆い始めたの」
「それを戻すために、こっちに封印していた指輪を取りに来た」
「……」
「おい、まだ隠していることがあるのか?」
「私にも、分からないの」
「わからない?」
「指輪が全部そろえば本当に均衡を戻すことが出来るのかどうかが」
「はあ?」
「でも、それ以外に方法が見当たらない。だから取りに来たの」


176( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 10:27:13.02 発信元:1.75.243.129
「ってことは、指輪が全部そろっても戻らないかもしれないってことか?」
「……」
「指輪が揃ったら何をするの?どこかに奉納するとか?」
「……」
「それも分かってないんだ」
「はっ。なんだそりゃ」
「仕方ないじゃない!他に道は見当たらなかったのよ!」
 二人の問いに対して不貞腐れた様に下を見ていた伏木だったが、顔をあげてきつい瞳で二人を見回し、けれど悲痛な面持ちで声を荒げる。
今までは淡々とした口調だったが、感情が表に出ていた。
 やれやれといった風情で肩をすくめるドクオ。
「なんで、自分で使わなかったんだお?」
 ずっと自分の指にはまった指輪を見ていたブーンが口を開き、伏木を見た。
 三人のきつい視線ではなく、やわらかい優しい瞳に見つめられ、視線をそらして俯く。
「この指輪を、なんで自分で使わなかったんだお?」
「そうだね。自分で使っていれば、こんな事にもならなかった」
「そりゃそうだ」
「なんでだお?」
「…私は、使えないの」
「使えない?」
「その指輪は『火』の指輪。私には使えない力だから使えなかったの。そうしたら内藤君が使える素質を見せて、思わず……」
「指輪は全部で幾つあるの?」
「……六つ」
「全部こっちにあるのか?」
 黙って首を振り、顔を上げる。
「五つ。こちらには五つ封印されているはずよ」
「それを集めている最中ってことだね」
「ええ」


177( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 10:30:09.82 発信元:1.75.243.129
「じゃあ、手伝うお」
「え?」
「は?」
「ちょ、ブーン?」
 ニコニコと笑うブーンを見る三人。揃って口をあけている。
「何を言っているの?あなた」
「もうちょっと考えて口を開け」
「いやいやいやいや。ブーン、自分が何を言っているか分かってる?いや、分かってないよね?」
「ぼくも、手伝うお。指輪を探すのを」
 変わらずニコニコとするブーンに肩を落としてうなだれる三人。しかしすぐに気を持ち直し、ブーンに詰め寄った。
「気安く言わないで。また襲われるのよ、絶対に。そんな危険に遭わせるわけにはいかないの。巻き込んだことには心から謝るわ。許してほしいなんて言えないのも分かってる」
「オレ達が出来ることなんてないだろ」
「そうだよ、ブーン。そんな危険なこと出来ないよ。指輪を返して、僕らは忘れよう」
「そう、それが一番よ」
「とりあえずもう一度よく考えろ」
「考えることなんてないよ。ほら、指輪を早く外して」
「そうそう、あんた良いこと言うわね。ほら、早く外して」
「ブーン!」
 畳み掛けるように喋りだし自分に詰め寄る三人に笑い出すブーン。
「ブーン?」
「な、なによ」
「なに笑ってんだ?」
「息ぴったり合って、みんな仲良しだお」


180( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 10:36:53.51 発信元:1.75.243.129
 腹を抱えるブーン。
 三人は顔を見合わし、ばつが悪そうに立ち上がりかけた腰を下ろして椅子に落ち着いた。
「と、とにかくブーン」
「手伝うのは決定事項だお」
 それでも食い下がろうとするショボンの声に重なるように口を開くブーン。
 相変わらずニコニコとしているが、決意が感じられる。
「ブーン」
「なんでだ?」
「どうして?そんなに」
「外れないんだお」
「へ?」
「は?」
「あっ」
「指輪が外れないんだお。さっきからやってるんだけど、なぜか抜けないんだお。普通にしてるとはめてるのも忘れるくらいゆるいし軽いのに、抜こうとするときつくしまって重くなるんだお。だから、手伝うお」
 指輪をはめた右手をひらひらとさせるブーン。
 それを見つめる三人。
「そんな……。まさか、『貫く者』だったなんて」
「おい、外せないのか?これは」
「指輪を使うことが出来るだけの人なら、すぐ抜けるはずなの。まるで指輪が自分から指から外れるようにね」
 じっと『火の指輪』の嵌められたブーンの手を見る伏木。
「でも、これは指輪が自分を使うものだと認めてしまった。内藤君を、自分を使う者だと選んでしまった。だから内藤君以上にその指輪を使うのがふさわしい人が現れるか、なにか外れなければいけない状況にならなければ外れない……多分」
「マジかよ」
 ブーンの手を掴んで指輪を抜こうとするショボン。
 ブーンの顔が苦痛でゆがむ。


183( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 11:19:34.41 発信元:1.75.4.232
「ショボン!痛いお!」
「駄目だ。本当に抜けない。一見緩々しているのに、抜こうとすると動かない」
 再び、 呆然とする三人。
 ニコニコと笑っているブーンを見て、揃ってため息をつく。
「ごめんなさい」
「伏木さんのせいじゃないお。あのままだったらあの黒いやつに殺されていたかもしれないんだおね?」
「それはそうだけど……」
 しおらしく視線を落とす伏木。それを見たショボンとドクオが再びため息をつく。
「しょうがない…か」
「だな」
「僕らも付き合うよ」
「だめだお!」
「なに言ってるの!」
 今度は伏木とブーンが息を合わせる番だった。
「危険だお!」
「遊びじゃないのよ!」
「ブーンがやるのに、僕らがやらないわけないだろ?」
「オレ達がただ傍観しているとでも思ったのか?」
 焦ったように問いかける二人に、普通な顔をして逆に問いかける二人。
 そして心底不思議そうにブーンを見る。
「二人とも……」
「駄目よ」
 泣きそうな顔のブーンに笑いかける二人。けれどそれを破る声があった。
「君に決定権はないんだけどね。言いたいことがあるのなら、聞くだけは聞いてあげるよ」
「遊びじゃないの。彼を……内藤君を巻き込んでしまったことさえしてはいけないことなのに、あなた達まで命の危険にさらすわけにはいかないのよ」
 呆れたように自分を見るショボンの視線にひるむことなく、三人を順に見ていく伏木。
「内藤君」
 そしてブーンの前で視線を止める。


186( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 11:24:30.60 発信元:1.75.4.232
「巻き込んでしまってごめんなさい。そして、ありがとう。こんな突拍子もない話を信じてくれて。その上力を貸してくれるなんて……」
 視線を伏せ、自分に語りかけるように口を開く。
「でも、その心だけで充分。その指輪は他の三つを探すまでの間あずかってもらうことにはなってしまうけど、手伝ってくれることはないの。出来るだけ早く外す術を探すから、申し訳ないけれどそれまであずかっていてくれるかな」
「伏木さん!」
「それで、充分だから。本当にありがとう」
 じっとブーンを見る伏木。その視線を受けながら悲しそうに顔をゆがめるブーン。
「なるほどね。だからなのかな」
 やわらかい笑顔でブーンの申し出を拒絶した伏木。
 沈黙したブーンを見ていたショボンだったが、睨む様に伏木を一瞥してから口を開いた。
「……なに」
 その視線に真っ向から立ち向かう伏木。
「いや、実はさっきからなんとなく予感を感じていたんだ」
「はあ?」
「本能……とでも言うのかな」
「…何を言っているの?」
「偶然じゃなく、必然」
「ちょっと!」
「結構嘘が付けない人みたいだね。君は」
「何なの?いったい」
「今君は、『ほかのみっつをさがすまでのあいだ』と、言った」
「それがなに?」
「探す指輪は全部で五つなのに、これから探すのは『三つ』なんだよね」
「だからそれがなんだって言うのよ!」
「うん。普通なら残りが三つってことは、もう二つ見つけてるってことで、ブーンが持っている指輪の他にもう一つ見付けてるんだなってだけの話なんだけど」
 怪訝そうに眉間にしわを寄せる伏木。
 それを不思議そうに見るブーンとドクオ。
「その通りよ。それがどうしたって言うの」
「うん。普通なら特に問題ない話だよね」


187( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 11:30:15.37 発信元:1.75.4.232
 大きく息を吐きながら、頭をかくショボン。
「それ、見せてもらえるかな」
「なんでよ」
「何故?見せるくらい良いよね」
「駄目よ。ここにはないから。見せたくても見せられないの」
「嘘だね」
「どうして嘘をつく必要があるのよ!」
「君が一番よく知っていると思うけど?」
「どういう意味!」
 声を荒げる伏木。冷静なショボンと、なにが起こっているのかわからずにキョロキョロと二人を見るブーン。ドクオは残ったコーヒーをすすりながらそんな三人を見ている。
「うちの高校は私立で、入るには試験はもちろんだけど、ちゃんとした身元が必要なんだ」
 いきなり話を変えるショボン。
 拍子抜けして、今にも立ち上がろうとした伏木が腰を沈める。
「でも、君はこの世界には戸籍とかないよね?誰かが手引きしてくれたのかな?その人に、迷惑がかからなければいいけどね」
 にっこりと微笑むショボンを見て、ため息をつくドクオ。残りの二人は大きく目を見開いて口もぽかんと開けた。
「もちろん、今手元にある指輪を僕に見せてくれたら、そんなことはおきないと思うけどね。あと、これ以降もこの事を持ち出したりしないよ」
「そんなの信用できるわけ」
「してもらうしかないね。こればっかりは。でも良く考えてみて。鞄は僕の手元にあるのに勝手に調べる様なことをしていないってことを」
 忌々しげにショボンを見る伏木。ショボンを諌めようとしたブーンはドクオに何かをささやかれて動きを止めていた。
「ブーンの前で、嘘はつかないよ。ブーンに嫌われたら、僕は生きていけないから」
 にっこりと微笑むショボン。
 眉をひそめて心配そうに自分を見るブーンに笑いかけ、冷静に自分を見るドクオにはブーンには見えない位置の口角を上げて笑みを見せる。
「分かった。でも、約束は絶対よ。鞄、返して」
 ひとつ息をついた伏木が片手をショボンに差し出した。


191( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 11:36:00.82 発信元:1.75.4.232
 四人の目の前に置かれた茶色の皮で出来た小さな巾着袋。
 その上に置かれた、一つの指輪。
 中心の石は陰陽の印の様に透明な水色の石と濁った水色の石が組み合わさり、それを細い銀の線が紋様のようなデザインを組みながら幾つも重なって指輪と成した物だった。
 そして、淡い光を放っていた。
「へー、綺麗なもんだな。これは何の力を持ってるんだ?」
「水の……指輪……なんで、輝きを……」
「水かお。綺麗だお」
 その美しさに見惚れるドクオとブーン。
 伏木は今日何度目かの目を大きく見開いた顔をして、ゆっくりと視線を指輪からショボンへ移動させる。
「まさか」
「多分、その『まさか』なんだと思うよ」
 おもむろに右手で指輪を持ち、当たり前のように左手の中指にはめるショボン。
「おい、ショボン」
 ドクオの止める声もブーンと伏木が立ったのも間に合わず、それは一度強く、けれど優しく光り輝いた後ショボンの左手中指に納まっていた。
「僕は、水の指輪の適合者。水の力を使い、知識を持つ者。そして、指輪に選ばれし『守りし者』ってことみたいだよ。伏木さん」


193( ^ω^)は火を使うようです。 :2013/09/15(日) 11:40:00.13 発信元:1.75.4.232
次回

「3.水 -知識-」

というか正式版は、現行が終わり次第きっといつかどこかで。

王道中二病な属性バトル物を目指してたぶんどこかで投下。

支援ありがとございました。

では次の方どうぞ。



( ^ω^)ブーン系小説シベリア図書館のようです★50
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/siberia/1379170546/



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