まぜこぜブーン

ブーン系まとめ

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 ニコイチサイキックのようです


564名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:06:29.38 発信元:123.225.234.137
鮮やかな赤のフィルターの向こうで、ぼんやりとした何かがいくつも揺れていた。
おそらく工事に使う資材や重機なのだろうが、その正体を確かめることは叶わない。
今の僕にとって、それはかろうじて歩けていることを証明してくれるだけのものに過ぎなかった。

「  !   て!」

きっと、遠くの方で、誰かが、何か言っている。
もうほとんど使い物にならない耳では、それだけしか判別できない。

「  ラー!  じして!」

がくがくと大きく視界が揺れて、さっきよりも少しだけ鮮明に声が聞こえる。
僕の鼓膜を悲鳴にも似た響きで震わせる声は、泣いているようにも思えた。

返事をしようと息を吸った。上手く吸えているのか分からなかった。
口を開いた感触も、吸い込んだ空気が喉を撫でる感触も、なかった。
全身の感覚が失せているのだから、当然なのかもしれない。
自分の体がまだ存在しているのかどうかすら、曖昧だった。

「っ!」

突然、地面が目の前に現れた。
それが転んだせいだと気付くのにすら、時間がかかってしまう。
ずっと続く、まどろみの中にいるような感覚のせいで、何もかも鈍ってしまっている。

おそらく、これが力の代償なのだろう。
人の身には過ぎた代物である、超能力という力の。




565名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:10:21.46 発信元:123.225.234.137
だとしたら、彼女には何度お礼とお詫びを言っても足りない。
足りない分を埋めようと、適当な言葉を探しているうちに、今度は空が目の前に広がった。
瞬く間に、僕の血で作られた赤のフィルターに、穴が開いていく。
穴から見える空はくすんだ灰色で、先刻から強い雨が降っていたことを思い出した。

「こ  の やだ! やだよ! ねえ、モラ  !」

人影が空と僕の間に割り込んでくる。
途端に触覚が、視覚が、聴覚が少しだけ戻ってくる。意識も鮮明になってくる。
さながら、巻き戻しのボタンでも押したかのようだ。

どうしてだろう。どうして、いまさらになって。
ぼんやりと浮かべた疑問の答えを探しながら、人影にピントを合わせる。

リハ*;д;リ「モララー! 起きて! お願い!」

答えは、すぐに見つかった。


568名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:14:05.74 発信元:123.225.234.137
僕は最後に、お前の声が聞きたかったんだ。
お前の顔が見たかったんだ。
お前に触れたかったんだ。

(; ∀ )「……ぅ、あ」

リハ;゚д゚リ「モララー!? よかっ……」

(; ∀ )「……アイ、シ、ス、たのむ」

僕は、最後に。

(; ∀ )「……しんでくれ」

お前を、助けたかったんだ。


569名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:16:40.47 発信元:123.225.234.137
 








ニコイチサイキックのようです


571名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:20:24.83 発信元:123.225.234.137
ありがたいことに、僕は恵まれた人間だ。

実家は建設会社を営んでいて、人よりも裕福な暮らしができている。
進学校に通っていて、その中でも成績は上位だ。
所属する文芸部で書いた小説が、権威のある賞を取ったことがある。

体育祭のリレーで運動部をごぼう抜きにして、クラスを1位に導いたことがある。
さらに、その様子を見て一目惚れをした女の子に告白されたことがある。
僕のことをいいやつだ、と慕ってくれる友人が大勢いる。

数えきれないくらい言われたことがある。
うらやましい、と。

だけど、みんなが思っているほど、僕は今の自分が好きじゃない。
口に出したことはないし、するつもりもないけど。


573名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:23:40.93 発信元:123.225.234.137
小遣いが友人よりも多いのは、父さんと母さんが頑張って働いているからだ。
成績がいいのは、小さな子供だった僕に、勉強の大切さを説いてくれた家庭教師のおかげだ。
賞を取ったのは友人にアイデアをもらった方で、自分で考えた方は何の成果も挙げられなかった。

運動神経がいいのは、陸上でインターハイに出たことがあるという父さんからの遺伝だ。
顔が整っているらしいのは、言い寄ってくる男が後を絶たなかったという母さんからの遺伝だ。
いいやつと言われるのは、僕に理解を示してくれている周りの人たちのおかげだ。

僕が持っている、周囲に誇れるもの。
それはすべて、自分の力で手に入れたものではないように思えて仕方がなかった。

だから、有り体に言うなら、僕は渇いていた。
自分の意志で選んで、自分の力で、胸を張って誇れるものを手に入れたい。
気付けば心の隅に芽生えていた欲求は、どれだけ日常が流れても、消えることはなかった。


575名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:27:15.15 発信元:123.225.234.137
「んじゃーなー」

( ・∀・)「おう、また明日なー」

間延びした別れの挨拶を交わし、友人が駅の中へと消えていく。
その背中を見送ってから、僕も帰路についた。
学校の帰りにゲーセンに寄って、気付けばもう19時を過ぎている。
夕飯はどうするのか、という母さんのメールにかなり遅れて返事はしたけど、まだ残っているだろうか。

(;‐∀‐)「……お腹減ったなあ」

家路を急いで、普段は通らない繁華街を突っ切りながら、ひとりごちた。
目に痛いネオンの光も、近付く稼ぎ時に備えて徐々に灯り始めている。
それらに混じって自己主張する、見慣れたファーストフードや牛丼屋の看板。
気を抜けば、街灯に群がる昆虫のように、その光に吸い寄せられてしまいそうだ。

(;・∀・)「いや、いやいや……食べて帰ったらさすがに母さんも怒るよな……」

こうなったら、誘惑に負けてしまう前に、足早に繁華街を立ち去ってしまおう。
ただでさえ、この辺りは治安が良くないのだから。
例えば、そこら中に存在するビルの隙間の暗がり。
その奥では、よからぬことが平然と行われていると聞く。


576名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:30:11.20 発信元:123.225.234.137
早く帰って、玄関の淡い橙色の光に迎えてもらおう。
それから、連絡もなしに帰りが遅くなったことを母さんに怒られよう。
取っておいてあるか分からないけど、その後で夕飯を食べよう。

変わり映えしない、だからこそ安心感で満たされた日常に、帰ろう。

急に恋しくなった我が家へ思いを馳せながら、僕はそそくさと繁華街を抜け――

【たすけて】

(;・∀・)「……え?」

――られなかった。

******


579名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:33:44.59 発信元:123.225.234.137
薄暗い屋上を、全速力で駆け抜けていく。
エアコンの室外機や、何を通わせているのか分からないパイプを避けながら。
真下からのどぎついネオンの光が、今はありがたかった。

「食らえっ!」

背後からの怒号に、顔だけで振り返る。
視線の先には、いかにも繁華街にいそうな、ガラの悪い服を着た3人の男たち。
そのうちのひとりが右手を、深い緑色に染まった瞳を、私に向けている。

リハ;゚д゚リ「きゃあっ!」

大きく右に進路を変えた瞬間だった。
さっきまで私のいた場所の延長線上にあった室外機から、火柱が立ちのぼった。

飛んできた破片にひるんでしまい、バランスを崩してしまう。
当然のように足はもつれ、全身がコンクリートの地面に激しく打ちつけられる。


581名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:37:29.36 発信元:123.225.234.137
擦りむいた頬や膝が、ひりひりと痛む。
酸素が足りていないせいで、呼吸が苦しい。
逃げ出してからろくに休んでいないからか、頭がぼんやりとする。

それでも、すぐに立たないと。
立たないと、連れ戻される。
殺される。

鉛のように重い体をなんとか起こして、振り返った。

リハ;゚ー゚リ「……っ!」

私を捕まえようと襲いかかる3人の男たちが、眼前に迫っていた。

リハ;>д<リ「……ううううううあああああああっ!!!」

込み上げてきた悲鳴を押し殺して、喉が張り裂けそうなくらいに叫ぶ。
一瞬、男たちがひるむ。
隙をついて、強く地面を蹴った。
体が、水の中にいるかのように、浮き上がる。


587名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:49:27.28 発信元:123.225.234.137
転落防止のフェンスを軽々と越えて、飛んでいく。
初めて飛べた時、宇宙遊泳をしているような感覚にとても感動したことを思い出す。
今はもう、何も感じないけど。

真下では、極彩色の光が混ざり合って、道に沿って伸びていた。
私の味気ない真っ白なパジャマも、きっと今は鮮やかに染まっている。

無事に逃げ切ったら、ゆっくりとあの光の中を歩いてみたい。
光が目に悪くても、少し治安がよくなくても、構わない。
私からすれば、この場所だって『普通』の範疇だから。

もうすぐ、隣のビルの屋上にたどり着く。
3人組もまだ追ってくるだろうけど、これでだいぶリードが稼げる。
サイコキネシスの男が他のふたりを移動させて、最後に自分も移動し終える頃には、私はずっと先だ。

逃げ切れる。
その予感は、ほとんど確信と言ってもよかった。


592名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:53:25.67 発信元:123.225.234.137
リハ; д リ「あ”ぁぁっ!?」

突然、激しい頭痛に襲われた。
頭をナイフで刺されて、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような痛み。
まさか、ここまできて、限界がくるなんて。

リハ; д リ「は、」

浮遊感が消え失せて、体が地面に引っ張られる。みるみる高度が下がっていく。
だけど、前に進む勢いはそのままで。

リハ; 皿 リ「ぐぅっ!!」

わずかに隣のビルの屋上には届かず、外壁に体を叩きつけられた。
がくがくと脳が揺さぶられて、意識を手放しそうになる。
その間にも、地面は慈悲もなく迫ってくる。

せめて、一瞬だけでいいから。
一層激しくなる頭痛に耐えながら、宙に浮く自分をイメージする。


596名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 18:56:20.37 発信元:123.225.234.137
数秒遅れて、落下が止まった。
そのはずみで、がくん、と体がくの字に曲がる。
今の高さはたぶん、2階くらいはある。
間一髪、アスファルトのシミになるのは避けられたみたいだった。

リハ; д リ「ぅ……ぁ……」

そして、これが正真正銘の限界みたいだった。
体は再びを落下を始める。

リハ; 皿 リ「う゛っ」

背中から地面に叩きつけられる。
肺の中の空気がすべて吐き出されて、呼吸ができなくなる。
苦悶の声をあげることも、叶わない。

リハ; д リ「ご、あ、がっ……」

頭上から男たちの叫ぶ声が聞こえる。
落ちた、とか下に行くぞ、とか。
きっと、数分もしないうちに下りてくる。

それまでにここから逃げるのは、追跡を振り切るのは、無理だ。


599名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 19:00:03.30 発信元:123.225.234.137
連れ戻されたら、いったい何が待っているんだろう。
今までよりも過激な、被験者を顧みない人体実験か。
それとも、危険分子と判断されてすぐに殺されてしまうか。
どっちにしろ、私には平穏な死なんて訪れないに違いない。

顔を上げると、ビルの壁に縁取られた、夢にまで見た普通の世界があった。
通り過ぎていく人たちは、私に気付く気配すらない。

リハ ;д;リ「うっ……うぅ……」

いいなあ。
あの世界は自由で、鮮やかで、輝いていて。

触れられそうなほどに近くにあるのに、眺めていることしかできないなんて。
そう思ってしまうと、途端に光が目に沁みて、視界が滲んでくる。

こんな力なんて、欲しくなかった。
好きで手に入れたんじゃない。
何でもできたって、嬉しくなんかない。

私が私じゃなかったら、あの光の中を歩けていたかもしれないのに。

無駄だと、届かないと、叶わないと、分かっているけど。
それでも、思わずにはいられない。

誰か、私を――


601名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 19:01:15.48 発信元:123.225.234.137
 






――たすけて。







******


604名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 19:04:14.69 発信元:123.225.234.137
その声は、繁華街の喧噪の中でもはっきりと聞き取れた。
いや、聞き取れたというより、まるで頭の中で誰かが喋ったようだった。

立ち止まり、声が聞こえてきたような気がした方を見やる。
眩い光すら届かない、ビルの間の暗がり。
奥に広がる完全な闇は、足を踏み入れればそのまま黒に溶かされて消えてしまいそうだ。

だけど、手前の方は目を凝らせば見えなくもなかった。
エアコンの室外機。横倒しになったゴミ箱。

リハ; д リ

地面に横たわる、真っ白な服を着た少女。
僕を見つめる、山吹色に輝く一対の瞳。

(;・∀・)「あ、の」

間違いない。さっきの声は、彼女のものだ。
根拠を並び立てるよりも先に、本能的にそう判断していた。


606名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 19:07:29.56 発信元:123.225.234.137
倒れている、ということは怪我を負ったり、病気の発作が起きているのかもしれない。
だとすれば、たすけて、と言っていたことにも納得できる。
どうして聞こえたのか、なんて今はどうでもいい。

助けなくては。
今、彼女を助けられるのは、その存在に気付いた僕だけだ。

(;・∀・)「大丈夫ですか!?」

人ごみをすり抜けて、少女の元へと駆けていく。
徐々にその姿が大きく、鮮明に見えてくる。

リハ;゚ー゚リ

その間、彼女の瞳は僕を捉え続けていた。
山吹色は、喜んでいるような、悲しんでいるような、不思議な輝きを帯びていた。

やがて、僕は少女の眼前にたどり着いた。
人の行き交う繁華街の光の中から、僕らしかいない薄闇の路地裏へ、たどり着いた。

リハ;゚ー゚リ「あなた……なんで、どうして……」

弱弱しく呟いた少女の瞳から、なぜか光が失せる。
それも気になることではあったけど、まずは弱り切った彼女を元気づけてあげなくては。
少しでも安心させてやれたら、と手を取り、語りかける。


608名無しっていいもんですね :2013/09/14(土) 19:10:04.27 発信元:123.225.234.137
 




(;・∀・)「……たすけて、って聞こえたから。だから、あなたを……助けに来ました」





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http://toro.2ch.net/test/read.cgi/siberia/1377435720/



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